根本宗子にインタビュー アイドルグ
ループ「GANG PARADE」の楽曲・主演
の新作ミュージカルに挑戦!
もともと私は旧BiS(※2010年結成、2014年解散のアイドルグループ)が大好きで、そこからWACK(※BiSやGANG PARADEなどをプロデュースしている会社)のアイドルは全部追いかけています。ギャンパレは出来た時から見ているので、ギャンパレが歩んできた道を知っているんです。
ギャンパレが持っているドラマ、つまりメンバーが増えたり減ったり、色々なことを経て今の体制になったことや、もともとBiSになりたくてオーディションを受けたけれど、今はギャンパレとして頑張っている人がいることなど、ストーリーが興味深いなぁと思っています。
そして、純粋に楽曲がものすごく格好良くて、好きです。メンバーが作曲している楽曲もあるので、それを使ったミュージカルを作ることができたら面白いのではないかなというのが、今回の企画の始まりでした。
未完成なものを楽しむ、成長していく過程を楽しむといった文化のアイドルグループもありますが、ギャンパレは全員のパフォーマンスをお客さんに見せようという意識がものすごく高い。ライブ見た時にそう思いました。そういう意識がある人たちの方が演劇をやった時に、力を発揮してくれるのではないかなと思ったんです。
多分本人たちの中では、「この人に負けたくない」といったようなこともあると思うのですが、そういうことが見ているこちら側には一切分からない。全員が仲間だと思っていて、全員でいいパフォーマンス、全員でこの曲を歌うぞみたいな熱量がすごく好き。演劇の座組でも全員が一丸となっているものはどうしても勝てないので、熱量を持っている10人が芝居をやると、すごくいいものができるし、私も周りの役者も感化される部分や影響受ける部分があるんだろうなと思っています。
根本宗子
ーーその彼女たちのパフォーマンス力もお芝居の中にふんだんに盛り込まれるのでしょうか? どんな風にギャンパレを見せていきたいとお考えですか?
……今から4、5年前、劇団員がいた時代、私はものすごく劇団員と関係性が近かったんです。同世代の女の子だし、何が悲しかった、楽しかったといったことをほぼ全部知っている状況で本を書いていました。演劇で言う「当て書き」には色々な意味があると思うんですけど、例えば、本当にその人のことを書くこともあれば、役者としてその人を見たときに、こういうことをやると面白いという種類の当て書きもあるし、単純に見た目に当てて書くこともあると思う。昔は、本人たちのことを知って書いていたので、総合的な当て書きをやっていたんです。
そして、芝居をやることがお仕事になってきて、いわゆる芸能人の方と一緒にお芝居をやると、事細かにどういう人生を歩んできたのかは聞かずに書いていくことが増えていくのですが……ギャンパレは、自分がずっと見てきて、どういう人となりなのか、勝手に知っているし、話す時間を何回か頂いて、どういうことを考えている人なのか、私として知る時間を設けました。
一言で「風俗嬢の芝居です」と言うと、何となくネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれないのですが、何故その仕事に就いたのか、そこで何を抱えている人なのかといったことを描きたいなと思っています。昔自分が書いていた、すごく切実な女の子の想いが、ギャンパレの楽曲とともに、ミュージカルになるみたいな感じですね。
ーー歌舞伎町のナンバーワンホストを演じるのが磯村勇斗さんです。磯村さんの印象を教えてください。
私は今回ギャンパレ自体にかなりエモーショナルさを求めているんです。自分の中のエモーショナルさを体現できる女優さんは私の中でかなり限られている。でも、ギャンパレのライブを見たときに、「この人たちはお芝居の技術とかではなく、そうではないところで出してくれそうだな」と思った。その人たちと並ぶときに、技術でおじさんをやる人ではなくて、「この人、どこから連れてきたんだろう?」という人に出て欲しいなと思って、それでブルー&スカイさんしかいないなと思って!(笑)。あと、ブルー&スカイって、ギャンパレの中にいそうな名前でいいかなぁと(笑)
鳥越さんもずっと昔からうちの芝居を観にきてくれていて、いつも「いつか」と言ってくれていて。歌舞伎町に普段から出入りしていて、横暴な役を担っていただく予定です。風俗の話ですが、そんなにいやらしいシーンがあるわけではなくて、歌と踊りで見せていくので、しっかりお芝居を支えてくれそうな富川さんと鳥越さんにお願いした感じですね。
それから猫背椿さんもWACKのファンなんです。猫背さんにギャンパレと一緒に風俗嬢をやってもらうか迷って、「まだその可能性あります」と言ったら、「ふざけんな」と言われました(笑)。若い女の子たちをまとめている、おばちゃんをやってもらおうと思います。
ーー“ミュージカル”ということで、根本さんにとっては取り組み方も変わりますか? また、ミュージカルだからこそできる表現はあると思いますか?
チャラン・ポ・ランタンの小春ちゃんに楽曲を作ってもらうなど、自分の中でも音楽を使う舞台は増えていますし、これからも増えると思います。今回の作品も前からやる予定があったので、音楽を使っていくということに対して、自分の中で慣れる時間をここ1年ぐらいとってきました。今回は、ギャンパレの楽曲をミュージカルアレンジしますし、ダンスもちゃんとステージング担当がいます。私も未知数な部分もありますが、周りのスタッフと一緒に作っていきます。
ミュージカルだからこそできる表現はあると思いますし、ミュージカルって、やっぱり広いんです。歌った時の広がりはものすごい。私はヤママチさん(※GANG PARADEのメンバーのヤママチミキ)の歌声が好きなのですが、芝居の中で彼女がちょっと歌うだけで、だいぶ世界が広がる。
ーー今回は初のパルコプロデュースですが、何か意識されていることありますか?
パルコは、硬派な企画からエンタメ要素の強い企画まで幅広くやられているイメージで、自分が呼ばれる時はどちらなのだろうと思っていたんですが、一番最初にお話をいただいた時に、「夏っぽいお祭り感ある感じで」と言われて。私、演劇界の中でお祭り女だと思われているんだと思いました(笑)
それならば、お祭りのオーダーには応えつつ、お芝居面もただのハチャメチャにはならないようにしたいですね。ハチャメチャなドタバタ劇という風に見えるように打ち出すと思うのですが、観に来たら全然違うものになっていると思います。
あまり自分では分からないのですが、もっと早くパルコさんから声かかると思っていたんです(笑)。意外と来ねえなあと(笑)そんな簡単に来ないの当たり前なんですけど。まぁ冷静に考えると大きい劇場でいきなりやる人はいないので、ちゃんといろんな劇場で経験を踏んだ上での、今回のお話なので。今までやった色々なことの経験値が生かせればいいなと思っています。
パルコさんから「何かやりませんか」と話をいただいて、ギャンパレとミュージカルという自分発信の企画が通ったので、とても思い入れが強いです。本当にやりたいことを実現してもらえたので、すごく楽しみです。
これからは1本にかける時間を増やしたいです。逆ですね、今までと。10年やっていくうちにそういう気持ちになったし、今までやった芝居をもう1回リメイクしていくことにも興味が出てきました。これまで再演に興味がなかったのは、初期の作品は役者に宛て書きをしてきたので、他の人がやる意味があまりなかったんです。でも近年描いた作品は、ドキュメントのような作りではないので、人を変えてやってみたいな、自分としても違う演出でやってみたいな、という思いが出てきています。
あと、演劇をやっている人、特に小劇場出身の人は、いわゆるちゃんとした「ミュージカル」を観たことがない人が多いと思うんです。「ミュージカルって大きい芝居をして、急に歌って……」と思っている俳優や作り手にも観てもらいたいですね。「アイドルが主役の舞台でここまでできちゃうんだ!」と思ってもらうことが私の目標であり、課題です。「アイドルが舞台やったのね、頑張ったね」だけでは、終わらない舞台を目指しています。
自分が持っているプランが全部正しいと思って稽古に行かないつもりです。ギャンパレが正解を持っていることもあると思うので。自分の演劇、自分が今まで作ってきた演劇論が全て正しいと思わず、かなりこちらも柔軟にいこうと思っています。
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