【古市コータロー インタビュー】
ギタリストのアルバムというより
“歌もの”って言われたかった
下の世代にもバトンをつなげるような
アルバムになったらいい
“東京”というタイトルも象徴的ですね。
制作が3分の2くらい終わったところで“タイトルはどうしよう”と思った時、ふと“東京”が浮かんで。で、作り終わって聴いたら、もう“東京”しかないと思ったんです。たぶん自分の内面…東京で育ち、東京でインプットしてきたものが出せたと思ったんでしょうね。生まれた環境、自分を形成してくれた場所という意味が一番強いかもしれないです。…甘えたかったんだろうね、東京に。“東京”って付けていいでしょ?みたいな(笑)。
1曲目「かわいた世界に」からもう、まさに東京の匂いがしますものね。イントロのドラムのヒタヒタとくる感じとか。
フェードインね。あれ、悩んだんですよ。でも、今回はああいうわりとダークというか、重い感じで始まりたかったし、最初から1曲目にするつもりで作ったので。上手くいったと思います。歌もわりと無機質というか。岡田惠和さんの歌詞が読んだだけで素晴らしい世界観だったので、逆に“どう歌ってもいいや”みたいな(笑)。
今回は作家陣には曽我部恵一さんの名前もありますよね。《1メートル半の ぼくの憂鬱》っていうフレーズとかすごいなって。
うん、すごい! 曽我部に書いてもらった「ROCKが優しく流れていた」の冒頭のメロディーは僕が15歳の時に作ったものなんですけど、曽我部にはその話をしてなかったんですよ。でも、そういうニュアンスの…まさに少年がロックに目覚めたような歌詞じゃないですか。ほんと素晴らしい。彼は天才ですよ。
あと、若い世代でLayneの萩本あつしさんも詞曲で参加していますが。
そうなんですよ。生意気なんですけど、チャボ(仲井戸麗市)さんやウッちゃん(内海利勝)という先輩も参加してくれて、なんか下の世代にもバトンをつなげるようなアルバムになったらいいなと思って。で、萩本くんはTHE COLLECTORSがすごく好きで、何度も呑んだりしているので。
《ガムまみれのステージが》って歌わせるところがもう(笑)。
この曲のドラムはご子息ですか?
そうなんですよ(照)。これは浅田くんのアイデアで。2回叩いて終わりました。一緒に見ていたキュウ(クハラカズユキ)が“勘弁してよー”って(笑)。
先ほどお話に出たチャボさんと内海さんも、まさしくコータローさんのギターアイドルですね。
ですね。あのおふたりに憧れて、この世界に入りましたから。やっぱりチャボさんもウッちゃんも説得力がありますね、ギターに。存在感があってカッコ良いし。“昔の自分に教えたい”ってよく言うじゃないですか。僕、その言葉ってあまり好きじゃないんですけど、これはほんとに教えたいですね。やっててる時、僕、大はしゃぎでしたから(笑)。
今回の制作を通して、ご自身に対して再発見されたこととかありますか?
あったとしても自分ではちょっと分からない…それを仲間たちに訊いてみたいですね。ただ、ひとつ今までと圧倒的に違ったのは、今回は自信を持って歌えたことで。前は一生懸命に歌ってたんですけど、今回は自信を持って臨めたのが、ほんと自分でも嬉しかったです。
この『東京』は“歌”のアルバムですよね。
絶対に歌ものにしたかったので。ギタリストのアルバムというより、“歌もの”って言われたかったし。だから、歌もミックスは大きめに(笑)。
あと、浅田さんとのタッグだからこその、そこはかとない不良の匂いも感じました。独特の陰りといいますか。
あぁ、分かります。不良ってセンシティブで、すごくデリケートな子が多いんですよ。それは浅田くんからすごく感じます。もしかしたら彼も同じことを僕に感じているかもしれないですね。そういった背景も含めて、ギターだったり、歌だったり、歌詞だったりに自然と出てくるものがあると思います。
取材:竹内美保
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アルバム『東京』2019年3月27日発売
日本コロムビア
- 【CD+DVD】
- COZP-1531〜2 ¥3,800(税抜)
- 【LP】
- COJA-9357 ¥3,500(税抜)
フルイチコータロー:THE COLLECTORSのギタリストとして1987年『僕はコレクター』でメジャーデビューし、92年には初のソロアルバム『The many moods of KOTARO』を発表。THE COLLECTORSの活動の傍ら自身のGSバンド・KOTARO AND THE BIZZERE MEN、加山雄三率いるTHE King ALL STARSにギタリストとして参加しており、近年では俳優としても活動。17年9月には目白の実家に古着屋『DUST AND ROCKS』をオープンした。22年にソロデビュー30周年を迎えた。古市コータロー オフィシャルHP
アルバム『東京』特典DVDティザー