石崎ひゅーい『アンコール』ツアー
愛にあふれた1年の終わり

石崎ひゅーいが全国弾き語りワンマンライブツアー『石崎ひゅーい 弾き語りワンマンTOUR 2018「アンコール」』を開催し、12月21日に東京・渋谷『TSUTAYA O-WEST』にてファイナルを迎えた。本ツアーは10月19日の鹿児島『Live HEAVEN』を皮切りに、約2ヶ月かけて全国22箇所をまわってきたもので、5月から7月までに開催された『石崎ひゅーい 弾き語りワンマンTOUR 2018「ピリオド」』のアンコールツアーとして行われたもの。本記事では、ファイナル公演の模様をレポートする。

Photography_Yuri Suzuki
Text_Sotaro Yamada

アコギ×2と椅子だけのシンプルなステ
ージ

アコースティックギター2本と椅子だけのシンプルな舞台。着席のフロアは全席埋まり、2階席は奥までぎっしりスタンディングで埋まっていた。ステージに石崎ひゅーいが登場すると、フロアからあたたかい拍手が起きる。椅子にセットし、チューニングをたしかめ、優しいアルペジオを奏でながらハーモニカを吹く。青い照明に照らされ、ポエトリーリーディングから始まる『溺れかけた魚』でライブはスタートした。

徐々にギアをあげると、2曲目『メーデーメーデー』では手拍子を起こし、『トラガリ』ではギターをかき鳴らしながらフェイクやファルセットを入れてエモーショナルに歌いあげる。ギター1本でオーディエンスを沸かせる一方で、『おっぱい』『エンドロール』などのバラード曲では、時にギターを止めて歌のみを聴かせるなど、しっとりした空間を演出。
本ライブはアコースティックライブであり、当然ながら音源とアレンジが異なるわけだが、なかでも『ナイトミルク』は特に大胆にアレンジされていた。メロではザクザクとしたカッティングギターでグルーヴや楽しさを感じさせながら、サビではぐっとトーンを落とし、優しいアルペジオを奏でながらウィスパー気味の声で歌う。メロとサビに大きな落差があり、なじみのある楽曲を、ライブでしか聴くことのできない特別なものに変身させていた。

落差は、石崎ひゅーいというアーティストの大きな特徴のひとつだ。喉が潰れそうなほどのシャウトから伸びのある高音やファルセット、力強い低音やウィスパーヴォイスまで。出せる声の種類や音域の広さは、楽曲に深い陰影を与え、ライブ演出にバリエーションを与える。

主役が入れ替わる美しいライブ

石崎ひゅーい『花瓶の花』MV

音楽をはじめるきっかけになった友人の結婚式のためにつくったという『花瓶の花』は、結ばれた2人にとっての宝物になり、石崎ひゅーいにとっての宝物になり、そして、オーディエンスにとっての宝物にもなったようだ。イントロから、オーディエンス全員での大合唱になった。歌が、作者の手を離れてみんなのものになり、時間をかけて愛でられていく。そんな親密な空気が会場には満ちあふれていた。
オーディエンスの大合唱に、石崎ひゅーいはギターとコーラスで色を加える。主役が演者からオーディエンスへと逆転したライブは、端的に言って美しいものだった。まるでフォークソング全盛期の1960年代の映像を観ているようだ。

オーディエンスの大合唱に「素晴らしい。とってもキレイ」と感想を述べたのち、同じ箇所を今度は石崎ひゅーいがひとりで歌う。椅子から立ち上がり、オーディエンスの近くに寄って、マイクを通さずに地声で。大きな拍手に包まれると、石崎ひゅーいもオーディエンスに向けて大きな拍手を送った。

美しく、あたたかいコミュニケーションだった。

粉雪、アンパンマン、さよならエレジー

カバー曲のコーナーでは、いくつかの楽曲候補からオーディエンスに選んでもらう方式が採られた。選択肢は、(1)尾崎豊『15の夜』(2)レミオロメン『粉雪』(3)『アンパンマンのマーチ』。結果、レミオロメン『粉雪』と『アンパンマンのマーチ』が同程度の票を集めたので、特別に両曲のメドレー『粉雪パンマン』で披露することに。「アンパンマンも、粉といえば粉だしね」というひゅーいの一言で会場は笑いに包まれた。
『粉雪』では切なさを誘い、激しくアコギをかき鳴らしシャウトしながら歌う全力の『アンパンマンのマーチ』は、客席にまで汗が飛んで来そうなほどの迫力があった。

さらにカバーをもう1曲。「もしかしたらもう1人今、テレビで歌ってるかもしれないな」と、菅田将暉に提供した『さよならエレジー』のセルフカバーを披露。菅田将暉は美しさと力強さをストレートにぶつけてくるが、石崎ひゅーいが歌うと、楽曲の濃淡や陰影が深くなる。より寂しさを感じさせるすがりつくような歌声に、大きな拍手と歓声が起き、指笛が鳴った。
石崎ひゅーい『さよならエレジー』ライブ映像

そしてちょうどその頃、テレビ朝日『ミュージックステーション』では、菅田将暉が石崎ひゅーいとの思い出話を語り、石崎ひゅーいが作詞作曲した『さよならエレジー』を披露していたのだった。

また『1983バックパッカーズ』ではオーディエンスとのコール&レスポンスが起き、「ここをカラオケだと思ってください」という前置きの後に披露された『夜間飛行』では会場全体に大合唱が起きた。そして『ピリオド』でしっかり聴かせる。
アコースティックギターの弾き語りライブは、一般的に、静かにじっと聴き入るようなものが多いかもしれない。しかし石崎ひゅーいの弾き語りライブはそのようなイメージを覆す。じっと聴き入る時間や笑いにみちた時間は当然あるが、まるでロックバンドのように熱く盛り上がる時間や、オーディエンスとのコール&レスポンスやシンガロングの時間もある。

たった1人、ギター1本だけでその場の空気を支配してしまえるのがロックスターならば、石崎ひゅーいは間違いなくロックスターだった。

「愛に満ちあふれてますから、僕たち」

「前回の『ピリオド』ツアーは、人生で初めて弾き語りのロングランツアーだった。だからいろいろ心配だったけど、みんなの声援やアンコールにものすごく励まされました」とオーディエンスに改めて感謝を示す。「『ピリオド』ツアーが始まってすぐに、またみんなに会える場所を絶対につくりたいと思った。だからこうしてツアーができたことは、本当にみんなのおかげです。今日みたいな素敵な日をつくれたのもみんなのおかげです。どうもありがとうございます。そんな気持ちを込めて新曲をつくったんです」

そしてその曲が、松居大悟監督による年末のスペシャルドラマ『平成ばしる』主題歌に起用されることなどを報告。

「こんなこと普通ないですから。愛でしかない」

そう感慨深そうに呟くと、2階席を見て「松居くん来てるかな。大悟〜?」と松居大悟の姿を探し求める。すると2階席で見ていたオーディエンスの1人が立ち上がり「来てるよ〜!」と手を振った。それが松居大悟だった。石崎ひゅーいは嬉しそうに「愛に満ちあふれてますから、僕たち」と友だちを自慢する。この2人のあたたかいやり取りは、多くのオーディエンスを幸福な気持ちにさせた。
本ツアーは開催そのものがアンコールであるので、アンコールの演奏は行われなかったわけだが、こうした本人たちの人間性や関係性が見えるやり取りがふいに挟まれると、アンコール演奏を観た時とはまた別種の満足感や幸福感がうまれる。

『アンコール』と題されたその新曲でライブのラストを飾ると「少し早いけど、メリークリスマス。そして良いお年を。また来年もいっぱい会いましょう。最高の夜をどうもありがとう」と深々頭を下げた。

石崎ひゅーいらしい全身全霊のラブソングで2018年のライブを納めた。

「こんなに弾き語りをした1年は人生で初めて」だと語った石崎ひゅーい。ベストアルバム『Huwie Best』にも弾き語りの楽曲が収められているように、彼にとって弾き語りの重要さは年々増している。ベストアルバム発売時のインタビューでは、弾き語りのライブ音源を収録することで「これまでとこれからが見えるような1枚にしよう」と試みたとも発言している。
このインタビューを読むと、彼が弾き語りで得たことをアルバムに反映させようとしていたことが伝わってくる。
大部分を弾き語りで過ごした2018年。1年のライブ納めを愛にあふれた弾き語りで締めた先には、いったい何があるのだろうか?

そのヒントは、年明け1月8日と1月9日に東京『SHIBUYA CLUB QUATTRO』にて2daysで行われるバンドでのファイナル公演にありそうだ。
セットリスト

1. 溺れかけた魚
2. メーデーメーデー
3. 第三惑星交響曲
4. 友達
5. トラガリ
6. おっぱい
7. エンドロール
8. ナイトミルク
9. カカオ
10. 花瓶の花
11. 粉雪(レミオロメン カバー)〜アンパンマンのマーチ
12. さよならエレジー
13. 1983バックパッカーズ
14. 夜間飛行
15. ピリオド
16. アンコール(新曲)


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石崎ひゅーい『アンコール』ツアー 愛にあふれた1年の終わりはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。