フレンズが提供する“グランパーティ
ー!”は、“宇宙規模”のエンターテ
インメント空間だった

2019新春ワンマンライブ“グランパーティー!” 2019.1.31 NHKホール
会場に入ると、可愛らしい宇宙空間が広がっていた。巨大な土星がステージに置かれ、ほかにいくつかの星のオブジェがステージの上に浮かんでいた。フレンズが1月31日にNHKホールで開催した『2019新春ワンマンライブ“グランパーティー!”』だ。ライブ開催に寄せて、事前にひろせひろせ(MC/Key)が「はっきり言ってとんでもないことになってます!」とコメントをしていたとおり、この日のライブでは“ズッ友ホーンズ”によるブラスアレンジ、TEMPURA KIDZとのダンスコラボ、芸人・ラブレターズとの寸劇など様々なジャンルのゲストも交え、遊び心溢れるハッピーなエンターテインメントショーを見せてくれた。
映画『2001年宇宙の旅』のテーマ(「ツァラトゥストラはかく語りき」)をSEにメンバーがステージに登場。おかもとえみ(Vo)が「最高に楽しんでいこうー!」と叫ぶと、「パーティーしよう!」からライブが幕を開けた。ひろせとおかもとが繰り出すゆるいラップが会場のお客さんを優しく揺らしていく。長島涼平(Ba)のベースからはじまった脱力系シンセポップ「Wake Up BABY」、メンバー紹介をしながら楽器が加わるイントロにテンションが上がった「シンデレラガール」。メンバー全員がそれぞれ別のバンドでもデビュー経験があり、豊富なキャリアを持つからこそ鳴らせる良質なポップミュージックは、それでいて円熟と呼ぶよりも、フレッシュで瑞々しい煌めきが溢れていた。
ステージに浮かぶ惑星が流れ星のオブジェへと変わり、「グランパーティーということで壮大なライブがテーマです」というひろせの言葉を合図に、トランペット✕2、サックス、トロンボーンからなるズッ友ホーンズを迎えて「NO BITTER LIFE」を届けた。演奏をしながら長嶋と三浦太郎(Gt)が一緒に踊る様子が楽しげ。<やりたいようにやればいいよ>、そんなふうに気取らずに投げかけるフレーズが人懐こいフレンズの音楽によく似合う。原曲にはないブラスの音色がしっとりとメロディに寄り添った「喧噪」「ベッドサイドミュージック」のあと、ステージに浮かぶ流れ星のオブジェの数がさらに増えて、キラキラとした夜の切ない想いを募らせていく「NIGHT TOWN」へ。高音のファルセットを伸びやかに歌う上げるおかもとのボーカルに酔いしれていると、時間が過ぎるのも忘れてしまう。
表情豊かな歌で魅了したかと思えば、MCではマイペースな天然ぶりを発揮するおかもと。「高校3年生と大学4年生と……えっと、明日仕事を辞めます、みたいな人いる?」と問いかけると、笑い声のなかパラパラと何人かの手が挙がった。「そういう人に向けて書いた曲です。何でもいい、支配(からの卒業)でもいいし……」と続く言葉に、すかさずひろせが「尾崎豊!?」とツッコミを入れながら、和やかなムードで届けたのはピアノバラード「咲かないで」だった。春が来てほしいような、来てほしくないような。揺れる想いを丁寧に歌い上げる。そして、ひとりステージに残ったひろせが宮﨑駿に捧げた「スタジオジブリをやめないで」では、「ジブリー!」「はやおー!」のコール&レスポンスで会場が一体に。ひろせのマスコットキャラクターのようなファニーな存在感はフレンズには欠かせない。
前半8曲を終えたところでお客さんを着席させると、お待ちかねの寸劇がはじまった。「類は友を呼ぶ」というタイトルで(“ルイ”はドラムのSEKIGUCHI LOUIEの名前にかかっている)、TEMPURA KIDZと悪ひろせにさらわれたラブレターズを救い出すというストーリー。フレンズのメンバーはもちろん、お客さんの声援、SEKIGUCHI LOUIEの親族(!)も巻き込んだ「応援上映」というスタイルに終始会場の笑いは絶えない。ライブの余興に留まらないほど、メンバー全員が本気で演じる手抜き感のない演技だからこそ面白い。そのラスト、BLACK BISCUITSのカバー「タイミング ~Timing~」をオールキャストで踊る大団円を迎えると、いよいよライブは後半戦へと突入していく。
ラテンテイストのダンスナンバー「常夏ヴァカンス」や、再びズッ友ホーンズを招き入れた「原宿午後6時」「塩と砂糖」、さらに、おかもとが「もっともっと一緒に踊ろう!」と呼びかけた代表曲「夜にダンス」へと賑やかなライブアンセムを立て続けに披露すれば、NHKホールはそれぞれが思い思いに踊るダンス天国となっていた。フレンズのライブに身を委ねていると、音楽とは「耳」で楽しむだけではなく体全体で感じるものだということを、言葉ではなく、そのパフォーマンスから教わるよう。ラスト1曲を残して「NHKホールでライブをやれて嬉しいです」と伝えた、おかもと。最後に「NHKホールで歌いたかった曲」と紹介したのは、最新アルバム『コン・パーチ!』でも大切な曲として収録されている「街」だった。星空のような美しい光を浴びて、おかもとが紡ぐ優しいメロディ。毎日の暮らしのなかで、焦ったり、虚しさを感じるときもあるけれど、<それでも僕らは進む>という語りかけるメッセージは、楽しいライブ本編の終わりに温かな余韻を残してくれた。
アンコールでは、おかもとが「地球を飛び出す準備はできていますか?」と言って、「宇宙」をテーマにした今回のツアーのために制作されたという新曲「地球を越えても」を披露。限りなく広がるワクワクを胸に抱いて、<また会おうね>と再会を約束するように届けると、ラストは「Love,ya!」。陽気な“パラパッパー”のシンガロングのなかで、三浦がステージを降りてフロアを練り歩き、ズッ友ホーンズ、TEMPURA KIDZ、さらにラブレターズもステージに並び立ち、その全員がキラキラとした笑顔で迎えた最高のフィナーレになった。
フレンズは会場に集まったお客さんを親しみを込めて、“ズッ友”と呼ぶ。そんなズッ友に向けて、おかもとは「2019年はみなさんと一緒により濃い1年にしたいと思います。一緒に宇宙に行きましょう!……“宇宙に行きましょう”は違うな(笑)。一緒に宇宙、規模の楽しさを……見出していきましょう」と彼女らしい言葉で伝えていた。フレンズが目指すのは東京ドーム。その場所まで、彼女たちは心から音楽を楽しみながら進んでいくのだろう。

取材・文=秦理絵 撮影=近藤みどり、Ray Otabe

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