不思議な世界に誘う話題作『緑のテー
ブル』を再演、スターダンサーズ・バ
レエ団公演「Dance Speaks」~小山久
美総監督に聞く

2019年3月30日(土)・31日(日)、スターダンサーズ・バレエ団(SDB)のダブルビル「Dance Speaks」が行われる。演目はクルト・ヨース振付『緑のテーブル』とジョージ・バランシン振付『ウエスタン・シンフォニー』だ。

とくに『緑のテーブル』は2005年以来、久々の再演となる話題作。「反戦」をテーマとしたこの作品は、どこかシュールで、なおかつコミカルなテイストも感じられる、不思議な世界観が魅力の一つ。初演は1932年と80余年の歴史があるが、世界でも上演できるカンパニーは限られているという希少な演目でもある。そんな作品がいま、どのようなメッセージを語りかけてくるのか。公演を前に、SDB小山久美総監督に話を聞いた。(文章中敬称略)
■初演80年を経た作品上演はピーター・ライト卿のお墨付き
真っ暗な空間に置かれた、大きな緑のテーブル。音楽はパントマイムのBGMに使われるような淡々とした雰囲気のピアノ曲……というのだろうか。その音色に合わせ、マスクをかぶったダンサーがテーブルを囲み、踊り、時にはパントマイムの芝居のような動きを繰り広げる。設定は国際平和会議の場であるはずだが、マスクの表情からは本音は見えない。そしてそんな彼らの間を「死」を象徴するダンサーが舞う――。
「ダンスでありながら、演劇的な味わいがあります。一見難しそうに見えますが、実は意外とわかりやすく、バレエやダンスの枠を超えて、楽しんでいただける作品かもしれません」と小山総監督が語るように、この『緑のテーブル』には舞踊や芝居など幅広いジャンルの視点から楽しめる面白さがある。
この作品を振付けたクルト・ヨースはドイツ出身で、天才舞踏家ピナ・バウシュの師匠として知られる人物だ。『緑のテーブル』はヨースと彼の娘アンナ・マーカードが守り伝えてきた作品で、SDBでの初演は1977年と、実に42年前になる。「当時SDBの芸術監督だった遠藤善久先生がアメリカのジョフリーバレエ団でこの作品を見て感銘を受けたこともあって取り入れることになったと、先代の太刀川から聞いています。初演時は、私は先輩方が踊っているのを見ている立場でしたが、そのリハーサルを見ながら"今まさに名作に取り組んでいるんだ"という、エキサイティングな感銘を受けたことを覚えています」と小山総監督は当時を振り返る。
以来、SDBではこの作品をバレエ団のレパートリーとして、1979年にクルト・ヨースが亡くなったのちもマーカードとともに、大切に踊り続けてきた。
今回の再演は、2015年の戦後70周年の節目を本来目指していたという。しかしマーカードも世を去るといった諸事情から、今年2019年の上演になったことに加え、小山総監督は「もしかしたらこの踊りを"古い"と感じる人もいるかもしれない。カンパニーとして果たして今、これを上演すべきかどうか悩みました」という。そこで英国の著名な振付家でもあり、かつては自身もクルト・ヨース・カンパニーでも踊った経歴を持つ、ピーター・ライト卿に相談したところ、「素晴らしい作品だから、ぜひ上演しなさい」というお墨付きを得たとのこと。また「この作品は再演を望む声もたくさんありました。自信をもって、今回の上演に臨みます」(小山総監督)。
■ダンスか?演劇か? 上演機会の少ないレア作品をお見逃しなく
この『緑のテーブル』は名作として知られる一方で、上演機会が非常に少ない、レアな作品だ。その理由のひとつには、たとえば「作品の余韻を持ち帰ってもらうため、上演順は必ずプログラムの最後にする」など、非常に細かい上演条件があることが挙げられる。「2005年の上演の時に、マーカードさんの通訳としてご一緒しましたが、振付やリズムの取り方についてはもとより、衣装や照明、たとえば靴の裏の塗り漏れにもチェックが入るんです。マーカードさんがそのとき私に"細かいと思うでしょう? でも作品を正しく伝えるのには必要なことなのよ"と仰った、その言葉が印象に残っています」と小山総監督は思い出を語ってくれた。
そうして大切に伝えられてきたこだわりの作品。今回これを踊るダンサーたちは、全員が初役だ。キャストは今後行われるリハーサルで決定されるが、小山総監督は「今までふれたことのない踊りのスタイルなど、若干戸惑いを感じるダンサーもいるかもしれません。でもこれまでの経験から彼らの対応能力は上がってきており、振付指導者が求めるものはきちんとキャッチしてくれると信じています」と期待を寄せる。
コンテンポラリーダンスは難しい、よくわからないと言われはする。しかし「言葉がないからこそ伝わるものや、心を打つものがあると思う。発信する側の思いは一つでも、受け止める側は十人十色であっていい。ぜひ幅広い世代の方に見ていただいて、自由に受け止めてほしい。頻繁に上演できる作品ではないので、やはりお見逃しないよう、ぜひ劇場に足を運んでいただきたい」と小山総監督は話す。
戦後70年を過ぎたいま、この作品は何を訴えかけてくるのだろう。ぜひその目で確かめていただきたい。
『ウエスタン・シンフォニー』 (c)Takeshi ShioyaA.I Co.,Ltd.
取材・文=西原朋未

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