リスナーに媚びない
ロックスピリットを提示した
ジョン・メイオール&
ブルースブレイカーズの
『ブルース・ブレイカーズ・
ウィズ・エリック・クラプトン』
本作『ブルース・ブレイカーズ・ウィズ
・エリック・クラプトン』について
アルバムの大きな特徴としては、クラプトンのギターが冴え渡っていることに尽きる。ブルースナンバーを中心に演奏しているが、すでにハードロックの萌芽を感じさせる先鋭的なプレイで、彼がギターの神様と呼ばれるようになるのは、本作でのギタープレイが圧倒的であったからに他ならない。音作りも含めて、まさに革命的なギターワークを披露している。ブリティッシュロックのギタリストにはハイテクニックの猛者が多いが、その理由は本作に影響を受けたミュージシャンが多いからである。『ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』はブルースロック作品であるにもかかわらず、全英チャートで6位まで上昇しており、当時のクラプトン人気を窺わせる結果となった。
収録されているのは12曲、オーティス・ラッシュの渋い「オール・ユア・ラブ」のカバーを始め、フレディ・キングの「ハイダウェイ」、メンフィス・スリムの「ステッピン・アウト」といったクラプトンが後に何度も取り上げるシカゴブルースナンバーが半分、R&B(レイ・チャールズ)1曲とオリジナルが5曲というセレクションだ。なお、ロバート・ジョンソン作の「ランブリン・オン・マイ・マインド」では、クラプトンがプロになって初めてリードヴォーカルを担当している。
クラプトンは本作一枚に参加しただけでグループを脱退、同年夏には本作のセッションで共演を果たしたジャック・ブルースと、グレアム・ボンド・オーガニゼーションに在籍していたジンジャー・ベイカーとの3人でクリームを結成、ブルースを基盤にしながらもインプロビゼーションに重きを置いたまったく新しいロックの世界を切り開き、ロックシーンに多大な影響を与える存在となる。クラプトンの転機(ロックの転機とも言える)となった重要作が、本作『ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』なのである。本作をリリースした時、クラプトンはまだ21歳(!)であった。
TEXT:河崎直人