[Alexandros]がYourSongに込めた小さな願い事。

 [Alexandros]がYourSongに込めた小さな願い事。

[Alexandros]がYourSongに込めた小
さな願い事。

「歌」を「人」に見立てて表現

PlayStation4用のゲームソフト、「JUDGE EYES死神の遺言」の挿入歌となった[Alexandros]の『Your Song』。この曲には、[Alexandros]がアーティストとして聴き手に対しての愛情が、目一杯に詰まっている。
しかし、この曲に込められているメッセージを「聴き手への愛情」=「聴き手への応援歌」として括ってしまうのは少々もったいないと思うのだ。それはどういう事か。
この曲の持つ意味を、歌詞からじっくり考えて見てみると。彼らが考える“音楽の在り方”“バンドとしての在り方”が姿を現すのだ。そして、決して揺らぐ事はないが、儚く切実な願いが胸に残るのだ。
『YourSong』で描かれている世界は「歌」の心の内だ。「僕の名前は、ありふれた「とある歌」」と歌詞にあるように、この曲は「歌」が「人」に見立てられている。そして、自分(歌)の存在意義と価値を語っている。
では、この歌は一体誰の歌なのか。それは「彼が書いた」の「彼」である。そう、この歌の産みの親は[Alexandros]ボーカルギターの川上洋平だ。この歌の思考は、他ならぬ川上洋平が歌詞に込めた“想い”なのだ。
しかし何故、自分の想いをストレートに表現せず。わざわざ「歌」の視点で表現したのか。
それは「透明な姿に産まれたよ」という、一見「適当なコードで紡がれた」とあるように、まだ世に出る前の、デモの段階の曲の事かと思える一節に答えがある。
「透明な姿に産まれたよ」は川上が作ったデモの段階で、まだ[Alexandros]の楽曲として仕上がり、誰かの手に届いたわけではないのは確かだ。しかし、もしもデモの段階でも「君に届いた今」「これからは「君の歌」」なのである。
これを川上の視点でストレートに描いてしまうと、やはり聴き手。主にファンは、曲を聴いて産まれた感情や解釈を抑えて、川上の想いに寄ってしまう。それを防ぐために、想いを「歌」の視点に変えて表現しているのだ。
音楽は作り手から聴き手に届いたのなら、それはもう「君の歌」聴き手の物なのだ。
“音楽を聴く時はどんな時?”と聞かれて思い浮かぶのは、ライブであったり家であったり。はたまた外出先の店内有線だったり。場所を考えるが、その“聴く”という行動を促すのは“感情”だ。
“聴きたい”という感情があって初めてライブに行こうと思うし、家でも外出時でも音楽を意識して聴くと思う。そして、その感情はいつも一定である事は稀だ。
悲しい事があったから、逆に嬉しい事があったから、あの曲が聴きたいな。と、その時々で曲の選択も変わる。

全部聴いてくれた君の解釈が全てだよ
これは、作り手が聴き手に曲を愛してもらえるように、意図している事かもしれないし。そうではないかもしれない。
作り手の意志というのは、最終的には聴き手の憶測でしかないからだ。だからYourSongは『君の歌』と、はっきり書かれているのだ。
このYourSongで伝えたい事は“[Alexandros]の楽曲はどんなものでも、全部聴いてくれた君の解釈が全てだよ”という事だ。

[Alexandros]の楽曲は『君の歌』である事は間違いないが、ただ一つだけ“忘れないでいてほしい”事があるのだ。
それは、繰り返し出てくる「歌」の存在意義である『世界中の誰もが敵でも僕は味方さ』という事。
ここに、バンドの在り方が色濃く表現されている。[Alexandros]は、歌を聴いてくれさえすれば「一人にはしない」という事を言いたいのだ。きっと、今までもこれからも[Alexandros]の在り方は変わらないのだろう。
しかし、聴き手というのは変わる。音楽が、作り手から聴き手に渡ったその瞬間から、作り手の意図や意志を離れて聴き手のものになるのと同じだ。
バンドの在り方が変わらなくても、聴き手は何らかの理由で“音楽を聴かない”という選択が出来るからだ。
[Alexandros]は『ワタリドリ』リリース以降、人気バンドとしてその存在を大きくし続けている。
音楽の在り方として、聴き手の感情を尊重する彼らが突如として得た人気。それは今の自分達、音楽と向き合った時に、この一節をしみじみと感じざるを得ないのではないだろうか。
今、多くのファンが心から[Alexandros]を愛し楽しんでいても。突如人気が出たように。フッとその火は小さくなってしまうかもしれない、と。
しかし、その時も[Alexandros]は変わらずに揺らぐことなく在り続けるのだろう。
けれど、音楽の作り手として。聴き手がいなければ産み出した音はいつまでも透明のまま、誰の歌にもなれないのだ。
だから、歌の最後に諦めながら。それでも伝えさせてと、小さく願いをかけるように。
「愛しているよ」「聴いてくれて、ありがとう」と想いを込めて「いつか僕に飽きても」「時々口ずさんでね」と、切なく愛おしそうに聴き手に向けて歌うのだ。
私はこのように『YourSong』を解釈する。さて、[Alexandros]の想いを想像して『YourSong』を聴いたあなたはどんな風にこの曲を解釈するのだろう。
例え、どんな解釈をしてもこの曲を一度でも聴いたならば。もう、YouraSongは『君の歌』だ。
TEXT:後藤 かなこ

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