パスピエ『more You more』が示した
ユーモアと独自性
Photograph_Megumi Suzuki
Text_Sotaro Yamada
ポップだけれど、演奏技術的には変態級
の集まり
2曲目は一転して、妖しいシンセが特徴の『術中ハック』。露崎による地を這うようなベース、三澤による男臭いギターソロがうなりをあげ、フロアの熱気があがると、そのまま『音の鳴る方へ』と繋ぐ。
最初のMCが入ると、フロアからは長い拍手が起きた。「今日はナマでパスピエのユーモアを感じ取ってください」という大胡田の言葉に続けて『BTB』『(dis)communication』へ。後者では露崎がシンセベースとエレキベースの両方を披露。骨太なドラムとギターに、露崎と成田のWシンセ、そして大胡田の歌声。他のどのバンドにもないパスピエだけの新たな独自性が、いよいよわかりやすい形になってきた感がある。
『ユモレスク』『スーパーカー』をシームレスにつないだ後に披露されたのは、成田の変態的なシンセフレーズからはじまる『グラフィティー』。これが本公演の最初のハイライトだった。この冒頭のシンセ、あまりの速弾きに、音源を聴いただけではどうやって弾いているのかわからないだろうが、ナマで見ても、速すぎてどうやって弾いているのかわからない。二階席にいた筆者は成田の手元を見ようと身を乗り出したが、動きが速すぎて全然見えなかった。
パスピエの演奏について語られる時、しばしば「変態的」という言葉が使われる。たしかに他にふさわしい言葉が見当たらない。素人から見たら変態的としか言いようがない。ちょっと一般人の理解を超えているように思う。MVは大胡田による手書きアニメーションが久々に採用されているが(ちなみに編集は露崎が担当)、ぜひライブver.も公開してほしいところだ。
パスピエはメロディもヴィジュアルもポップなバンドだが、演奏技術的にはやはり変態級の集まりである。超絶技巧を持ったメンバーが交互に見せ場をつくる。各メンバーがソロで見せ場を作る際、大胡田がケチャのような身振りでメンバーをあおいでいたのも印象的だった。
テンポをぐっと落として『とおりゃんせ』、さらには今回最大の注目曲である『ONE』。低音のグルーヴィーな打ち込みサウンドには海外のトレンドも盛り込まれ、明らかにこれまでのパスピエのイメージを更新する。音源では囁くように歌われていたサビは、ライブでは1オクターブ上で高らかに歌われた。
パスピエ『more You more』が示したユーモアと独自性はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
ミーティア
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