Rude-α「時代を変えられる自信があ
る」— ヒップホップ界のニューヒー
ローが拓く道

Rude-αというラッパーが、フリースタイルラップブームの火付け役のひとつである『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』の第6回大会で準優勝し、沖縄から全国にその名を知らしめてから5年が経とうとしている。彼はその後、東京に拠点を移し、各地でストリートパフォーマンスを行いながら、フリースタイルのみならず作品のリリースも精力的に重ねている。ヒップホップを誰もが親しめるサウンドに昇華した楽曲と、ラップをバンドセットで聴かせる独自のライブが人気の彼だが、10代だった少年は現在のスタイルに至るまでにどういった軌跡を辿ったのだろうか。このインタビューでは、最新シングル「グッバイベイビー」や自主企画『TEEDA Vol.5』の話を交えながら、Rude-αとラップの関係に迫っていこう。
ーーRude-αさんはラップよりも先にダンスを始めたそうですが、そういったストリートカルチャーに触れるきっかけは何でしたか?
沖縄で生まれ育つと、ストリートカルチャーに触れることはごく自然だと思います。僕が育った沖縄市の中心部「コザ」は、戦争のあとアメリカに統治されて、もろにアメリカの文化に影響を受けたところです。小さい頃から道を歩けば外国人がいたし、親戚や友達にも外国人の血を引く人がたくさんいました。街には外国人の方が営むB-BOYファッションのお店があったんですけど、小学校高学年の頃にお母さんからもらったお金でデカめのパンツと無地のTシャツを買ったりしていました。洋楽を聴くのも、ダンスにのめりこむのも自然だったと思います。
Rude-α 撮影=森好弘
ーーラップを始めたのも、知らない男性にフリースタイルラップをふっかけられたことがキッカケだったと伺いましたが、そんなことが日常的に起こる街なのですね。
公園にいたら知らないやつが「Yo!」って近づいてきて、フリースタイルを仕掛けてきたんですよ。その相手というのは1歳上で、僕より先に『高校生RAP選手権』に出たKDTというラッパーなんですけど。僕は当時バスケットボールをやっていたし、沖縄特有のバトル文化みたいなものもあるので、「舐められちゃいけない」と思ってやり返したらKDTが「おまえ、明日からラッパーな」と言ってきて。ラップはそれがキッカケです。今の僕は沖縄でフリースタイルを仕掛けられても、返さずにまずゲンコツして「調子乗るな」と言ってやりますけどね(笑)
ーーそうして出会ったKDTさんを始め、沖縄には若くて勢いのあるラッパーがたくさんいらっしゃいますが、そんな中Rude-αさんが先陣を切って東京に移った経緯もお聞きしたいです。
仲間たちと音楽をやってる日々はもちろん楽しかったんですけど、沖縄を出て行った先輩たちを見て、俺たちにも才能があるのに、全員ここで過ごしていたら前に進めないなと気付いて。俺が仲間たちのレベルを底上げする役目を担って、東京で修行しようと思ったんです。仲間たちはまだ沖縄でやってるんですけど、着実にレベルは上がってきていると思います。今は離れているけど、僕は彼らの思いを背負っているし、チームとして動いてる感じです。
ーー沖縄のみならず全国で若者の間に「ヒップホップブーム」が来ているといわれていますが、率直にどう感じますか?
今の高校生は唾奇さんやCHOUJIさんといった沖縄出身のラッパーたちを聴いて、自分もラッパーになろうとする人が増えていますよね。最初は「これを聴いている俺かっこいい」というところから入ると思うんですけど、それでも俺はヒップホップが流行するのは良いことだと思います。その反面、僕のYouTubeのコメント欄でも「これはヒップホップだ」「いやヒップホップじゃない」とかいう論争が起きますし、本物が何なのかを見つけにくくなってる気はしますね。ただ、「かっこいい、おしゃれ」という感想だけで終わる曲は、そういう音楽を求める時代に合っているから批判もない。僕の音楽が批判されるのは世の中の流れにうまく逆らえているからで、「俺のこと無視できないんだろ」と思っています。そういう意味で、Rude-αというプロジェクトは時代を変えられるなという自信がついてきました。

Rude-α 撮影=森好弘

ーーなるほど。私はRude-αさんの「Mirror Ball」という楽曲の、どこか懐かしくて人間味があり、男くさくアウトローなメッセージに心を打たれたのですが、確かにいい意味で時代に反していると感じました。
「Mirror Ball」は僕の10代の頃を歌っているんです。やりたいことが何なのかとか、何が正解かなんてわからなかったけど、ただ友達のバイクの後ろに乗って両手を広げて風を浴びながら、「俺たち無限大だな」と語り合っていました。『ショーシャンクの空に』や『ギルバート・グレイプ』といった映画に感化されていたので、ロードムービー的なことを素でやってしまう言わばクサい子どもだったんですよね(笑)。
ーーそんな青春時代、ロマンがあって憧れます! フリースタイルからスタートして以降、作品のリリースも積極的なRude-αさんにとって、即興ラップと音源に残すラップの違いはどこにあるのでしょうか?
聴き手の気持ちを気にせず自由にやるのがフリースタイルで、聴き手の気持ちを考えて作るのが音源ですかね。音源に残すラップで心がけていることは、人が「うわっ」と心を掴まれるような要素を入れることです。銀杏BOYZの 「BABY BABY」という曲に「君を抱きしめていたい」という歌詞があるんですけど、俺はそういう日常生活で言ったことないようなセリフを聴くと掴まれるんですよ。ラップで「抱きしめたい」という表現を使うと「なんだよそれ?」と思う人もいるかもしれませんけど、俺はあえて使いたいなと思いますね。あと僕は辛いことがあっても、信じていればいつか未来は見えるから! というような、答えを出してしまう歌が苦手で。誰かの痛みや孤独に無理に答えを出すよりは、俺はその隣にそっと寄り添ってギターを弾きながら歌っているような、嬉しい、悲しいといった感情をより彩るために存在していたいです。

Rude-α 撮影=森好弘

ーー最新シングル「グッバイベイビー」は、これまでの作品と同様、耳あたりの軽いトラックとキャッチーなフックが印象的です。Rude-αさんの楽曲はあくまでヒップホップにカテゴライズされながらも、世代やシーンを選ばずに浸透する親しみやすさがありますね。
俺は聴き手の「入り口」でありたいんですよね。作り手がこだわりを持つ事はいいことですけど、アーティスト側が聴き手の入り口を狭めて、わかるやつだけついて来ればいいよというのは違うなと思って。俺はそこをぐっと広げているから、「ルード、音楽性変わってポップになったな」と言う人もいるんですけど、後々このやりかたが最先端になるなと思っています。多くのアーティストが若い世代にウケたい、世界に出たいという目標を立てると思うんですけど、俺は家族や大切な人とファミリーで聴いてほしいんです。昔、ORANGE RANGEを家族で観に行って、帰り道に「今日めっちゃ楽しかったね、ありがとうお母さん」ってみんなで笑顔になれたんですよ。そういう存在になりたいんです。クラブももちろんですけど、大きな会場でもライブをして、子供たちのヒーローになりたいですね。
ーー素晴らしい考え方だと思います。楽曲を作るとき、歌詞、メロディー、トラックはどのように組み立てていくのですか?
「こういう曲がやりたい」とチームで話し合ったあとその曲に合ったプロデューサーにオファーをして、届いたトラックに何語でもない鼻歌でメロディーとフロウを入れて、そこに歌詞をつけていきます。最近は暗闇で目を閉じながら歌詞を考えることもあるので、夜っぽい曲が多いかもしれないです。「グッバイベイビー」は、プロデューサーのShin Sakiuraさんの家に行って「ここからトラップにしてみたらどうかな?」「ギター入れてみたらどうですか?」「ハマった!めっちゃかっこいいな!」といったやりとりをしながら楽しく進めていきました。Shinさんとは性格も合うので、制作のあとは一緒にスマッシュブラザーズをやっていました(笑)。
ーー楽曲を聴いてもShin Sakiuraさんとの相性はとてもいいと感じましたが、今後一緒に制作してみたいプロデューサーや、共演してみたいアーティストはいらっしゃいますか?
憧れの存在は甲本ヒロトさんだったり、海外ならChance The Rapperだったりたくさんいるんですけど、そういう人たちと一緒に作品を生み出したいというよりは、ずっと憧れとして見ていたいですね。でも大好きなTWICEは、楽曲にフィーチャリングで参加するかTWICEの楽曲をプロデュースしてみたいです! あと、まだ有名ではないんですけど、2〜3年前くらいに韓国の街で出会ってからずっと仲がいいLiquorというラッパーは、最近軌道に乗っているみたいなので一緒にやってみたいですね。
ーー今韓国のお友達のお名前も挙がりましたが、日本に限らず独自の広いネットワークをお持ちのRude-αさんは、様々なアーティストを招く自主企画『TEEDA』を2017年から行っています。キャスティングはどのように決めているのですか?
2年前に、ずっと一緒に音楽をやっているOZworld aka R'kumaと高校の後輩の安次嶺希和子ちゃんを呼んで沖縄でやったのが最初です。3月にやる『TEEDA Vol.5』については、大阪公演の韻シストCreepy Nutsは昔からずっと知っている人たちです。東京公演の吉田凛音ちゃんはとある番組で知り合ってから意気投合して、Anlyは同じ沖縄出身で、SPiCYSOLKENNYさんは昔住んでいた家が隣だったっていう、全組にストーリーがあるんです。ラインナップはこういう人を入れたほうがいいかなということより、自分との関係性を大切にしています。さっきのファミリーの話に戻りますけど、最近親御さんとライブに来てくれる人が多くて、血は繋がっていないけどいろんな場所にお母さんがたくさん増えていくような感覚で、めちゃくちゃ嬉しいんですよ。そういうお客さんたちが「今日出ていたひと全員よかったね」と言ってくれたら嬉しいです。

ーー 最後に、今年のRude-αさんは何を見据えて進むのか、展望を聴かせてください。

これまでの僕は心のどこかで、アーティストとして世間体や他人からの見えかたを気にしていたと思うんですけど、今年の序盤にプライベートである出来事があって、自分の良くないなと思っていた負の部分を消化できて今すごくいいマインドでいれるんです。知り合いにタロット占いをしてもらったら、運命が回り始めることを示す「運命の輪」というカードを一番最初に引いて、導かれてるなぁと思いました。一言でいえば「今年ですべてを変えたい」と思いますし、自信もあります。いい意味で人の予想を裏切りたいので、期待していてほしいです。
Rude-α 撮影=森好弘
取材・文=Natsumi.K 撮影=森好弘

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