椎名林檎「三毒史」人間をむさぼる三つの煩悩

椎名林檎「三毒史」人間をむさぼる三つの煩悩

椎名林檎「三毒史」人間をむさぼる三
つの煩悩

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人間の悪の根源"三毒"
まずアルバムのタイトル、『三毒史』について…"毒"という言葉に少しだけショッキングなイメージを膨らませた方も多いと思われる。
最初に、このアルバムを語る上でどうしても必要なため種明かししてしまうが、この"三毒"とは、人間の諸悪であり悪の根源である三つの煩悩を毒と例えて、仏教が説く概念を指している。
なんと小難しい…というお言葉。
その通りでございます。
要は簡単。人間が生きていく上で邪魔になる厄介な煩悩、欲・怒り・愚かさを"毒"と表現しているんだそう。
さて、至極簡単な説明で大変申し訳ないが…細かい事はこのアルバムを聴いていただければすべて解決できるはず。
兎にも角にも、今回のアルバムもこれまで同様、7曲目の『TOKYO』を核に規則正しく"五文字"の楽曲たちがラインナップされている。
彼女のこだわりだ。
「鶏と蛇と豚」

三毒において象徴される動物がこの楽曲の題名になっている。
鶏=欲・むさぼり
蛇=怒り
豚=愚かさ・鈍さ
抜粋は対訳の最後の部分、実際の楽曲は最初から最後まで英詞だ。
この楽曲の解釈はこう。
自分が気に入った蜜…その美味しさに我を忘れ食らいつく。
どんどん食べればいつかはその密もなくなる。
そうなってしまわないようにまた次、また次と。
その口いっぱいに蜜を頬張ったまま次の密を探しながら見つければまた頬張る。
好きで食らい付いた密なのに、やがては満腹になり最後は嘔吐するまでに。
あれほどまでに美味しかった密なのに…これはひょっとして毒だったのかという疑念さえ沸いてきた。
さては罠でも仕掛けられたか?
人間はおろか…やはり最後は自分が一番可愛いのだ。
「獣ゆく細道」
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エレファントカシマシのヴォーカル、宮本浩次とのデュエット曲。
冒頭の彼の第一声はとても印象的。
「この世は無常」という一節が、「三毒史」の始まりを叫んでいるようで、いてもたってもいられない気持ちに駆られる一曲。
曲の最後は「誰も通れぬ程 狭き道をゆけ」と〆られている。
「マ・シェリ」

ご存知の方も多いと思われるが、資生堂のCMに起用された一曲。
女性用のヘアスタイリング製品をアピールするCMだけに、楽曲に見えるのは女性だ。
毎日鏡を見るのは女性にとって当たり前の恒例行事。
そこに映る自分を自分で評価したり称賛したりとても忙しいのだ。
女性の美に対する欲は果てしない…。
ちなみに、題名である「マ・シェリ」とはかわいい人という意味。
「駆け落ち者」

BUCK-TICKのヴォーカル、櫻井敦司とのデュエット曲。
面白いアレンジで、櫻井の歌うパートにメロディラインはない。
まるでアルバム一曲目の冒頭のお経を感じさせる。
彼の力強くよく伸びる発声と林檎の発声が絡み合い、楽曲の世界観を想像させる。
つまり、誰かと誰かの感情・怒りのぶつかり合いを感ぜられる一曲なのだ。
「どん底まで」

どことなく、初期の椎名林檎を感じてしまう一曲。
"史上最強"で"史上最高"な自分に、ほんの少しだけ不惑の彼女の欲が見え隠れする…そんな一曲だ。
どこまでいっても椎名林檎はこうであって欲しいと思ってしまう。
「神様、仏様」
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向井秀徳とのデュエット。
人間のありとあらゆる欲を、これでもかと綴られている一曲。
酒を喰らい、乱痴気騒ぎ…生きることが面倒くさいなら、目覚めるまで眠りこける。
目に見えない神様より人間様の方が偉いのさと高を括る…。
浮かれた人間ほど無敵なものはないのだろうか?
「TOKYO」

イントロからピアノの5拍子で始まる、ピアノ好きが聴いたら鳥肌ものの一曲。
曲中のピアノの音色もとても心地が良い。
題名である「TOKYO」に相応しく、都会的で洗練されたサウンドだ。
夢の中は晴天、顔もうろ覚えな過去の男とやけに楽しそう。
やがてはその夢からも冷め、嫌でも現実に戻される。
夢と現実の自分を比較するなんてナンセンス、そんな人生ならいっそのこと短くてもいい。
時々椎名林檎の楽曲はこんなネガティブで愚かな女性が登場する。
「長く短い祭」

浮雲とのデュエット曲。
この楽曲で表されているのは男女の欲。
所詮この世は男と女しかいない。
男は女を求め、女は男を欲する。
そして出会って別れてを繰り返すのだ。
長い人生の中の、ほんの一時の夏の恋。
この楽曲はそんな一コマを感じさせる。
ところで、この楽曲にはMVもあるのだがご覧になったことはあるだろうか。
まだの方は是非ご覧いただきたい。
とてもドラマチックなこのMVには人間の三つの煩悩、まさに"三毒"が確かに描かれている。
YouTube「長く短い祭」

「至上の人生」
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日テレ系ドラマ「〇〇妻」のタイアップ曲。
ドラマの主題歌に採用されたのはこの楽曲だが、5曲目に位置している「どん底まで」もこのドラマの主題歌候補にあがっていた。
どちらの楽曲もロック調で、強いメッセージが感ぜられる。
「急がば回れ」

ヒイズミマサユ機とのデュエット曲。
椎名林檎とのヴォーカルの対比が絶妙な一曲。
いい意味で脱力感のあるヒイズミの低音と甘ったるい林檎の声がベストなコンビネーションである。
楽曲の世界観は辛口。関わる人間をぶった切っているがとてもごもっとも。
いってみれば三毒の内の"怒り"だろうか…?
「ジユーダム」
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この楽曲はNHK「ガッテン」のためにかきおろされたもの。
番組内容が情報・科学番組ということでメロディはとてもポップで軽快。
日々の生活をオモシロオカシク過ごしていこうといったようなポジティブな雰囲気。
「合点」や「頓知」などの単語が織り込まれているのは、番組に寄り添うための印象付けなのだろう。
「目抜き通り」
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まるでミュージカルのレビューを観ているかのようなゴージャスなサウンド、商業施設「GINZA SIX」のPRのために書き下ろされた一曲。
トータス松本とのデュエット曲なのだが聴いていると、林檎の背中には大きな羽が生え、トータスはシルクハットを被り…なんて画が想像できてしまう。
大東京・銀座をPRするにはこれ以上マッチするものはないだろうと感じる一曲だ。
「あの世の門」

アルバムの最後は「あの世の門」で〆られる。
対訳を解釈しようと頑張ってはみるが、テーマは生なのか死なのか。
"あの世"という言葉からどちらかといえば死が想像できてしまうが…。
林檎自身の幼少期の実体験という、本人しか知り得ない記憶を元に作られたということと、このアルバムの最後を締めくくる一曲という意味でおそらく、"生"も"死"もどちらの意味合いかはこちら側のご自由にと解釈ができる。

YouTube「鶏と蛇と豚」
TEXT 時雨

UtaTen

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