舞台『良い子はみんなご褒美がもらえ
る』まもなく開幕~ご褒美に欲しいも
のは? 堤真一「大量の米!」A.B.C-
Z橋本「お褒めの言葉」

“俳優とオーケストラのための戯曲”という気になる副題を持つ舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』が、2019年4月20日(土)より、東京・赤坂ACTシアターにて初日を迎える。初日前日となる19日(金)同劇場にて初日前会見とゲネプロ(通し稽古)が公開された。
本作は、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『アルカディア』や映画『恋に落ちたシェイクスピア』の生みの親えあるトム・ストッパードが手掛けた作品。ソビエトと思われる独裁国家の精神病院の一室を舞台とし、誹謗罪で捕まった政治犯の男アレクサンドル・イワノフと、自分はオーケストラを連れているという妄想に囚われた同姓同名の男アレクサンドル・イワノフがこの物語の主人公。社会からはみ出てしまった二人がそれぞれの自由をどう得ようとするのか。
会見には、堤真一、A.B.C-Zの橋本良亮、斉藤由貴、小手伸也、シム・ウンギョン、外山誠二、そして演出のウィル・タケットが出席。
タケットは開口一番「この作品はしょっちゅう上演されるものではない。世界でもこれが3回目だと思う。なぜならこの作品はとても野心的だから」と興味を持たせる。そして本作を上演するにあたり、様々なジャンルから人が集まった事で啓示的でありながらもユーモアがあり面白く、それが世界共通で伝わる作品になったと思う」と胸を張った。
ウィル・タケット
政治犯のアレクサンドル・イワノフ(以降、イワノフ)役を演じる堤は初日を迎えた意気込みを聴かれ、「これからゲネプロなので(初日より)そこに集中したいです」と笑いを誘い、「少しでもいい作品にしていきたい」と挨拶した。演出のウィルについては「今まで出会った中でいちばん喋る演出家さん。稽古場を和ませてくれたし、芝居の細かいところも根気よく付き合ってくれた」と語り「橋本くんはこんな演出家にあたった事はないんじゃないかな? 日本の演出家でここまでやってくれる人はいないでしょ?」と言うと橋本も同意を示していた。だが、堤は「ウィルはイギリスの流行りのジョークを言ったりするんだけど通訳さんを介して聴くと意味わからんで。通訳する人もかわいそうやな(笑)」というとウィルが笑い出していた。
堤真一
妄想に憑りつかれたアレクサンドル・イワノフ(以降、アレクサンドル)役の橋本は「ウィルさんの話が長くてすみませんでした」と茶目っ気たっぷり。「明日から本番になりますが、このメンバー、アンサンブルキャストのみなさん、オーケストラ35人の皆で力を合わせて頑張っていきたい」と語った。オーケストラを連れている、という妄想を抱いているという自身の役の設定について、「お客さんにも実際のオーケストラが見えているんですよね? だから難しい役をやらせていただいています。毎日考えて考えて、またオーケストラの音を聴いて気持ちよくなっています」と稽古中を振り返る。が! 「最初はオーケストラとの合同練習が3日間あると聞いていたのに、実際は2日間しかなかった。焦りました」と苦笑い。
橋本良亮
すると堤は「自分みたいなのがオーケストラと一緒の舞台に立つのは申し訳ない気持ちになる。子どもの時、同じ団地の中で一人だけヴァイオリンを習っていた子がいて、『団地でヴァイオリンだとう!?』とその子をいじってました」と昔話を披露した。
当局からの指示でアレクサンドルとイワノフの治療にあたる医師役の小手は「2年ほど前に三谷幸喜さんの舞台『子供の事情』に出させていただき、その後TVなどの仕事が続いて今回、いよいよ舞台の仕事に復帰すると気合いを入れて臨んだんですが、ウィルさんから早速『伸也は小芝居が多すぎる、また小道具に頼り過ぎる』などとアイデンティティを否定されました」というと堤たちがたまらず笑い出す。「芝居が大きすぎる、リアクションが大きすぎる、と舞台出身の役者がTVの現場で言われるようなダメ出しを受けたので、いろいろ初心に戻ってやりたい」と笑いながら話した。
イワノフの息子サーシャ役のシムはこれが初舞台となる。「今とても緊張していますが、同時に楽しみにしています。キャストの皆さんと一緒に頑張りたいです」と少し不慣れな日本語で挨拶。本作の音楽について「素晴らしいです。音楽がある事で役に気持ちが載せられます。楽しい経験をさせていただいてます」と心境を述べていた。
シム・ウンギョン
サーシャを“正しい”方へと導こうとする教師役の斉藤は「教師という役名で個人名がないのが私にとっては気に入っています」とコメント。斉藤にとって唯一の懸案事項は「堤さんがあまりに何も食べない事。途中で倒れて公演が止まるんじゃないか」と役柄に合わせて身体を絞り込んでいる堤をねぎらった。これにはあとで堤が「炭水化物抜きダイエットをしたんだが、糖質がないと頭が働かなくて何を喋っているかわからなくなる。米は大事です!」と力を込めていた。
斉藤由貴
芝居の最後に登場する大佐役の外山は「この芝居は大変個性的。演出家たちはイギリスの方、オーケストラの指揮はフランスの方、と国際的。オーケストラにダンス、演技が面白く合わさって出来たと思っています」と語った。
外山誠二
質疑応答では、本作のタイトルに絡めて「舞台が終わったらどんなご褒美が欲しいか?」という質問が飛ぶ。シムは「どこかに遊びに行きたい。ディズニーランドに行きたい」と笑顔を見せる。橋本は「ウィルさんからお褒めの言葉が欲しいです」と話す。すると冒頭で「話が長い」と突っ込まれた事を踏まえ「じゃあすごくざっくり言いましょうね」とウィルが反撃。堤は皆の予想通り「大量の米が食べたい」と言うと、キャストも取材陣も問わず笑い声が沸き起こっていた。
舞台では初めて共演する堤と橋本だが、実は映画『決算!忠臣蔵』(2019年冬公開予定)で一足先に共演していた。この話でふと思い出した堤は、橋本に「最後に一緒に飲んだよなあ。(次の舞台は)難しい役、大役だから頑張れよって言ったら、なんか(橋本が)泣きだして!」と暴露すると「ちょっと! やめてよ!」と真っ赤になり、身をよじりながら爆笑する橋本。
堤さんに泣いた話を暴露された橋本さん!
橋本の止める声を無視したまま堤はさらに「ホテルがみんなバラバラだと思っていたら、同じホテルに泊まってて。酔った俺ががホテルに帰って、エレベーターを降りたら、こいつも酔って歩いてて。『じゃあな』って部屋に帰ろうとしたら、俺の部屋に入ってきて『頑張りますから! 頑張りますから!』って(笑)。『え~まだ、飲むのかな?』と思っていたら、急に『帰ります!』って。『こいつ、大丈夫かな?』と思いました(笑)」と爆笑。橋本は恥ずかしそうに「ご心配をおかけました。その心配をどれだけこの舞台で巻き返せるか(笑)」と恥ずかしそうに語っていた。
(前列左から)橋本良亮、堤真一、斉藤由貴、シム・ウンギョン(後列左から)ウィル・タケット、外山誠二、小手伸也
ゲネプロの模様もお伝えしよう。
橋本演じるアレクサンドルがトライアングルを叩き、その金属の棒を指揮棒のように振りかざしオーケストラを気持ち良さげに指揮している。会見でも話が出たが、アレクサンドルの頭の中にだけ存在しているオーケストラが、観客にも「見えている」という設定がなんとも奇妙。ある意味観客もアレクサンドル側と考えると、圧倒的多数で堤が演じるイワノフだけ「オーケストラが見えていない」という状況が増幅し、観客もイワノフにストレスを与える存在となっているかも、などと想像してしまった。
党員たちがオーケストラの隙間を縫って出てきては意識の全てを当局にコントロールされているような動きをする一方で、アレクサンドルの頭の中で自由に動き回る脳細胞の一つひとつを見せられているような躍動感を見せる。

本当に病んでいる人ほど正常に見えるとはよく言ったもので、橋本は非常に爽やかな好青年ぶりを見せながら見事に壊れていた。目の前に存在するイワノフを自分の妄想のオーケストラにナチュラルに勧誘する様は滑稽であり、また哀れでもあった。

一方の堤はアレクサンドルの脳内世界へ誘われても断固踏みいれようとしない意志の強さを言葉と台詞の力で見せる。記憶の中の息子が悪魔のささやきをしてきた時にふと見せる弱さが痛々しい。
サーシャ役を演じるシム・ウンギョンの少し舌足らずな日本語の台詞回しが、20代女性でありながら、年端も行かない子どもらしさを絶妙に作り出す。また、小手はそこにいるだけでクスッと笑いたくなる魅力に溢れ、斉藤が当局の指示を正しいものと信じて疑わない姿は不気味に美しかった。
「良い子はみんなご褒美がもらえる」という言葉の真意が、どこか今の日本人にも重なるように感じ、背筋がひんやりしたのは気のせいだろうか。
取材・文・撮影=こむらさき

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