ロックバンド界の新星・cOups.とは何
者か――進化系オルタナの原泉を探る

プリミティブなロックバンドのエネルギーを信じる力と、オリジナルな進化を求める飽くなき姿勢の凄まじいケミストリー。cOups.のセカンドミニアルバム『GAL』は、時代の一歩前に出んとする気概を痛烈に感じさせてくれる、大器の船出と言って間違いない作品だ。

メインストリームにおける影響力が薄れたロック。その状況を巻き返すだけの創造性や、オルタナティブな音楽としてのエッジを失ったという声もちらほら聞こえる昨今だが、本作にはそういった論調に対する迷いも不安も逃げもない。基本的に一発録りでレコーディングをおこなったことによる生々しいライブ感や、人力ならではの衝動性を大切にしながら、綿密にこだわり抜いたサウンドや曲展開のデザイン力には、主流に取って代わるカウンターとしての可能性が充満している。そして、その可能性は本当に爆発するのか。大きな期待感を以て、メンバーを直撃した。
――まずは、cOups.が結成された経緯を教えてもらえますか?
Mayuco(Dr):Joe(Gt)くんが入る前の、当時のギターと私が一緒にバンドを組もうってなって、Twitterでベースを探して見つかったKosukeが、ボーカルのSeanを紹介してくれたんです。
――SeanさんとKosukeさんはもともと知り合いだったんですね。
Kosuke:いえ、知り合いの知り合いです(笑)。みんながスタジオで「初めまして」って感じで挨拶して始まりました。
――初ライブが2018年の5月。結成した時期はその少し前ですか?
Mayuco:結成した時期が、Seanの大学受験と重なってたんで、春に合格してから詰め詰めでやっての初ライブでした。でも、入った大学を3カ月で辞めるっていう。けっこう良いところだったのにね(笑)。
Sean:もっとバンドを頑張りたくて。
――みなさんの、cOups.以前のバンド遍歴や聴いてきた音楽についても、聞かせていただけますか?
Kosuke:僕は千葉県の柏市出身で、よく出入りしていた地元のライブハウスには、パンクとか、熱量があって着飾らない感じのバンドがたくさんいて、その雰囲気が好きで自分もパンクをやってました。ザ・ビートモータースとか、すごく好きですね。あとはJ-POP、AKB48もめちゃくちゃ好きでした。「ポニーテールとシュシュ」が出たときとか特に。青春ですね。
Joe:親父がロック好きで、中学2年生のときに地元の青森から札幌まで出て、エアロスミスを観に行ったのが初めてのライブでした。その頃は、ハードロックやブルーズロック、サザンロックとかが好きで。そこから自分でもバンドをやるようになるんですけど、周りの同世代はポップパンクとかは多かったなかで、ガレージやロックンロールをやってました。
cOups.・Sean 撮影=風間大洋
Mayuco:私は小学校6年生で前のバンドを結成して、先生に趣味でいろいろ教えてもらってたんです。その頃に、レッド・ツェッペリンやディープ・パープル、ブラック・サバスといった60年代~70年代のロックをまとめたCDをもらって、その辺りをよく聴きていました。そこから高校に入ってドラムを習いに行ったときに、コーンを勧められて好きになったんです。ドラムのレイ・ルジアーの動画とかよく観てました。それがきっかけで、90年代以降のヘヴィーなロック――レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか、あとはスーサイダル・テンデンシーズのようなハードコア系とか、特定のジャンルやシーンを深く掘ってはないんですけど、広く浅くいろいろ聴いてました。
Sean:僕は、もともと”これがルーツ”みたいなのはなくて、なんとなくいろんな音楽を聴いていた感じ。で、高校に入って仲間とバンドを組んで、曲を作るようになってライブして、みたいな。それがすごく楽しかったんです。でも、大学を受験することにして、部屋で勉強してるときに音楽を流してると、聴く量はおのずと増えるじゃないですか。そこで自分が本当に好きなものについて、考えるようになったんです。その頃に出会ってハッとしたのが、ナッシング・バット・シーヴスやThe 1975。だから、今cOups.でやっているような音楽を掘り下げようと思ったのは、最近ですね。
――結成した当初から、やりたい音楽性ははっきりしてたんですか?
Mayuco:いえ。Seanが作ってくる曲がすごくよかったから、それをやろうって。
――Seanさんは、ご自身の好む色が、はっきりと見えてきたばかりだったんですよね?
Sean:そうですね。作曲は最初にバンドを結成した高校1年の頃からやってましたけど。だから、今は本当に手探り状態です。
Mayuco:基本的には、Seanがほぼ完成形のデモを持ってきてくれるんで、そこからいろいろ話し合ってアレンジしています。
cOups.・Joe 撮影=風間大洋
――そして2019年に入って、初のEP『Demon』のリリースを経て今回の『GAL』に至ります。リリースベースで言うと、わずか数カ月の間に、曲展開のアイデアや音のデザインが、飛躍的に面白くなっていると感じました。
Mayuco:Seanの作る曲が、どんどん更新されていってバリエーションも増えている感触はあります。だから少し前と比べても、今はまったく違ったアイデアが出せるんです。
Kosuke:前はもっとごちゃごちゃしていたというか、Seanが作ってきた曲を何も考えずに思い切ってやろう、みたいな空気でした。それが今はいい感じに洗練されてきて、曲自体にそれぞれのこだわりが落とし込むことが、どんどん楽しくなってきてるんです。1曲1曲とどう向き合って育てていくか、みんなで話すことも増えましたね。
Joe:僕は『Demon』に入っている曲を作っていた頃は、まだcOups.の客でした。そこ頃の印象としては、最近のUKのロックっぽさもありつつ、土臭さもあってカッコいいなって。そこからメンバーになって、一緒に今作を作ることになるんですけど、想像していた以上にいろんな曲があって、ジャンルもバラバラで、すごく刺激的でした。この先も、シーンにないようなものを提示し続けていけるような、多様性のあるバンドになれる可能性を感じて。だから今、すごく楽しいです。
Sean:確かに、すごくいい感じになってきてると思います。それは、メンバーのアレンジに関するアイデアがよくなってきたおかげだと思いますけど、その要因として、僕の作曲スキルが多少なりとも上がったことも、あるのかもしれません。とにかくがむしゃらに数を作ってたんで。でも、でもそうやって必死に書いてた曲は、今作には1曲も入ってないんですけどね(笑)。
――そうやってスキルを上げたことがあってから、あらためて作った曲なんですか?
Sean:そうと言えばそうなんですけど、実際はめちゃくちゃ焦って作ってました。まあ、結局どれだけ普段からやってても、切羽詰まってるときにいいものが出ることが多いんで、そんなもんなのかもしれないですけど。「Blow My Mind」は特にそう。レコーディングの直前に8時間ずつ3日間スタジオに入って、最終日に滑り込みでできたんです。
Mayuco:そうそう。スタジオで私が「このコード使えない?」みたいなことを言ったら、Seanが家に帰って形にしてくれて。最終的にいい曲ができました。
――ギターのサイケデリックな音色の変化がいいですよね。
Joe:アンプで音を鳴らしたり、ラインで録ったり、音色はバースごとに変えていきました。僕自身、cOups.に入るまでは、がっつりリードギターをやったことがなくて、裏で支えながらも前に出ることはなかったんで、模索しながらやってる感じですね。
Sean:作品に対する全体的なコンセプトやイメージがあったわけではなく、みんなで実験を繰り返しすことで生まれた、面白い部分を吐き出したような作品なんです。
cOups. 撮影=風間大洋
――初期衝動性、ライブ感、音へのあくなきこだわり、この3つが作品のポイントだと思います。
Kosuke:音に関しては、残響レコードの河野(章宏/te')さんが立ち会ってくれたことも大きかったです。一つひとつの音にアドバイスをくれて。
Sean:うん、河野さんのおかげもあるよね。
Mayuco:バンドらしさという意味では、これ、みんなで「せーの!」って演奏して、一発で録たんです。何回も何回も4人で演奏して良いテイクを選びました。
Kosuke:時間があまりなかったこともあって、音の切り貼りもエディットも、ほとんどしてないんです。
Mayuco:体力的にも精神的にも、途中でめげそうになりました(笑)。数日で6曲録って、1曲なくなったし。
Sean:2日目くらいで、バンド辞めたくなった(笑)。
Joe:ギターは後で重ねた音もあるんですけど、1回録った音を上手くいくまで繰り返し流すんです。エンジニアの岩田さんの「プレイバックで~す」って言葉がトラウマになってます(笑)。
Mayuco:Joeくんは、レコーディング自体が初めてだったから、途中で変なハマり方してわかんなくなったんだよね。「大変そうだな」って、思いながら見てました。
Kosuke:個室に一人残されて、ヘッドホンを通して聞こえてくるエンジニアさんの「プレイバックで~す」って、辛いよね。
Mayuco:でも、基本一発録りの原始的なやり方だからこそのグルーヴはちゃんと出てると思うんですよ。各々の演奏スキルアップにも繋がったし、味も出る。終わってみれば必死でやってよかったと思います。
cOups.・Kosuke 撮影=風間大洋
――先に出た「Blow My Mind」以外の各曲についても、いろいろ聞いていきたいです。まずは「We wanna die young」のベースの音、すごいですよね。
Mayuco:もはや音が破れてますよね(笑)。
Kosuke:河野さんに「お前、突き抜けろ」って言われてゲインをマックスにして、で、岩田さんに「ベース歪みすぎ」って言われて(笑)。
――それだけラウドでありながら、歌が入るとしっかりメロティが立ってる。そこのメリハリがいい。
Kosuke:ボーカルを立たせるサウンド作りには、すごくこだわってます。ぶつからないように上は引っ込めて、超低音じゃないですけど、体で感じられる音域を出したいなって。
――Seanさんのなかでは、どんなイメージの曲ですか?
Sean:w.o.d.がめちゃくちゃ好きで、聴きまくってたらできました。
――それでこのベースの音とスピード感とグルーヴの揺さぶり、納得です。続いて2曲目「Girls Always Lie」はどうですか?
Sean:これは最初もっと長くて単調な曲だったんですけど、レコーディングに入る前にJoeくんが僕の家に来て、キング・クリムゾンとかを聴かせてくれて変わっていったんです。
Joe:クリムゾンとか八十八ヶ所巡礼人間椅子が好きで、曲中で展開が変わって「なんだなんだ?」ってなって、気がついたらメロに戻ってるみたいなことがしたくて。だから後半に変拍子をぶちこんでみたら、意外とはまりました。
――怒涛の展開、すごいですよね。Mayucoさんが泣いてますよ(笑)。
Joe:泣かせるくらい頑張ってもらいました(笑)。
Kosuke:どの曲もそうなんですけど、ドラマーじゃない人がグルーヴのイメージだけで作るから、叩くほうは大変だよね。
Mayuco:難しいんです。この曲は、3・3・5、3・3・7とか、数字で覚えてひたすら頑張りました。すごくカッコいいものができてよかったです。
――打楽器の表情も、今作を決定付ける需要な鍵になっています。
Mayuco:ハットの鳴らし方とか、3点のバランスはけっこう気にしてるんで、そこでニュアンスを変えながら、ボーカルや他の音も壊さないように、雰囲気をつけていけたらなって。あとは気持ち的な部分も変えてます。明るい曲は笑ってるような感情でとか、それだけでも全然違うんですよ。
――3曲目の「Rock'n'Roll Star」はリード曲にして大胆不敵なタイトル。
Sean:サビでは<I'm not RocknRoll star>って言ってて、謙虚な曲ですよ(笑)。
――オアシスの同名曲への意識もありますよね?
Sean:歌い出しが<I'm living in the city>ですからね。オアシスは<I live my life in the city>。わかる人には一行目でわかるっていう。
――最後の「Killer Machine and Gods on the TV」は、Mayukoさんのルーツでもあるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやコーンのにおいが。
Sean:僕のなかではずばりロイヤル・ブラッドで。この曲ライブではまだやってないんです。歌が高くてリズムも違うから、ギターを弾きながら歌えないんですけど、ギター一本じゃ足りないし。そういうところも含めて手探りな作品ですね。
cOups.・Mayuco 撮影=風間大洋
――まさにロイヤル・ブラッドのように、オルタナティブなエネルギーが、スタジアムを席巻するようなポテンシャルや気概を感じる作品ですが、いろいろと探っていった先のビジョンを聞かせてもらえますか?
Sean:オルタナティブって、精神だと思ってるんです。“僕たちはこの音です”って固執するのは、このメンバーでこのバンドだと違うかなって。古かろうが何であろうが一つのことを貫く姿勢もカッコいいし、そこに憧れた時期もあったんですけど、自分たちはミュージシャンとして2019年に音楽をやってるわけで。もっともっと新しいことや面白いことを探していきたいんです。もともと何でもやりたい派で、すぐ飽きちゃうっていう性格もありますけど(笑)。だから、まだ出してない最近の曲は、ギターが1本でクリーントーンだし、今作とはまったく印象の異なるものになっています。
――主流をひっくり返そうとする意識はありますか?
Sean:それはあります。“cOups.”ってバンド名が“クーデター”という意味。多くの人の目に留まって心に響く一撃を作らなきゃ成立しない。メインストリームにいながらオルタナティブな精神を持ち続けてやっていける存在になりたいと思ってます。あとは、お金欲しいっす。
Mayuco:私は新しいものをみんなで見つけたい。何が良いかなんて人それぞれで、4人だからこそのそれを、一つひとつ手にして進んでいきたいなって。そこに決まったゴールなんてないと思うから、この先どうなっていくのか、すごく楽しみです。
Joe:僕は、最初に言ったようにガレージとかロックンロールが好きだから、それなら日本に収まりきらずというより、最初からいきなり海外でやりたいって、思ってたんです。でも、cOups.に出会って入ってみたら、いいメロディもかっこいいフレーズもたくさんあるし、英語だけでなくいい日本語が書ける、Seanくんのハーフならではのセンスもあるし、これはやるしかないなって。そしてこの4人でイギリスやアメリカに出ていきたいです。
――日本のマーケットについては、どう考えてますか?
Sean:最近すごく意識するようになりました。J-POPって島国ならではの研究されたオリジナルな音楽だと思うんです。そこに受け入れられるような曲を、僕みたいな人間が書いたら面白いなって。海外のバンドもかっこいいけど、せっかく日本に生まれたし、だからこそ曲で、いろんな場所に出ていきたいです。
――フェスもたくさんありますが。
Mayuco:出たいですね。対バンのイベントもありますけど、フェスってお客さんの好みのレンジが広いから、そこでどういう反応をもらえるか、挑戦してみたいです。あと、2020年の1月25日にTSUTAYA O-nestでワンマンも決まってるんで、よろしくお願いします!

取材・文=TAISHI IWAMI 撮影=風間大洋
cOups. 撮影=風間大洋

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