松岡禎丞と逢坂良太が語る「ダンまち
ll」の共感ポイントと、アポロンのギ
ャップ演技裏話

(c) 大森藤ノ・SB クリエイティブ/ダンまち2製作委員会 2015年放送の本編1期、17年放送の外伝、そして今年2月の劇場版を経て、待望の本編第2期となる「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかll」(「ダンまちll」)。放送中の本作について、ベル・クラネル役の松岡禎丞と、第1話で印象的な登場をはたしたアポロン役の逢坂良太に、演技のポイントやアフレコでのエピソードついて語ってもらった。
――第1期から主人公・ベル役を演じている松岡さんから見て、「ダンまち」シリーズの魅力はどんなところにあると思われますか。
松岡:普遍的なところでしょうか。「ダンまち」シリーズは、ベル君が英雄を目指す物語なんです。人間なら、誰しも英雄のような存在に憧れをもつ瞬間があるはずで、そんなところが視聴者の方にも刺さるのかなと感じています。
ベル君は道の半ばで悔しい思いや挫折もしますが、それでも一歩ずつ前に進んでいきます。その成長していく感じも、共感をもって見てもらえているんじゃないかと。「ここでやらなきゃ男じゃない」というところでは、ちゃんと期待に応えてくれる主人公ですし、王道のストーリーですので、細かいことは考えずに頭を空っぽにして楽しめる作品だとも思います。
――逢坂さんは、第2期からアポロン役で参加されています。役が決まった際にどのようなことを考えられましたか。
逢坂:どういう役だというのは決定するまでわからないまま、「アポロンになりました」という報告がきて、その場でネットを使って調べてみたんですよ。そうしたら、ああいうちょっと変わった性格で……(笑)。
――逢坂さんが演じる役というと、まっすぐな性根をもつキャラクターがまず思い浮かぶのですが、ご自身と今回の役柄とのマッチングはいかがでしたか。
逢坂:実は2年ぐらい前からアポロンのようなクセのある役を少しずつ振っていただけるようになったんですよ。とはいえ、それが自分のなかにまったくないものかと言われると、それはちょっと違っていて、結局自分のなかに欠片(かけら)でもあるものだからこそ表現できるのかなと思っていて……。ですから、僕のなかにも、アポロンのような部分が心のどこかにはあるのかもしれません(笑)。
(c) 大森藤ノ・SB クリエイティブ/ダンまち2製作委員会――では、それほど戸惑いもなくキャラクターを受け入れられた?
逢坂:そうですね。この作品の登場人物のなかでも、かなり突出しているキャラではあるので、逆に変に考えずに演じられたのかなと。普通の作品だと、アポロンってすごくかっこよかったり、熱いキャラクターに仕上がっていたりするのですが、この作品においてはもう全然違うんですよね。いろんな意味で“バイ”プレーヤーですし。だからもう、僕のイメージするアポロンを降ろしてきて演じたという感じでした。アフレコでも演技方針について細かい指示はなかったので、自分がもってきたものを、そのまま本番で出せたように思います。
――アポロンは原作のイメージと比べて、よりエキセントリックなキャラクターになっている印象がありました。
逢坂:キャラクターの表情集や立ち絵は先にいただいていたんですが、そのなかに、ちょっと「にへらっ」と笑っている顔があったんです。原作を読むと、誰もいないときにああいう顔をしているのですが、まさか第1話のヘスティアと話している段階から、ずっとあの顔になっているとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしました。(笑)
――演じるうえで、どんな工夫をされたのでしょう。
逢坂:気をつけたのはギャップですね。アポロンは気持ち悪いと思われるのがいちばんいいと思ったので、最初にでてきたときは真面目な演技で真面目な話をする。で、崩すときは、あの顔で一気に切り替える、ということを意識しました。真面目なときと崩すときでは、別人格を演じているようなイメージです。
――松岡さんは、逢坂さんの演技をご覧になっていかがでしたか。
松岡:いやあ、良太のああいう演技って、あまり見たことがなかったので……新鮮の境地ですね(笑)。スタジオでは、みんなテストのとき笑ってました。今までだと逆のほうが多かったんですよね。
逢坂:(うなづいて)そうそう。
松岡:これまでは良太が真っ直ぐな役をやって、すごく変なキャラクターを自分がやることが多かったんです。
逢坂:僕のまっすぐな役しか見たことがなくて、かつ一緒になったことがあまりない方……たとえば戸松(遥)さんなんかは、びっくりされてましたね。
――松岡さんが演じるベルについて、シリーズを重ねるなかで演技に変化はありましたか。
松岡:変化という変化はそんなにないんですよね。第1期と第2期は、期間としては空いていますけど、その間にアプリゲーム(※「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~」)の収録もしていましたから。
――ゲームといえば、ギネス記録おめでとうございます(編注:松岡氏は本ゲームにおいて「ひとりの声優によりモバイルゲームに提供されたセリフの最多数」という内容でギネス世界記録に認定された)。
松岡:ありがとうございます(笑)。ただ、ゲームはひとりで録っていくものなので、どちらかというと時系列の中間にあたる「オリオンの矢(劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ―オリオンの矢―)」をやったのが大きかったですね。あれがあってからの第2期でしたので。
「オリオンの矢」のときに3年ぶりにキャストのみんなが集まって演じたんですけど、久しぶりすぎて第1期と同じようにできるのかちょっと怖かったんですよね。でも、テストがはじまってみたら「ああ、いつもの『ダンまち』だ。全然問題なかった」と不安が杞憂に終わりました。第2期がはじまる前に「オリオンの矢」ができて、とてもよかったです。
(c) 大森藤ノ・SB クリエイティブ/ダンまち2製作委員会――「オリオンの矢」で、いつもの感じでできる確信を得られたうえでの第2期だったのですね。
松岡:「オリオンの矢」をやっていなかったら、「ダンまちll」第1話のときに、不安を残したまま現場に行っていたと思います。なので、気持ちとしては第1期のときからずっとつながっているのですが、それでもあえて変化を挙げるとすれば、ベル君が精神的にも肉体的にも強くなったところでしょうか。やっぱり経験をものすごく積みましたから。
――悔しい思いもたくさんしてきていますよね。
松岡:そうなんです。「オリオンの矢」のときに、とても印象的だった一言があって、それは「神様、僕強くなりたいです」というセリフでした。そもそもベル君は、第1期の第1話でもまったく同じことを言っているんですよ。アイズさんに認められたいっていうのもありましたけど、ただがむしゃらだった。でも映画のなかで、彼は絶対に守りたい人を守れなかった。だからこその「神様、僕強くなりたいです」という言葉だったんですよ。それは、同じ言葉でも意味あいが違っていて、「強くなるってなんだろう、英雄ってなんだろう」と、そういうことを彼は考えるようになった。あそこでものすごく意識が変わったと思うんです。
――もともとは英雄という言葉に憧れていただけだったけど、今はその重みを実感していると。
松岡:ええ。だからこそ、これから苦悩していくのでしょうけどね。第2期はその最たるものかもしれません。今までのように一直線に進めばいいだけではなくて、考えて道を選んでいくような。ヘスティア・ファミリアのこともありますし、自分のためじゃなくて、他の人のためにも何かをなしていかないといけないんです。それは、どういうことなのかをベル自身が深く考えていくといいますか……。第2期は、第1期以上に彼が大人になっていく過程を見せていく物語になっていると思います。
――逢坂さんは、第2期から参加していかがですか。
逢坂:いろんな現場で会っている方々が多かったので、特に緊張してということはなかったですね。キャラクターが真面目だったら違ったかもしれませんけど、とりあえず自分のもってきたものをバンっと出して、それで笑ってくれたらもう……仲間だよね! って(笑)。そこでドン滑っていたら死にそうな顔をして毎週現場にきていたかもしれません。
――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか。
逢坂:皆さん、とても仲がいいなと思います。現場によってはグループで固まる場合もあるのですが、この現場は本当に分け隔てなくいろんな人と話していて。それこそ僕が黙っていても話しかけたりくださったりするんで、すごくやりやすいですよね。愛のあるいじりもけっこうあるんですけど(笑)。

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