草彅剛が犬になる!? 舞台『家族のは
なし PARTI』公開稽古&囲み取材レポ
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何気ない日常会話を通じ、クスッと笑えてちょっぴり切ない、そんな家族の姿を描く『家族のはなし PARTI』。京都劇場で2019年5月4日(土)に初日を迎える本作の公開稽古が、4月末に都内某所にて開催された。稽古後には囲み取材も行われ、草彅剛をはじめとする出演陣が間もなく開幕する舞台への意気込みを語った。

本作は広告業界の2人のクリエイター・淀川フーヨーハイ (中治信博)とあべの金欠(武尾秀幸)の作・演出によって、それぞれ独立したショートストーリーの2本立てで構成される。主演に草彅剛を迎え、小西真奈美、畠中洋、小林きな子、池田成志といった確かな実力を持つ芸達者な役者陣が揃った。

この日公開されたのは、第1話「わからない言葉」の冒頭シーン。池田と小西演じる夫婦と、草彅演じる男という3人の家族を中心にストーリーが進んでいく。
稽古場に広がる舞台セットは、生活感が漂うリビングダイニングだ。妻はリビングのテーブルで何やら書類とにらめっこしている。その書類に必要な情報がわからず不満を口にする妻と、スマホに夢中で生返事をする夫。この設定だけで、どんな場面か容易に想像できるのではないだろうか。それ程、世の中の家庭でありふれていそうなシーンである。
一方男は、2人の会話には一切加わらず部屋の中をうろついている。観葉植物をいじったり、椅子に座ったり、夫婦のどちらかに寄り添ってみたり。2人が話す様子を観察しているようで、あまり気にしていないようでもある。夫婦も男に対して、あくまで自然に振る舞う。そう、特に作中で説明されることはないのだが、先程から部屋を自由に行き来しているこの男、実はペットの犬という設定なのだ。

冒頭から始まった夫婦のやり取りが続く中、突然「ポーン」という音が鳴った。見た目は何も変わらずシーンは続いている。が、この音を境に夫婦は「ぱぴぷぺぽ」や「ばびぶべぼ」のような謎の言葉を使い始める。とは言え、決してめちゃくちゃに話しているわけでもなく、何となく言いたいことは伝わってくるのが不思議だ。それと同時に、さっきまで無言を貫いていた男が喋りだす。「わっかんないなー。何言ってんのかなー」
どうやら先程の「ポーン」という音と同時に、世界が犬の視点に切り替わったようだ。

夫婦が話す謎の言葉の中で、時折「ハッピー」「だめ」「さんぽ」といった言葉だけははっきりと聞き取れた。犬が理解している言葉だけは聞き取れるようになっているのだろう。まるで自分が犬になったかのような気分が味わえる演出が新鮮で面白い。ある意味、非常に演劇的な作品だとも言えるだろう。

夫婦のやり取りは、次第にヒートアップして口論へと発展していく。すると、男は心配そうな様子で彼らに近づき、まるで子犬のような目で覗き込む。どうにかして2人を笑わせようと男がおどけて歌い踊る場面では、報道陣の中からも思わず笑い声が漏れていた。草彅が顔をクシャッとさせ愛嬌を振りまく姿は、犬そのものだ。
この家族の姿を見ていると、「あ〜あるあるこういうこと」と頷ける場面が多い。それと同時に、ペットを飼っている人ならば「普段こんな風に自分は見られているのだな」と、自身のペットを見る目が少し変わるかもしれない。極めて日常的ではあるが、ある意味非日常を体験できる風変わりな作品である。

稽古後に行われた囲み取材では、先程のシーンに出演していた草彅、小西、池田の3名が揃って登場した。
草彅は、舞台初日に向けた想いを聞かれると「本当に斬新で、今までに経験したことがない舞台になるんじゃないかな。お客さんにお披露目するのが楽しみにな演目になっています」とニヤリと笑みを浮かべる。斬新というのは、小西と池田が犬視点の世界で“謎の言葉”を話すことを指している。
その件について小西は「大変です! 最初台本を見たときは今の技術を駆使してやるのかと思っていたのですが、『母音を変えずに子音だけ好きなように変えてやってください』という指示があって。それを覚えるのに必死なので、第1話で私が唯一心から楽しめるのは『ばばび〜!』ってわんちゃんをかわいがっているときだけです」と苦笑する。
これに対し草彅は「『ばばび〜』は『かわい〜』ってことなんです」とすかさず解説。台本の元のセリフの下に“謎の言葉”を書き込んで覚えているという池田は「どこまで伝わるかな、と。不思議な話だなあと見ていただければ」と言い、この一見変わった舞台の解釈を観客に委ねている様子だった。
そんな2人をよそに草彅は「正直、犬役で良かったな。『この人たち何やってるのかなー?』って顔していれば犬になるから(笑)」と冗談を言いつつ、「2話では犬じゃないですよ。1話も2話も犬だったら、お客さん怒ると思います。全然喋ってねえじゃん!って(笑)」と会場を沸かせた。
つかこうへいの舞台『蒲田行進曲』以来、19年ぶりの共演になるという草彅と小西。草彅は「お互い、つかさんに見出された部分があるのですごく親近感が湧いていて。特に2話では真奈美ちゃんと僕は夫婦役。関係性が出来上がっている状態からのスタートなので、非常にいい形になると思います」と語り、夫婦役でのコンビネーションに期待が高まる。小西は「(草彅の)目の前に立ってお芝居をさせていただく瞬間に、あの19年前の感じが蘇ってきたんです」と言い、「直球で投げると直球で受け止めて返してくれるその感じが、19年経っても変わらなくて。存在が頼もしいし、いてくださるだけで安心します」と、2人の信頼関係は確かなようだ。また、1話と2話での関係性の違いについて聞かれた小西は「1話はめちゃくちゃにかわいがって、2話では頼っています(笑)」と目を細めて微笑んだ。
舞台の演出の話に移ると、1話では映像が使用され、草彅が2年前から飼っている愛犬のくるみちゃんも映像出演する場面があるとのこと。草彅は「『これ、お客さんにどう伝わるのかなあ』と思いながらやる部分もあって、そこはハラハラドキドキします。でも、それを皆に感じていただければとてもいい舞台になるんじゃないかな」と、不安はありつつも斬新な演出を楽しんでいるようだ。
続けて、まもなく平成が終わり令和が始まることに関しては「記念すべき、忘れられない思い出の舞台になると思います。平成は一番長く芸能活動をさせてもらい、思い出もたくさんつまっています。それをプラスに変えて、令和に繋げていきたいです」と新しい時代へ向けての想いを述べた。
最後に、草彅が「来てくれたお客さんはとても幸せな気分になって劇場をあとにできる、そんな舞台になっていますので、どうぞお楽しみください」という言葉を残し、囲み取材は終了した。
舞台初日まで残りあとわずか。何気ない会話で繰り広げられるストーリーだからこそ、演じる側にとって難しさがあるこの作品が、一体どう仕上がってくるのか。新しい時代を迎えた京都の地での幕開けを、楽しみにしていよう。
取材・文・撮影=松村蘭(らんねえ)
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