ももすももす

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【ももすももす インタビュー】
曲作りは絵を描いているような感覚

2018年よりシンガーソングライターとして始動したももすももすが、シングル「木馬」でメジャーデビュー。沸き出る感情と創造力が生んだ、斬新で幻想的な言葉の数々は彼女のピュアな気持ちであふれていた。

メジャーデビューが決まって
いろいろなものが見えるようになった

学生時代に組んでいたバンドでも作詞作曲を担当されていましたが、どんなことがきっかけで楽曲制作をするようになりましたか?

自分の心の中にずっと得体の知れない液体のようなものが沸き出ていて、それを自分の中に溜めておくのが苦しくなって。どうしたらいいか考えた時に、一番身近な手段が音楽を作ることだったんです。

それは音楽が好きだったから?

はい。子供の頃はずっとピアノをやっていたのでクラシックしか聴いてなかったんですけど、成長するにつれて“世の中にはクラシック以外にも音楽があるんだ!”って(笑)。今となっては当たり前のことだけど、初めてJ-POPを聴いた時はすごく衝撃を受けたんです。それからバンドの音楽を知って、自分も音楽を作ることができるんだって思いました。

「木馬」の歌詞でも“水”“海”と液体が出てきますね。

水の絵を見るのが好きなんですけど、美術館に行くと水色で描かれた絵もあれば、白黒で描かれていることもあって、水って何色でも描けるし、何色にも染まるじゃないですか。それと同じ感覚で、曲によく液体を入れています。

今回のデビューはどのように受け止めていますか?

音楽に対する想いとかやっていることは、今までと全然変わってないんですよ。ただ、今までは昼間もずっとカーテンを閉めて生活していたんですけど、それがカーテンを開いていろいろなものが見えるようになった感覚です。いろんな人に自分の音楽を聴いてもらって、聞いたことのない感想やアドバイスをもらうことで視野が広くなりました。

今までのスタンスと全然変わってないのは聴いていて伝わりました。最初はファンタスティックな印象なのに、聴けば聴くほど人の感情が見えてくるところとか。

本当ですか。嬉しいです。

ちなみに、お名前がバンド時代の“ももす”から“ももすももす”に変わったのは理由があるんですか?

イギリスのDuran Duranってバンドになぞらえて“ももすももす”にしたんです。最近、俳優のマコーレー・カルキンがマコーレー・マコーレー・カルキン・カルキンに改名したのを知って“キターー!”と思いました(笑)。

その流れに乗ってしまおうと(笑)。自分+バックバンドというかたちでライヴやレコーディングをしてみて、新たな発見はありました?

最初は「うさぎの耳」っていう1曲しか公開してなかったのにライヴにお客さんが来てくれて、自分が音楽をやっていない間にも自分の音楽のことを頭の片隅で思ってくれている人がいたって思ったらすごくジーンときて。そういう人たちにもっと楽しんでもらえるような、新しい人にもたくさん聴いてもらえる曲を作りたいっていう想いがすごく強くなりました。

その「うさぎの耳」がデビュー作に入るのかと想像していたんですけど、「木馬」がデビューシングルになったのはなぜですか?

「うさぎの耳」は私の気持ちなので、一番に聴いてもらいたい曲だったんです。バンドを辞めてからずっと家で曲を作っていたから、シングルの候補が本当にいっぱいあったんですけど、決められなかったのでくじ引きで「木馬」に決定しました(笑)。

アレンジには白井良明さんが参加していますね。

今まで同じ世代の人と音楽を作ることが多かったので、今回は新しい発見をしてみたいと思って世代が離れている白井さんにお願いしたんです。私がひとりで作った状態の音源って無地のTシャツにちょっと柄が付いたくらいなんですけど、それにレースとかを付けていただいたみたいな、新しい風も吹きこんでいただいて面白い仕上がりになったんじゃないかと思ってます。あと、今回の2曲はテンポが違うのに偶然ぴったり同じ長さになったので、それもひとつの注目ポイントです!

“木馬”というタイトルの由来も気になります。

“ぼくも”って書いた時に“ぼ”の線を1本消すと“ばくも”になるじゃないですか。それを反対から読むと“もくば”になるんです。自分に足りないものを書いた曲で、どんな人にも当てはまるところがあるんじゃないかなって思ってます。

歌詞は聞いたことのない言葉の組み合わせが多いのに、憂鬱や孤独な気持ちがしっかり伝わってくるのが不思議で、小説を読んでいるようにも感じました。インスピレーションを受けた作品はあるんですか?

文学としても成立するような作品にしたいと思って、歌詞も縦書きにしてもらったんですね。文学のルーツはランボーやジャン・コクトーとかフランスの詩集がすごく好きなので、その雰囲気に影響を受けたり。木馬って涙も流せないし、動くこともできないし、それに共感する部分がすごくあって。私は家で曲を作る時以外はあまり感情を表に出せないので、人に見せる顔は木馬なのかもしれないです。

初めて聴いた時、《僕は電線裸足で走る》という斬新なフレーズに驚きました。

そういう景色が頭に浮かんだんです。暗くなった恵比寿の街の電線をひとりで走っているイメージです。

幻想的な表現をしている部分って何かの比喩なのかと思ったら、頭の中の情景がそのまま言葉になることもあるんですね。

曲を作っている時って絵を描いている感覚に近いのかなって思うんです。さっき話した心の中に沸いてくる液体に絵具を溶いて筆で描くような。

実際に絵を描いてみたりとかは?

本当は描きたいんですけど、すごく下手で…。想像したものを描くのは難しいです。絵を見ている時って“本当は音楽なんかいらないんじゃないか”って思う時もあるんですけど、なくなったら困っちゃうから私は音楽をやります!(笑)

(笑)。でも、“絵を描いている感覚”ってすごくしっくりきますね。聴いていても絵画を見ているみたいで、《木馬に電気が通る日は》はメリーゴーランドのことかな?とか自分の中でいろいろな角度の解釈ができます。

自分の曲を聴き返した時に“こういう意味もあるな”って新しく発見することもあるし、それは人の曲でもあったり、こうやって会話していてもあとから気が付くことがあるんですよね。人間だけじゃなくて言葉もいくつもの顔を持っているなって。

そのいろいろな顔を見つけられるのって、ももすさんの淡々とした歌い方や単調なリズムも鍵になっていると思います。作曲でこだわった部分はありますか?

この曲はドラムが打ち込みで、規則的なリズムの歌なので普通の生ドラムじゃ叩けないフレーズを入れようと意識しました。ずっと入ってるアルペジオとか2番のBメロと間奏にあるストリングスのフレーズも気に入ってます。
ももすももす
シングル「木馬」

OKMusic編集部

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