【インタビュー】ポゼスト、伝説的バ
ンドの伝説的復活劇

デス・メタルの生みのゴッドファーザー、ポゼストが、33年ぶりのニュー・アルバム『レヴェレイションズ・オブ・オブリヴィオン』をリリースする。『レヴェレイションズ・オブ・オブリヴィオン』は、どこを切ってもポゼストという、まさに伝説的バンドの伝説的復活劇であり、往年のファンはもちろん若いエクストリーム・メタル・ファンにも聴いてもらいたい作品となった。

2007年の再結成から12年、ついに登場したアルバムの制作秘話を、元祖デス・メタル・ヴォーカリストのジェフ・ベセーラに聞いてみた。

──33年ぶりとなるニュー・アルバムですが、2007年にポゼスト再結成後、なぜリリースまで12年もかかったのでしょう。

ジェフ・ベセーラ:2007年くらいから最初の新生ポゼストでツアーを始めたけれど、その後、結局ドラムのエミリオ以外とは友好的に分かれることになった。そこから、お互いのために死ねるような家族のような強力なメンバーを探し始めた。結局現在のメンバーに落ち着くまでに、25人くらい試したかな。ずっとニュー・アルバムは作りたいと思っていたんだけどね。これというメンバーを見つけるのに時間がかかったし、事を急いでも失敗するだけだからね。ツアーで昔の曲をやりながら、新曲を書いていったんだ。でもそれは大変な作業だったよ。曲を書いては試してみて、うまくいかなければ捨てて、というのを繰り返した。新しく加入したメンバーはオールドスクールなロード・ウォリアーで、ポゼストに加入する前からさまざまなバンドで活躍しているから、彼らと俺の音楽性を混ぜ合わせていくという作業だった。「ポゼストであるとはどういうことなのか」、俺の哲学などを教え込みながらね。

──そのニュー・アルバムですが、完全にポゼストですよね。1980年代とはギタリストも異なるのに、なぜここまでポゼストのサウンドになったのでしょう。あなたから他のメンバーに細かい指示を与えたのですか?

ジェフ・ベセーラ:もちろんさ。彼らの書いてきた曲を大量にボツにせざるをえず、おそらく曲の50%は俺の手によるものだよ。歌詞はすべて俺が書いている。俺がリフをいくつかダン(ダニイェル・ゴンザレス)に送って、それを元に彼がファインチューンをして曲に仕上げた。色々試してみた結果、この方法がベストだとわかったんだよ。彼は素晴らしいミュージシャンであり、アーティストでプロデューサーでエンジニアなんだ。ファースト・アルバムでは、俺のクレジットは歌詞以外入っていないけど、これを聴けばポゼストには常に俺の音楽的影響があったということがわかるだろうね。

──一方で「アバンダンド」のようなシンガロングのコーラスは、過去のポゼストには見られなかったものですね。
ジェフ・ベセーラ:そうだね、いくつか新しいフックを付け加えてみたんだ。ファンがもっとアルバムを楽しんでもらえるようにね。俺たちはアーティストであるけれども、さらに大切なことはエンターテイナーでもあるということだ。商業的なことをやろうとしたわけではなく、ただファンに楽しんでもらえたらいいなと思った。実際に気に入ってもらえているようだし、うまく行ったと思うよ。あのコーラスは、全部俺がオーバーダブしたんだ。

──歌詞はどのような内容ですか?

ジェフ・ベセーラ:俺の書いている歌詞は、すべて"Seven Churches of Revelation”について、そしてそれが人類に伝えるメッセージについてだ。サタンの降臨とかね。もともとはアルマゲドンやアポカリプスがベースで、今回のアルバム・カバーは、8番目の教会…つまり新たなポゼスト、俺たちの新たな方向性を示している。もともとのアイデアは「もし神という概念がなかったら、世界はどうだったか」ということ。もちろん物事が非常に混沌とした、人々が動物的になっているようなダークサイドにも触れている。俺たちがそうなるというわけではないけれど、世界の大部分がとても自己中心的になっているからね。みんなが独自の倫理基準を持っている。そういう世界をデス・メタル的に精神的な旅として、この世の地獄を描いた。それから、テクノロジーこそが新たなルシファーだという歌詞もある。聖書に出てくるような、左手や左手首に獣の数字が書かれているというのではなく、今では携帯電話が生活を支配して、俺たちの宇宙、世界を操り人形のように操っている。それから「Seven Archons of Hell」や「Eight Kings of Hell」のような悪魔をテーマにしたもの、ベルフェゴールとか、悪魔学やあまり知られていない儀式について。彼らは大天使を守護に使って、強力な悪魔を召喚し世界を支配する力や知識を得るんだ。それから「シャドウカルト」は、ボヘミアン・グローヴみたいな内容だ。毎年集まって、乱交やドラッグ、アルコールなどに耽って、あらゆる限りの奇妙な儀式を行い、そこで世界の運命を決めるという話さ。とにかくどの曲も、違ったヴァイブ、違ったトピックを持っている。色んなものをミックスしたほうが興味深くなるからね。

──あなたのヴォーカル・スタイルは非常に独特のものですが、どのようなヴォーカリストから影響を受けたのでしょう。

ジェフ・ベセーラ:いろんなパンクとかモーターヘッドだね。俺たちは、地球上で最もヘヴィなバンドをやろうとしていたわけだから、こういうスタイルがぴったりだと思った。まあ、もともと俺はこういう声なんだよ(笑)。こういう声でしか歌えないんだ。ヴォーカリストがいなかったからとりあえず俺が歌ってみた。音楽はとてもヘヴィだったから、こういう風に歌うべきだと思ったんだ。マイクを高くしたのはレミーの影響だけど、ポゼストの音楽はもっとヘヴィだったから、スタイルに合った歌い方をした結果がこれさ。

──1980年代終わり頃からのデス・メタル・ブームをどう見ていましたか?
ジェフ・ベセーラ:とてもエキサイティングだと思ったよ。実は、俺はオビチュアリーのファースト・アルバムのプロデュースとバッキング・ヴォーカルをやる予定だったんだ(註:実際にはサード・アルバム『The End Complete』と思われる)。だけど俺は退院したばかりで、まだめちゃくちゃな状態でね。とてもやりたいとは思っていたんだけど、9ヶ月も入院していてモルヒネを打ったりもしていたから実現できなかった。それに当時Debbie Abono(註:1980年代にポゼストのマネージャーをやっていた人物。エクソダス、ヴァイオレンスなどのマネジメントなども手掛けていた)がオビチュアリーのマネージャーもやっていたし。オビチュアリーやデスみたいなバンドは最高だと思ったよ。やっとデス・メタルが人気を博したからね。彼らのことはとても誇りに思っているし、大好きだよ。

──1980年代当時、あなたはまだ高校生だったんですよね。

ジェフ・ベセーラ:そうだね、俺たちはキッズだったよ。とても反抗的で”Fuck the world”みたいなサタニックなデス・メタルをやりたくてさ。革命的なことをやりたかったし自分たちのやっていることを信じていた。アンダーグラウンドでは本当にたくさんのことが起こっていて、みんなが競争していたよ。俺たちの方がヘヴィだぞって。確かにヘヴィなバンドはいたけれど、俺は「どうせやるなら極限までやってやれ」と思っていたな。

──最後に日本のファンへのメッセージを。

ジェフ・ベセーラ:コンニチハ。ポゼストのジェフ・ベセーラです。5月10日に俺たちのニュー・アルバム『レヴェレイションズ・オブ・オブリヴィオン』が出るのでぜひ買ってくれ。次回また日本に行ったときは、ぜひ見に来てくれ。

取材・文:川嶋未来
写真:Hannah Verbeuren

ポゼスト『レヴェレイションズ・オブ・
オブリヴィオン』

2019年5月10日 世界同時発売
【CD】 GQCS-90708 / 4562387209330 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.チャント・オブ・オブリヴィオン
2.ノー・モア・ルーム・イン・ヘル
3.ドミニオン
4.ダムド
5.ディーモン
6.アバンダンド
7.シャドウカルト
8.オーメン
9.リチュアル
10.ザ・ワード
11.グレイヴ
12.テンプル・オブ・サマエル

【メンバー】
ジェフ・ベセーラ(ヴォーカル)
クラウデオス・クレイマー(ギター)
ダニイェル・ゴンザレス(ギター)
ロバート・カルデナス(ベース)
エミリオ・マルケス(ドラムス)

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