近藤利樹 『フジロック』史上最年少
で出演する噂のウクレレ少年に訊く、
ウクレレとの付き合い方と未来の夢

噂のウクレレ中学生が、令和最初の日本の夏を思いっきり盛り上げる。“ナニワの光速ウクレレ少年”こと近藤利樹、2か月連続配信シングルはスタンダードナンバー「VOLARE」のカバーと、マリンバ奏者SINSKEとコラボしたオリジナル曲「SUNNY SIDE」。誰もが驚く超絶技巧に加え、ウクレレが好きで好きでたまらない気持ちがあふれ出す、これは聴いているだけで幸せになれる天然ハッピー・ミュージック。ウクレレを抱えて目の前に座った少年は、音符のようにしゃべり、言葉のように弦をはじく、夢と希望に溢れた中学1年生だった。
――ウクレレは今、何本持ってるの?
8本ぐらいです。1本は人に貸してて、もう1本は修理中です。
――僕もウクレレ好きで、コアロハっていうメーカーのを1本持っているんです。
あ~、三角のマークの。
――そうそう。ちょっと触ってもいい? (と言って本人の愛器を借りて試奏しながら)あー、すごい。いい音。
弦をさわってもらったらわかると思うんですけど、このへん(ホールの上)あたりがサラサラになっていて。弾きすぎると1週間ぐらいでそうなるんですよ。普通はならないんですけど。
――利樹くん弾き方激しいから(笑)。これは名前とかついてる?
これは「100年くん」です。カマカというメーカーの、100周年モデルなんで「100年くん」。
――へえー。名前は全部ついてるの?
今ついてるのは3本だけです。もう1本は「メインくん」といって、同じカマカのやつがあるんですけど、それをメインで使ってるから「メインくん」。
――あはは。そのままやん。
その「メインくん」が最近、音がビビるようになって。修理出したんですけど、すぐ元に戻っちゃって、また修理に出してます。
――楽器は大変でしょう。湿気も良くないし。特に今の梅雨時は。
しなしなになります(笑)。
近藤利樹 撮影=大塚秀美
――そんな利樹くんとウクレレの出会い。聞くところによると、6歳の時にコストコで出会ったという。
そうです。光ってるように見えたんです。神様に「弾け」と言われたような気がして、お母さんに「買って」と言ったんですけど、買ってもらえなくて。それの半年後にお父さんの友達が買ってくれました。
――その後、他にもそんなことってあった? ウクレレだけ?
ウクレレだけです。
――そりゃ運命だ。その後は挫折とかなしに?
挫折するようなことを避けてきたというか。嫌なことをやらないで、自分の弾きたいことだけをずっとやってました。
――あー。勉強じゃなくて遊び、とか言うと語弊があるかな。
いや、遊びです。遊びで弾いてました。
――それだと好きになれるね。教則本とにらめっこしてると、勉強っぽくなるし。
そうやってやるのが好きな時もあったんですけど。タブ譜が書いてあるやつを買ったんですけど、なんとなくやめて、こんな(ジャカジャカジャカ)感じで弾いてました。何か曲をやる時は、耳で聴いて覚えたり。今はちょっと聴いて弾いたりするんですけど、最初はどのフレットを押さえてるか、パソコンとかケータイで映像を止めて、確かめて弾いてました。
――目と耳で覚えるんだ。僕も勉強し直そう(笑)。ウクレレを弾く人って歌う人もいるけど、利樹くんは弾くほうが好きだった?
弾くのが好きでした。でも歌うのも好きです。
――歌ってるもんね。「みんなのうた」で流れた「デッカイばあちゃん」とか、「学園天国」とか。
そうです。ただ、今は声変わり中で、歌ってないです。もうちょっとしたら歌えると思います。
――聴く方は何でも聴く? ウクレレの曲だけじゃなくて、J-POPとか。
聴きます。普段は、ボカロを歌ってみたやつとか。あとJ-POPとか、洋楽とか聴いてます。
――そういえば、「ずっと真夜中でいいのに。」とかもカバーしてたね。
しました。
――と思えば「ソーラン節」とかも。
あれは、僕が小学校3、4年生の時に運動会で踊ってて。「ソーラン節」はジェイク・シマブクロさんにプロデュースしてもらった曲です。
――そうそう。ジェイクさんといえば、ウクレレ界のスーパースター。どんな人だった?
ジェイクさんは、むちゃくちゃいい人で、めっちゃいろんなことを教えてくれました。たとえば「ソーラン節」の間奏でこういうところ(弾いてみせる)があるんですけど、ここはクレッシェンド、デクレッシェンド、クレッシェンド、みたいに「強弱を波みたいにつけたらいいよ」って教えてくれました。
――日本では、誰か先生とか、尊敬している人はいる?
日本だったら、名渡山(遼)さんとか、KYASさんとか、めっちゃ好きです。名渡山さんは音もむっちゃキレイやし、たとえばG#を弾くんやったら、普通はこう弾くんだけど、名渡山さんやったらこんな感じ(流れるように弾く)。むっちゃキレイやから、むちゃくちゃ好きです。
――ポジションは一緒でも、弾く人によって音色が全然違う。
全然違うと思います。僕は思いっきり弾く感じの人なんで。言ったら、ただ単におっきい音でバン!と弾いてるだけ。
――そんなことないでしょ。でも確かに、ウクレレ弾きとしてはニューウェーブかもしれない。
あと、最近やろうとしてることがあって。ベースのスラップ? それをウクレレでやりたくて。こんな感じ(弾いてみせる)の音やから、こうやったら、それっぽく聴こえるかなって。指を弦に当てて、わざと変な音を出して。
――おー。かっこいい。めっちゃファンキー。
あと、めっちゃわかりにくいんですけど、エレキギターの音っぽいのもやったりします(弾いてみせる)。
――あー。ミュートして。カッティングで。かっこいい。利樹くんのプレイって、ギターっぽく聴こえることが多いけど、そういうふうに弾いてるのか。
普通に弾く時も、なぜかクセで、一回のストロークで指を何本も使っちゃうから。
――あと、ボディを叩いたりもするでしょ。
やってます。爪をボディに当てて、スネアみたいに。
――すごいなあ。というか、そうやってウクレレをずっと持ってるの? 1日24時間。
ほぼずっと持ってます(笑)。最近、打ち込みとかにもハマってるんですけど、その時も大体後ろにあります。打ち込みの曲を作る時にも、目の前にキーボードがあったとしたら、後ろに机があって、そこにスタンドがあって、さっと取れる感じになってます。
――今は打ち込みで曲を作ってるんだ。
いや、最近始めるようになって、まだ自分が打ち込みで作った曲は発売はしてないです。今年の4月か5月ぐらいからやってます。
近藤利樹 撮影=大塚秀美
――楽しみだなあ。新曲の話をしようか。2か月連続リリースで、6月に「VOLARE」、7月に「SUNNY SIDE」。「VOLARE」は有名な曲だけど、知ってた?
「VOLARE」は知らなくて、弾いた理由が、『ムジカ・ピッコリーノ』っていう番組(NHK Eテレ)にジャンゴという役で出させてもらってるんですけど、そこで「VOLARE」を弾いたんですよ。それで“めっちゃノリのいい曲やな、弾きたいな”と思って、弾くことになりました。
――難しい曲なのかな。
イントロが難しいです(弾いてみせる)。1本の、4弦しか使ってないんですけど、なるべく多くの音を出すっていう。
――これ、音は打ち込みっぽいでしょう。ダンスミュージックっぽい。
あ、そう! この曲は、イントロのスネア、“ン、タ、タ、タ”のところとか、リズムパターンもアレンジャーさんに「こういう感じのがいい」って。「ここにクラップを入れてほしい」とか、頼んだりもしてました。
――ライブで楽しそう。みんなでクラップできるし。
あ、そっか。あんまり想定してなかったんですけど(笑)。今、いいこと聞いた(笑顔)。

――もう1曲の「SUNNY SIDE」は、マリンバ奏者のSINSKEさんとコラボで、関西のMBSお天気部夏のテーマ曲。
「SUNNY SIDE」は、一番聴いてほしいところが、僕のソロです。同じメロを3回繰り返しているところがあるんですけど、コードが変わっていくという。そういうのを工夫したから、注目して聴いてほしいです。あとは、マリンバのSINSKEさんのソロがあって、そこをアルペジオで弾いたところも聴いてほしいです。
――ウクレレとマリンバの組み合わせってすごく面白いけど。SINSKEさんはどんな人?
むっっっちゃ優しい人でした。いろんな優しさがある人でした。たとえば、ジェイクさんみたいにたくさん案をくれたりとか、でかいシュークリームを箱いっぱいに持ってきてくれたりとか。クリームががっつり入ってるやつ(笑)。
――それは掴まれる(笑)。いい人だ。この曲って作曲が二人の共作になってるけど、どうやったの?
まずSINSKEさんが2曲作ってくれて、「どっちがいい?」って聞いてくれたんですよ。「こっちがいいです」と言って、自分が弾いた音を入れました。そのとき、ちょっと変更して送って。そしたら、「ここは元からあったメロディにして、ここは近藤くんが考えてきたメロディにしよう」という感じで決まりました。
――夏っぽくて、涼しげな気持ちいい曲。やっぱりテンポが速いほうが得意なのかな。スローよりも。
スローはあんまり弾かないけど、「少年時代」とかは……(弾いてみる)……あー弾けた。よかった(笑)。全然弾いてなかったんで。
――速いほうが弾きやすいのかな。
でもゆっくりなのも好きなんで。「Lemon」はゆっくり……じゃないか……(弾いてみる)一緒ぐらいか。
――すごいなあ。何でも弾けちゃう。今まで出したミュージックビデオでは何が一番好き?
好きというか、楽しかったのは「学園天国」。一番楽しかった。最後のほうにたこ焼きを作ってるシーンがあるんですけど、ほんまにめちゃくちゃ作って、100個ぐらい? それ食べたから“やったー!”と思いました。たこ焼きめっちゃ好きやから嬉しかったです。
――食べ物に弱い利樹くん(笑)。今、ライブはどんな場所でやることが多い?
フェスというか、イベントが多いです。
――緊張する?
緊張は特にしないです。ちょっと得してます。……けっこう得してるかも。
――今までで一番多いお客さんは……。
5000人ぐらいです。福岡の『音恵』っていうイベントで。緊張は特にしませんでした。そのときはバンドの方と一緒に演奏できて、そのときに弾いた「ダンシング・ヒーロー」はいつもからオケを流して弾くんですけど、生で弾いたらめっちゃすごかったです。
――初めて見る人が多いような時は燃える? このお客さん全部もらって帰ろうみたいな。
なるべく……覚えてもらって帰れるように(笑)。こっちの側に。知ってくれたら嬉しいな、みたいな感じです。

――いいね、そうでないと。だって今年は『フジロック』に出るんでしょう? すごいじゃん。びっくりしたでしょう、最初に聞いた時。てか知ってた? 『フジロック』って。
『フジロック』は名前を知ってて、すごいアーティストさんが出るというのも知ってて、でも、いまいちようわからんなって。
――いいとこだよ。山の中で。
めっちゃ雨降るって聞きました。
――あー、それは覚悟しておいた方いい(笑)。でも楽しみでしょう。何が聴けるかな?
「VOLARE」は絶対やります。盛り上がる曲、やりたいです。
――ウクレレ聴いてくれるのってどのへんの年代が多いんだろう? お母さん世代なのかな。
そうです。親子の人とかも多いです。
――同世代ではいる?
ギターとかベースをやってる人ならいます。でも、同世代でウクレレをやってる人は周りにはいないけど、台湾のフェンEさんとか、ほかにもいると思うけど。
――あと、アメリカのグレース・ヴァンダーウォールさんとか。何か一緒にやってる動画を見た。
そうですね。三つ上かな。
―― 一番若い世代代表として、ウクレレをもっと広めたいという気持ちはある?
あります。
――それにはどうしたらいいだろう?
うーん。とにかくウクレレを知ってもらう。下が四角になってて、立てられるウクレレとかいろいろあって、プラスチックで1500円とかのもあるし。たとえばキャンプとかバーベキューに行った時に、簡単に弾けるかなあと思います。あと、木のやつだったら、部屋の棚とかに横に置いててもあんまりおかしくないかなって。
――あー、ちょっといいインテリアみたいな。おしゃれ。
最近、CMにウクレレが入ってることも多いんで。カレーとか、いちごジャムの宣伝とか。言ってくれれば弾きたいです(笑)。
――もしかして流行ってきてる?
かもしれない。
――みなさんぜひ、安いやつでいいからウクレレを一家に1本。
ハワイとか行ったら、ちっちゃいコンビニにも普通にウクレレが置いてあって。日本もそうなったらいいのになと思ってます。
――ウクレレの未来は利樹くんにかかってるから。将来の理想像はどんな感じ?
理想は、ブルーノ・マーズさんと共演できる、世界的なプレイヤーになりたいです。
――いいねえ。「アップタウン・ファンク」もカバーしてるし。そう遠くない未来に叶いそう。大きい会場でやりたいとかは?
大阪城ホールとか、東京ドームでライブしてみたいです。大阪城ホールはエド・シーランさんを見に行ったんですけど、むっちゃすごかった。あと宇多田ヒカルさんのライブも見せてもらって、あんなに盛り上がったらいいなと思ってます。
――じゃあ最後に。近藤利樹くんにとってウクレレとは?
ウクレレは……何やろ? むっちゃ大切なもの。心臓ぐらい大切なものです。
取材・文=宮本英夫 撮影=大塚秀美
近藤利樹 撮影=大塚秀美

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