石井凌(左)と唐橋充

石井凌(左)と唐橋充

【インタビュー】舞台「スタンレーの
魔女」石井凌&唐橋充「この作品で伝
えたいことは、笑っていた人たちが急
にいなくなるという切なさ」

 舞台「スタンレーの魔女」が7月28日から上演される。本作は、『銀河鉄道999』など数々のヒット作を生み出してきた松本零士による「ザ・コクピットシリーズ」に収録されている短編漫画を原作とした舞台で、2006年に初めて舞台化。その後、今回の脚本・演出を担当する御笠ノ忠次のユニット「サバダミカンダ」の旗揚げ公演でも上演されており、今回で3回目の上演となる。主人公の敷居を演じる石井凌と出戻役の唐橋充に、作品への思いを聞いた。
―本作への出演が決まったお気持ちは?
石井 僕はオーディションで出演が決まったのですが、最初は全く実感がありませんでした。でも、情報が解禁されて、ビジュアル撮影をして…少しずつ実感が湧きました。
―プレッシャーはありましたか。
石井 むしろ、プレッシャーしかないです。今まで主演を経験したことがなかったので、どうしたらいいのか全く分からなかったです。
唐橋 私は、御笠ノさんとずっとご一緒しさせていただきたかったので、それがまずうれしかったです。それから、制作の方から「2.5次元舞台に出演しているおじさんたちを集めたら、また新しいものが生まれるのでは」というような企画意図のひとつをお聞きして、これはぜひとも成功させなくてはと思いました。今、2.5次元舞台は演劇の中で一番元気のあるジャンルです。それはとてもいいことで、元気のあるところにはお客さまも集まりますが、けれど演劇界にはほかにもたくさんの面白いものが転がっているものですから、ぜひ今作のような舞台にも多くの方に触れて頂きたい。演劇の幅を知る喜びをおすそ分けできたらうれしいのです。
―脚本を読まれて、お稽古に入って御笠ノさんの演出を受けて、今、この作品のどんなところに魅力を感じていますか。
唐橋 原作は読んだ?
石井 読みました。戦争っぽくない漫画だなと思いました。台本は原作を忠実に描いていますが、台本を読んでまず僕が感じたのは、主人公の敷居は飛行機がとても好きな人物なんだな、ということです。多分、どの時代に生まれていても飛行機乗りになっていたのかもしれないと感じました。(本作の)時代背景が戦時中というだけで、実際にはただの飛行機が好きな少年の話だと思います。なので、戦争の話ではありますが、暗い話という印象は持たなかったですし、台本でもふざけているシーンが意外にも多いんです。
唐橋 現存している当時の写真を私が見る限り、兵士たちが笑っている写真も少なくないんですね。それはある意味、当たり前のことで、同世代の若者が集まったら、くだらない話をして笑っていなかったわけがない。そこが死と隣り合わせの場所であっても。松本零士先生は、そんな当時のリアルな時代背景をきちんと描いていらした。今作は、原作のコマとコマの間を描いたというよりも、世界観をしっかり引き継いだ御笠ノさんが書いた物語の中に、原作のコマが丁寧に降ってくる、といったような感覚を私は得ています。御笠ノさんは稽古初日に「この作品で伝えたいことは、あんなに楽しそうに笑っていた人たちが、急にいなくなってしまうという切なさ」とおっしゃっていました。
―ご自身の役については、今現在、どのように掘り下げていますか。
唐橋 原作の出戻注意とはかけ離れるポイントがあっても、この世界観で、このキャストたちの中で、どのポジションを任されているのかということに重点を置いています。
石井 敷居は、周りから愛されている人物だと思います。そうなるためには、どうすればいいか考えていた時に、御笠ノさんから「自分が愛されようとすると愛されない。自分が愛されるためには、周りのキャラクターを愛することだ。そうすれば、おのずと敷居は愛されるキャラクターになる」と言われました。そのお話をお聞きしてからは、余計なことを考えずに、とにかく舞台上に出ている人たちのことを愛していこうと、それだけを考えて演じています。そうすることで役ができあがって来るんだと思います。
―お互いに役者としてどんな印象を持っていますか。
唐橋 石井さんはまだ25歳なのに、シーンのダメ出しを「はい」って言って聞けるのがすごい才能だと思います。役者にはこだわりも大事ですし、若い時にはそれがたとえ勘違いに近いものでも「これだ」という手応えを信じていかなければ続けていけないものなんですが、石井さんはまず、言われた通りにやってみる。これができるのは本当に勇気がいることで、とっても感心しています。
石井 僕は、唐橋さんは天才だなと思っています。頭が良くて、柔軟で、この人の思考はどうなっているんだろうって常に思っています。今回の稽古を通して、唐橋さんのお芝居からたくさんのことを学んでいきたいと思っています。
―改めて本作の見どころを教えてください。
唐橋 日本人にとって、戦争とは敬遠すべきものであり、同時に知っておかなければいけない歴史の一つだと多くの人が考えていらっしゃると思います。その中で今作は、演劇として当時を美しく、生き生きと描いています。戦争ものとしては、僕はこういった人間模様を描いた作品というのは初めて出会いました。最高の作品です。
石井 戦争ものには暗いイメージがあると思いますが、この作品は登場人物の生き様や当時の生活をしっかりと描いています。戦争ものなので、最終的には悲劇ではあるのですが、決して暗い作品ではありません。「戦争だから」という先入観を持たずに来て欲しいと思います。
 舞台「スタンレーの魔女」は、7月28日~8月8日にDDD青山クロスシアターで上演。
(取材・写真・文/嶋田真己)
チケット詳細 https://l-tike.com/stanley-s/

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