ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B
’wayミュージカル非公式ガイド【20
19年3月編】

ブロードウェイのミュージカル情報を定期的にお届けするこの連載も、今回で早くも3回目。思っていた以上に反響があったことに気を良くし、ここは「定期的」ではなくちょっと頑張って「毎月」、それもなるべく月初に更新し、「今何やってるの?」と思った時に見るといつでもその月の最新情報が載っている!みたいなポジションを目指してみようかと思い始めた今日この頃だ。
そんな頑張りがいつまで続くかは分からないが、とにもかくにも3月のブロードウェイは、なんとも更新し甲斐のある開幕ラッシュ。毎年6月に決定するトニー賞にノミネートされる資格を得られるのが4月終盤ごろまでに開幕する作品ということで、開幕に向けたプレビュー公演が続々と始まって活況を呈すのが毎年この時期なのだ。というわけで今回も、まずはまだブロードウェイを訪れたことのない人からの疑問に独断と偏見で答えた上で、今月の新作と上演中の作品を一挙に紹介していこう。
Q.チケットはどうやって取るの?
作品の公式サイトを開くと、どの作品もトップページの最も分かりやすい位置に「TICKETS」のバナーが置かれており、日本と違って一つの作品に一つのチケット業者というシステムなので、ほとんどの場合ワンクリックで購入サイトにもう飛べる。日時と枚数を選ぶだけで座席表が表示され、空いている席と料金が一目瞭然なので、操作に困ることはないだろう。これが最も簡単な買い方。
だが実は、ブロードウェイ作品は当日窓口に行って「ある?」と聞くだけでも大体買える。だから無期限ロングランっていいよね!と心底羨ましくなるところなのだが、前売りで完売するなんて事態は、よっぽどの人気作でない限り起こらないのだ。その「よっぽどの人気作」を見極めるために活用したいのが、毎週グロス表が掲載されるこちらのサイト。「%CAP」(入場率)が100%前後で、なおかつ「AVG TICKET」(平均チケット額)が150ドルを超えているような作品は、購入サイトでも恐らく向こう何か月先まで満席で、当日「ある?」なんて聞いたら窓口の人に鼻で笑われる。どうしても観たかったら、チケットが買えた日に観劇ありきで渡航するか、キャンセル待ちの列に地道に並ぶしかないだろう。
そしてこの「AVG TICKET」からは、もう一つ読み取れることがある。昨今のブロードウェイ作品は定価150ドル超えが当たり前のなか、平均額が100ドルを下回っているような作品は、タイムズスクエアにある当日半額券販売ブース、「tkts」で大量に扱われていると考えられるのだ。「tkts」のほかにも、演劇情報サイトなどで簡単に手に入るクーポン、「Today Tix」などの業者、窓口が当日売り出す見切れ席や立見席など、チケットを割安で買える方法は意外なほど多い。初めてならまずは王道の「TICKETS」クリック作戦がオススメだが、それで何本分も買うと手数料もあって二度と行けない気がするほど高くつくので、ゆくゆくはこうして節約もできるのだという安心感を持っていただければ幸いである。
【今シーズンの新作】
■3月に始まる作品
『ビートルジュース』3月28日プレビュー開始/4月25日開幕
ティム・バートン監督映画の舞台化。ヘンテコなホラーコメディになりそうな気配で楽しみ。https://beetlejuicebroadway.com/
Hadestown』3月22日プレビュー開始/4月17日開幕
オフBW、ロンドンでの成功を受けてオンに進出。『グレート・コメット』演出家の最新作。
https://www.hadestown.com/
『オクラホマ!』3月19日プレビュー開始/4月7日開幕
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。9月1日までの限定公演。
https://oklahomabroadway.com/
『トッツィー』3月29日プレビュー開始/4月23日開幕
D・ホフマン主演の同名女装映画の、『バンズ・ヴィジット』作詞作曲家による舞台化。
https://tootsiemusical.com/
■既に上演中の作品
『Ain’ t Too Proud』プレビュー中/3月21日開幕
テンプテーションズの軌跡を『ジャージー・ボーイズ』の演出家と振付家が描く。期待大!
https://www.ainttooproudmusical.com/
『Be More Chill』プレビュー中/3月10日開幕
オフでの好評を得てオンに進出する話題作。モテモテになれる薬を巡る人間ドラマとか。
https://bemorechillmusical.com/
『The Cher Show』
米歌手シェールの半生を彼女自身の楽曲で綴る系。劇評も入場率もイマイチの様子。
https://thechershowbroadway.com/
『キングコング』
あの、キングコング。やはり気になるので続いてほしいが劇評を見る限り厳しいか。
https://kingkongbroadway.com/
『Kiss Me, Kate』プレビュー中/3月14日開幕
1948年初演の名作のリバイバル。今夏『王様と私』で来日するケリー・オハラが主演する。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2018-2019-season/kiss-me-kate/
『プリティ・ウーマン』
あの、プリティ・ウーマン。映画版「レミゼ」エポニーヌ役のBWデビュー作。
https://prettywomanthemusical.com/
『The Prom』
スタッフ陣は盤石だし各紙絶賛なのに入りはイマイチ。やはり映画原作もの強しか。
https://theprommusical.com/
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯もスゴイ。
https://www.aladdinthemusical.com/
『ビューティフル』
キャロル・キングの半生を彼女自身の楽曲で綴る系。ロングラン5年目、そろそろ下火か。
https://beautifulonbroadway.com/
シカゴ
オペラ座の怪人に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/
『キンキーブーツ』
6年間のロングランの末、4月7日に閉幕予定。日本版(4月再演)と観比べたいなら急げ!
https://kinkybootsthemusical.com/
『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/
『マイ・フェア・レディ』
1956年初演の名作を、渡辺謙の『王様と私』を手がけた演出家がリバイバル。上質。
http://www.myfairladybway.com/
『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/
『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくチケットに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/
■日本未上演の作品
『アナスタシア』
同名アニメ映画の舞台化。深みに欠けるが映像表現は一見の価値アリ。3月31日に閉幕。
https://anastasiathemusical.com/
『バンズ・ヴィジット』
映画「迷子の警察音楽隊」を舞台化した、2018年のトニー賞受賞作。4月7日に閉幕予定。
https://thebandsvisitmusical.com/
『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/
『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/
『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/
『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、満足感は保証する。生レリゴー最高。
https://frozenthemusical.com/
『ハミルトン』
開幕4年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/
『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/
『ウェイトレス』
同名映画の舞台化。完全に女子向け。観るとスイーツが食べたくなります。
https://waitressthemusical.com
【3月のミュージカルイベント】
「ブロードウェイ・ケアーズ(正式名称は「Broadway Cares/Equity Fights AIDS」と長いので勝手に省略)」という団体をご存じだろうか。エイズをはじめとする病や貧困で苦しむ人々を助けるための非営利組織で、資金集めのために年間を通じて様々なイベントを開催しているのだが、そのほぼすべてが俳優参加型。そのためこちらとしては、ミーハー気分でうっかりチャリティに参加できちゃう、大変ありがたい機会をもらえるというわけだ。
今月11日に開催される「Broadway Backwards」もそんなイベントの一つで、本来は男性が歌うミュージカルナンバーを女性が、女性のナンバーを男性が歌い演じる一夜限りのコンサート。今年も『シカゴ』のビビ・ニューワース、『ブック・オブ・モルモン』のアンドリュー・ラネルズ、『アナと雪の女王』のケイシー・リーヴァイら、多くのブロードウェイスターの出演が予定されている。筆者は残念ながらまだ観たことがないのだが、動画で見る限りとても楽しそうなので、この時期に行かれる方はぜひ。ミュージカルの多くが休演となる月曜の開催なので、貴重な観劇枠を犠牲にする必要がないという意味でもオススメだ。

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