多くのスーパーギタリストに愛された
超弩級ギタリスト、
ロイ・ブキャナンの代表作
『ライヴ・ストック』
ロイ・ブキャナンのギター奏法
ロイのギターワークは、60〜70年代は基本的にフェンダー系(特にテレキャスター)の乾いた音を中心に、チューブアンプの歪みから生じるサステインで組み立てられている。彼が目指したのはアメリカのルーツ音楽をギターで表現することだ。ブルースを弾く時には、アルバート・コリンズのような切れ味鋭いシャープさと、ティーボーン・ウォーカーのジャジーさを併せ持っている。また、カントリーを弾く時には、ペダルスティールギターのサウンドをギターで再現するために、複数弦を同時にチョーキングする複雑なベンディングを駆使している。彼のギターはジミー・ブライアントやロイ・ニコルズ(カントリーシンガー、マール・ハガードのバックギタリスト)に大きな影響を受けているものの、先人たちには見られないキレの良いシャープさとワイルドさを持っていた。彼の特筆すべき最大の独創性は、ペダルスティールのフレーズを再現しようと試行錯誤したことだろう。そして、その試みによってロックギターの可能性が大いに拓けたことは間違いない。
あと、ピッキングハーモニクス(ピックと指を同時に弦に当てる奏法で、ザ・バンドのロビー・ロバートソンが得意とするプレイ)の多用もロイの大きな特徴のひとつである。ちなみに、ロバートソンはホークス時代にロイから直接ギターを学んでおり、彼もまたピッキングハーモニクスが非常に上手い。
ロイに影響を受けた
現代のスーパーギタリスト
ロイと同じで、ギターが主のためにあまり一般には知られていないが、テレキャスターを主に使用する現代のスーパーギタリストたちは、ほとんどロイの影響下にあると言ってもいいだろう。マッドエイカーズのメンバーとして来日したこともある複数弦ベンディング巧者のアーレン・ロス、後期ザ・バンドのメンバーでピッキングハーモニクスを得意とするジム・ワイダー、カントリー系スタジオミュージシャンでオールラウンドプレーヤーのブレント・メイソン、超絶プレイで知られるヘルキャスターズの3人(ジョン・ジョーゲンゾン、ウィル・レイ、ジェリー・ドナヒュー)、ロイ直属のガッツあるプレイと超絶スライドが武器のダニー・ガットン、どちらもいかつい風貌ながら繊細なクロマティック奏法を華麗に決めるレッド・ヴォルカートとジョニー・ハイランドら、彼らは自分の“売り”をしっかり持っている。
もちろん、ジェフ・ベックやスティーブ・ハウら、60〜70年代のスーパーギタリストたちもロイのテクニックをしっかり学んでいる。ジェフ・ベックが得意とするトーン&ボリュームコントロールの奏法は、ロイから学び努力して身に付けたものだし、ハウのカントリー的な早弾き(ソロアルバムで聴ける)や、ゲイリー・ムーアのエモーショナルなプレイはバラード曲でのロイを彷彿させる。クラプトンにおいては、ロイのアルバムをブートレグに至るまでコレクションしていると言われているのだが、演奏自体についてはロビー・ロバートソンからの間接的な影響は見られるものの直接の影響はあまり感じられない。ロイの奏法が難しくて練習しても身に付かなかったのか、それともロイのコレクションが単なる趣味だったのか、よく分からない。