『南から来た十字軍』はルーラルで
骨太のフュージョンを提示した
クルセイダーズの傑作

全盛期のクルセイダーズ

そして、ブルー・サムに移籍後4枚目となるライヴ盤『スクラッチ』(‘74)をリリースする。ベースにマックス・ベネット、ギターにラリー・カールトンというクルセイダーズにちょくちょく参加している準メンバー的なふたりを迎え、これまでとは違う新たな段階に突入したことがよく分かるアルバムになっている。特にラリー・カールトンのギターはエフェクターの進化もあって、すでにサステインの効いた彼らしい音を出している。特に「ソー・ファー・アウェイ」でのソロワークは名演だろう。

続いてリリースした『サザン・コンフォート』(‘74)、『チェイン・リアクション』(’75)も名作で、正式メンバーになったカールトンのギターも冴え渡っている。ただ、ベース奏者は相変わらず不在で、ウィルトン・フェルダーがサックスとベースを重ねて録音している。それだけに、『スクラッチ』で感じられた緊張感が欠けているところは否めない。

本作『南から来た十字軍』について

76年、ようやくベーシストがロバート・ポップウェルに決まり、ブルー・サムでの7枚目『南から来た十字軍』がリリースされた。ポップウェルはラスカルズのサポートや南部でスタジオミュージシャンも務めた強者で、デュアン・オールマンと一緒に仕事をしたこともあるプレーヤーだった。このポップウェルがどえらいプレーヤーであることは、1曲目の「スパイラル」で早くも分かる。というか、この「スパイラル」こそラリー・カールトンとジョー・サンプルの一世一代の名演が聴ける完全無欠のナンバーだ。ポップウェルの加入で、スティックス・フーパーのドラミングも水を得た魚のように文句なしのプレイを聴かせる。この曲の後半、ポップウェルのベースソロが登場するのだが、これもフュージョン史に残る大名演である。ようやくフェルダーが安心して任せられるプレーヤーが参加し、『スクラッチ』の時に劣らない丁々発止のインタープレイが繰り広げられている。この1曲で多くのリスナーは吹っ飛んでしまっているはずだが、続く「キープ・ザッツ・セイム・オールド・フィーリング」では珍しくアンサング・ヒーローズの彼らがコーラスを披露している。「マイ・ママ・トールド・ミー・ソー」はカバーも多い彼らの代表曲のひとつ。ここでもポップウェルが煽るので、それにつられてシンコペーションが効いたドラムの応酬が聴きもの。これも名曲! アルバムのラストを飾る「フィーリング・ファンキー」はジョー・サンプルが珍しく攻撃的にクラヴィネットを弾いていて、ポップウェルのスラップも実に力強い。本作には全7曲収録されており、ここに挙げていない曲も悪くない出来なのだが、上記の曲がすごい演奏だけに少し分が悪いかもしれない。

本作は数多いフュージョン作品の中でも名演の詰まったアルバムなので、もしこのアルバムを聴いたことがないなら、ぜひこの機会に聴いてみてください。きっと新しい発見があると思うよ♪

TEXT:河崎直人

アルバム『南から来た十字軍』1976年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. スパイラル/Spiral
    • 2. キープ・ザット・セイム・オールド・フィーリング/Keep That Same Old Feeling
    • 3. マイ・ママ・トールド・ミー・ソー/My Mama Told Me So
    • 4. 太陽の輝き/Til The Sun Shines
    • 5. アンド・ゼン・ゼア・ワズ・ザ・ブルース/And Then There Was The Blues
    • 6. セレニティー/Serenity
    • 7. フィーリング・ファンキー/Feeling Funky
『南から来た十字軍』(’76)/The Crusaders

OKMusic編集部

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