浜中文一が謎の存在・スケリグのほか
8役を演じる ファンタジー児童文学
の舞台化『スケリグ』公開ゲネプロ&
囲み取材レポート

イギリスの作家デヴィッド・アーモンドによって1998年に書き下ろされた児童書「スケリグ」は、同年優れた児童書に贈られるカーネギー賞などを受賞した児童文学の傑作だ。日本では「肩胛骨は翼のなごり」(山田順子訳・創元推理文庫刊)という邦題で出版されている。戯曲化されたこの作品の上演が、浦辺千鶴の翻訳、ウォーリー木下の演出で、2019年1月11日(金)にDDD青山クロスシアターにて開幕した。
初日に先立ち行われたゲネプロと囲み取材の様子をお伝えする。

『スケリグ』ゲネプロ写真

古い家に引っ越したマイケルは、庭の崩れかけたガレージの中で「スケリグ」と出会う。ホコリと虫の死骸まみれの服をまとい、ねじ曲がった身体の背中に奇妙なものが生えているスケリグは体の具合が悪い上に深く心を閉ざしており、マイケルのことも遠ざけようとする。彼は一体何者なのか? マイケルは隣の家に住む少女・ミナと一緒に、スケリグを助けるための秘密の行動を開始する……。

『スケリグ』ゲネプロ写真

マイケルの生まれたばかりの妹は重い病気を抱えており、両親は妹にかかりきりだ。彼の抱える孤独、妹と両親に対して抱く複雑な愛憎、スケリグとミナに自分を受け入れて欲しいという渇望……少年の無垢さの中に様々な感情を滲ませるマイケルを、末澤誠也が素直な演技で瑞々しく見せている。マイケルと共にスケリグをめぐる秘密の冒険に出るミナを、これまでミュージカルで活動してきた渡辺菜花が演じ、今回がストレートプレイ初挑戦だがチャーミングな存在感を放っている。
『スケリグ』ゲネプロ写真
謎の存在・スケリグを浜中文一が演じているが、これが本当に浜中なのか、と思ってしまうほど、老若もわからないようなミステリアスで気難しいスケリグを体現している。マイケルとミナと交流するうちに起こる内面のゆらぎが、見る者の心を静かに響かせる。
『スケリグ』ゲネプロ写真
役者の身体性を活かした演出で近年注目を集めているウォーリー木下が、生演奏と映像と役者の身体表現を見事に融合し、あたたかく美しいファンタジーを立ち上げる。舞台上にいるのが出演俳優7名と演奏の吉田能のみ、とは思えないほど多彩な表現が舞台狭しと駆け巡る。ファンタジーがもたらす豊かさが、この物語に流れている「生きる」というテーマを決して重いものにせず、こどもの目から見た世界の美しさとして伝えてくれている。爽やかな世界観を楽しめるとともに、自分の幼いころを思い出してどこか懐かしさを感じられる舞台だった。

『スケリグ』ゲネプロ写真

ゲネプロ終了後、囲み取材が行われ、スケリグ役の浜中文一、マイケル役の末澤誠也、ミナ役の渡辺菜花、お父さん役の金子昇、お母さん役の瀬戸カトリーヌ、演出のウォーリー木下が登壇した。
『スケリグ』囲み取材 左からウォーリー木下、金子昇、渡辺菜花、浜中文一、末澤誠也、瀬戸カトリーヌ
「スケリグが登場したとき、本当に浜中さんなのかな? と思ってしまった」という取材陣の感想に、金子が「皆さんたぶん気づいてないと思うんですけど、文ちゃんはいろんな役をやっているんですよ」と明かし、浜中も「8役やってます」と答えた。取材陣からは驚きの声も上がり「どこに出ていたのか教えてください」という要望が出たが、浜中は「いや、それは見つけていただいた方が」と笑ってかわした。
浜中以外の出演者も何役もこなしているが、末澤はマイケル役のみ。しかしマイケルを中心に物語が進むため、セリフは膨大だ。「ずっと舞台上にいます。これだけのセリフ覚えるのも、ちゃんとした役を一つもらってしっかりお芝居をするのも初めて。初めての経験ばかりで大変でした」と苦労をにじませた。その末澤の演技について、先輩の目から見てどうか、と問われた浜中は「先輩として、となると厳しくなるので、それはちょっとやめとこうかなぁ」と笑い、金子が「でも、誠也に対してだいぶ優しいですよ。細かく指導していますし、いい先輩だなぁ、と思います」と明かした。
マイケルの母役の瀬戸は「日に日に成長していく息子が素晴らしくて感動してます」と、末澤に優しい眼差しを向けた。しかし浜中に話が及ぶと「2時間ほとんど演者はみんな出ずっぱりで、楽屋に帰る時間がないんですよ。そんな忙しい中、文ちゃんはお客さんに聞こえないようにアドリブをそっと言ったり、演者に対していたずらをしたり、腹立たしいくらい余裕があるんです」と笑いながら浜中の様子を暴露した。
演出のウォーリーに「今日の舞台の出来は百点満点で言うと何点ですか?」と質問が飛ぶと、浜中がすかさず「百点ですね」と答えて笑いを誘った。ウォーリーも「2時間みんなでずっと動き続けてしゃべり続けて声出して、というチームワークが大事なお芝居なのでそこがうまく行けばいい作品になると思います」と答えた。
今年の目標について聞かれた浜中は「去年は「休まない」という目標だったんですが、今年も継続は力なり、ということで、仕事をいっぱいやって「休まない」を目標にします」と答え、末澤も先輩のその言葉を受け「僕も新しいことにどんどんチャレンジをしていきたいと思います」と力強く答えた。
『スケリグ』囲み取材 左からウォーリー木下、金子昇、渡辺菜花、浜中文一、末澤誠也、瀬戸カトリーヌ
見どころを尋ねられると、浜中は「見どころは?」と末澤に振り、末澤は「僕ですか?」と戸惑いながらも「“命”がテーマになっている舞台なので、見に来てくださったお客様一人ひとりがそれぞれの答えを持って帰ってくれたらいいな、と思います」としっかり公演をアピール。最後に浜中が「東京公演1か月、その後各地でもやらせてもらえるので、寒い時期で体調も崩しやすくなってますけど、みんなでがんばりたいと思いますので、ぜひ応援よろしくお願いします」とコメントして、囲み取材は終了となった。
本公演は、東京公演が2月11日(月・祝)まで、そして大阪・愛知・金沢・兵庫を2月24日(日)までまわる長丁場、浜中を中心とした明るいチームワークで『スケリグ』の世界を多くの観客に届けて欲しい。
取材・文・撮影=久田絢子

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