リミックスなどで最近やたら見かける
シーブ(Seeb)とは?

シーブ(Seeb)といえば、やはりこの曲。
マイク・ポズナーがアヴィーチーと訪れたイビサでの体験(=誰かにもらったドラッグでバッドトリップしちゃった)を歌った”I Took A Pill In Ibiza”。
実はこの曲のオリジナルはフォーク調だったのだけれど、世界的に大ヒットしたのは、こちらのシーブによるリミックスです。
以降もコールドプレイやテイラー・スウィフト、デヴィッド・ゲッタ、クリーン・バンディットなどのリミックスを手がけて、あちこちでシーブという名を見かけるようになったけれど……いまいち正体不明?
出身はノルウェー、グループ名の由来はシメン(Simen Eriksrud)とエスペン(Espen Berg)という2人のメンバーのイニシャル4文字を並べてSeebなのだとか。
エスペン(写真右)がインタビューに応じてくれました。
——写真を見ると3人組だったりもするけれど、現在は何人組?
僕とシメンの2人組だよ。僕たち2人で立ち上げたんだ。ニクラスが僕らのライブに参加してくれたこともあったけど、常に音楽制作やスタジオでは2人でやってきた。
実はシーブ結成以前にも、15年ほど一緒に仕事をしてたんだ。だから2人は息もピッタリだし、何をどんなふうにやりたいかお互いに熟知しているよ。
——シーブはマイク・ポズナーの”I Took A Pill In Ibiza”のリミックスで一躍世界的なスターとなったけれど、あのリミックスが大ヒットしていると気づいたのは、いつ頃だった?
リリースした後、しばらく経ってからかな。実際には、ノルウェーのラジオで掛けてもらおうと、あれこれ努力もしたんだ。
結果、そこから火が付いて、アイランド・レコードが後押ししてくれた。けど、あの時点では、まさかこれほどビッグなヒットになるとは予想すらしていなかったよ。
1年ほどかかって、世界中に広がっていったんだ。
——”I Took A Pill In Ibiza”のリミックスを制作したときに、イビサ島のムードを捉えようと考えた?
いや、それがちょっと笑えるんだけど、シメンも僕も、2人ともイビサには行ったことがなかったんだ。
メノルカやマヨルカなど、そっちの島には行ったことがあったんだけど、イビサのクラブシーンとは全然違っているよね。
あのリミックスを発表してから初めてイビサには実際に訪れたし、プレイもしたよ。アヴィーチーとも一緒にイビサに旅したことがあるんだ。彼がウシュアイアに出演した最後のショウのときだったよ。僕らはサポートアクトを務めたんだ。
——バスティルとのコラボ曲”Grip”が、ファンやラジオ、ネットなどで大評判だけれど、BTSもこの曲をオススメとしてツイートしてるのは知っていた?
僕らのツイッターで見つけたんだけど、さすがにビックリしたよ。日本や韓国のファンからのツイートが揃ってBTSのことを呟いてたんだ。
もちろん僕らもBTSのことは知っていたけど、彼らの音楽自体はよく知らなかった。で、ちょっと調べてみたら、彼らのフォロワーやファンってスゴイんだよね。
その後、彼らの音楽も聴いて「うわっ、カッコいいコトやってる!」って思ったんだ。一緒にコラボなんて話があったら、もちろん喜んで協力するよ。
——”Grip”は、そもそもバスティルが以前からライブで演奏していた曲だけど、この曲に参加することになった経緯は?
バスティルのシンガー、ダン・スミスがこの曲を送ってきてくれたんだ。
「しばらく作ってる曲だけど、どうもいまいちGripできなくて(=ピンとこなくて)。いや、シャレじゃないんだけどね」とか言って(笑)
聴かせてもらって、彼のアイデアを元にしながら僕たちなりにあれこれやってみたんだ。彼らがライブで違うバージョンを演奏していたのは、その時点では知らなかったんだけどね。でも、すごく楽しい経験になったよ。
もし彼らがライブで演奏しているのを知ってたら、それに手を加えようなんて恐れ多くてできなかったかもね。実際、僕らが新しいバージョンを作っていると知って、彼らのファンは当初すごく批判的だったよ。でも、最終的には、みんな気に入ってくれたようだけど。
——”Grip”で、やりたかったこと、目指したゴールとは?
いや、特にゴールというのはなくて、僕らがいつもやってるように、興味深いヴァイブやビートなどを作って、上手くボーカルを際立てるサウンドにしたいと考えただけなんだ。
僕らってボーカルに対する拘りが尋常じゃないんだ。歌オタってやつ。声を中心に曲を作るのが大好き。特にダンのような、すぐに誰だか分かる個性的な声だとね。
——バスティル側から何か特別な提案やリクエストなどは?
うん、僕らはいつも一緒に仕事をする人とは意思疎通を図ろうと務めているんだ。
実際にスタジオで対面できなくても、そうありたいよね。この曲に関しては、ダンは遥か彼方のインドにいたし、僕らはLAにいて、残りのバンドのメンバーはイギリスにいて、ちょっと厄介だった。そこでSkypeを使ったんだ。
彼らは素晴らしい提案をしてくれたよ。「そこのギターのパートをこうしたら?」とか、「そこにバックコーラスを入れるとか?」とか言って。彼らはすごく経験豊かだし、新しいことにもオープンなんだ。だからすごく作業は進めやすかったよ。
——音楽制作やライブでの2人の役割分担は?
毎回違ってるかな。シメンはトレーニングを積んだミュージシャンだけど、僕の方はルールを無視する独学系のミュージシャン。
正反対の2人だけど、なぜだか自然に歩み寄れる中間地点をいつも見出せるようなんだ。スタジオで制作する際には、あまり考えすぎないように心掛けているのと、毎回違った方法を試すようにしているよ。だから同じことを繰り返してマンネリに陥るってことはまずないかな。
僕らはミュージシャンに対しては心底から尊敬の念を抱いているし、音楽制作のプロセスも大好き。ライブパフォーマンスも同じだけど、もっと準備をしっかり重ねて、じっくり取り組むかな。
——ライブでは楽器も演奏する?
いわゆるEDM系アーティストのライブはDJセットが中心だけれど、僕らはいつもキーボードを数台使うんだ。
DJミキサーの1と4のチャンネルに繋いで、DJしながら楽器を演奏したり、重ねたりしている。フェーダーを絞ってみんなで合唱させたり、他のアーティストの曲に合わせてソロ演奏を披露することもある。あと自分たちの曲のメインパートをシンセで演奏してみたり。
突っ立ってDJだけやって”ミックス”というのを1時間とか90分とかやるのって、ちょっと僕らには奇妙な感じで落ち着かないよ。だからDJセットでは、同時に楽器の即興演奏などを加えて、できるだけ盛り上げたいんだ。
——ノルウェーの気候はトロピカルではないのに、シーブやカイゴ、マトマのようなトロピカルムード溢れるフイールグッドなダンスミュージックやアーティストが多数輩出されているけど、どうしてだと?
大雪だし寒すぎるのが原因だったり?
冬場は死ぬほど寒くて、何ヶ月も雪が積もっているんだ。だから屋内にこもって、暖かくてトロピカルな国に思いを馳せてるわけさ(笑)
ホントのところどうだろう? ちょっと謎だよね。
——シーブの音楽にとって、もっとも大切なことは?
エモーショナルであること。ちょっぴりダークで、でも高揚感に溢れている。物悲しいけど、ちょっぴり明るいっていうミックス感が好きなんだ。
だからそういう要素をいつもメロディやハーモニーの中に忍ばせておくようにしている。それから、もちろんボーカルだよね、大切なのは。人間の声って、とても特別なものだし、豊かな表現力を秘めている。
僕らは常にインスパイアを受けるし、僕らは常にユニークな声を探し求めてるんだ。
——音楽制作においてインスパイアを受けるのは?
簡単には答えられないけど、たぶん人生とか?
子どもの頃から2人とも音楽にはずっと夢中だったからね。
——シーブが手がけたリミックスで一番気に入っているのは?
やはり”I Took A Pill In Ibiza”だろうね。
この曲のおかげで一気に扉が開け放たれたし、自分たちの音楽をクリエイトして、それで生計も立てられるようになったからね。
——将来、一緒に仕事をしてみたいアーティストやシンガーは?
いっぱいいるよ。そのリストは今手元にないけど、BTSとのコラボは楽しいだろうな。あとサム・スミスやアデル、エリザベス・フレイザー(コクトー・ツインズ)などなど、数えきれないよ。
——現在アルバムを制作している? 2019年の予定とは?
いま僕らは曲作りに集中しているところで、ある時点でそれらがアルバムになるんだろうね。
スカンジナビアの音楽シーンは、現在はシングルが主体で動いているんだ。でも、すごくいっぱい曲があるから、おそらく2019年のうちにはアルバムが出せると思うよ。
僕らの2019年の計画は、スタジオでの制作をさらに続けて、ライブもやって、でも、ちょっと控えめかな。あとシンガーやミュージシャンとの共演にも取り組むよ。おそらくツアーは年末あたりか2020年の初頭かな。
——今日はどうもありがとうございました。近々日本で会えるのを楽しみにしています!
僕らも楽しみ、2019年中に会えるといいね。待ちきれないよ。
そして最後に・・・彼らがリミックスを手がけた曲へのコメントもくれました!
“Hymn for the Weekend”(Seeb remix) by Coldplay
このリミックスは、制作するのがすごく楽しかったし、オリジナルバージョンより売れたんだよね。クリス・マーティン(コールドプレイ)もいろいろ協力してくれたよ。しょっちゅうFaceTimeで提案してくれたりフィードバックしてくれた。ヴァイブも最高だよね。
Delicate”(Seeb remix) by Taylor Swift
この曲はリミックスというより、僕らにとってはデヴィッド・ゲッタの曲に対する僕らなりの解釈という感じかな。メインのヴァージョンに入ってるドロップが挿入される以前の段階で作られたんだ。デヴィッドがリミックスとしてリリースしたいと言ったから、もちろん僕らはOKしたよ。
“Solo”(Seeb remix) by Clean Bandit featuring Demi Lovato
ある日スタジオで遊びながら作ったんだ。そしたらクリーン・バンディットが僕らのシングル”Drink About”のリミックスを作って、お返しもくれたよ。めちゃくちゃラッキーだよね。
そのクリーン・バンディットがお返しでリミックスしてくれたのがこちら⇩
“Drink About” featuring Dagny (Clean Bandit Remix)
僕らにとって特に重要な曲なんだ。ダグニーはずっと以前から僕らが一緒に仕事をしたいと思っていた人で、彼女もノルウェーの出身なんだ。それこそ運と、何か見えない力が働いて出来たっていう感じ。こういうことって自然に起こるんだよね。
ほかにもエド・シーランやショーン・メンデス、ワンリパブリック、トーヴ・ローなどビッグなアーティストから引っ張りだこのシーブ。
ホントにBTSとのコラボが実現したら、これまた一大事ですよね。
Text by Hisashi Murakami

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