フレンズがメンバーの地元まわったツ
アー、“ひろせがワガママを聞いても
らう”新宿公演を観た

青春チャレンジツアー 2019.6.29 新宿BLAZE
えみそん(Vo)の池袋にはじまり、三浦太郎(Gt)の長崎、長島涼平(Ba)の埼玉・北浦和、関口塁(Dr)の長野、ひろせひろせ(MC/Key)の新宿と、各メンバーの地元をまわるフレンズのコンセプチュアルな全国ツアー『青春チャレンジツアー』がファイナルを迎えた。タイトルの通り、各公演でホストとなるメンバーが中心になり、それぞれユニークな“チャレンジ”を繰り広げた今回のツアー。初日のえみそん編では、フレンズの全楽曲をメドレー披露したり、三浦編では「長崎は今日も雨だった」を弾き語りでカバーしたりと、それぞれ予想の斜め上をゆく内容で突っ走ってきたが、ファイナルとなったひろせ編は、サブタイトルに「ひろせの生まれた街でひろせのワガママを聞いてもらう日」と題して、ひろせ好みのセットリストを用意。バンド結成の中心人物・ひろせだからこそ、当時に想いを馳せた熱い“わがまま”に、ひろせのフレンズ愛を感じる一夜になった。
ステージがカラフルな照明の光で照らされるなか、ライブの幕明けを華やかに告げるウェルカムソング「パーティーしよう!」からキックオフ。ソールドアウトになった満員の会場。そのお客さんの心を一発で鷲掴みにするえみそんの包容力のあるボーカルと、ひろせのラップが軽やかに掛け合い、陽性のエネルギーに満ちたフレンズのポップミュージックが新宿BLAZEの隅々まで響きわたっていく。ズッ友キーボードの山本健太のピアノも絡む心地好いグルーヴに自然と体が踊り出す「夜にダンス」では、アウトロでえみそんとひろせが腕を組むポーズもばっちり決まった。底抜けに自由で、遊び心が満載のフレンズのライブは、「お客さんを楽しませよう」というサービス精神があちこちに散りばめられているが、それ以上に「まず自分たちが楽しむ」という精神が大前提にある。特に今回のツアーは全公演のセットリストをガラリと変える一発勝負みたいなライブだからこそ、ファイナルにも関わらず、初日みたいな緊張感と新鮮さがあって、メンバーは心の底から楽しそうだ。
「本日はフレンズにすべてを任せてください!」というひろせの頼もしい言葉のあと、フレンズが初めてドラマ(『きのう何食べた?』)のために書き下ろした新曲「iをyou」が披露された。珍しくひろせのラップがなく、えみそんが紡ぐ愛に満ちたいじらしいメロディだけで会場を優しく揺らす。ライブハウスを異空間へと作り変える「地球を越えても」に続けて、関口が叩きだすビートが“新しい自分に生まれ変わること”を全肯定するポップロック「Hello New Me!」では、三浦の渋いギターソロが炸裂。そこから、スタイリッシュで情熱的な「常夏ヴァカンス」、太陽を味方につける恋のパーティーチューン「夏のSAYにしてゴメンネ?」という夏の二部作を繰り出せば、フロアには、それぞれが思い思いに体を揺らして踊るフリーダムな空間が出来上がっていた。このライブハウスのドアをくぐるまでは、誰もが日常の辛いことや悲しいことを両手いっぱいに抱えている。でも、そんな悩みが全部バカバカしく感じるぐらい、フレンズの音楽は底抜けに明るく、キラキラと輝いていた。それがライブハウスだけで許されるものであることは百も承知で、フレンズの音楽は、それこそがポップミュージックの役割だという覚悟をもって鳴らされているのだと思う。
MCでは、ひろせによる“新宿あるある”として、新宿出身だと、大体「住むところあるの?」って聞かれるという話でも会場を和ませると、「魅惑の夜をお届けしたいと思います」という言葉から、「NIGHT TOWN」へつないだ。長島が奏でる、歌うようなベースソロに心地好く揺れたところで、山本とひろせの二台のシンセが絡み合う、ハートフルなラブソング「夜明けのメモリー」を披露。“夜”というテーマは、フレンズの楽曲には欠かせないが、いつまでも眠らない都会の夜のムードのなかで、健気に人と人との深いつながりを求めるフレンズの楽曲は、血の通った人間の体温があって、とてもあたたかい。
元気のない三浦を元気づける、ライブで人気のナンバー「元気D.C.T ~プロローグ~」では、「太郎さんと同じB型の人!」「ちびっこ!10歳以下!」とお客さんをわけて、“タタンパ!タタンパ!プピプピプピ~”を唱えて会場を湧かせるという、フレンズにしかできないコミカルな手法で会場を湧かせると、ライブの中盤は、音楽的でユニークなゲームを展開。フレンズは、長島をはじめ、ひろせ、えみそんという3人のベーシストがいるバンドということで、3人が袖に隠れて「Fisherman」のベースを弾き、どれが長島の演奏かを聴き比べて当てるというもの。見事、会場のお客さんが長島のベースを聴きわけると、長島は「マジでありがとう! 俺、こんなにバンドやってて良かったと思ったことない(笑)」と喜びを爆発させた。という流れで、えみそんがベースを弾き、長島がボーカルというレアな編成で届けた「Fisherman」では、長島が「一度やってみたかった」と言って、最前列の柵へと身を乗り出して歌った。上手くバランスが取れずにフラフラだったが、それもライブならではのご愛嬌。実力派ぞろいのバンドにもかかわらず(いや、だからこそ)、気取らず、気張らず、音楽という遊び道具で、お客さんを巻き込みながら楽しむ感じがとてもいい。
ブラックビスケッツのカバー「タイミング」からライブ定番曲「塩と砂糖」へと、クライマックスに向けて、一気に開放感のあるナンバーを畳みかけていくと、最後に「今日は、俺の……フレンズのわがままにつき合ってくれて、ありがとうございます!」と真っ直ぐに感謝を伝えたひろせ。本編のラストは、軽やかなリズムにフレンズの“楽しい”がギュッと詰まった「Love,ya!」で、最高潮の盛り上がりを生んで、ライブを締めくくった。
アンコールでは、フレンズ結成する前に、カラオケで、えみそんが歌った瞬間にひろせが「震えた」「空気が変わった」と衝撃を受けたというMISIAの「Everything」を、山本のピアノの伴奏のみでえみそんが熱唱。いつもの軽やかな歌唱とは少し趣の違う、黒いニュアンスも強く滲む圧巻のボーカルを聴かせると、ひろせは「この人とバンドをやってまーす!」と誇らしげに言った。さらに、この日、誕生日を迎えた三浦をみんなで祝い、フレンズが始動するきっかけになった「ベッドサイドミュージック」で終演。目いっぱいの笑顔を生んだ多幸感あふれるライブの終わりに、4年前、ひろせ、えみそん、三浦、長島、関口という5人が集まったことで始まったフレンズの原点に立ち返るエンディングは、いつまでもバンドの初期衝動を失わずに走り続ける彼ららしい、胸が熱くなる演出だった。

取材・文=秦理絵撮影=Ray Otabe

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