上白石萌音 × androp・内澤崇仁 映
画『L・DK』を主題歌で彩る“黄金タ
ッグ”の歴史&好相性のワケを解く

現在公開中の映画『L・DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。』(※・はハートマークが正式表記)で、主演の上白石萌音が自ら歌唱する主題歌「ハッピーエンド」を、andropの内澤崇仁(Vo/Gt)が手がけている。上白石と内澤のタッグはこれが初めてではなく、2017年には上白石のアルバム『and...』収録の「ストーリーボード」を内澤が書き下ろしており、さらに両者の邂逅は2011年にまで遡る。そんな好相性な2人が互いのどこを魅力と感じているのか、今作ではシンガーとソングライターとしてそれぞれがどんなことに向き合ったのかなど、出会いから現在に至るまでを振り返りながら訊いていく。
──2011年に上白石さんが主演されたオムニバス形式のショートムービー『空色物語』の主題歌にandropの楽曲が起用されていましたが、おふたりがお会いしたのはそのときが初めてですか。
内澤:そうです。映画の完成披露試写が六本木であったんですけど、その舞台挨拶の後に楽屋でご挨拶させていただいたのが最初でした。なので7、8年前ですね。
上白石:私はデビューして1年目で、中学2年生でした。
──そのときの上白石さんの印象というと?
内澤:すごく若い子達がいらっしゃる中で、萌音さんと萌歌さんがいらっしゃって。「どっちがお姉ちゃん?」って聞いた記憶があります。
上白石:そのときに交わした言葉はそれだけでしたね(笑)。私がお仕事を始めてから初めてお会いするアーティストさんだったんですよ。だから嬉しくて興奮したんですけど、それをどう伝えればいいのかわからなくて、硬直しながら「私が姉です」って言うだけで(笑)。その年ですよね? ライブで鹿児島にいらっしゃったのが。
内澤:そうですね。初めてツアーで鹿児島でライブしたんですけど、それを観に来てくださって。そのときって鹿児島に住んでたんですか?
上白石:住んでました。
内澤:そうなんだ。妹さんとご両親と一緒に観に来てくださったんですよ。で、ライブの後にご家族と一緒に写真を撮るっていう(笑)。
上白石:私、そのときに生まれて初めてライブハウスに行ったんですよ。まず、ライブというもの自体に圧倒されましたし、このあいだご挨拶した人が舞台の上で歌っていて、みんなが「キャー!」ってなっていて、なんか……芸能界ってそういう世界なんだ!って。
内澤:(笑)。
上白石:みんなが「キャー!」って言う人と会ってしまえるんだって、そのときに自分が芸能界にいることを実感しました(笑)。あとは、曲もみなさんの姿も、もう本当にかっこよくて。そこで感化されてしまって、その日の帰りの車の中も、ずっと歌っていました。すごくメモリアルですね。それ以降ずっとandropさんを聴いています。
──上白石さんの中で、andropはかなり大きな存在なんですね。
上白石:映画に提供されたいた曲が「Merrow」だったんですけど、いまも聴くんです。あの曲を聴くと、何もかもが楽しくて、嬉しくて、新しくて……っていう、あのときの純粋な気持ちを思い出させてくれる、私にとって大切な曲です。これからもずっと聴き続けるんだと思います。もちろん新曲もずっと追っかけています。「Koi」も、もう本当に大好きで!
内澤:ありがとうございます!
──その出会いがあり、2017年に上白石さんが発表されたアルバム『and...』に、内澤さんが「ストーリーボード」という楽曲を提供されていて。
上白石:これまでお世話になったご縁のある方々に曲を書いてもらおうということになって、最初に名前が挙がったのが内澤さんだったんです。デビュー当時にお世話になって、私もそこからずっと聴き続けていて、ライブにも何回も呼んでくださって……ということで。全員の総意として、内澤さんに書いていただけないかということになって、お願いしました。
上白石萌音 撮影=西槇太一
──「こういう曲にしたいです」みたいなお願いもされたんですか?
上白石:いや、内澤さんに書いていただけるだけでなんでもいいです!って。それで「一度お会いしたい」とおっしゃってくださったんですけど、そのときにはもう曲をいっぱい作ってくださっていたんですよ。
内澤:その前に出されていたカバーアルバム(『chouchou』)を聴いたときに、表現力がものすごく豊かだなと思ったので、どんな曲が合うのかわからなくなっちゃって。だから、いろいろな表現ができるもの、似合いそうなものを何曲か作ってみて、お会いしたときに一緒に聴きました。それが数年ぶりの再会だったんですけど、(上白石が)めちゃくちゃ忙しい時期に、わざわざ時間を作ってくださったんですよ。確か、佐賀かどこかから来ましたよね?
上白石:そうだったかもしれないです! (キャリーバッグを)ゴロゴロしていきました。本当にすごい曲ばっかりだったんですよ。この中から選ばなきゃいけないですか? これで1枚にしたらダメですか?って思うぐらい、本当に選べなくて。その中に「ストーリーボード」の元になった曲と、「ハッピーエンド」の元になった曲もあったんです。
──「ハッピーエンド」は、上白石さんが出演される映画『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』の主題歌として今回発表されますけども、そのときからもう原型はあったんですね。
上白石:そうなんです。当時も仮で私が一回歌っているんですよ。どっちにするか本当に悩んでいたので。
内澤:うん。どっちもよかったんですよ。結果、そのときは「ストーリーボード」になったんですけど、「ハッピーエンド」もいつか形にしたいなってずっと思っていて。だから今回は念願叶った形で、めちゃくちゃ力を入れられました。
上白石:私もこの曲が忘れられなかったんです。そのときのデモもずっと持っていて、いつか歌いたいな……でも、もう一つのほうになっちゃったし……いや、でもこの曲大好きだしどうしたらいいんだろう……って。それで今回の映画の主題歌を「誰に書いてもらいたいですか?」「どんな曲がいいですか?」というお話があったときに、もうあの曲しかない!って。
──じゃあ、今回のお話は上白石さんからピンポイントでお願いをされたんですね。
上白石:でも、あれだけの名曲をほっておくわけがないから、どこかの誰かの元に行ってしまっているかもしれないとは思いつつ、祈りながら聞いたら、「まだどこにも出していない」って。
内澤:いや、萌音さんのために作った曲なのに、それをどこかに回すってことはしないですよ(笑)。
上白石:でも、そう思っちゃうぐらいすごい曲だと思っていたので、それがまだ残っていたことが本当に嬉しかったです。ずっと忘れられなかったです。「あの曲じゃなきゃ嫌です!」ぐらいのテンションでお願いしましたし、この曲があって映画が完成したと思います。
内澤:映画も観させてもらったんですけど、確かにあの曲と合うなと思いました。でも、そういう想いだったことを知らなかったんですよ。あとから聞いてすごくビックリして。そんなことがあるんですねって。
上白石:もうご存知かと思ってました。歌詞は前のものが残っている部分もあるんですが、映画に合わせて完成させてくださって。
──なるほど。長いドラマがあったんですね、この曲には。
上白石:はい。だから「ハッピーエンド」ができた経緯の話になると、ちょっとお時間いただけますか!?ってなっちゃうんです(笑)。
──内澤さんとしては、「ストーリーボード」と「ハッピーエンド」を作っているときは、どんなことを考えていたんですか?
内澤:「ストーリーボード」も「ハッピーエンド」も、萌音さんがずっと歌っていける曲にしたいという想いがありました。あと、“演じながら歌う”という他の人にはできない表現をする方だと思ったので、その役になれる曲ってどういう感じかな?と思いながら作っていて。それで「ストーリーボード」は<僕は主人公じゃないけど>っていう歌詞から始まるんですけど。「ハッピーエンド」は、もちろん映画の主題歌なので(主人公の)葵の目線も入れつつ、「ストーリーボード」に通じるものにしたいなと思ってました。「ストーリーボード」が男性目線なので、「ハッピーエンド」はその対になる女性目線にしようとか。
上白石萌音 / androp・内澤崇仁 撮影=西槇太一
──「ストーリーボード」の中に<ハッピーエンド>という歌詞もありますよね。
内澤:そうですね。そこは対になっているものとして入れたいなと、最初から思っていた部分です。
上白石:「ハッピーエンド」には<ストーリー>という歌詞も入ってるんですよ。(歌詞に出てくる)2人は同じことを言っているんですよね。
内澤:そうですね。かなりいろんなことを詰め込んでます。
上白石:歌詞に書かれていること全部が、まさに撮影中の葵の気持ちだったんですよ。なんで全部知ってるんだろうって思うぐらいリンクしていて、びっくりしました。男性の内澤さんが、なんでこんな乙女な歌詞を書けるんだろうと思って。……なんでですか?
内澤:(笑)。
上白石:だから、役者さんなんだなと思いました。葵になって書かれたんだろうなと思って。
──内澤さんが楽曲提供をされる際には、いわゆる憑依型みたいな感じで書くことも多いんですか?
内澤:そういうときもありますね。なりきるわけでもないですけど、提供する場合は提供される方の情報とかを頭に入れて、その人のことだけずっと考えたり、ドラマや映画であればその内容のことばかり考えたり。それは常にします。
──上白石さんも『and...』の楽曲で作詞をされていますよね。
上白石:いやあ、歌詞を書くのって、なんて難しいんだろうって思いながら書いてました。もう消えてなくなりたい……このままどこかに行けないかな……って(苦笑)。歌詞書くのって大変ですね!?
内澤:いやあ、大変ですね。
上白石:「ハッピーエンド」の歌詞は、葵だけじゃなくて、恋する子の普遍的な想いまで書かれているんですよね。だから、個人的でもあり、普遍的でもあるところがすごいなと思って。あと、内澤さんの歌詞って、何回歌っても新鮮なんですよ。お芝居でも「毎回新鮮であれ」って言われますけど、そう思わなくても口から出てくるだけで新鮮なんです。「ストーリーボード」しかり「ハッピーエンド」しかり、毎回初めて歌うような気持ちになるんですよね。瑞々しさみたいなものがあって。
内澤:ああ。すごく嬉しいです。楽曲提供のときは、僕が作ったとしても僕が歌えるわけではないので、その人が歌うときに気持ちを入れられるようにすることはすごく意識しているし、毎回新しい気持ちで伝えるというのは、僕自身も常に意識していることとしてあって。それを感じ取って歌ってくれているのはすごく嬉しいです。
──内澤さんは、今回のレコーディングには立ち会われたんですか?
内澤:立ち会いました。驚いたのが、歌詞に結構悩んでいたのでお送りできたのがレコーディングの数日前とかになってしまったのに、現場に行ったら、ほぼ完璧に頭に入っている状態なのを目の当たりにして、すごい人だなって。
上白石:私はとにかく嬉しくてしょうがなかったので、届いた瞬間からずっと聴いてたんです。だから「覚えるぞ!」じゃなくて、ただただ聴きたくて聴いていたら覚えちゃった、みたいな。覚えようと思わなくても覚えられることってすごく貴重だし尊いことじゃないですか。それぐらい嬉しかったですね。「この2年間の思いが……!」っていう。
──レコーディングのときはどんなやり取りをされたんですか?
上白石:曲全体のイメージを映像で伝えてくださったんです。
内澤:最初は、少女が夜に部屋でひとりで歌っているんだけど、思いがどんどん強くなっていって、サビで部屋の壁が四方全部バーッ!って倒れて、星空の下で踊りながら歌うイメージがあるっていう話をして。
上白石:それがものすごくわかりやすかったですし、私が思っていた感じともすごく近くて。なんていうか……演出みたいな感じだったんですよね、完全に。私は、歌うときはいつもPVみたいなものを頭の中で勝手に流して歌うのが好きなんです。その映像をスポン!って頭の中に入れてくださって。それをすぐに体現できたのかはわからないですけど、すぐに理解できました。
内澤:よかったです。「は? 壁?」みたいな感じじゃなくて(笑)。そのイメージを伝えただけで、全然違うパターンをいくつもくれて、全部良かったから、どれがいいのかわからなくなってきて。
上白石:最後のほうは結構遊びましたよね。「意表をついてほしい」と言われて、そこ小さく歌う!?とか。
内澤:あとは「ツンデレ」とか(笑)。
androp・内澤崇仁 撮影=西槇太一
──上白石さんが思う内澤さんの曲や、andropの魅力ってどんなところですか?
上白石:いやあ、簡単にはまとめられないですけど、曲もすごく多様ですし、一曲の中でも「そう来る!?」っていうところがあるじゃないですか。そこは全部“新鮮さ”なのかなって思いました。メンバーのみなさんも、作っている内澤さんも鮮度みたいなものを大切にされているのかなって。andropさんを好きな方々もそこを感じていらっしゃるでしょうし、だからこそライブも楽しいし感動する。聴くたびに新しい気持ちになるなって思います。
──内澤さんが思う、歌手としての上白石さんの魅力というと?
内澤:やっぱり表現力と歌唱力の高さですよね。そのふたつが合わさっている人ってほぼいないんじゃないかなって思います。僕はミュージシャンとして歌を歌うだけで大変なのに、それもやりつつ、第一線に立って女優としても活動されているという。そのふたつを若くして兼ね備えているのは、本当にごく少数の中のひとりだと思うので、すごく尊敬してます。
上白石:ぃゃぃゃぃゃぃゃ……。
内澤:あと、初めて会ったときの舞台挨拶で「お芝居と歌でたくさんの人を笑顔にしていきたい」って言ってたんですよ。
上白石:えっ、言ってました!? ホントですか!?
内澤:言ってました。それを今体現している。そのときから変わらず信念として持ってやっているというのは、人間としてもすごく素晴らしいなと思いますし、そういう方と一緒に仕事できるのは嬉しいですね。
上白石:もったいないお言葉を……!
──内澤さんとしては、当時中学生だった子が目標を実現していく姿を目の当たりにすると、なんかちょっと親的な目線になりません?
内澤:そうそう。今回の映画で(上白石の)初キスシーンがあるんですよ。だから相当心して観ましたよね(笑)。どんなやつとキスをするんだ?っていう。それでキスという言葉を歌詞に落とし込んでみたりしましたし。
上白石:内澤さんに観られるの、恥ずかしかったです(笑)。それこそ最初のときから知ってくださっているから、なんていうか、なかなか会えない親戚みたいな感じというか(笑)。しかも私はandropさんの曲をずっと聴いているから、内澤さんの声はずっと聴いているし……なんか、うわー!って思いました。
内澤:(笑)。これはもう生半可な気持ちで作れないと思っていたのもあって、歌詞もギリギリになってしまったんですよ。相当気合いを入れて臨みましたね。
上白石:本当にありがとうございます。
──すごく素敵な関係性ですし、これからもこのコラボレーションを見たいなと思うんですが、上白石さんは、今度内澤さんにこういう曲を作ってほしいという要望とかはありますか?
上白石:いやあもう、内澤さんが書いてくださるならなんでも!
──絶対的な信頼がありますね。
上白石:だってもう、内澤さんが書くっていうだけでもう名曲じゃないですか。まだ曲ができていなくても。
内澤:いやいやいやいや(笑)。
上白石:それをまたちゃんと歌えるように頑張っていかなきゃいけないなって。そうやって作ってくださった曲の魅力を、私が歌っても損なわないように、いい形で聴いてもらえるように自分を磨いていかなきゃいけないなって思います。
──逆に内澤さんはこういう歌を歌わせたいというイメージはあります?
内澤:なんでしょうね……すっごい悪い女とか(笑)。
上白石:今回もしきりに「小悪魔みたいな感じで」とか言われたんですよ(笑)。
内澤:やっぱり普段のイメージと違ったものを見たいなって思ったりはしますね。
──今後もこのコラボレーションが続いていくことを楽しみにしています。
上白石:そうなったら私は本当に幸せです!
内澤:もう言ってくだされば、親戚のおじさんはいつでも(笑)。

取材・文=山口哲生 撮影=西槇太一
上白石萌音 / androp・内澤崇仁 撮影=西槇太一

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