A.B.C-Zの五関晃一、単独初主演で生
と性の物語に挑む 手塚治虫原作の『
奇子(あやこ)』が初舞台化

2019年7月19日(金)から28日(日)まで紀伊國屋ホール、ほか水戸・大阪にて、手塚治虫原作の舞台『奇子(あやこ)』が上演されることが決定した。
漫画の神様、手塚治虫は、ヒューマニズム溢れる作風で広く知られているが、その一方で、策謀や背徳といった人間の心の闇や犯罪、グロテスクで過激な表現など、そのイメージとは対照的な「黒い」作品も多く描いている。戦後の田舎社会を舞台に、少女監禁や近親相姦などセンセーショナルな描写も巧みに取り入れた「奇子」は、この作品群の代表作とも言える作品だ。
本作の物語は、まだ暗い世相の敗戦直後の東北の農村地帯で、大地主一族の遺産相続をめぐる骨肉の争いと恐ろしい欲望の果てにこの世に産み落とされた、奇子。一族の体面のために土蔵の地下室に幽閉され、下界から隔絶して育てられた、言わば“純粋培養”の奇子は、やがて性に対して奔放な美しい成人女性として世に放たれていくことになる……。
この物語が生まれたのは、戦後復興を遂げ高度成長期をひた走った日本社会が大きな曲がり角に差し掛かった1970年代前半。2019年の今、「絆」が求められる時代に、昭和時代に手塚が生み出した、愛おしくもおぞましい、「絆」の物語である。
主演を務めるのは、A.B.C-Zのグループでの活動のほか、舞台『シェイクスピア物語~真実の愛~』をはじめ精悍な佇まいで俳優としても注目を集める五関晃一。単独での主演は、今作が初となる。
また、共演は、三津谷亮、味方良介、駒井蓮、深谷由梨香、松本妃代、相原雪月花といったフレッシュな感性と個性豊かな面々、さらに、独自の存在感で深みを増す中村まこと、硬軟自在の演技力が魅力の梶原善と、実力派が揃った。
そして上演台本と演出を手掛けるのは、物語の舞台となる青森県出身者でもある中屋敷法仁。気鋭の演出家ながら、その研ぎ澄まされた演劇感覚と手腕に定評のある中屋敷が、どう「奇子」を表現するのか。2019年夏、演劇界に一石を投じる作品となるだろう。
五関晃一(A.B.C-Z) コメント
初めて原作を読んだ時、「本当に手塚さんの作品なのかな?」と思うくらい生々しくリアルな人間模様に驚きました。そんな「奇子」という作品が舞台でどう表現されるのか、個人的にも今から楽しみです。仁朗の狂気の中にある愛や絆をしっかり演じきれるよう頑張っていきます。
上演台本・演出:中屋敷法仁 コメント
五関晃一さんが身にまとうミステリアスな雰囲気が舞台版『奇子』には必要でした。パフォーマーとしての底力はもちろん、憂いをたたえた表情や瞳に宿る強い信念など、五関さんのすべての魅力が『奇子』の世界をさらに濃密なものにしてくれると期待しています。五関さんの生身の心と体が舞台空間で躍動する姿、どうぞお楽しみに!
【物語】
青森県で500年の歴史を誇る大地主・天外一族。村では絶大な富と権力を誇っていたが、終戦後の農地改正法により、その勢いは静かに衰えつつあった。
太平洋戦争から復員した仁朗が帰ると、家には奇子という妹が生まれていた。それは父・作右衛門と兄嫁・すえの間に生まれた私生児だった。兄の市朗が、遺産ほしさに妻であるすえを差し出したというのだ。
「うちは異常な家だ!狂ってるんだ!」
そんな仁朗も、しかし、GHQのスパイとして仲間を売って生き延びて来た。
組織の命令により、さらなる陰謀に加担して行く仁朗。
仁朗の犯した罪、一族の犯した罪=奇子が複雑に絡み合い、やがて奇子は土蔵の地下に閉じ込められ、死んだことにされる。それから十一年後、末弟・伺朗は強く反発している。
「うちの家系はまるで汚物溜だ。犬か猫みてぇに混ざり合って、そのつど、金と権力でもみ消したんだ…」
さらに十一年後、地下で育てられ続けてきた奇子は、伺朗により地上へと出される。隠蔽した罪や過去が、次々に暴かれ、やがて一族を滅ぼすことになる。地方旧家の愛欲、戦後歴史の闇を描く因果の物語。
■登場人物
天外仁朗(次男)・・・  五関晃一(A.B.C-Z)
 ・
天外伺朗(三男)・・・   三津谷亮
下田波奈夫(刑事)・・・ 味方良介
奇子 ・・・   駒井蓮
天外すえ(長男の妻)・・・ 深谷由梨香
天外志子(長女)・・・   松本妃代
りょう ・・・   相原雪月花
 ・
山崎(親戚の医師)・・・  中村まこと
 ・
天外市朗(長男)・・・   梶原善
『奇子』…逃れられない血の「絆」(中屋敷法仁)

「絆」は尊いものである。「絆」を大切にすべきである。
誰しもが当たり前のように「絆」の必要性を説く。
人間関係の希薄化が騒がれる現代では、それも当然なのだろう。
我々は、もはや幻想と化した、誰かとの濃密な「絆」を求めている。
しかし、決して忘れてはならない。
そもそも人との「絆」とは、互いの自由を冒す、危険なものではなかったか。
逃れることの出来ない、恐ろしい呪縛ではなかったか。
そして、その忌々しい「絆」は、目にははっきりと見えないだけで、
現代にも空気のように漂い、我々を静かに縛り続けている。
手塚治虫「奇子」は、そんな絆のおぞましさが痛々しいまでに描かれている。
青森の名家・天外一族が犯してきた罪が、奇子という命として誕生する。
そこで初めて、劇中人物たちは気がつく。
互いを侮り、軽蔑しているが、結局は皆、
血族という「絆」で縛られた同じ穴のむじなであるということに。
そして、その「絆」は鎖のように心身に深く食い込み、
自分たちを土地と時代に縛り付けているということに。
東京オリンピック開幕も近い。
日本人であること、日本人同士で繋がり合う素晴らしさが、さらに叫ばれていくだろう。
安易な「絆」を求める時代に、手塚治虫が昭和に生み出した、愛おしくもおぞましい「絆」の物語を生身の俳優たちの身体で蘇らせたい。
我々が、心の奥底の座敷牢に閉じ込めてしまった数々の罪科を
血の「絆」をたぐり寄せ、この地上に引きずり出したいのだ。

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