7月7日@中野サンプラザホール/SUGIZO

7月7日@中野サンプラザホール/SUGIZO

『SUGIZO 聖誕半世紀祭』が終幕。
GLAY、清春、sukekiyoらが祝福

7月8日@中野サンプラザホール/SUGIZO

7月8日@中野サンプラザホール/SUGIZO

SUGIZOの誕生日当日となる7月8日(月)は、モジュラーシンセサイザー奏者の第一人者であるHATAKENとSUGIZOのデュオがオープニングアクトを務めた。開場BGMを奏でていたHATAKENの温めたステージに、SUGIZOが合流してセッションはスタート。生命の神秘を思わせる映像と連動し、HATAKENのシンセが繰り出す宇宙的な音色と、SUGIZOの宇宙的ギター、リボンコントローラーで操作するモジュラーシンセの音色とが、まるで交信し合うように掛け合う。会場は瞬時にアンビエントな異空間へと塗り替えられ、観客は息を呑んで立ち尽くした。

BGMでなだらかに繋げられ、1バンド目のTK from 凛として時雨が登場。細かく鋭利なカッティングを筆頭に、超絶技巧ギタープレイをまるで息をするように自在に繰り出しながら、感情迸るハイトーンで歌唱する孤高の異才TK。ドラムのBOBOら抜群のリズム感を誇るサポートメンバーらと共に、イメージ喚起力に富んだ映像と照明を駆使しつつ、1曲目の「Fantastic Magic」から、緩急のついた小気味よい歌と演奏で、驚きを与え続けていく。TKは、“SUGIZOさん50歳の誕生日おめでとうございます。今日は少年の頃の僕には夢のようなイベントです”とMCで語り、兼ねてからリスペクトを公言してきたSUGIZOへの敬愛を示した。

「katharsis」は4つ打ちのダンスビートに始まり、予想不能のめくるめく展開を見せるドラマチックな楽曲。美しいメロディーをウルトラハイトーンで切々と歌う「Signal」では、ギターソロの伸び渡る音づくりに、SUGIZOの美学の影響を感じ取れた。ヴァイオリン、ピアノ、それぞれのプレイが生き物のようにうごめきながら怒涛の展開を見せていく「film A moment」で締め括ると、会場は熱を帯びた歓声と大拍手に包まれた。圧倒し、純粋な音楽的快感を味わわせてくれる刺激的なステージだった。

続いて、SUGIZOとは25年来の付き合いであるGLAYのTAKUROが、ソロ名義でJourney without a map BANDを従えて登場。GLAYとは全く異なるジャジーな音楽性に挑戦中で(それはSUGIZOがTAKUROにジャズをリコメンドした影響でもあるのだが)、音と音との対話をゆったりと味わうような、心地よい空間をこの日も冒頭から生み出していた。TAKUROはSUGIZOに捧げる曲を書いて来たと言い、“スギちゃん、生きてなさい”“SUGIZOのハワイ旅行”などと名付けた楽曲を披露。自分のことは後回しで世界平和や社会問題に心を傾ける先輩に、ユーモア満載の音楽で愛を贈った。

“なんだかんだ言って、僕が一番のSUGIZOさんファンですよ!”との言葉からSUGIZOを招き入れると、まずはハグ。“僕が一番大事にしている曲を一緒に”と「Journey without a map」をセッションした。哀切を帯びたブルージーなロックナンバーで、TAKUROが音楽人生について問い直した自叙的楽曲。SUGIZOの全身全霊のギターソロに、TAKUROはそっと寄り添うようなフレーズを重ね、TOSHI NAGAIのドラムが高まりを見せていくと、“もっとお祝いしたいって人がいるので”と呼び込んだのは、TERU、さらには事前告知されていなかったHISASHI、JIRO。会場は沸き立ち、TERUは“50歳おめでとうございます!”と朗らかに祝い、GLAYの「誘惑」を大所帯で賑やかにセッション。HISASHIギターソロの直前に“カモーン、SUGIZO!”とTERUにコールされ、ギュインと唸るSUGIZO印のサウンドを響かせた。

“ハッピーバースデー、SUGIZO!”とTERUが再度叫びステージから送り出すと、GLAYメンバーはそのまま残って「彼女の“Modern…“」を披露し、4人は前列へ。「誘惑」の際には後方で守りを担っていたJIROも、飛び跳ねながら全身でこの場を楽しんでいる様子。GLAYというバンドの温かい人柄が隅々から伝わってくるような、一連のパフォーマンスだった。

青いスクリーンに白い翼が浮かび上がり、レーザーと紫のスモークが立ち上る中、SUGIZO COSMIC DANCE QUINTETのアクトがいよいよスタート。右手を挙げてバルカンポーズを取ると、オーディエンスはそれに応える。“改めましてSUGIZOです。皆今日はありがとう”と挨拶、出演者への謝辞に続き、“飛ばして行ける? 誕生日だろうが関係ない。アゲアゲで、皆さんついて来られますか?”と挑発し、咆哮するようにギターを一弾き。右手を挙げて振り下ろすと、真っ白な光に切り替わり、「禊」がスタート。“SUGIZO 聖誕半世祭”とのタイトルが大きくスクリーンに出現すると、会場からはどよめきが起こった。まるでキレ味の鋭い刀を振り下ろすような、気迫と殺気に満ちたギターサウンド。よしうらけんじ(Per)が前へ転がり出るようにやってきて、ジャンベをプレイ。SUGIZOはギターを掻きむしり、向き合って髪を振り乱す。「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA」の乱れ弾くギターソロ、「NEO COSMOSCAPE」でよしうらと入れ替わり強打したパワフルなパーカッション、SUGIZOはいついかなる瞬間も全霊を掛けて音を鳴らしていた。言葉通りアゲアゲを実現するため、MaZDA(mani)、komaki(Dr)もハンドクラップを先導するなど、果敢に煽っていたのも印象的。

「FATIMA」では、SUGIZOはゆったりと身を揺らしながら艶やかなヴァイオリンの音色を響かせ、海中で身をくねらせる人魚のようなダンサーの映像も相まって、幻想的な世界へ。VJ ZAKROCKが手掛ける映像、ステージと客席の境を超えて大胆に放たれるレーザー、照明の絡み合う視覚効果はすさまじく、3Dアートの一部に自分がなったような空間没入感があった。

通常SUGIZOのソロライヴはノンストップでMCもほぼないのだが、“こんな宇宙的な雰囲気の中から、突然フレンドリーに変えようと思います”(SUGIZO)と言葉を挟むと、TERUとTAKUROを呼び込み。披露したのは、SUGIZOのアルバム『ONENESS M』に収められ、TERUがヴォーカルを務めた「巡り逢えるなら」で、ライヴでは初披露となる。

制作時にTERUは、“この曲をTERUの歌で救ってあげてほしい”とSUGIZOに言われたことが印象深かったと語り、“CDとか音源では聞こえない歌を、この場でしか聴けない歌を歌いたい”と意気込んだ。元々はSUGIZOが絶望の淵にあった時期、光を求めて生み出したという由来のある曲。TAKUROとSUGIZOの補い合うようなギターに支えられながら、その名のごとく太陽のような照射力を持つTERUが真っ直ぐに歌うことで、その説得力が増していた。SUGIZOの、一陣の風のようなコーラスも軽やかさを与え、またとない3者共演に大拍手が送られた。感動の余韻がこの後笑いで打ち消されたのも、兄弟のような彼らの親しい関係性ならでは。

TAKUROは、忙しくて初詣も行けないであろうSUGIZOのためにおみくじを勝手に引いてきたそうで、“吉”“恋愛:ちょっと待ちなさい”などと読み上げてファンを沸かせていた。GLAYは今年25周年を迎えており、TERUは“いつもGLAYが大変な時に助けてくれるんですよ。そして必ず光をくれて…。それを追ってここまで来ました”とSUGIZOに感謝を述べた。

再びライヴを元の流れへと戻し、「Decaying」では無彩色の世界へ。SUGIZOはギターを激しく掻きむしり、音の洪水に飲み込まれていく。よしうらがチェーンの塊を思い切り何度も振り下ろして叩きつけると、鋭い金属音が響く。スモークが立ち込める中SUGIZOはメンバーのほうを向き、両腕を大きく動かし、やがて止め、指揮者のように轟音をコントロール。恍惚の中、「DO-FUNK DANCE」へ。サイケデリックな極彩色のレーザー、照明に加え客席天井の高い位置からミラーボールが輝き、会場は魅惑の巨大ダンスホールに豹変。歯切れのよいカッティング、シンセ的なエフェクティヴな音色、エンジン音のような、あるいはモンスターの咆哮のような…と多用に形容可能なSUGIZOのギターを浴びるように体感。すべての音は全身全霊で鳴らされていた。エレクトロニックな音楽だが、仁王立ちした脚からエネルギーを吸い上げ、身体を通じてギターへ、指先へと伝って放たれていくような、自然の生命力をも感じた。

アンコールは、ファンの手拍子と“ハッピーバースデー”の歌声に招き入れられる形でスタート。スマートフォンのライトを見てSUGIZOは“皆本当に美しいよ。本当にありがとう”と客席をじっと見つめた。誕生日にライヴをするのは初めてで、これまでは恥ずかしいと感じていたこと、祝われる資格がないと思っていたことなどを吐露。“半世紀なので”と踏み切ったそうで、“ここまで続けてきて、本当に幸せを感じています”とも。“世界に想いを馳せつつ…”との話の途中で、「ハッピーバースデー」を歌いながらケーキを乗せたワゴンを清春が押し、その後ろにTERU、TAKURO、HISASHI、TKが続いてカットイン。観客の興奮と歓喜は最高潮へ。

フラワーオブライフのモチーフを描いた黒い円形巨大ケーキを前に、記念撮影。SUGIZOは、途中で遮られた大事な話に戻り、“今でも被災地で、仮設住宅で暮らしている人もいる。でも、誰もが幸せを享受してもいいんだよ、と最後に言いたかった”と言葉を補った。TAKUROの音頭でSUGIZOは蝋燭を吹き消した。

清春が残り、続いては「VOICE」をセッション。SUGIZOが“黒夢とGLAYは25年ぐらいですよね?”と尋ねると、清春は“一緒”と頷き、SUGIZOが“ロフトに黒夢を観に行って、GLAYは鹿鳴館で…”と振り返ると、“LUNA SEAはその頃何やってたの?”と清春。“『ROSIER』のレコーディングしてたぐらい”とSUGIZOは答え、“そんな中こうやって25年も長い付き合いができてとっても光栄に思っています。この曲をやらないわけにはいきません”とやはり『ONENESS M』で清春が歌い、MVにも出演した名曲だ。清春は気怠い色気をまといながら、やがて、激しくギターを掻き鳴らすSUGIZOと向き合って歌う場面では肩を抱いた。グラマラスな妖気漂う2人は、共に誰にも似ていないオリジナルであり続けている孤高の存在。通じ合うのも納得である。

最後には、「The Voyage Home」を、ピアニストのMAIKOを迎え、再びHATAKENも招き入れて届けた。SUGIZOは、地球プリントを表に、裏にはシリア難民の子どもたちの笑顔をモノクロでプリントした衣装“ガイア”をまとってヴァイオリン演奏を披露する。SUGIZOが“fanicon”を通じ、この曲ではスマートフォンのライトを灯してほしいと呼び掛けたのにファンが応じ、白い光が揺れめく暗闇に、この曲は祈りそのもののように美しく響いた。“すごく綺麗だった。世界平和の灯のように感じられて…”とSUGIZO、“これからもどうぞよろしくお願いします。ありがとうございます”と結んだ。

半世紀を迎えて初めて行われた誕生日イベントは、豪華出演者たちが集い、それぞれとの関係性には長い時の流れが背後にあり、心を打つものだった。また、単なるお祝いムードだけで終わることなく、SUGIZOの精神性が隅々まで浸透したSUGIZOらしいものでもあった。これからも更なる高みを目指し、音楽と真摯に向き合うのはもちろん、疎外され弱い立場に追いやられたすべての人々に想いを寄せていくに違いない。

Text by 大前多恵

OKMusic編集部

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