ザ・ビートルズ解散後、
初めてメンバー全員が参加した
リンゴ・スターの代表作『リンゴ』

ソロ活動

リンゴの最初のソロアルバム『センティメンタル・ジャーニー』(70)は、ビートルズの『レット・イット・ビー』が出る前に、アップル・レコードからリリースされた。思えば、70年はビートルズの各々のソロ活動が目立った年で、ポールは『マッカートニー』、ジョンは『ジョンの魂』、ジョージは『オール・シングス・マスト・パス』など、話題作が次々にリリースされている。リンゴはジョンとジョージのアルバムに参加しているのだから、やはりメンバーの彼への信頼度は高いのだ。この年はビートルズの解散騒動もあってか、『センティメンタル・ジャーニー』は好成績を収めている(全英チャート7位、全米チャート22位)。

同年終わりには早くも2枚目のソロ作となる『カントリー・アルバム(原題:Beaucoups Of Blues)』が出ているが、流行を追っているわけではなく、あくまで彼が好きな音楽をストレートに演奏するという性質だ。どちらのアルバムも記念にレコーディングしましたって気がする。間違っても、売れようという考えはなさそうだ。ビートルズ時代からリンゴのカントリー好きはよく知られており、バック・オーエンズの「アクト・ナチュラリー」をカバーしたり、「オクトパス・ガーデン」のようなカントリーテイストのある曲を歌っている。

しかし、スタンダード〜カントリーという流れは、当時のロックファンには絶対にウケけないスタイルであった。90年代になると、オルタナティブ系ロッカーたちがカントリー好きを表明したりアンプラグドが流行ったりと、カントリー〜アメリカーナ系の音楽にも光が当たるようになったが、当時は王道カントリーと正統派スタンダードは若者は見向きもしなかっただけに、リンゴの“好きなものは好きだ!”という毅然とした姿勢は潔いと思う。実際、『カントリー・アルバム』は売れなかったが、ナッシュビルまで赴いて録音しており、リンゴのカントリー音楽に対する並々ならぬ思い入れを感じる。バックを務めるのはジェリー・リード、ベン・キース、ピート・ドレイク(プロデュースも)、DJ・フォンタナ、チャーリー・マッコイ、若かりしロイ・ハスキー・ジュニア他によるナッシュビルの超一流ミュージシャンであり、憧れのアーティストに会ったリンゴは大いに感動したようである。CD化に際して、このアルバムに参加した全ミュージシャンによる7分近くにも及ぶセッション「ナッシュビル・ジャム」が追加収録されているのが嬉しい。

そして、71年には大ヒットシングル「明日への願い(原題:It Don‘t come easy)」をリリース、全米、全英チャートで4位まで上昇(米キャッシュボックス誌では堂々の1位)、曲作りとアレンジに関してはジョージが全面的に参加している。面白いのは、このシングルのB面に収録された「1970年代ビートルズ物語(原題:Early 1970)」で、ポール、ジョン、ジョージのことが各ヴァースで歌われており《3人に会いたい》という言葉で締め括られる。リンゴらしい優しさにあふれた歌だと思う。

OKMusic編集部

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