【インタビュー】B’z、『NEW LOVE』
を語る「新しい刺激/新しいものが生
まれる瞬間を探したい」

シンプルにハード、時にファンキーであり、時にメロウであり、そして常にダイナミック。心の奥底まで突き通していくような言葉を携えて、全13曲の雄叫びは現代を活きるすべての人々へのエールに聞こえ、時に身に迫るアラートのようにも響く。そんな作品をB’zが作り上げた。『NEW LOVE』と名付けられた21枚目となるアルバムである。
ポピュラリティはあるか? エンターテイメント性は? そして芸術性は? あらゆる観点で回り込んでみても、『NEW LOVE』への評価は揺るがない。“倫理的に見ても間違いはなく、裏切りもなければ、センスに溢れた”この作品は、令和元年を華々しく飾る作品として、多くのロックファンから称賛を得ることだろう。

デビュー30年をもって、初めて経験することとなった“声のトラブル”を抱えて敢行された<B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI->、サポートメンバーの一新…と、果敢なチャレンジと大きな変化に身を投じながら、平常心のままにB’zは邁進を続ける。鉄壁のミュージシャンシップで形成されたB’zだが、彼らが放つ人生を謳歌するようなグルーヴもまた、生身の人間だからこその生々しさに溢れている。

新時代の幕開けに向け、B’zに生きる松本孝弘稲葉浩志に話を聞いた。

   ◆   ◆   ◆

■それでもバンドの持つ
■演奏の力って凄い

──まず最初に、聞いておきたいことがあるのですが…。

稲葉浩志:はい、どうぞ。

──<B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI->では、いつものような声が出ないというトラブルに見舞われましたが、一体何が起こっていたのでしょうか。

稲葉浩志:あれは声の調子が悪かったのではなくて、実はその、喘息を発症していました。9月はまるまる発症したままだったので、あんな感じでした。呼吸が苦しいので、声を出すこと…歌をうたうことがままならないんです。

──パワーブリーズ(呼吸筋を鍛えるツール)もお休みですか?

稲葉浩志:あれはもう、あの時期は絶対に厳禁。刺激するとまずいので。

──周りの人々も心配だったでしょう?

稲葉浩志:周りも困りますよね(笑)。「無理やり演れ」とも言えないでしょうから。

松本孝弘:困るも何も、「30年もやっていれば、これくらいのこともあるだろう」って思う感じでしたね。確かに「今日は、もしかしたら最後まではできないかも」と思うような日もありましたけど、こればっかりは…。
──逆に、その状況でツアーを乗り切った事自体が信じがたいです。

稲葉浩志:一瞬ちょっと「これはさすがに、無理かな」という時は正直ありました。皆さんに協力していただき、あとドクターにもかかって、数日間だけ乗り切れるような集中的な処置をしまして。「あとのことは全部終わってから考えよう」ということで(笑)、とりあえず今は多少無理のある治療でもやっておこうかな、と。

──皮肉なもので、結果は感動的で素晴らしいライブが繰り広げられたわけですが、そこにはメンバー間での話し合いもあったのでしょうか。

稲葉浩志:いや、「今日は稲葉の調子が悪いから、みんな頑張ろうね」なんて話はしないですし、よくいう話ですけど、お客さんの前に出れば割と平気みたいなこともあります。やっぱりライブ自体は半分はお客さんの力が支えているようなところもあるので、「そこがあれば大丈夫」という気持ちも多少はあるんです。けど、さすがに今回はそれをもってしても「ちょっとこれは…」という感じもあり。

──本当に深刻だったんですね。

稲葉浩志:それでもバンドの持つ演奏の力って凄いし、それで背中を押されるというか、勢いをつけてもらって演っていたんだと実感しています。

──「鉄壁のライブを見せてきたB’zの歴史に傷をつける」「恥ずかしい歌を聞かせてしまう」といったネガティブで悔しい感情は?

稲葉浩志:9月のライブでは、そういう瞬間は何回か来ました。そこでのメンタル面での闘いは、ずっとありました。正直なところ、ツアーが終わった直後というのは……僕には満足感というのはなくて。

──おぼつかないところが悔しかった?

稲葉浩志:100点満点を見せたいという気持ちは誰もが持っているものだと思うんですけど、「でも、何が100点満点なの?」って思いまして。もちろん「お客さんが満面の笑顔で幸せな気持ちで帰ってもらえれば、それが100点かな」とは思うんですけど、反面では、自分の中で「やりたいことができない」というところがあるので、そこで自分を納得させるのがなかなか大変で。
──そんな稲葉浩志を松本孝弘はどうみていたのでしょう。

松本孝弘:それぞれありますからね…。お客さんにとって歌というのは一番わかりやすいところですけど、長年続けていると、いろんなことを抱えながらやらなきゃいけないんで、無事に終われてよかったんじゃないでしょうか。30周年だったしね。

──その様子はDVD/Blu-ray『B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI-』として世に出ているわけですが、不本意なパフォーマンスが発売されることに、どういう思いが重なりましたか?

稲葉浩志:これはドキュメントというか、その時の瞬間のリアリティを全部見せたほうがかえってスッキリするかなと。30周年ですし(笑)。

──改めてライブ映像を見直して、どう思われますか? 客観視はできないものでしょうか。

稲葉浩志:特に直後は。

──素晴らしいライブですから、観たほうがいいですよ(笑)。

松本孝弘:そうですか(笑)。

稲葉浩志:実際演っている最中は、映像で見るよりもっと苦しかった…というか、とんでもなく辛かったので、映像で観たときは、わりと「思ったより悪くない」と思いましたけどね(笑)。

松本孝弘:そういう事あるよね。自分で思っていたより、さほどそうでもなかったってね。

──喘息の状態で、ステージを思いっきり走っているのが信じられない。

稲葉浩志:それはもう、勝手にそうなっちゃうんで。
■また新しい消化の仕方をして
■今の自分の音を出している

──同時に、シェーン&バリーのリズム隊によるライブもこれが最後となりましたが、鉄壁のサポート陣を一新するというのは、スクラップ&ビルドを求めた結果なのでしょうか。

松本孝弘:今までもありましたからね。最近はシェーン&バリーだったわけですけど、黒瀬くんと満園くんの時もすごく良かったし、古くは明石くんがベースを弾いていろんなアレンジメントをやってくれた頃も良かった。やっぱりふたりで演っているから、いずれはターニングポイントが必ず来るんです。シェーン&バリーと増田くん、大賀くんのバンドは期間的にも長かったので、阿吽の呼吸と凄い演奏技術で言うことはなく、あのバンドとしては行けるところまで行けたんじゃないかな。

──なるほど。

松本孝弘:バンドとしては「そろそろ何か変わらなくちゃいけないんじゃないかな」というのは、何年か前からあったんですよ。もうちょっと大変な思いもしなくちゃいけないんじゃないかな、というね。

稲葉浩志:バンドも変わりながらここまで来て、メンバーが変わることのデメリットや大変さも想像していたんですけど、それでも新しい環境の中でさらにふたりで音を出していくことで、新しい刺激、新しいものが生まれる瞬間を探したいなという気持ちがありました。サポートメンバーには何の問題もないんですけど、だからこそ、みたいな。
──新しいツアー・サポートメンバーによる新B’zサウンドは、どういう感じに仕上がっていますか?

松本孝弘:新しいメンバーなので、いつもよりも長めにリハーサルも準備しているんですけど、みんな下準備も完璧で、リハ初日から全曲を演っていますよ。アルバム『NEW LOVE』で参加している曲はそのままリアルに再現できているし、過去の曲はみんな初めての演奏なので、とても新鮮だったりするんですよ。

──グルーヴも変わることでしょうね。

松本孝弘:だいぶ変わるんじゃないでしょうかね。楽しみですよ。みんなオリジナルの楽曲を聞いて、自分なりの解釈をしてプレイするわけですけど、それぞれにみんなの個性があるので、それはすごく面白い。

稲葉浩志:曲によって、特に古い曲などは違う聴こえ方がしたりするので、そういう意味では新鮮ですよね。自分たちも同じメンバーで何年も演っているうちに、オリジナルとも変わってきたりしていて、そのバンドメンバーのカラーが強くなってくるんです。改めてオリジナルを聴くと「あれ、こんな感じだったっけ」ってこともあったりしてね。そういう意味では、出発地点に戻ってオリジナルから今のメンバーのテイストで始めるという、最近ではやっていなかった作業が、また新鮮で面白いなって思います。

──ふたりにとって、メンバーが一新されることで得られることってたくさんあるんですね。

松本孝弘:ありますね。僕自身も、新しいアプローチで過去の曲に臨むというのは面白いし、すごくいい機会だしね。
──『NEW LOVE』を引っさげてのツアーになるわけですが、完成してみて『NEW LOVE』の手応えはどうですか?

松本孝弘:もうほんとにやりたいことを楽しんでやったものだからね。今までもそうやって進んでこれたけど。

稲葉浩志:元来、例えば1970〜1980年代のバンドに影響を受けていて、それでバンドを作り、それをわりとモダンな形にしようとスタートして、そのままずっと続けているんだけど、そんな中でまたデビューした頃とは違う気分でその頃の音楽を聴いていたりすると、また新しい消化の仕方をして今の自分の音を出しているんじゃないかな。

──そこに載せていく歌詞は、稲葉浩志の生活と環境の中から素直に出てくるものが表現されている?

稲葉浩志:それは常にそうです。

──喘息の発症や辛い思いや悔しさが、『NEW LOVE』の歌詞に影響を与えているものでしょうか。

稲葉浩志:それはありますね。そこから調子が戻るまではかなり時間がかかったので、そういう中での不安とか焦りもあるし、そこは地味ながら根っこの部分にあったんじゃないかと思います。

──「トワニワカク」などは、いわば不老不死を歌ったようなもので、本人の本音ではないにしろ、思いが宿っているのかも。

稲葉浩志:本当の気持ちのようなものですよ(笑)。“若くありたい”といった気持ちは誰しも多少あると思うんですよね。一方で、枯れていく良さも感じるわけですから、そういうところでのせめぎ合いみたいなものは自分の中にもある。歌詞にある“若くありたい”という気持ちはとてもピュアで、はかない願いでもあるわけで、そういうところは応援したいという気持ちで歌詞を書いたんだと思います。

──松本孝弘の生き様やプレイを横で見ながら、それが歌詞に反映されていくことはあるのでしょうか。

稲葉浩志:もちろん歌詞に影響します。「直接、松本孝弘のことを書きました」という歌詞はないですけど(笑)、ギターを弾いているところをずっと見てきているので、そういった“立ち振舞”だとか“仕事に対する姿勢” “人付き合いにおける姿勢”だとか“共感を覚えること”などを自分のフィルターを通して歌うことは、ふたりでやっていることへのリアリティというか、責任感ではないけれど、B’zでやっている意味においてはとても重要なことなので。
■僕たちから「いっぱいの新しい愛を」
■ということですね

──そんな『NEW LOVE』を引っさげ、ツアー<B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->はどのようなものになりそうですか?

松本孝弘:『NEW LOVE』の曲を中心に、過去の曲もいいバランスでやりますよ。しかも新しいメンバーで曲も雰囲気も変わってきていますから、また新しい流れで面白いと思います。

──ライブに参加することが最高に楽しいので、歌ったり踊ったりできる箇所がたくさんあったら嬉しいです。いっそ「WOLF」の「アオー♪」は僕らが叫びたい。

稲葉浩志:すごい具体的なリクエストですね(笑)。

──是非言いたい。「アオー」って。

稲葉浩志:そうですね(笑)。黙っていても言っちゃう人っていますよね(笑)。

──そうです。黙っていても言ってしまうので「いっそ任せてもらえませんか?」というお願い(笑)。

稲葉浩志:ははは、いいと思います(笑)。

松本孝弘:ライブでの大事なところだよね。やっぱり参加している感がないとね。

稲葉浩志:我々もはじめてのバンドなので、リハを重ねて固めていくわけですけど、これがお客さんの前に出るとまた少し違ったものになると思うし、今回のライブも非常に面白い体験になると思います。

──楽しみしかないですね。ツアータイトルも「Whole Lotta NEW LOVE」と名付けられて。

松本孝弘:分かりやすくていいよね。

稲葉浩志:いや(笑)、分からないって人もいると思いますけどね。

松本孝弘:分かりやすいのは、俺達だけか(笑)。

稲葉浩志:ロックファンはシャレの感じがわかると思いますけど(編集部註:Led Zeppelinの代表曲のひとつが「Whole Lotta Love」)。

──「Whole Lotta Love」には「胸いっぱいの愛を」という邦題がついていますが、「Whole Lotta NEW LOVE」ということは…

松本孝弘:僕たちから「いっぱいの新しい愛を」ということですね。

──新生B’zのパフォーマンスをとても楽しみにしております。ありがとうございました。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也
■21thオリジナルアルバム『NEW LOVE』

2019年5月29日リリース
【初回生産限定盤(CD+オリジナルTシャツ)】
BMCV-8055 3,611円 (税別)
【通常盤(CD)】
BMCV-8056 2,963円 (税別)
【アナログレコード】
BMJV-8056 4,630円 (税別)
▼収録曲
01. マイニューラブ
02. 兵、走る
 ※『リポビタンD』ラグビー日本代表応援ソング
03. WOLF
 ※フジテレビ系月曜9時ドラマ『SUITS/スーツ』主題歌
04. デウス
 ※スズキ『エスクード』TVCMタイアップソング
05. マジェスティック
 ※『江崎グリコ ポッキー』CM主題歌
06. MR. ARMOUR
07. Da La Da Da
08. 恋鴉
09. Rain & Dream
10. 俺よカルマを生きろ
11. ゴールデンルーキー
12. SICK
13.トワニワカク
※応募特典あり


■<B’z LIVE-GYM 2019>

6月08日(土) 鹿児島アリーナ
6月09日(日) 鹿児島アリーナ
6月14日(金) 三重県営サンアリーナ
6月15日(土) 三重県営サンアリーナ
6月19日(水) 神戸ワールド記念ホール
6月20日(木) 神戸ワールド記念ホール
6月22日(土) 神戸ワールド記念ホール
6月23日(日) 神戸ワールド記念ホール
6月28日(金) サンドーム福井
6月29日(土) サンドーム福井
7月03日(水) 大阪城ホール
7月05日(金) 大阪城ホール
7月06日(土) 大阪城ホール
7月09日(火) 横浜アリーナ
7月10日(水) 横浜アリーナ
7月16日(火) Zepp Nagoya
7月18日(木) Zepp Nagoya
7月19日(金) Zepp Nagoya
7月26日(金) 愛媛県武道館
7月27日(土) 愛媛県武道館
7月30日(火) さいたまスーパーアリーナ
7月31日(水) さいたまスーパーアリーナ
8月03日(土) Zepp Fukuoka
8月04日(日) Zepp Fukuoka
8月08日(木) 宮城 セキスイハイムスーパーアリーナ
8月10日(土) 宮城 セキスイハイムスーパーアリーナ
8月11日(日) 宮城 セキスイハイムスーパーアリーナ
8月24日(土) 高崎アリーナ
8月25日(日) 高崎アリーナ
8月30日(金) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
8月31日(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
9月03日(火) 幕張メッセ 幕張イベントホール
9月04日(水) 幕張メッセ 幕張イベントホール
9月07日(土) 広島グリーンアリーナ
9月08日(日) 広島グリーンアリーナ
9月10日(火) マリンメッセ福岡
▼新サポートメンバー
BRIAN TICHY(Drums) / YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA(Guitar) / MOHINI DEY(Bass) / SAM POMANTI(Keyboard)


■<B’z SHOWCASE 2019 -魔界転翔->

6月04日(火) 天草市民センター
open18:00 / start19:00
▼チケット
全席指定 / 10,000円(税込)
※会場へのお問い合わせはご遠慮ください
※本公演のチケットご購入、ご入場は、熊本県天草市・上天草市・天草郡に居住されている方限定となります


■<SUMMER SONIC 2019>

B’z出演日 ※ヘッドライナー
8月16日(金) 東京会場
8月18日(日) 大阪会場
http://www.summersonic.com/2019/

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