【布袋寅泰 インタビュー】
“GUITARHYTHM”という言葉が
僕の背中を押してくれた
布袋寅泰のライフワークと言える“GUITARHYTHM”。そのシリーズ最新作である『GUITARHYTHM VI』が令和元年に10年振りの復活を果たす! 収録曲はいずれも実験精神を損なうことなく、現代ならではのメッセージ性を湛えつつも、見事にポップミュージックへと昇華。自己ベスト更新は間違いない、最新型“HOTEI”の傑作である。
30数年間やってきて今は
何をやっても自分になっちゃう
アルバム『GUITARHYTHM VI』は“GUITARHYTHM”シリーズとしては10年振りとなるわけですが、このタイミングで“GUITARHYTHM”が復活したことを布袋さん自身はどうとらえていますか?
前作の『Paradox』(2017年10月発売)というアルバムは、長年の自分のキャリアの中でも、サウンド的にも、今という時代を反映していたし、歌詞の部分においてもとても満足いく、自己最高傑作だと思ってるんですね。なので、その先の新しい作品に取り組む時になかなか筆が進まなかったというか、プレッシャーがあったんです。そんな時、スタッフから“そう言えば、2018年は1stアルバム『GUITARHYTHM』から30周年ですね”って言われて、30年前に『GUITARHYTHM』を作った時のことを思い起こしてみたんですね。バンドがピークで解散して、初めてソロアルバムに取り組む時で、もともと洋楽指向だったから、そういうサウンドにもトライしてみたかったし、BOØWYというフォーマットとあのサウンドを引きずるわけにはいかないわけで、自分が手掛けたサウンドを自分でプロデュースする…新しいことにトライするチャンスでもあり、自分自身と向き合わざるを得ない時間でもあったんです。それで、もともと描きたかったものをコンピュータとギターだけという、バンドとはまったく違う形態で描いてみようと。それはすごく大胆なチャレンジだったし、もしかするとファンが求めていたものとはちょっと違ったのかもしれないけれど、その冒険を受け入れてくれたファンも多かったし、すごく布袋らしいと言ってもらえたと思うんです。
では、『GUITARHYTHM VI』はそのスタイルをもう1度と?
そうではないんですよ。もうあの時の感じとは違う。今はコンピュータが当たり前になっていて、それこそノン・ミュージシャンでもテンプレートで広がりのある音が作れる。ツールという意味ではコンピュータは便利を通り越してトゥーマッチなくらい、クリエーションの場所だけじゃなく、我々の日常にあるわけじゃないですか。今、そのコンセプトと向き合ったら、また違うものが作れるだろうし、同時にこの30年という自分の人間としての時間、そして今という目の前にある現実を“GUITARHYTHM”というテーマのもとで描いたらどんなふうになるか…そういうところで何となく肩の荷が下りたんです。その意味では、“GUITARHYTHM”という言葉が僕の背中を押してくれました。
完成した『GUITARHYTHM VI』を拝聴しましたが、バラエティー豊かながら、しっかりと一本筋が通っていると言いましょうか、どう聴いても布袋寅泰のアルバム以外の何ものでもない作品になりましたよね。
それは嬉しい感想ですね。ある種、オムニバス映画のような、1曲ずつのテーマは違うんだけども、そこには一貫したものがあって、タイトル通りの“GUITAR”と“RHYTHM”という、僕のアーティストとしてのスタイルそのものに集約されたアルバムになったと思いますね。30数年間やってきて、今は何をやっても自分になっちゃうし、“これは布袋イズムなんだな”と自分でも思います。ただ、歌詞は作詞家のみなさんと話し合いながら作っていきましたけれども、今回の歌詞では“あの日、見た未来”を描いてみようと思ったんですよ。それというのも、テクノロジーが進化して、我々が思い描いていた未来は今ここにあるわけじゃないですか。AIやVR、AR、いろんなものがだんだんと我々を支配し始めてる。“未来”という言葉を思い浮かべるだけで、これ以上前に進めてはいけないような、ある種の閉塞感ってあるじゃないですか。そんなことも今という未来に住んでいる我々だからこそ描けるリアルなSFだし、そういったところもテーマに置いて作っていったんですね。