舞台『母と惑星について、および自転
する女たちの記録』いよいよ開幕! 
芳根京子が見せる透明感と存在感に注

若手女優の注目株・芳根京子が初めて主演を務める舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』が3月5日(火)より東京・紀伊國屋ホールにて開幕する。この前日、公開フォトコールと囲み会見が行われた。
現在はリニューアルのため休館中となっているパルコ劇場のラストを飾った本作は、3年の月日を経て、主人公である三女・シオ役に芳根を、母峰子役にキムラ緑子を迎え、初演時から続投する次女・優役の鈴木杏、長女・美咲役の田畑智子と共に母と娘たちの愛憎絡みあう闘いの中から「家族」や「女」そして「命」を描いている。脚本は蓬莱隆太、演出は栗山民也が務める。
この日公開された場面は、長崎で暮らす家族4人の食卓の場面、母が経営するスナック、そして母が亡くなった後、3姉妹で旅をした異国での模様が披露された。
奔放に生きる母は年端も行かぬ娘たちを振り回し、時には理不尽に叱りつけ、スナックに来た客に愚痴をこぼし、好いた男の後を追いかける。キムラは長崎弁を巧みに操りながらあきれ果てるほど手のかかる母親像をリアルに演じる。キムラがリアルであればあるほど、田畑たち三姉妹がより不憫に見えてくる。
母に振り回されながら育った娘たち―長女はどこか内にこもる気質を持ちつつも、時折、在りし日の母を思い出させるような言動を見せ、観る者をドキッとさせる。また二女はお気楽な性格でのびのびとしているようだが、専業主婦になりたいと願う姿に、子どもを放りだして働いていた母への反発心を感じさせる。子どもの時は言いたい事も言えずにただ泣いてばかりいた三女は一転、姉二人より「普通」に育ったように見えるのだが、どこか不思議な「違和感」を感じさせる。この末っ子だけがどうして「普通」に育ったのか、まだ我々に見せていない別の顔があるのでは? そんな事を想像させるのだ。芳根が持つ透明感と愛くるしさが物語の中でどう活かされるのか、そして亡き母と3人の娘の関係がどう形を変えていくのか、気になる展開だった。
囲み会見には芳根、鈴木、田畑、キムラが出席した。
2度目の舞台出演にして初主演の芳根は「稽古時間がなくて一日3、4時間くらい。いつもこんな感じなんですか? と聴いたら今回はかなり詰まっていると聞き(笑)、短期集中型でここまで来ることができたなと思います。あとは台詞が飛ばなければいいなと思っています」と緊張と恥じらいが混じったような表情を見せる。
田畑は「稽古をしながら(初演時は)ああこんな感じだったなと思う一方で、緑子さんや京子ちゃんと向き合うと違うものが作り上げられていくので楽しく稽古ができました」と振り返り、「この芝居は舞台セットがシンプルなので逃げ場がない。あとはいかに開き直るかが勝負」と意気込んでいた。
田畑と同じく初演からの続投となる鈴木は「まだぼーっとしていますが、いよいよ始まるんだなという気持ちがあり、初日が開くと楽日がすぐきちゃうので寂しいと感じてしまうんです」と両方の気持ちを感じているとコメントした。
それぞれが演じている役について聴かれると、芳根は「(シオは)二人の姉と少し違う自分に悩み、孤独を感じています。台本を読んだ時、最初は精神的にしんどくなるかなと思いましたが、辛さを打ち返すパワーを持った23歳の女の子だったので、まっすぐ向き合えました」と分析。
田畑は「(美咲は)母の愛情に飢えて育ち、早くお母さんから離れて東京に出たいと、結果的に自分の欲求を押し通していく人物。反発している母に似たくないのに嫌な部分も似てきてしまう役です」と説明。
鈴木は「(優は)常にヘラヘラしている担当。頼りないんですが、家族の空気が良くなるように観察している役」と語り、キムラは「(峰子は)奔放に人を愛し、悩み、我慢して我慢して人生を生きた人だなと思うんです。そんな母親だけど、娘たちに何を渡せるか、ということを考えてきたんじゃないかな」と本作のテーマを垣間見せるように言葉を選んでいた。
本作が出産後初の舞台出演となる田畑は「自分の体が前回とは全然違うなと感じています。体力が。そこは自分との戦いだなと」と語る。その姿を鈴木は「吹っ切れた強さを感じますね。パーンとしたエネルギーを感じます」とコメントすると「え? 本当?」と嬉しそうな表情。
芳根はつい先日開催され、自身が新人俳優賞を受賞した「第42回日本アカデミー賞」授賞式の日を思い出し「皆さんからエールをいただいたんですが、すごく緊張していたので、早く皆に会いたい! と思っていたんです」としゃべり出す。すると芳根とのやり取りを思い出した鈴木が「心臓が止まっている、とか言ってたよね」と暴露。芳根も「緊張しすぎて心臓の音が聞こえないくらいだったんです。翌日(稽古で)皆さんにお会いして、心臓がやっとまた動き出しました」と笑っていた。
キムラは3人の“娘”たちについて「本当の姉妹みたいで、楽屋でも役のまましゃべっているような感じなんですよ。京子ちゃんはムードメーカーでしたね」と母のようにあたたかい眼差しを向けていた。
(左から)鈴木杏、芳根京子、キムラ緑子、田畑智子
もしかすると、3姉妹の誰かに自分自身を重ね合わせて見たり、あるいは3人の母を見て、よく似た誰かの存在に想いを馳せながらこの芝居を見てしまうかもしれない。そこから生まれる様々な感情にゆったりと身を委ねる事をお勧めしたい。
取材・文・撮影=こむらさき

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