ヨーロッパ企画メンバーが思う「ギョ
エー!」な出来事とは?新作舞台『ギ
ョエー! 旧校舎の77不思議』座談会

京都を拠点とする人気劇団・ヨーロッパ企画の第39回公演『ギョエー! 旧校舎の77不思議』が、2019年の8~10月にかけて、全国11ヶ所で上演される。テーマは学校を舞台にした「ホラー青春コメディ」とのことだが、果たしてどのような話となるのだろうか。作・演出の上田誠、役者の石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、中川晴樹、本多力と会い、話を聴いた。
――いきなりですが、どんな「ギョエー」な話になるのでしょうか?
上田 これ、「ホラーコメディ」とアピールしたらお客さんが怖がって来なくなるんじゃないかなって心配しているんですよ。せめて「オカルトコメディ」にしようかなあって。
諏訪 でも「お化け屋敷」ってどこも人気あるから大丈夫では。
石田 まあそうだよね。あれは目的がはっきりしているから。
上田 ともあれ、今回はオカルトやホラーな要素のある作品っていうのをやってみようかなと考えています。僕らはコメディをずっとやってきたので、コメディと「何か」……例えば「テクノロジー」とか「アート」とか、いろいろな分野との掛け算をしてきたんですが、今回は「オカルト」というか「ホラー」との掛け算してみたいなって思いました。
――39回目の公演という事で、40回目という大台も見えてきましたね。
上田 39回公演で僕も39歳になりました。でもどっちかというと昨年20周年を終えて今年は21周年。元号も変わっての心機一転、という気持ちの方が強いですね。
――そんな新たなスタートを切る事になる今回の作品です。学校が舞台という事ですが……出演者は何歳設定なんですか?
上田 あ、生徒だと思いましたか? 実は学校が現場ですが、皆、教師役なので大人なんです。
――そうだったんですか!? てっきりTシャツに短パンの小学生姿などを想像してしまいました(それはそれで観たかった……)。
上田 大人をちゃんとやります(笑)。とはいえ誰がどんな役をやるのかは稽古が始まってみないと分からないので、今日この取材で話しながら皆の反応を探っていこうかなと。
石田 さっき、酒井さんが「ゴーストバスターズ」をやりたいって言っていたので、俺も乗っかりたいなって思っています(笑)!
(「まあなくはないよね?」「言い出したからにはリーダー役がいいんじゃないの?」とああだこうだ意見が飛ぶ)
諏訪雅、石田剛太、本多力
上田 この中で怖がりな人は誰?
諏訪・石田・本多 うーん……(手を挙げる)。
諏訪 お化け屋敷は普通に……怖いけど(笑)。入れなくはない怖さかなあ。ああいうのは音が怖いから。視覚情報だけだったら大丈夫かも。
全員 あーわかる。
石田 パソコンで昔、流行ったじゃないですか。いきなりホラー映像が出てくるの。あれが本当に苦手で。学生の頃、パソコンで流行ってまして、上田とその手の動画を探してましたから。最悪でしたね。お互い怖いデータを送りつけ合っていましたから。
上田 驚かせたりするのが大好きでね。僕も怖がりなんですけど(笑)。
諏訪 そういえば昔、合宿か何かで、とある山荘に泊まった時、上田くんだけが中で寝てたんだけど、山荘の外から皆で一斉に「バババババッ!」って壁を大音量で叩いた。それを隠し撮りしていたんだけど、その時上田くんだけが「ギョエー!」だったね。僕らは凄い楽しかったけど(笑)。
上田 そんな、怖いに決まってますよ(笑)!
石田 壁もだけど、ドアを叩かれるのも怖いですよ。この前、東京の宿泊所に泊まった時、酔っ払った隣の部屋の人が間違ってこっちの部屋に入ってこようとしてね。深夜の3時にガンガンガン!ってうちの部屋のドアを叩くんですよ。それがすごく怖くて「ギョエー!」でした。
角田 夜の学校の雰囲気は怖いですけどね。
本多 昔、学校のトイレの水を流したらそこからお化けが出てくるって噂があって、全部拭いて、ズボンもはいて、流して速攻外に出てたことがあった(笑)。
上田 それぞれ違いますね。演劇って身体から生まれるものだから、怖がらない人と怖がる人だと動き方も違ってくるでしょうねえ。
中川晴樹、酒井善史、角田貴志
中川 俺は高いところが怖い。あと速いのもダメ。バイクとかで80Km/hとか出されるともう怖いね。
上田 僕、飛んでくるボールも怖い。
中川 ジェットコースターの速さもダメだね。
諏訪 それは全然平気。スイッチ入るから。楽しもうっていうスイッチがね。
酒井 僕はちっちゃい頃キョンシーが怖くて! 『霊幻道士』のキョンシーね。親に「キョンシーが怖い」って言ったら「ここは中国じゃないから大丈夫」って言われて、それ以降中国がどうにも怖くて(笑)。
――怖さのジャンル(?)もいろいろありますね(笑)。
上田 僕ら、笑いにかけては長年やっているので、こういう事が面白いという基準はある程度揃っていると思うんですが、「こういうことが怖い」というのは話した事がなかったから意外と皆バラバラで。それぞれ違うから面白いですね。
――「ホラー(オカルト)」だけでなく、「学園」というテーマもありますね。
石田 学園ものってそういえばやった事がないよね。
上田 確かに。学園ものって生徒を描いているように見えて、実は先生を描いていたりもしますね。『3年B組金八先生』はどちらも描いている感じ。
角田 『GTO』とかね。
本多 松本人志がやった『伝説の教師』とか。
(あったあった!と盛り上がる一同)
上田 生徒役は客演の方々にお願いしようと思ってます。学校の設定は高校なんですけど、本当は「不思議」とかで騒ぐのってもっと若い。「コックリさん」って高校生はもうやらないでしょ?
――確かに、小学生中~高学年、ギリギリ中学生かなと。
上田 「不思議」の出し方も考えている最中です。お化け屋敷などはお客さんと驚かす側の距離が近いんですが、舞台は遠いから、お客さんを怖がらせるには不利なんですよ。だから基本的には役者が怖がり、それを観ているお客さんは笑う、という流れになるかなと思いつつ、時々はお客さんにも怖い思いをしていただきたいなって思っています(笑)。「恐怖」を作るのが舞台では難しくても「不安」みたいなものは作れると思うんです。「何か出てくるかも……!」というじわじわした空気は作れるんじゃないかなあ。
上田誠
――今回、どんな先生をやってみたいですか?
諏訪 「ゴーストバスターズ」を酒井に取られたから……(笑)。
酒井 (笑)。
諏訪 生徒と仲のいい先生役をやりたいですね。怖がられるよりはちょっとだらしなくてそこが人気のある先生ね。
石田 僕は謎の用務員さん役を。「何かしてるんじゃないか、あいつは」と言われているくらい謎めいている人。で、隠れて猫を飼っているとかホッコリ系、どうでしょう?
上田 ……採用しましょうか(笑)。
本多 僕は『教師びんびん物語』の野村宏伸みたいな先生役がいいなあ。生徒のために身体を張る、みたいな。意外といいことも言う、みたいな。
中川 俺、かつて我々の作った作品の中で2回先生役をやっているんです。体育教師役で。割と暴力的な体育教師。あれをまたやりたいなあ。
――酒井さんは、やっぱり「ゴーストバスターズ」?
酒井 (笑)。でも先生役なら物理の先生がいいなあ。オカルトに科学的なアプローチを試みるタイプ。オカルトを信じない、もありだけど、科学的なアプローチから信じるタイプでもいいんじゃないかなって。「これは科学では証明できない!」って言いそうな人。
角田 僕は「ぬ~べ~」をやりたい。
本多 ああ!『地獄教師ぬ~べ~』か!
――こうやって伺っていくと、こんなにも既存の作品にたくさんの先生キャラが描かれているんですね!
上田 そうなんですよ。先日まではオカルトのことばかり調べていたんですが、最近は先生や学校のことも調べないと、と思っています。学校にはいろんなところに暗がりがあって、子どもって行った事がない場所に想像を膨らませるでしょう?未知の場所への畏れから「七不思議」って生まれがち。教室の中よりは理科室とか誰もいない体育館、トイレのいちばん奥の個室とかね。今回は七十七つも不思議を考えないとならないので、グラウンドの真ん中とか、屋上とかもターゲットにしたいです。
――そしてもう一つ気になるのが「オカルト青春コメディ」の「青春」部分。ラブな展開も期待していいんでしょうか? 先生と……とか。
上田 学園ものですから甘酸っぱさもね。誰かやりたい人いる?
全員 (無言)
上田 ……じゃそこは客演さんにお任せしましょうか。
石田 そういえば女性教師がいないよねえ。不自然だね。
上田 今回西村(直子)さんがお休みだからね。じゃ、そこも客演さんで。
酒井 もしくは女装教師で(笑)。
全員 (笑)
全員で「ギョエー」!!
取材・文・撮影=こむらさき

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