【インタビュー】ちゃんみな、ニュー
AL『Never Grow Up』に込めた20歳の
生き様「私、人生のマスターになりた
くて(笑)」

「さて、音楽でも聴こうかな」「いつものように音楽を…」とサブスクアプリを立ち上げる。何を聴くかはその時の風向き次第。数あるものからどれをどれだけ堪能するか…そう、それはちょうどバイキング料理のようなもので、和洋折衷は当たり前、音楽的傾向も時代背景も完全にボーダレスとなった。

そもそもプレイリスト自体がそうだ。適当に選ぶときも自らリストを作るときも、もはや音楽ジャンルを意識することもなければ捕らわれることもない。むしろ左右するのはその時のムードであり、「アガりたい」のか「しっぽり」したいのか、あるいは思いっきり「堕ちていきたい」のか、その時の気分が音楽セレクトの鍵となる。音楽を所有せず利用するものとなったいま、ジャンルという壁はもろくも崩壊した。どうやら音楽をカテゴリーにはめていたのは、所有時代にパッケージを販売するための単なる仕分け方法に他ならなかったとみえる。

そしてその価値観は、当然ながら音楽を制作するアーティストのクリエイティビティに直結している。サブスク・ネイティブなアーティストにとって、楽曲はカテゴライズされていない。かつてジャンルと呼ばれていた様々な音楽のエッセンスは、折り重なる心模様の色彩のひとつとなって、音楽というひとつの瞬間芸術に仕立て上げられていく。パレットの上で様々な音楽要素が踊り、塗り重なり、自らの気分やモードが楽曲へと変換されてミュージシャンとしてのアイデンティティが確立される。

何の障壁もない開放された音楽表現で、自らの生き様/プライベートを作品に仕立て上げてしまうという自然体なソングライターが今、時代牽引を担っている。ビリー・アイリッシュしかり、そしてちゃんみなもそんなアーティストの筆頭である。

時代と場所を超えて世界中の音楽が一瞬で集まるストリーミング時代において、彼女たちが生み出す楽曲は、どんなカテゴリーにもはまらない。ちゃんみなの音楽は、そのまま“ちゃんみな”なのである。

  ◆  ◆  ◆

■ 引かれたら引かれたでいいや、って

──自分にとって、アルバム『Never Grow Up』の手応えはいかがですか?

ちゃんみな:“すごく愛に溢れた作品”になったんじゃないかなって思います。

──愛というのは、自分にまつわる人々への思いですか?

ちゃんみな:このアルバムは、作ってきたたくさんの曲の中から選ばれた楽曲でできているんですけど、そこの共通点が「大事な人」だったり「大事な感情」「大事な仲間」「大事な嫌いな人」だったりとか、20歳になってから大事だなって思える人が見えてきて、その人たちだけに向けて書いた曲を詰め込んだアルバムになっているんです。自分が書いたものですけど、「自分が共感する」っていうか、未だにこの内容を聴いて「惹かれる」っていうか。

──自分のことにもかかわらず、第三者的に共感/同調できる感覚?

ちゃんみな:はい。久しぶりにこんなにいろんな感情を詰め込んだ作品を出すので、すっきりしました。デトックスみたいな感じです、たぶん。

▲『Never Grow Up』初回限定盤

──自分の感情を吐き出すことに、痛みは感じませんか? 色んな思いがすごく出てますよね?

ちゃんみな:いろいろ出てますね、あはは(笑)。

──ちゃんみなの歌はすべて実体験が元ですが、ここまで赤裸々に出さなくちゃいけないんですかね?

ちゃんみな:そこまでしなきゃ気が済まないんですよね、たぶん。

──歌われている人がその曲を聴くと思うと、気持ちがザワザワします。

ちゃんみな:そうですね。でも「これが私の生き方だし」と思って、引かれたら引かれたでいいやって思ってます。

──もしミュージシャンじゃなかったら、その感情はどうしていたんでしょう。

ちゃんみな:うーん…たぶんすごい溜め込んじゃってたかも。すごく楽しくない人生だと思います。感受性が強いので人より色々な感情を受け取ってしまう。なんだろ、占い師とかなってたんじゃないですかね(笑)。

──占ってもらいたいな。すげえ当てそう。

ちゃんみな:すごい闇深い人間になっていたと思います。音楽でしかアウトプットできないので。
──『Never Grow Up』を聴いて、自分の恋バナすらもすぐ歌にしてしまうテイラー・スウィフトの性のようなものがわかったような気がしました。言ってることわかります?

ちゃんみな:わかりますわかります。私も彼女の気持ちすごくわかる。

──様々な楽曲がアルバムにありますが、まだまだ「自分に足りないもの」とか感じたりします?

ちゃんみな:もちろんあります。前作から「こういうのをやりたい」と思ってやっているんですけど、作っているうちに次の目標が出てきてしまうんですよね。そこにどう区切りをつけるか。それで、もう進んじゃってるときに何回も書き直しをしたり、もうちょっとスタイリッシュにしたいなと欲が出てきてしまったり。それに追いつくことは一生ないんだろうとは思うんですけどね。妥協はしませんけど「もっとこういうことしたい」っていうのがすごいスピードで出てきちゃうので、そこをどれだけタイムロスをなくしてできるかが課題だなと思ってます。
──アルバムは13曲、様々な曲調の楽曲が収録されていますが、全体のバランスは考えましたか?

ちゃんみな:「これを本当に落としたい」「この感情を残したい」とか「この感情を伝えたい」と出てきたものなので、バランスとかは考えてなかったです。ほんとに日々を生きながら出てきたメロディと歌詞なんで。

◆インタビュー(2)へ
■ いろいろありますね、生きてると

──それにしても「I'm a Pop」と「SAD SONG」(※初回限定盤、ダウンロード・バンドルに収録のボーナス・トラック)などは、別人かと思うほどに声も歌い方も違いますよね。

ちゃんみな:そうですね(笑)。でもそこは本当に考えたことなくて、感情のままに歌ってるだけなんで「この曲だからこういう歌い方しよう」とかないんです。話し言葉でも「ふざけんなよ!」と「ふ・ざ・け・ん・な・よ」って、感情次第で声のトーンも変わってくるじゃないですか。それだと思います。
──声色が引き出されるのは、やはり歌詞の世界観によって?

ちゃんみな:そうですね。歌詞は書き直した曲もありますし、サッと出てくるものもありました。「Call」は、帰りたくなくて家の近くのバス停のベンチでバーって書いた曲なんですよ。「Never Grow Up」は伝えたいことが多すぎてどういう風に言ったら感情が伝わるだろうって言葉選びに苦戦して、何回も書き直しましたし。「Yesterday」とかはその出来事が起こった帰りの車で書いた曲なんです。

──「Yesterday」も重たい曲で…。

ちゃんみな:確かに重いっちゃ重いですかね。いろいろありますね、生きてると。
──でも歌詞にすることで救われるんですよね?

ちゃんみな:はい。自分と一番向き合えるので。

──やっぱり、表現欲求そのものなんですね。

ちゃんみな:意外と「私ってこういう人間なんだ」って知るのが好きなので、曲を書くことで「私、こういうこと考えてるんだ」「こんなこと思ってたんだな」と改めて知ることができるんです。自分を理解する機会になるので、曲を書いていることで自分のことを客観視できるんです。

──…ということが面白い?

ちゃんみな:面白いです。

──ちゃんみなの友達になったら、自分が曲に登場しそうで怖い。

ちゃんみな:実際、曲になってますしね(笑)。今回、女友達まで曲になってるんで。

──友達の名前も出てきますよね。でも自分だったらちょっと嬉しいかも。

ちゃんみな:そうですね。確かに嬉しいとは言ってました(笑)。そういえば、一緒にいた子に「誰か紹介して」って言われたことがあって、それで「Can U Love Me」を書いたんだけど、それを聴いて「あれ、俺のことだよね?」って連絡が来て「そう」って答えたら「俺のこと好きなの?」とか言われて(笑)。「いや、そういうことじゃないんだけど。紹介してって言われたし、それもあったから曲を書いたんだよね」って言ったら「怖っ、お前」みたいに言われた(笑)。

──ちゃんみなの周りの人は、背筋が伸びていると思う(笑)。

ちゃんみな:そうですよね(笑)。でもいい友達ばっかりですよ。
──「Yesterday」では、自分の感情を表す音を探したけど、そんなコードはなかったって言っていますね。

ちゃんみな:「許したいけど怒らなきゃいけない」っていう初めての感情だったんで、探したんです。鈍く刺さるコードはこのコードだった、っていう歌詞にしたかったんですけど、なかった。あれは、チームメイトが大きなミスをしてしまったときのことを歌っているんです。彼は今まで見たこともない申し訳ない顔をしていたけれど、私は怒らなきゃいけない。この人を許したいけど許すことができない。でもその後にすごい悲しい気持ちになって、それで作った曲なんです。この仕事をしてなかったら、感じられなかった感情かなと思って。

──そのチームメイトは、「Yesterday」が自分のことだと知っているんですか?

ちゃんみな:聴かせました。泣き笑いしてました。

──やっぱ怖い。身を削って作品を作っているようにも見えますが、ストレスはありませんか?

ちゃんみな:全然。「私のリアルを削るからみんな聴いてね」ではなくて、「それが私の音楽」って感じがするんです。すっきりする。それが一番ストレスフリーっていうか…だって、自分の曲なわけですから。

──巻き込まれた人はいい迷惑だけど(笑)。

ちゃんみな:そうですけど(笑)、自己満足みたいな部分もあるので、逆に、「みんな聴いてくださって、共感してくださってありがとうございます」って思います。

◆インタビュー(3)へ
■ 「傷つきたいな」と思っています

──そもそも、『Never Grow Up』というタイトルのアルバムを20歳で出したかったそうですね。

ちゃんみな:そうなんです。ずっと前から、20歳になって1発目のアルバムは『Never Grow Up』って決めてました。

──それはどういう意味ですか?

ちゃんみな:“Never Grow Up”って「成長しない」って意味なんで、ちょっとネガティブな言葉ですけど、「大人にならない」=「Never Grow Up」と、20歳で言える人になりたいってずっと思ってたんです。17〜18歳の時にNever Grow Upって言っても子ども過ぎて説得力がないので、20歳までに経験を積み重ねて「Never Grow Up」って言える人間になりたいと、そこを目標に今まで頑張ってきたところがあるんです。

──なるほど。
ちゃんみな:今20歳で、いろんな経験をしてきたけれど、私には子どもらしい心/純粋な心もまだあると思っていて、汚れてないこの心をずっと大切に「子ども心を忘れずに」っていう意味で付けました。タイトル曲の「Never Grow Up」はどちらかというとネガティブな面を歌にしていますけど。

──と言っても、メッセージソングではない?

ちゃんみな:メッセージという感じではない…ですね。

──やっぱり吐き出されたものなのか。

ちゃんみな:え、それではよくないのかな?(笑) 「聴いてください!」とはならないんです。「世に届け!」とか厚かましくないですか? だって自分の話なんですよ。「聴いて欲しい」とは思うんですけど、押しつけるものでもないですし、なんか「機会があったら聴いてください」みたいな。

──自分のことだから、か。

ちゃんみな:そうですね。自分のこと過ぎるんですよね。
──『Never Grow Up』は、ここ1年くらいのちゃんみなの生活の出来事が詰まっているんですね。

ちゃんみな:そうです。

──であれば、時間軸に並べたプレイリストで聴いてみたいな。ちゃんみなをより深く理解できるかもしれない。

ちゃんみな:あ、なるほど。確かに。時間軸で並べると、1「Doctor」、2「PAIN IS BEAUTY」…、こうなります。


▲ちゃんみな直筆のメモ

──すごい。これがちゃんみなの生き様ですね。

ちゃんみな:スタッフにもいろんな出来事を話しているので、この曲が何のことを歌っているのかわかると思いますよ。「最近こういうことあってさ」っていう話をするんで、それがこうなったわけです(笑)。

──旅行にいったりしたら、またいろんな曲ができそうですね。

ちゃんみな:そうですね。最近は「傷つきたいな」と思っています。怖がりたくないっていうか、いろんな経験をして、いろんな傷を負いたいなって思っています。それで新しい何かが見えたらな。私、人生のマスターになりたくて(笑)。
──『Never Grow Up』、たくさんのひとに聴いてほしいですね。

ちゃんみな:聴いて欲しいです。ちょっと偏見で見られる部分…「この人、金髪でしょ」とか思われがちなんで、「食わず嫌いやめて」って(笑)。触ったことのない人はこれ聴いてもらえたら嬉しいな。この作品は「2019年の私」で、それ以上でもそれ以下でもないです。

──リアルで生々しいんですね。

ちゃんみな:3作目だからできたのかもしれないですね。1〜2作目は「私をもっと知って」っていうのが先に出てたんですけど、今回はもっと奥の自分を歌にできたので、だからすっきりしたんだとも思います。

▲『Never Grow Up』通常盤

──濃密な20歳を過ごしていますが、2020年も楽しみにしています。

ちゃんみな:よりグローバルになって、韓国でも活動したいと思っています。ヒップホップだけのミックステープみたいなものも出したいし、他のアーティストと一緒に演るのもいいし、やりたいことがたくさんあります。本当にゴリゴリで今しかできないものをやりたいなと思っています。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也
撮影◎西槇太一

  ◆  ◆  ◆

■2nd Full Album『Never Grow Up』

2019年8月7日(水)発売
CD予約URL:https://chanmina.lnk.to/NeverGrowUpPu

・初回限定盤:WPZL-31633~4 / 4,200円+税
・通常盤:WPCL-13069 / 3,000円+税

初回限定盤 <CD+DVD>(品番:WPZL-31633~4)
<CD>
01. Call
02. I’m a Pop
03. PAIN IS BEAUTY
04. Never Grow Up
05. Yesterday
06. 君が勝った
07. My Own Lane
08. GIRLS
09. Can U Love Me
10. Like This
11. Doctor
12. CAFE
13. アーカイブに保存した曲
14. SAD SONG ※Bonus track

<DVD>THE PRINCESS PROJECT 3 @ Zepp Tokyo 2019.03.29
01. I’m a Pop
02. MY NAME
03. CHOCOLATE
04. Doctor
05. Never
06. WHO ARE YOU
07. Sober
08. OVER

通常盤 <CD>(品番:WPCL-13069)
01. Call
02. I’m a Pop
03. PAIN IS BEAUTY
04. Never Grow Up
05. Yesterday
06. 君が勝った
07. My Own Lane
08. GIRLS
09. Can U Love Me
10. Like This
11. Doctor
12. CAFE
13. アーカイブに保存した曲

■「GALLERIE TOKYO」 Special Pop Up Shop

・期間:2019年8月3日(土)~8月11日(日) OPEN 13:00 / CLOSE 21:00
・住所:〒150-0002東京都渋谷区渋谷1-23-25
※商品に関するお問い合わせ:GALLERIE TOKYO TEL:03-6434-9770 mail:customer_center@galleriebyspinns.com

■ちゃんみな<PRINCESS PROJECT 4>

2019/11/14(木) NHK大阪ホール
開場18:30 / 開演19:00
Info:キョードーインフォメーション 0570-200-888

2019/11/22(金) LINE CUBE SHIBUYA(旧・渋⾕公会堂)
開場18:30 / 開演19:00
Info:CREATIVEMAN PRODUCTION 03-3499-6669

チケット代:全席指定 ¥5,800(税込)
オフィシャルHP 1次先行受付:7/1 (月) 12:00 (抽選)

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