INORAN

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【INORAN インタビュー】
自分らしいものを
作っていくというのが、
ミュージシャンとしての存在意義

今を精いっぱい生きることが
ミュージシャンとしての僕らの使命

人が自分自身を見出させてくれたという視点はリード曲「Starlight」や「Long Time Comin」からも感じられますが、今作全体を通したテーマとしてあったんでしょうか? 

そうですね。生き方として何が正しいというのはないんですけど、音楽の世界の中で、僕はそうやって生きてきたので。それで喜びをいくつももらったし、その部分をアルバムの曲とか音色に落とせれば、またツアーも楽しいんじゃないかと思ってますね。

「Starlight」は前半がアコースティックギター弾き語りで、歌を前面に出した始まり方が新鮮でした。

あのアコギはね、曲を作った時に自宅スタジオで弾いたものをそのまま使っているんです。やっぱり最初に出たのが一番いいんですよ、混ざりっ気がなくて。邪念がないし、一番オーガニックだし。

そこを活かしながら後々の壮大なアレンジを足していったと。

うん、そうですね。ドラムとベースも自分でやって。

歌に対するINORANさんの意識が変わられたのかなと強く感じたところがあって、その変化が顕著に出ているのが「Starlight」や「Long Time Comin」などのミディアムバラード群だと思うんです。“歌で届けるんだ”という想いが強まってらっしゃるのかなと。 

うーん、歌もアルバムも、生き方も、何もかも“今できることをするだけ”というか。やっぱりRYU(LUNA SEAのヴォーカリスト・RYUICHIの愛称)が病気になって(肺腺がんを患い、1月13日に自身のブログで11日に切除手術を受けたことを報告)。すごく奮い立たせられたというか、今というのはやっぱり今でしかないし、今を精いっぱい生きるってことがミュージシャンとしての僕らの使命なんだなと。だから、歌に対する意識は変わらないけど、彼の強さにすごく刺激を受けたというのはありますね。

私も手術をなさったという事後の報道を受けて。とても心配していました。

僕らはその何カ月か前に聞いていたんですよ。だから、手術前の最後に歌う時には一緒にいたかったから僕はカウントダウン(河村隆一ソロ名義での恒例の年末ライヴ)にも出たし、RYUの手術前と手術後の歌も聴いてるし…“だから美しい”とかいう話ではないんだけど、やっぱり美しさって一生懸命さだったり、ミュージシャンとして自分やみんなを信じていくことだったりするんですよ。それを教わったし、“俺の立場だったらどうしただろう”とかも考えたし。そういう意味ではちょっと歌が変わったかもしれないですね。

“今を生きる”ということに対する切実さが一層増した?

うん。それを歌詞として言葉にすることによって自分もまた記憶、記録するというのがあるし。思い返せば、東日本大震災の時もこういう感情を持ったと思うんですけど、人って記憶が薄れていくんでよね。毎日そうやって考えているわけではないしさ。だからって忘れているわけではないんだけど。そういうものを、できるだけ記録と記憶に残すような作品を生み出していくのが、僕らの仕事であり、宿命なんじゃないか…って今、思いました(笑)。別に全然、暗い話でもなんでもないんですけどね。

RYUICHIさんは手術も無事に終わられて、本当に良かったです。メンバーに迫る危機を身近に感じながら、時をともに過ごし、乗り越えられたことはとても大きな体験になったでしょうね。

そうですね。バンドを支えてくれるたくさんの人がいて、僕にもソロ活動でも支えてくれる人がたくさんいる中で、やっぱり自分らしいものを作っていくというのが、ミュージシャンとしての存在意義であるのかなって思ったりもして。今回のインタビューではそんなことばっかり言っていて、全然曲のことを話さないんですよね。“小難しいおじさん”っていう裏テーマがあって(笑)。

(笑)。でも、そういうお話こそお聞きしたいです。切実さがリアルに伝わってくる作品なんですけど、ブルーな感じでもなくて。影に引きずられることなく、切ない中にも光へと向かっていくモードを感じたんです。それは今のINORANさんの反映という理解でいいですか?

出てるとは思いますよ、それは。正直にやってるから。映し出されてるといいな。

昔はもう少し気怠い感じがあったような…。

たぶんね、その時は何かに対して気怠かったんです(笑)。まぁ、己自身、30代は失敗しながら成長していった部分がありますから。30代なんて世の中を知ったふうに言うじゃないですか。何も知らないのに、20代と10代の経験だけでね。で、40代になって気付くっていう。俺もそうだったし。自分の身の丈を知った部分があるからさ。LUNA SEAがなくなって(2000年の終幕)、自分ひとりでやった時とか。あと、6年ぐらい前にソロでヨーロッパツアーを行なった時とか。そういう身の丈を知る経験ができるって、実はすごくありがたいことで。

思うようにいかないこともある中で見えたものがあると?

うん。そんな中でも、楽しみだったり、楽しさというのはどこにでも転がっていると知って。悲しいことがあっても泣くだけじゃなくて、一緒に泣く友達がいることを知ったり、慰めてやる役を自分がしたり、慰められたり、下手すればその中でも笑えたりして…だから、全部の経験の中で培ってきて、失敗もしながら変化していく部分があって、こういうアルバムができましたという感じです(笑)。

OKMusic編集部

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