凛として時雨の
『still a Sigure virgin?』に
宿る中毒性を帯びた
オリジナリティー

冒頭から迫る独創的なフレーズ

言うまでもないことだが、アルバム『still a Sigure virgin?』を聴いてみると、さらに凛として時雨のすごさを実感できる。それはもうオープニングM1「I was music」からしてだ。バンドアンサンブルのスリリングさは3ピースバンドならでは…といった感じだが、ラウドなサウンドはハードコアっぽくもオルタナっぽくもノイズっぽくもあって、何かひとつのジャンルに定められるものではない。構成もまた然り。日本のポピュラー音楽には概ねA→B→サビという展開があって、それはロックにおいてもほぼ踏襲されているが、M1「I was music」を聴いただけで、凛として時雨の楽曲がそうした不文律に則っていないこともよく分かる。そればかりか、《いいよ おかしくなって》のリフレインなどは、明らかにポップスのそれとは異なる容姿だ。それでいて、サビ(あれは一応“サビ”と言っていいんだろうな)はちゃんとキャッチーで、そのパートを彩るサウンドは疾走感にあふれ、ロックの基本といった印象である。

かと言って、全体のバンドアンサンブルは決して基本に忠実と言えるものではなく、ドラムもベースも実にフリーキー。随所でグイングインとランニングするベースもさることながら、2番辺り(厳密に2番というわけではない)からの、ピエール中野(Dr)が叩くドラムの暴れっぷりは凄まじい。“普通”(あえてカッコ書き)ならそこにシンバルは入れないだろうというところにシンバルが入っていたり、“何故そこで!?”という箇所でのベードラの連打があったり、あまり──いや、ほとんど聴いたことがないほど独創的なフレーズが聴ける。《頭がバラバラ 宇宙に浮いて弾けた/dreaming 夢見てる I was music》の歌詞も、そもそも「I was music」というタイトルも巧く考えたものだと思う。

続くM2「シークレットG」。冒頭はギターのアルペジオが引っ張り、リズム隊も落ち着いた印象で、ファンキーではあるものの、これはわりと“普通”かもなと思って聴き進めていくと、Bメロ(あそこは所謂Bだろう)終わりからガツンとサウンドが密集していく。オルタナ系と言えばそうかもしれないし、プログレと言えば言えるかもしれないが、いい意味でそれらとは似て非なる爆音の洪水だ。以下、M3「シャンディ」もM4「this is is this?」もM5「a symmetry」も同様の聴き応え。同期を取り入れたM3「シャンディ」はパッと聴きM2「シークレットG」以上にアンサンブル、メロディーは“普通”な印象を受けるが、途中に入る変拍子気味なリズムがその浅はかな感想をかき消してくれる。

OKMusic編集部

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