ジェファーソン・エアプレインの
『フィルモアのジェファーソン・
エアプレイン』は
ライヴアクトとしての実力を
世界に知らしめた傑作!

フェスへの参加と
ジミヘン、ジャニスの影響

マトリックスとフィルモアの出演はもちろん、67年には伝説の『モンタレー・ポップ・フェス』に参加、ジミヘンとジャニスの演奏を間近で観てジェファーソンの面々も大きな影響を受けることになる。前作から1年経たずにリリースされた3rdアルバム『アフター・ベイシング・アット・バクスターズ』(‘67)は、フォークロック色は影を潜め、攻めのサイケデリック路線を追求した作品となった。メンバー間のコミュニケーションがうまくいっているのか、初期のスタジオ盤の中ではこのアルバムの完成度が最も高いと言えるだろう。

68年には4thアルバム『創造の極致(原題:Crown of Creation)』をリリース、ジャケットに原爆のキノコ雲が使われていたり、「忠臣蔵」という日本語の曲が収められていたりするなど、これまでにない反体制的な主張を感じる作品となった。全編を覆う重苦しい暗さが特徴であるものの、チャートでは6位になるなど、彼らの人気ぶりが窺える。

本作『フィルモアのジェファーソン・
エアプレイン』について

1969年、ようやくライヴバンドとして本領を発揮する作品が制作される。それが5作目となる本作『フィルモアのジェファーソン・エアプレイン』である。収録曲は10曲で、収録時間はLP盤に収められるギリギリの50分強というボリューム。録音場所はフィルモア・イーストでの収録が4曲、フィルモア・ウエストが6曲で、1968年10月〜11月にかけてのもの。全編にわたり(イントロの1曲目は除く)、ライヴならではの熱いノリが満載だ。3人のヴォーカルの掛け合いはスタジオ盤よりはるかに攻撃的で、スタジオとライヴでは別グループのようだと言う人がいるのも頷ける。名曲「あなただけを」はライヴバージョンを聴いてしまうとスタジオ盤は物足りなく感じてしまう。アルバムのラストを飾る「ベアー・メルト」は11分以上に及ぶ大作で、サイケデリックロックのテイストに満ちている。曲のほとんどがアドリブで構成されており、60sロックのエッセンスが詰まっている。また、ジャック・キャサディとスペンサー・ドライデンのリズムセクションは、かなりR&B的なフィーリングを持っているのも、スタジオ盤を聴いているだけでは分からない側面だ。ロックが最もロックらしかったあの時代、本作はまさに時代の雰囲気をそのまま閉じ込めた傑作だと思う。

なお、CD化に際してはボーナストラックが3曲収められており、ビル・グレアムが好きな名バラード「Today」をはじめ、どれもフィルモア・ウエストでの録音である。

TEXT:河崎直人

アルバム『Bless Its Pointed Little Head』1969年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. クラージー/Clergy
    • 2. 恋して行こう/3/5 of a Mile in 10 Seconds
    • 3. あなただけを/Somebody to Love
    • 4. ファット・エンジェル/Fat Angel
    • 5. ロック・ミー・ベイビー/Rock Me Baby
    • 6. 人生の裏側/The Other Side of This Life
    • 7. イッツ・ノー・シークレット/It's No Secret
    • 8. プラスチック・ファンタスティック・ラヴァー/Plastic Fantastic Lover
    • 9. ターン・アウト・ザ・ライト/Turn Out the Lights
    • 10. ベアー・メルト/Bear Melt
    • 〜ボーナス・トラック〜
    • 11. トゥデイ/Today
    • 12. ウォッチ・ハー・ライド/Watch Her Ride
    • 13. ウォント・ユー・トライ/Won't You Try
『Bless Its Pointed Little Head』(‘69)/Jefferson Airplane

OKMusic編集部

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