ロイヤル・オペラ『スペードの女王』
~チャイコフスキー本人も劇中に登場
、作曲家の人生が反映された最高傑作

【動画】The Queen of Spades trailer (The Royal Opera) 

英国ロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演されたロイヤル・バレエ団、ロイヤル・オペラによる世界最高峰のバレエとオペラを、日本全国の映画館で鑑賞できる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』。すべての上映作品に、人気の高い案内人による舞台裏でのインタビューや特別映像等が追加されており、日本にいながらもそのボリュームある内容や迫力ある音響でライブで観劇しているような臨場感を味わう事が出来るとともに、大スクリーンに映し出される細やかな表情や美しい映像を楽しめるということで、人気を博している。そして2019年3月15日(金)からは、『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19』のシーズン5作目、ロイヤル・オペラ『スペードの女王』が全国順次公開となっている。
The Queen of Spades at Dutch National Opera (c) Karl and Monika Forster
このチャイコフスキーの傑作『スペードの女王』の見どころを、クラシック音楽専門TVチャンネル「クラシカ・ジャパン」編成・石川了氏の解説とともに紹介しよう。
チャイコフスキーが亡くなる3年前の1890年に発表したオペラ『スペードの女王』は、ロシアの国民的作家アレクサンドル・プーシキンの中編小説を原作としており、帝政ロシアのサンクトペテルブルクを舞台に、野心に満ちた青年士官ゲルマンが狂気に取り憑かれ、自分と恋人を破滅へ追い込むまでを描いた名作だ。作曲家の弟モデストによるオペラ台本は、原作の持つ社会性を重視するのではなく、ヒロインのリーザにより多くのドラマ性を持たせている。
Eva-Maria Westbroek as Liza in The Queen of Spades (c) ROH 2018. Photographed by Catherine Ashmore
そして『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19』の『スペードの女王』は、ノルウェーの鬼才ステファン・ヘアハイムが演出を手がけ大評判になったオランダ国立歌劇場と英国ロイヤル・オペラ・ハウスの共同プロダクションである。ヘアハイムは舞台にチャイコフスキーを登場させ、ロシアのバリトン歌手ウラディーミル・ストヤノフがエレツキー公爵とチャイコフスキーの二役を演じる。
Vladimir Stoyanov as Yeletsky in The Queen of Spades (c) ROH 2018. Photographed by Catherine Ashmore
同性愛者であったことも広く知られているチャイコフスキーは、このオペラを作曲しているとき、ゲルマン役のテノール歌手に夢中だったといい、石川了氏は「同性愛に苦しみながら『スペードの女王』を作曲するチャイコフスキーの姿が、本来の物語と同時並行で描かれている」と語る。さらに、ステージに置かれた鳥籠のオルゴールからは『魔笛』が流れ、彼がモーツアルトを筆頭に18世紀の音楽への憧れを抱いていたことも見て取れるなど、ヘアハイムによるこだわりのチャイコフスキー像が作品全体に溢れているのが分かる。
The Queen of Spades at Dutch National Opera (c) Karl and Monika Forster
また、本演目ではチャイコフスキー絶頂期の美しくダイナミックな音楽も見どころだ。この優美な音楽を切れ味鋭い怒涛のカンタービレで力強く牽引するのが、英国ロイヤル・オペラ・ハウスが誇る音楽監督アントニオ・パッパーノである。石川氏は「この作品の前後にはバレエの傑作『眠れる森の美女』と『くるみ割り人形』が作曲され、バレエ・ファンにはそれらの面影も見えてくるのではないでしょうか。メランコリックで、時にホラーの要素も醸し出し、18世紀の音楽様式も登場するなど、『スペードの女王』はチャイコフスキーの壮大な実験の場であったと言えるかもしれません。」と解説しており、「オペラの悲劇性と怪奇性を高める、その音楽作りは圧倒的です。幕間の彼のピアノ付き音楽解説では、パッパーノのカンタービレがなぜこんなに素晴らしいのかをご理解いただけると思いますので、絶対にお見逃しなく。」と、シネマシーズンならではの見どころも紹介する。
The Queen of Spades at Dutch National Opera (c) Karl and Monika Forster
セルゲイ・ポリャコフ(ゲルマン)、ウラディーミル・ストヤノフ(エレツキー公爵)、エヴァ=マリア・ウェストブロック(リーザ)、フェシリティ・パーマー(伯爵夫人)といったスター歌手たちの出演で贈るチャイコフスキーの傑作『スペードの女王』。本演目で描かれる悲劇を作曲家自身の不幸と重ね合わせて読み解いたヘアハイムの演出と、パッパーノの指揮で浮き彫りにされるチャイコフスキーのドラマにも要注目である。
Palmer as Countess and Stoyanov as Yeletsky (c) ROH 2018. Phtographed by Catherine Ashmore
▼石川了(クラシック音楽専門TVチャンネル「クラシカ・ジャパン」編成)『スペードの女王』解説全文はコチラ

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