【対談 #後編】SUGIZO × miwa、コラ
ボ作品「A Red Ray」はこうして生ま
れた

「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」の総合音楽プロデューサーをSUGIZOが務めている今年、4月29日よりNHK総合で放送開始となった『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』では、オープニングテーマをLUNA SEAが担い、エンディングテーマはSUGIZOプロデュースによる女性ヴォーカリストとのコラボレーション作品が次々と登場している状況にある。
いずれも話題性抜群の作品群だが、中でも注目は、第3弾エンディングテーマとして発表された「A Red Ray」というまっさらな新曲の誕生だ。「A Red Ray」のアーティスト表記はSUGIZO feat. miwa、作曲・編曲はSUGIZO、そして作詞はmiwaである。もちろん歌うのもmiwa本人だ。

他のコラボ作品制作とは一線を画し、新作制作にまで踏み込んだSUGIZO +miwaというコラボレーションは、どのように息吹を上げどのようなケミストリーを生んだのか? SUGIZOとmiwaをキャッチ、話を聞いた。先ごろ公開した
と併せてお楽しみいただきたい。

   ◆   ◆   ◆

■シンガーとしてのポテンシャルがすごい
■これは一緒にやりたいなって──SUGIZO

──SUGIZOとmiwaという組み合わせは、全くのサプライズでした。

SUGIZO:実はmiwaちゃんとは「何かのタイミングで一緒にやりたいね」っていうのはずっとあったんで、ガンダムのお話をいただいたときに、すぐ「女性ヴォーカルならばmiwaちゃんとやりたい」と思ったんです。

──世代も音楽性も活動形態も全く違うふたりですけど、なぜmiwaに白羽の矢を立てたのでしょう。

SUGIZO:元々彼女のスタッフとはとても近い関係性だったのですが、仮にそうでなかったとしてもmiwaというアーティストに無限の可能性を感じていました。一緒にやってみると実際そうでした。まず歌唱力がすごい。

──そこは大きなポイントですね。

SUGIZO:本当に大切。一緒に作業していてストレスがない。ライブでもめちゃくちゃピッチ(音程)がいいでしょ? レコーディングもガーンてハマるんですよ。

──なるほど。
SUGIZO:あとね、miwaちゃんって自分自身ではそれほど意識してなかったけど、根っこにブラック(ミュージック)があるんだよね。

miwa:そうおっしゃってましたね。

──自覚はなかった?

miwa:自覚もないですし、(ブラックミュージックを)自分でやってきたという感覚はなかったです。

SUGIZO:シェリル・クロウとか好きなんでしょ?

miwa:はい、そうですね。

SUGIZO:アラニス・モリセットとかも好きだった?

miwa:あ、そうです。

SUGIZO:あの辺は絶対に根にブルースやブラックミュージックのエキスがあるから、たぶんmiwaちゃんが普通に好きで聴いていた人のルーツにはブラックが多々あったと思うんです。miwaちゃんって、歌い回しとかコブシが自然とソウルになるんです。そこの影響って「ない」と本人は言うけど、絶対受けているはず。自然と回し方がグルーヴするんです。音楽家として、シンガーとしてすごいなあと思います。もちろん作詞家としても、いちアーティストとしての存在も、素晴らしいんですけど、もう歌がすごい。ライブを聴いていてもレコーディングしてても思うけど、どこが裏声でどこが地声ってないでしょ?

miwa:そうですね。

SUGIZO:シンガーとしてのポテンシャルがすごいんです。これは一緒にやりたいなあって。
──なるほど、「A Red Ray」は絶大なる信頼から生まれた作品なんですね。

SUGIZO:「A Red Ray」もね、実はヴォーカルの音域がすごく広いんです。ものすごく低いところからすごく高いところまであるんで。

──「いやな歌だな」って思ったでしょ(笑)?

miwa:いえいえいえ。新鮮に感じました。

SUGIZO:miwaちゃんの低いところを使いたかったんですね。“低いmiwaはすごくいい”と思っていたから。一瞬だけパーンと高く上がるところがあるんだけど、こういうのは“miwaちゃんの同世代のシンガーみんなができるのか?”といえば、実はほとんどの人が不可能なんじゃないかな。このイメージについて来られないかもしれない。もちろんスタジオで機材を駆使すれば、形だけはこじつけて作ることはできるだろうけど、それはその人の息吹を型に当てはめただけのことで、今回miwaちゃんと一緒にやったような本当に生きた歌が作れるかというと疑問ですよね。
■SUGIZOさんの引き出しは常に更新されていて
■とても刺激的でした──miwa

──miwaからみたSUGIZO/LUNA SEAというミュージシャンは、どういう存在でしたか?

miwa:とにかく“音楽へのこだわり”がものすごく強くて、音楽が本当に大好きで、ものすごく音楽に詳しい方なんだなっていうのがやり取りすればするほどわかりました。LUNA SEAの楽曲だけじゃなくて、いろんな音楽を勉強というか研究していらっしゃる方だなあというのがすごく伝わってきて、何かひとつ質問すると…

SUGIZO:10ぐらい返ってくる?

miwa:そうなんです(笑)。すごく詳しい内容だったり参考になる資料だったりをたくさん送っていただいて。私も自分で作詞・作曲をするので、曲を作るときに資料を用意したりイメージを膨らませたり、きっかけになるような作品とかもあったりはするんですけど、SUGIZOさんの引き出しは常に更新されていて、昔のものから最近のものまで常に網羅して曲を作ってらっしゃるっていうのが伝わってきたので、とても刺激的でした。レコーディングの音ひとつとっても、和太鼓を生で録ったりとか楽器への一音一音へのこだわりもすごいですし。
SUGIZO:それは俺にとっては“こだわり”じゃないんだよね。こだわりと思ってやったことはなくて“当たり前”のこと。刺し身を食べるときにわさびをつけるけど、それに対して「こだわってますねえ」って言われても、美味しく食べるならこだわりじゃなくて普通でしょ?…みたいな感じ(笑)。

──それがSUGIZOにとって“当たり前のミュージシャンシップ”というものですね。

miwa:今は打ち込みで何でもできてしまう時代だからこそ、生できっちり録るというのはすごく贅沢なことなんです。極上の音で、その中で歌えるというのはすごく贅沢なことでした。

──今回の体験も、今後のミュージシャン活動にいい影響を与えてくれそうですね。

miwa:音楽への探究心というのはいつまでも持ち続けていたいなって思いますし、これを機にいろんな楽曲…それこそブラックミュージックもたくさんお薦めいただけたので。

SUGIZO:重要なのは、“今のmiwaちゃん”だから良かったということ。だいたいね、30歳くらいまでは“自分が何者かわからなくても、いいものができる”んです。それ以降は、どこまでが自分の先天的なもので、どこからが後天的に吸収したものなのか、これから何を吸収して何を生み出すのかを、ある意味理論的に知る必要がある。これから先、活動していくには“何をどこまで吸収しているか” “どこまで自分の座標がわかっているか”が重要なんですよ。
──これはLUNA SEAという頂上アーティストからの貴重なアドバイスかも。

SUGIZO:ある意味ね、シーンで一度頂点を経験してすごいものを作ってきた30歳手前の女子が、未だこれだけ吸収力があるのは本当に素晴らしいこと。もう「昨日デビューしました」って言ってもおかしくないくらいの瑞々しさと探究心、新しい感覚を学びたいっていう熱意ね。お父さんみたいな言い方だけど、これだけ素直な子はいない。

miwa:(笑)。

SUGIZO:ほんとにね、一緒にやってて“この子は永遠に音楽やってるだろうな”って思った。40歳になっても50歳になってもいつまでも輝いていると思った。miwaちゃんに可能性を無限に感じるのは、20代で作ってきているmiwa像を、30代40代で新たに大きく超えていくようなイメージが広がるところですよ。

──このままふたりでアルバムでも作りますか(笑)?

miwa:作りたいですね。またご一緒させていただける機会があれば嬉しいです。

──これからも楽しみにしております。

   ◆   ◆   ◆

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』のエンディングテーマには、GLIM SPANKY/コムアイ(水曜日のカンパネラ)/アイナ・ジ・エンド (BiSH)/miwaという4アーティストとのコラボレーション4作品が制作されているが、SUGIZO feat. miwaが既存のガンダム楽曲のカバーではなくオリジナル楽曲となったのは、呼応する第3弾オープニングテーマがLUNA SEAによるオリジナルではなく、カバー (TM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」) だったことに起因している。「オープニングがカバーなのであれば、エンディングはオリジナルで行く」という、音楽プロデューサーSUGIZOの発案である。

そして栄えある新曲のコラボ相手として指名され、SUGIZOからの熱きラブコールを受けたのがmiwaだったというわけだ。「A Red Ray」という曲には、透明感と清らかさ、壮大な空間と空に思いを馳せるような広がりを感じさせながら、拭いきれない重厚さと定めが渦巻くような切なさがまとわりついていく。miwaの歌詞と歌声が作り出すこの世界観こそ、プロデューサーとしてのSUGIZOが思い描く音像にピタリと符合したのだろう。

『機動戦士ガンダム』という日本カルチャーのトップブランドとの連携もさることながら、2019年の日本が育んだ音楽シーンによるひとつの結晶として「A Red Ray」は生を受けた。輝かしきこのコラボ作品は、熱きミュージシャンシップの結晶の証として、そしてジャンルも世代も飛び越えたケミストリーの軌跡として、言葉の壁を超えワールドワイドに響き渡ることだろう。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也
撮影◎Wataru Nishida(WATAROCK)
撮影場所◎THE GUNDAM BASE TOKYO
(c)創通・サンライズ
■『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』エンディングテーマ配信情報

▼「A Red Ray」SUGIZO feat. miwa
作詞:miwa 作曲・編曲:SUGIZO
配信日:2019年6月25日(火)より
▼「水の星へ愛をこめて」SUGIZO feat.コムアイ(水曜日のカンパネラ)
配信日:2019年6月18日(火)より
▼「めぐりあい」SUGIZO feat. GLIM SPANKY
配信日:2019年6月11日(火)より
配信先:ダウンロード / ハイレゾ 各社サービス
※ダウンロード開始日よりそれぞれの“TV サイズ”が各社サブスクリプションサービスでも順次投入・公開


■アニバーサリーイベント<GUNDAM 40th FES.“LIVE-BEYOND”>

9月7日(土) 幕張メッセイベントホール
open17:00 / start18:00
9月8日(日) 幕張メッセイベントホール
open16:00 / start17:00
▼出演者 ※50音順
9月7日(土):西川貴教森口博子、LUNA SEA ・・・and more
9月8日(日):澤野弘之 / SawanoHiroyuki[nZk]、森口博子、LUNA SEA ・・・and more
※出演者は予定なしに変更となる場合がございます。
※出演者変更に伴うチケットの払戻しは致しかねます。
▼チケット
全席指定 9,800円(税込)
※3歳以上有料
【オフィシャルHP先行】
受付期間:6月24日(月)12:00-7月4日(木)23:59
https://w.pia.jp/t/gundam40th/
※枚数制限:お一人様1公演につき2枚まで(複数公演申込可)
※お申込み多数の場合は抽選とさせていただきます。
※その他注意事項は受付画面でご確認ください。
(問)03-5793-8878


■番組『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』

放送局:NHK総合テレビにて
放送日:4月29日より毎週月曜午前0:35~ (日曜深夜)放送中
※関西地方は毎週月曜 午前1:09~ (日曜深夜)放送中
http://www.gundam-the-origin.net/tv/
本作のエンディングテーマは全4曲を予定。『機動戦士ガンダム40周年プロジェクト』の総合音楽プロデューサーを務めるSUGIZOが音楽プロデュースしている。第1弾エンディングテーマでは1982年公開の劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』主題歌でもある「めぐりあい」(井上大輔)をGLIM SPANKYが、第2弾エンディングテーマでは1985年放送『機動戦士Zガンダム』の後期オープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」(森口博子)をコムアイ(水曜日のカンパネラ)が参加している。

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