<A NIGHT AT THE MAKUHARI>、クイ
ーン・トリビュート・バンドの華麗な
る競演

国内外のクイーン・トリビュート・バンドが結集するフェス<A NIGHT AT THE MAKUHARI>が、4月20日(土)、千葉・幕張メッセ イベントホールにて開催された。
同イベントにはこの夏ジャパン・ツアーを予定しているアルゼンチンのGOD SAVE THE QUEENに加えて、日本からGUEEN(グイーン)、QUEENESS(クイーンネス)、QUEER(クイーア)の3組が出演。関係者らによる貴重なトークも交えて、およそ5時間に及ぶ熱いステージが繰り広げられた。以下、そのオフィシャル・レポートをお届けする。

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定刻の16時になると、総合進行を務める石角隆行がイベント趣旨説明に続いて開会を宣言。クイーン・トリビュート・イベント史上、最大規模となったイベント<A NIGHT AT THE MAKUHARI>がスタートした。

この日のイベントで、日本のトリビュート・バンド3組はクイーンの全6回の来日公演(1975年〜1985年)のセットリストを再現する。3組のバンドの演奏で、6回の来日公演の軌跡を時系列で追体験できるというプログラムだ。
▲GUEEN

最初に登場したのは、初来日となった1975年と1976年のセットリストを担当するGUEEN。白いスモークが舞台を覆い、SEの「プロセッション」が流れる中、メンバーが登場。セカンド・アルバム収録の「オウガ・バトル」で幕を開けた。彼らの特徴はクイーンのライブ音源でなく、あの多重録音を極めたスタジオ盤をステージで忠実に再現すること。本家すらステージでフル演奏した事のない、あの複雑な構成の「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」(『クイーンII』収録)を完全演奏。圧巻は「ボヘミアン・ラプソディ」で、冒頭のコーラスから中間部のオペラ・コーラスまでをもステージで再現し、集まったオーディエンスを大いに驚かせた。
▲トーク・コーナーPART1

続いてはトーク・コーナーPART1へ。ゲストはクイーン全6回の来日でフレディ・マーキュリーの専属ガードマンを務めた伊丹久夫と、ロンドンのフレディ・マーキュリー邸の日本庭園の造園を担当した高原竜太朗だ。伊丹はスクリーンに当時の写真を映しながら、初来日の喧騒から最後となった1986年のプライベート来日までのエピソードを披露。高原もフレディ宅の見取り図を投影しながら庭園内の滝や池などを写真で紹介し、“錦鯉全滅事件”など、8ヶ月間フレディ宅に滞在した自身ならではの貴重なエピソードを明かした。さらにスペシャル・ゲストとして、フレディが日本で最後に訪れた栗田美術館の館長も登壇。3人から見たフレディ・マーキュリー像を語り、ファン垂涎のトーク・コーナーが終了した。
▲QUEENESS

2番目に登場したバンドはQUEENESS。1979年と1981年の来日公演セットリストを担う。場内に轟く雷は、1979年の<ライブ・キラーズ・ツアー>のオープニングSE。当時のコンサートに行ったファンには堪らない演出だ。中盤には<ライブ・キラーズ>ツアー時のハイライトでもあった、ブライアン・メイのソロが披露される「ブライトン・ロック」(『シアー・ハート・アタック』収録)をプレイし、これにはかつてギター小僧だったファンたちも大喜び。また、ステージ前面に全員が並ぶアコースティック・ナンバー「'39」(『オペラ座の夜』収録)では懐かしすぎて涙する観客も。そして日本語曲「手をとりあって」(『華麗なるレース』収録)では、4,000人の観客が大合唱。演奏が終わってのエンディングに流れてきたのは、なんと「GOD SAVE THE QUEEN」風にアレンジされた「君が代」! この日のために制作された完全“新作”だ。なんとも粋なエンディングで、QUEENESSはステージを降りた。

ここでインターミッションに入る。展示ブースにはブライアン・メイ愛用のアンプ、VOX社のAC-30が9台、ブライアンのステージ・セットと同様に積み上げられた。70年代のクイーンのメンバー4人の等身大パネルや、『ミュージック・ライフ』のクイーンが表紙になった号のパネルなど、記念撮影の長い行列ができていた。
▲QUEER

休憩明けに登場したのは、この日最後の国内トリビュート・バンドとなるQUEER。クイーン初のスタジアム公演が行なわれた1982年と、最後の来日公演となった1985年のセットリストから演奏する。オープニングSEは「フラッシュのテーマ」。そして演奏されたのはアルバム『フラッシュ・ゴードン』収録の数少ないボーカル曲のひとつ「ザ・ヒーロー」! そしてロジャー作の「アクション・ディス・デイ」(『ホット・スペース』収録)。こんなレアな曲が並ぶのは、まさしく1982年のジャパン・ツアー! とっても寒かった西武ライオンズ球場や西宮球場を思い出した人もいたことであろう。後半は最後の日本公演となった1985年。「RADIO GA GA」(『ザ・ワークス』収録)では、国内トリビュート・バンド最年少ボーカル、バルサラ君の煽りにオーディエンスが両腕を上げてクラッピング。会場は完全にひとつになる。そして、最後はバルサラ君が着物をまとってステージに登場。1975年初来日の最終日、5月1日の日本武道館でフレディが着た、あの着物だ。なんと、QUEERは最後の来日公演(1985年)から、最初の来日公演(1975年)に向けてオマージュを捧げたのだ。なんとも粋な演出で日本チームのステージを締めた。
▲トーク・コーナーPART2

そしてトーク・コーナーPART2。お待ちかね、東郷かおる子の登壇だ。『ミュージック・ライフ』誌の記者として日本のメディアで最初にクイーンに取材した東郷がいなければ、彼らは日本でここまでブレイクしていなかったことであろう。もうひとりのゲストは東郷の後輩でもあり、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の字幕監修も手がけた増田勇一。前半は字幕での苦労話や、映画のキャストと実際のメンバーとの違いなど映画について語る。後半は、このイベントの日からちょうど27年前の1992年4月20日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催されたフレディ・マーキュリー追悼コンサートがテーマ。このふたりは当時、同コンサートに取材に行っており、出演アーティスト各々のパフォーマンスについてのトークで盛り上がった。
▲GOD SAVE THE QUEEN

ライブ・パフォーマンスのトリはGOD SAVE THE QUEEN(以下GSQ)。場内には「One Vision」(『カインド・オブ・マジック』収録)のイントロが鳴り響く。日本のトリビュート・バンドが1985年までのセットリストを綴ったが、GSQはフレディ生前最後となった<マジック・ツアー>(1986年)のオープニング・ナンバーである。GSQは、世界中で活動するアルゼンチン出身のバンド。何よりも凄いのはパブロ(Vo)のソックリ度で、ルックスや4オクターブ超えとも言われる広い声域のみならず、立ち居振る舞いなど、そのシンクロ度は演奏を重ねる毎に増し、フレディ・マーキュリー本人が降臨しているのではと錯覚するほどだ。フレディの生前にはライブで演奏されることがなかった「アイ・ウォント・イット・オール」(『ミラクル』収録)、「ショウ・マスト・ゴー・オン」(『イニュエンドウ』収録)も披露。後半はお馴染みの曲を次々に演奏し、場内もこれ以上ないほど盛り上がる。
「ボヘミアン・ラプソディ」が終わり、ドラマーが「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のビートを叩き始めると、そこへ、この日出演したGUEEN、QUEENESS、QUEERのメンバーがステージに再結集。全メンバーでの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」という感動的なフィナーレで、全40曲超、5時間の長丁場となった<A NIGHT AT THE MAKUHARI>は閉幕した。

出演バンドすべてがクイーン愛に満ちたパフォーマンスで、リアルタイム世代から映画でクイーンを知った新しいファンまで楽しめ、満足できた充実のイベントとなったことであろう。いよいよクイーン+アダム・ランバートの来日公演も発表されたが、今の“ご本家”がやらないようなマニアックかつレアな選曲が聴けるのは、この手のイベントならでは。これはこれで来年も開催してほしいものだ。
撮影◎佐藤哲郎

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■<A NIGHT AT THE MAKUHARI>セット
リスト

2019年4月20日(土)千葉・幕張メッセ・イベント・ホール
■LIVE PERFORMANCE
GUEEN
01. オウガ・バトル
02. 誘惑のロックンロール (Now I'm Here)
03. キラー・クイーン
04. ストーン・コールド・クレイジー
05. フリック・オブ・ザ・リスト
06. マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン
07. 輝ける7つの海 (Seven Seas Of Rhye)
08. ボヘミアン・ラプソディ

QUEENESS
01. ウィ・ウィル・ロック・ユー (Fast)
02. レット・ミー・エンターテイン・ユー
03. 愛にすべてを (Somebody To Love)
04. ファット・ボトムド・ガールズ
05. 誘惑のロックンロール (Now I'm Here)
06. ブライトン・ロック
07. 誘惑のロックンロール Reprise
08. '39
09. 手をとりあって (Teo Torriatte /Let Us Cling Together)
10. ボヘミアン・ラプソディ
11. 君が代 (Kimigayo)

QUEER
01. ザ・ヒーロー 〜ウィ・ウィル・ロック・ユー (Fast)
02. アクション・ディス・デイ
03. プレイ・ザ・ゲーム
04. アンダー・プレッシャー
05. ブレイク・フリー (自由への旅立ち)
06. ボヘミアン・ラプソディ
07. RADIO GA GA

GOD SAVE THE QUEEN
01. One Vision
02. タイ・ユア・マザー・ダウン
03. 地獄へ道づれ
04. 愛にすべてを (Somebody To Love)
05. ファット・ボトムド・ガールズ
05. デス・オン・トゥー・レッグス/炎のロックンロール (Keep Your Self Alive)
06. アイ・ウォント・イット・オール
07. ショウ・マスト・ゴー・オン
08. ドント・ストップ・ミー・ナウ
09. ハマー・トゥ・フォール
10. ブレイク・フリー (自由への旅立ち)
11. RADIO GA GA
12. 愛という名の欲望(Crazy Little Thing Called Love)
13. ボヘミアン・ラプソディ

ALL LINE-UP/出演バンド全員
01. ウィ・ウィル・ロック・ユー
02. 伝説のチャンピオン

■TALK 1
伊丹久夫(フレディ・マーキュリー警備担当)
高原竜太朗(フレディ・マーキュリー邸・造園担当)
栗田俊英(栗田美術館・館長)

■TALK 2
東郷かおる子(元『ミュージック・ライフ』編集長)
増田勇一(元『ミュージック・ライフ』編集長/映画『ボヘミアン・ラプソディ』字幕監修)

総合MC&進行:石角隆行

オフィシャルサイト:https://ticket.yahoo.co.jp/special/gsq-makuhari/

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