北原ゆか 初の全国リリース作品を携
え『サマソニ』出演も控える19歳のシ
ンガーソングライターに訊く、これま
でとこれからのこと

可憐でいて凜々しい、存在感のある歌声。あふれ出す想いを言葉とメロディーに代える表現力。神戸在住、19歳のシンガーソングライター・北原ゆかが初の全国リリースとなる3rdミニアルバム『ONE WAY』をリリースした。路上ライブでの音楽との出会いをきっかけに人生が激変、今年は『SUMMER SONIC 2019』への出演も決定するなど大舞台も経験し、11月には東京と大阪でワンマンライブの開催を控えている。キラキラと輝く瞳で淀みなく放たれる北原ゆかの言葉たちに耳を傾けてほしい。
──資料を拝見したら、音楽を始めたキッカケとして「人生に行き詰まり絶望に打ちひしがれている中、偶然見かけた路上ライブで聞いた楽曲に救われ、シンガーソングライターになることを強く決意」とあって。かなりヘヴィな感じだなと思ったんですが。
生きるのをやめてしまおうと本気で考えていた時期があったんです。それはみんなも学校とか仕事とかで感じるようなことだとは思うんですけど。一生懸命頑張ったけど失敗しちゃって、でもまた頑張ろうと思って始めた瞬間に失敗して……というのがすごく続いたときに、もう生きる希望がないなって本気で思ってしまって。そう思っていたときに、本当にたまたま路上ライブをされている方を観たんですけど。
──その方のお名前は覚えてます?
船木オリカさんという方で、「この街」という曲でした。私は神戸出身で、三宮の高架下でライブを観たんですけど。船木さんは、夢を追いかけて東京に出て行ったけどうまくいかなくて、親から“神戸にもいいところがあるから、また戻っておいで”と言われて、自分もこの街にいいところがあることに気づいて帰ってきたというMCをされた後に「この街」を歌われてたんですね。その歌を聴いていたら……自分が悩んでいたときって、周りから“大丈夫だよ”とか、いろいろ言ってもらっていたんですけど、自分としては“そんなわけないやろ!”みたいな感じだったんです(苦笑)。
──聞く耳を持てなかったというか。
そんな感じだったのに、音楽だけがスッと自分の中に入ってきたんですよね。音楽にはこんな力があるんやなって知ることができたし、自分の人生をもって誰かに伝えているその姿にすごいなあと思って。それが、自分もアーティストとして生きていきたいと思ったキッカケでした。
──私もこういう歌が歌えるようになりたいと。
はい。私も自分の人生を通して、誰かに伝えたいなって。曲ももちろんそうなんですけど、今年はすごくいろんな挑戦があるので、それを頑張っている姿を通して伝えたいなと思っているところもあります。
北原ゆか 撮影=三輪斉史
試験期間中に勉強しながらバクバク食べていたら5kgぐらい太っちゃって、“うわ~”って思ったら曲が出てきて、試験中に2曲作りました(笑)。
──シンガーソングライターになろうと決める前から音楽は好きだったんですか?
音楽は好きだったんですけど、好きの種類が違っていたというか。私、元々はダンスをしていたんですよ。チアリーディングをやっていたので、サンバとかヒップホップとかジャズとかバレエとか、いろんなダンスに手を出していて。
──となると、楽器の演奏経験は?
3歳から小学校4年生ぐらいまでクラシックピアノをやっていました。ゆったりと、ですけど(笑)。すごく受け身というか、親に当たり前のように習いに行かされていたみたいな感じでした。
──なるほど。そこからギターを手にとって。
そうです。その路上ライブが私の人生で一番の分岐点で、考え方とか普段の行動も全部変わったんですよね。それまではチアリーディング100%で、朝起きたら学校に行く前に走りに行って、チアの練習をして、学校に行って、授業受けながらチアのことを考えて(笑)、部活でチアをやって、帰ってから個人練習して……っていう感じだったんです。でも、路上ライブ後は、朝起きたらギターの練習をして、授業を受けながら曲を作って、家に帰ってギターの練習をして……みたいな(笑)。ギターを買ったのとほぼ同時に習いに行ったんですけど、そこの先生から“1日7時間練習しないとプロになれないよ”って言われて、7時間!?って(笑)。学校もあるから物理的に7時間は難しいかもしれないけど、起きている間は練習しようと思って、家にいるときはずっとギターを触ってました。
──そこからすぐに曲を作れました?
実はギターを練習する前からピアノで曲を作っていたんですよ。私、高校生のときに好きだった先生がいたんです(笑)。その先生のことが本当に好きだったけど、この恋は叶わないというのもわかっていて。でもこの気持ちを消すのは嫌やと思ったから、曲に残そう!って思ったんです。それで先生に向けて書いた曲が、自分が初めて作った曲なんです。
──その曲は先生に聴いてもらったんですか?
先生の前で歌いたいなと思っていたんですけど、なかなかその機会ができず……。結局、私の好きな先生といつも一緒にいる仲のいい先生と、単純に自分の曲は音楽として成り立っているのかを知りたかったので音楽の先生と、あとは自分の友達3人ぐらいを音楽室に呼んで、5人の前でピアノの弾き語りをしました(苦笑)。
──聴くぶんにはどんな音楽が好きでした?
明るくて、テンポがよくて、キャッチーな曲。だからアイドルの曲とかすごくよく聴いてました。嵐さんとか、AKB48さんとか。
──その好みが徐々に変わってきたりとかは?
う~ん……いろんなジャンルの曲を聴くことによって、改めて自分はそういう曲が好きなんやなって思いましたね(笑)。より好きになりました。なぜ自分はそういう曲が好きなのかを根拠づけするようになったというか。元々、私は音楽を聴いて浸るというよりは、テンションを高めたり、無理矢理気持ちを上に持っていったりするときに聴くものだったので、そういう音楽が好きだったんですよね。ノリがよくて、明るくて……という。
──ダンスをやっていたのも関係あります?
そうですね。E-girlsさんとかEXILEさんとか、あとは安室奈美恵さんの曲でよく踊ったりしていたので、リズムがしっかり刻まれている曲が好きなのもありました。ギターを演奏している曲を聴き始めたのは、それこそ自分がギターを始めてからだったので、自分にとってはそれが新鮮な感じはありました。それまで弾き語りなんて聴いたことがなかったですし、アコースティックって何?っていうところから始まったので(笑)。
──そういうところから始まって、いまは何曲も作られているわけですが、いつも曲作りをするときに考えていることはありますか?
自分の軸の部分──路上ライブで音楽に救われたというところはブレたくないんですよ。そこを中心としながら、いろんなシチュエーションというか……たとえば、教室にいるときにとか、親に反対されているけど頑張っている思春期の人とか、曲ごとにいろんなテーマを作って、そういうときにはこういう曲が聴きたいなって思うものを作っていくんですけど。でもやっぱり、曲を作っているときは、誰かの背中を押したいとか、そういう気持ちが一番強いですね。曲を聴いて、前向きな気持ちになってもらえたらなというのはすごくあります。あと、私が明るい曲が好きなのもあって、そういう感じの曲が多いんですけど、歌詞を見ると切なかったり、ちょっと暗いところもあったりして。私としては、いろんなことがあるけど、笑顔でがんばっている姿が好きなんですよ。だから曲にもそういうものが出てしまっているところはあると思います。
──いろんなシチュエーションを思い浮かべるのもあって、テーマ先行で曲を作ることが多いんですか?
そういうときもありますけど、本当に不意にできるときもあります。この前も大学の試験があったんですけど、12時10分にチャイムが鳴って、その瞬間から夏休みなんですよ。で、問題も解き終わって、見直しも終わって、チャイムまであと30分ぐらい残っていて。このチャイムが鳴ったら夏休みが始まんねんな……と思ったら、そこから一気に曲がうわ~っって生まれてきたんです(笑)。
──試験中に?(笑)
はい(笑)。サビだけですけどね。でも、まだちょっと時間があったのでいろいろ思い出していたら、私、試験期間中に勉強しながらバクバク食べていたら5kgぐらい太っちゃったんですよ(苦笑)。うわ~太っちゃった~って思ったら、そこからまたうわ~って曲が出てきて、試験中に2曲作りました(笑)。だから、こういう曲を作ろうと思って作るときもあるし、不意に曲ができるときもあるし。1曲にしないにしても、曲を作る頻度は多いと思います。曲を作るのが好きなので。
北原ゆか 撮影=三輪斉史
『オオカミくんには騙されない』では本気で恋をしていたので、それまで失恋ソングなんて1回も書いたことなかったけど、これはもう作るしかないって。
──そして、今回初の全国リリースとなる3rdミニアルバム『ONE WAY』をリリースされますが、タイトル曲はこういうものにしたいと考えていたものはありましたか?
「ONE WAY」は、すごく壮大な感じにしたかったんです。でも、壮大にはしたいけど、概念みたいな感じにはならずに、光景が目に浮かぶようなものにできたらいいなと思っていて。だから歌詞を書くときに、これだと伝わらないかなとか、これだと近すぎるかなとか、いろいろ考えてました。あと、サビに<生まれ変われるの>という歌詞があるんですけど、それは自分が路上ライブを観た後に、アーティストとして生まれ変って生きていこうと思ったこととか、「ONE WAY」って一方通行という意味があるんですけど、もう戻らへん、絶対に夢を叶えるという、いまの自分自身を重ね合わせて書いているんです。こうやって初めて全国リリースの作品を出すにあたって、そういういまの気持ちや思いを、まっすぐそのまま反映した曲ですね。
──そういった力強い決意表明もあれば、「サイボーグ」のようなゴリゴリした尖った曲もあって。
この曲はほんまに尖っている時期に書いたんですよ(笑)。制作期間中に、大学に行きながら2ヶ月で100曲ぐらい書いたんですけど、それと大学の試験がかぶっていたりして、なんかもうやることが多すぎてどうしたらいいんよ!っていう。でも、こういう気持ちになっているのって私だけじゃなくて、きっとみんなそうなんだろうなと思って、すごくやさぐれた歌詞を書きました(笑)。
──前向きなだけじゃなくて、こういう歌詞も書いていこうと。
こういう曲もあったほうが楽しいし、ファンの方もアクセントとして楽しんでもらえるというのもすごくあるし。でもなんか、作りたくなっちゃったからできちゃったところもあるんですよね(笑)。
──あと、明るくてアップテンポなだけじゃなく、じっくりと聴かせる「君のもとへ」という曲もあって。
AbemaTVの『オオカミくんには騙されない』に出演していたんですけど、恋愛リアリティショーやから、本当に恋していたんです。最初は恋するわけないと思っていたんですけど、あれは恋しちゃうんですよ(笑)。
──やっぱりそういうものなんですか?
『オオカミくん~』の現場に行くときは、それこそ高校の先生のことがまだ好きだったので、先生以上の人が現れるわけがないと思っていて。そしたら……なんていうか、“普段こんなとこ行かへん!”っていうおしゃれなところに、すごくかっこいい子が来て、“おはよう”とか言われて、“いや~、男子に普段そんなん言われへんけど!”みたいな(笑)。しかも1週間に1回ぐらいしか会えないので、次に会うときまでに自分の中で勝手にストーリーを作ってしまうんですよ。だから、あの撮影をしていたときって本当に何曲も生まれたんです(笑)。
──すごいなあ。
結局、番組で恋は叶わなかったんですけど、本気で恋をしていたので、私はみんなの前で本気で失恋しているわけですよ(苦笑)。それで、それまで失恋ソングなんて1回も書いたことなかったけど、これはもう作るしかないと思って、素直な気持ちを書きました。でも、ファンの方とかにこの曲のことを聞くと“失恋ソングとも取れるし、遠距離恋愛の曲としても取れるね”って言われます。
──確かにそういう切なさがありますけど、この曲も含めてですが、作品一枚を通して“変わる”とか“進んでいく”という印象が残る曲が多いなと思ったんですが。
やっぱりその気持ちがあっての曲たちだから、どうしてもそういうものになってしまうんでしょうね。言い方はいろいろ違いますけど、どの曲もそこに繋がるというか、進んでいってほしいなという思いがやっぱりあります。
北原ゆか 撮影=三輪斉史
ワンマンライブで新しい世界へ踏み出すような感覚があるし、お父さんとかお母さん、観てくれた人たちが安心できるようなステージにしたいな。
──お話しされていた通り、北原さんの曲は前向きなものが多いですけども、ご自身が思う“シンガーソングライター・北原ゆか”の武器は何だと思いますか?
一番の武器は……声だと思います。自分と似ている声をあまり聴いたことがないので、そこは強みかなと思います。あと、曲のバリエーションの多さですかね。そこは、普段からいろんな曲を作るという以外にも、ブッキングライブとかでいろんな方のステージを観たときに、もしかしたら自分は多いのかなって感じているところでもあります。
──なるほど。今後の目標というとどんなものがありますか?
すごくいろいろあるんですけど。私、大原櫻子さんがすごく大好きなので、いつか共演してみたいです。あとは、人前で歌うのが2回目くらいだったときに立った場所が東京国際フォーラムだったんです。日本赤十字社が主催していた『Song for the Life 音楽コンテスト』というものがあって。献血の推進プロジェクトだったんですけど、そこにオリジナル曲を応募したらグランプリをいただいて、そこで演奏させてもらったんですけど、また自分の力であのステージに立ちたいです。そういう、いろんな目標がありますね。
──最後に、初のワンマンライブを11月1日に心斎橋 CLAPPER、11月10日渋谷 TAKE OFF 7で開催されます。まだ少し日があるので、これから内容を詰めていくところもあると思いますが、どんなライブにしたいと思っていますか?
いつもは弾き語りなので、やりたいけどできないことがたくさんあるんです。それをワンマンライブで全部やれたらいいなと思っています。もっと自分もお客さんと一緒に盛り上がりたいし、一緒に気持ちを共有したいし、自分の気持ちをもっと伝えられるんじゃないかなと思っていて、すごく楽しみです。あと、11月で20歳になるんですよ。いま、大学の友達とかは、いろんなセミナーとかに行って就職のことを考えたり、いろんなことをしていて。そういうのを見ていると、なんていうか、自分はこのままでいいのかな?って考えるときもあるんです。だけど、自分自身、このワンマンライブで新しい世界へ踏み出すような感覚があるし、そういう不安な気持ちを振り切りたい気持ちもあって。だからこそ、このワンマンライブを絶対に成功させたいし、お父さんとかお母さんとか、観てくれた人たちが安心できるようなステージにしたいなと思っています。
取材・文=山口哲生 撮影=三輪斉史

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