銀杏BOYZの『君と僕の
第三次世界大戦的恋愛革命』は
峯田和伸が白も黒もさらけ出した
渾身のデビュー作

リビドーを隠すことなく綴った歌詞

それでは、荒々しいサウンドを表現手段としたのは何故か。私的見解と前置きしておくが、これは銀杏BOYZの歌詞には男のリビドーを表現したものが多いからであろう。リビドーとは、[押さえきれない性的欲求のようなものを指して使われる。特に男性の荒々しい露骨な性的欲求を表現する言葉としてしばしば使われ、また時には男性の性的欲望を軽蔑する意味合いの言葉としても使われる。]([]はWikipediaからの引用)。ずばりそういうことである。以下、それらしきものを挙げてみる。

《学校帰りに君のうしろをつけてみたんだよ 君の部屋は二階の水玉模様のカーテン/学校で君のジャージ盗まれた事件があったろ 誰にも言えないけど本当は犯人は僕さ》《学校帰りに君のうしろをつけてみたんだよ 君はどっかのオシャレ野郎と待ちあわせをしてた/そいつが君のおしりの辺りに手をあてた時 僕は走って逃げてCD万引きしたんだ》(M2「SKOOL KILL」)。

《僕にとって君はセーラー服を着た天使/色白で無口でどこか淋しそうな女の子/もしもモーニング娘。に君がスカウトされたらどうしよう/もしも君がいないと僕は登校拒否になる》《君のママは新しいパパを見つけて/君を連れ去って/遠い街へ転校してしまう》《君のパパを殺したい/君のパパを殺したい/君のパパを殺したい 僕が君を守るから》(M3「あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す」)。

《あうあうあー/僕のあそこがなんだかムズムズするんだ》《あうあうあー/友達の彼女を好きになっちゃった》《あうあうあー/僕のあそこがなんだかムズムズするんだ/あうあうあー/僕のあそこが僕の言うことをきかない》(M4「童貞フォーク少年、高円寺にて爆死寸前」)。

《ベイビーベイビー I WANNA KILL MYSELF./まっくろけの夜とまっしろけの朝/ベイビーベイビー ガールフレンドがほしいよ/世界のどこかにきっと僕を待っているひとがいる》《ベイビーベイビー 幸せそうな恋人たちを電動ノコギリでバラバラにしたいよ/ベイビーベイビー フェラチオされたいよ/世界のどこかにきっと僕を待っているひとがいる》(M5「トラッシュ」)。

本作で最も演奏が荒い(粗い?)と思われるM1「日本人」も、イントロではフィードバックノイズも多く聴こえるM7「もしも君が泣くならば」も、あるいはブラストビートのM8「駆け抜けて性春」も歌詞はリビドーという感じでもないので、概ねリビドーを歌ったものはサウンドが荒々しい傾向にあると言ったほうがいいだろうか。世界情勢を視野に入れたM6「なんて悪意に満ちた平和なんだろう」、死別した友人のことを綴ったと思われるM10「漂流教室」、回顧的ロストラブソングM14「東京」などのサウンドはそれほど激しくないので、余計にそう聴こえるのかもしれない。だが、男のリビドーは女性に理解されない暴力的な衝動を孕んだものであり、それがこのノイジーでグイグイと迫るバンドサウンドと符合する。

異性を好ましく思う気持ち。それはそれで純粋なものであるが、男の場合、それと同時に性的欲求が内側から沸き上がってくる。それは隠すことが普通で、隠さないと大変なことになる。手が後ろに回った輩も数知れずだ。しかしながら、その内側から沸き上がってくる──あえて“漲る”と言い換えたい、その衝迫のパワーは決して他の何かと置き換えられるものではない。昔、“エロいことばかり考えている奴はスポーツで発散しろ!”みたいな話をよく聞いたが、あれとこれとはまったく別ものであろう。達成感、爽快感には近いものがあろうが、それは事後での話で、立ち上がりは明らかに非なるものだ(余談だが、スポーツでリビドーが解消できたらスポーツ界でのセクハラ事件など起こらないはずであろう)。

そのどう仕様もない衝動を銀杏BOYZは楽曲を通して見事に表現していると思う。美辞麗句を並べ、素敵な旋律と音色でアプローチするのが悪いとは言わない。どちらかと言えばそちらが正当である。多くのポップス、いやロックにしてもそちら側のものが多い。そんな中で峯田和伸は隠すことなく、 “リビドーとはこういうものである”と堂々と歌っている。“好きだ”の裏側には、ジャージを盗むような行為があったりもするし、君のパパを殺したいと思うこともある。この歌詞が実話かどうかはともかく、または事の大小はあっても、男性であればそうした衝動が心の芽生えることは理解できるだろう。“好きだ”も嘘でなれければ、ジャージを盗みたいと思うことも嘘ではないし、彼女が転校する要因となった新しい父親がいなくなれば彼女はこのまま同じ学校にいられると願う気持ちもまた嘘はないのだ。メロディーとサウンドの関係はそれに近いような気がする。清濁併せ呑む…いや、それとは少し違うが、彼が白も黒もさらけ出しているアーティストであることを余計にはっきりとさせていることは間違いない。簡単に言えば、裏表がないということだ。銀杏BOYZがファンの心を掴んで離さないのは、このようにデビュー時から自ら胸襟を開くことにまったく躊躇がなかったことも、相当影響しているのではないかと思う。

TEXT:帆苅智之

アルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』2005年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 日本人
    • 2. SKOOL KILL
    • 3. あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す
    • 4. 童貞フォーク少年、高円寺にて爆死寸前
    • 5. トラッシュ
    • 6. なんて悪意に満ちた平和なんだろう
    • 7. もしも君が泣くならば
    • 8. 駆け抜けて性春
    • 9. BABY BABY
    • 10. 漂流教室
    • 11. YOU&I VS.THE WORLD
    • 12. 若者たち
    • 13. 青春時代
    • 14. 東京
『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』(’05)/銀杏BOYZ

OKMusic編集部

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