松本白鸚「俳優をやっていてよかった
」 日本初演50周年記念公演ミュージ
カル『ラ・マンチャの男』製作発表レ
ポート

日本初演50周年となるミュージカル『ラ・マンチャの男』が2019年9〜10月、上演される。初演からセルバンテス/ドン・キホーテ役を演じ続け、本作品をライフワークとしてしている二代目松本白鸚は、今年の8月19日に喜寿を迎え、10月19日ソワレ公演で通算上演回数1,300回を突破する予定。6月13日に東京都内で行われた制作発表の様子を写真とともにお伝えする。
スペインの小説『ドン・キホーテ』を原作とした『ラ・マンチャの男』がブロードウェイで初演されたのは1965年。翌66年にはトニー賞ミュージカル作品賞他計5部門を受賞している。日本初演は1969年4〜5月。市川染五郎(現・二代目松本白鸚)は当時26歳だった。70年には、日本人として初めてブロードウェイから招待を受けて、単身ニューヨークに渡り、名門マーチンベック劇場にて計60ステージに立った。以降これまでの上演回数は1,265回にも上る。
この日は、出演する松本白鸚、瀬奈じゅん、駒田一、宮川浩、松原凛子、上條恒彦らが登壇。報道陣のほか、一般オーディエンス約200人も参加した。
セルバンテス/ドン・キホーテを演じる松本白鸚
日本初演からセルバンテス/ドン・キホーテ役を演じ続け、2002年からは演出も担当している松本白鸚は「今日この日が迎えられることは、自分にとっては奇跡に近こうございます。本当に胸がいっぱいです。東宝さんがまた声をかけてくださったことに、演技で、芸でお返しするのが、役者としてのお礼ではないかと思っております。真新しいラマンチャでございます。何しろ主演の俳優の名前が変わりましたから!」とあいさつ。
昨年、幸四郎から白鸚に襲名したことを受けて、「ラ・マンチャは東宝での“襲名”だと思っております。真新しい気持ちで臨みます」とも語った。
アルドンザを演じる瀬奈じゅん
今回が初出演となる、アルドンザ役の瀬奈じゅん。前回2015年の上演を観劇していたといい、「終演後にはあまりの感動に涙が止まらず、心が震え、立ち上がれないという感動を体験いたしました」と振り返る。
 
そして、「あの時には全く想像もつかなかったことが今起こっていて、とても幸せな気持ちと、やらねばという意気込みと両方入り混じった複雑な気持ち。とにかくあの時私が客席で感じた感動を皆様にお届けできますように、たくさんのことを感じて、心を震わせ、魂を込めてアルドンザ役を演じたいと思います」と意気込んだ。
サンチョを演じる駒田一
2009年からサンチョ役を演じ、床屋やラバ追い役と作品には95年から出演している駒田一は「サンチョを演じて10年目ということになります。旦那様(※松本白鸚のこと)の前で10年目なんて...」と謙遜しつつ、「他の作品をやっていても、頭の片隅に心の片隅に、ラ・マンチャのことがずっとあります。今回はどうしようか、どのようにしたものか、常日頃考えております。一つよかったなと思うのは、昔から幸四郎さんと呼ばずに旦那様と呼んでいたこと(笑)。今後とも名前が変わっても、旦那様と呼ばせていただければと思います!」と話して笑いを誘った。
アントニアを演じる松原凛子
今回が初出演となる松原凛子はアントニア役を演じる。「前回、観劇させていただいたときは学生で、まだミュージカルの舞台に立ったこともない頃でした。その時に夢を追いかけたいけれども、叶うはずがないのではないかと、すごく迷っていた時期にこの作品を観劇させていただいて」と、涙ぐむ。
 
「胸がいっぱいになってしまう作品。『あるべき姿のために戦わないことは本当におかしい』といった意味のセリフがあるのですが、そのセリフを聞いて、私も戦っていこうと思いました。素晴らしい言葉や思いが詰まった作品だと思うので、この作品のお稽古や本番を通して、私もその言葉に支えられながら、刺激を受けながら成長してまいりたいと思っております」と必死に涙をこらえながら語っていた。
カラスコを演じる宮川浩
前回から参加しているカラスコ役の宮川浩は「前回は初参加で、必死にもがき苦しんでいたというイメージがあります。4年経ってどれほどカラスコが成長したのか、そして、キハーナさん(※白鸚の演じるアロンソ・キハーナ)の心情がどれだけ読み取れるようになったのか、自分でも楽しみにしております。この舞台にもう一度立たせていただいて感謝しております」と話した。
牢名主を演じる上條恒彦
1977年から800回以上出演している牢名主役の上條恒彦は「僕は高麗屋さん(※白鸚のこと)より2歳上なんです。でも高麗屋さんはずっと先輩だと思い続けております。」とあいさつをした。
松本白鸚
続いて質疑応答の時間が設けられた。
−−日本初演50周年おめでとうございます。森光子さんの『放浪記』は48年にわたり上演され、日本の『ラ・マンチャの男』は半世紀50年とそれを越えるもので、白鸚さんがある意味、演劇の頂点に上り詰めたのだと嬉しく思います。単独主演で50年もの長きにわたり演じてこられた原動力はなんだったのでしょうか?また、率直なお気持ちを改めて教えてください。
白鸚:東宝さんと、私の出演を承諾してくださった松竹さん、この2つの演劇会社の演劇人としての良心が私を実現させてくれていると思っております。森光子さんの例を仰いましたけれども、私は歌舞伎の『勧進帳』を47都道府県1,000回以上やっておりますので、そういう意味でも本当に幸せだと思います。
 
それができたのは、私は平和だったからだと思います。陛下皇后様はご退位されましたけれども、30年間平和だったから続けてこられたのではないかなと。喜寿になって、50周年記念公演に出ることができて、よほど50年同じことやって、他にやることなかったのではないかとお思いかもしれませんが(笑)、私は歌舞伎俳優としてもやっていましたので、やることがないというわけではないのですが......やれなかったんです、他に。ですので、考えてみれば、それが今日の夢のようなことにつながったんじゃないかなと思っております。
松本白鸚
−−『ラマンチャの男』がこれだけ長きにわたり愛されてきた理由はなんだと思いますか?
上條:端的に言って、いい作品だったということでしょうね。時代を超越したテーマをもっている。「そんな難しいことを言ってるの?」と言われることがあるんです。つまり、どんなことを役者が言っているか、具体的な内容のことではなくて作品が持っている風格がいつも伝わるからではないかなと思います。
 
松原:難しい作品だと思われていると思うのですが、最後には勇気をもらったり、明日から頑張ろうという単純な気持ちかもしれませんけれど、活力をいただけるというところかなと思います。私自身が勇気をいただいたので。
 
宮川:…僕にはちょっとよく分かりません。分かりませんが、この作品すごいんです!見てもやっても。なので50年続いたんだと思います。作品もすごいし、50年間一人で続けてこられた白鸚さんもすごいなと思います。だから続いてきたんだと思います。
 
駒田:本の魅力、楽曲の魅力、そして旦那様の魅力。一つ一つのセリフを、見たお客様がそれぞれに投影したり、感じられたりして、すごく深いものになるのではないかなと。やはり作品の素晴らしさだと思います。宮川さんが仰るように、やる側もそれを感じながらやっているので、これだけ人気があるんだなと僕は思っております。
 
瀬奈:私が客席で拝見した時にも感じたことなのですが、その時の感情や体調や状況によって、感じ方が変わってきたりとか新しい発見がすごくある。何回見ても新しい発見がある作品なんだなということをすごく感じました。それは、毎回毎回白鸚さんが新しい発見をされようとしているから。英語の翻訳をご覧になられて、これは本当にこういう意味なんだろうか、改めてブラッシュアップして新しい発見をされているということを伺いまして、それをすごく感じましたし、だからこそ50年続き、50年愛されてきたんだなと私は感じています。
 
白鸚:私どもは気恥ずかしくて口にできないような言葉をズケズケとこのミュージカルはやってくる。それだけにドン・キホーテ/セルナンデスをやる役者はそういう生き方を、心をもった役者がつとめるべきだと、ない脳みそを絞って考えたんですね。考えてやり続けていったら、いつのまにか77歳で、50年経ってしまったと。初演をご覧になった方、お生まれになっていない方が一緒になってこういう場を設けてくださったことは、人間としても、俳優としても、白鸚としては本当にありがたいことです。俳優をやっていてよかったなと思います。それが思いでございます。ラマンチャがより素晴らしいものになっていないと、ここでお話しした甲斐がございません。ぜひ素晴らしいラマンチャをお目にかけたいと思います。
松本白鸚
白鸚はブロードウェイの思い出なども語りながら「僕も老い先短いですから、僕がいなくなっちゃった後も、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』のように、毎年必ず『ラ・マンチャ』の火が灯ったら、嬉しいなぁと思います」とも述べた。
そして、公演のキャッチコピーである「遍歴の旅はクライマックスへ−−」ということについて、白鸚は「私は人生全てがクライマックスでございます。この公演だけがクライマックスというわけでもございません(笑)」と笑う。そして「人間やっぱり肉体的には限度がございますけれども、魂といいますか、このドン・キホーテの『ラ・マンチャ』の精神だけはいつの時代でも生き続けて欲しいと思います」と語って、会見を終えた。

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