【インタビュー】キャメロット「モダ
ンで近未来的でサイコスリラーな物語

US産メロディックメタルのベテラン、キャメロットが3年ぶりの新作『THE SHADOW THEORY』を引っさげ再来日を果たした。幾度となるメンバーチェンジを経ても変わらぬ独自の世界観と、ドラマティックでシンフォニックかつプログレッシブな音楽性を誇る彼らは、通算12枚目となるニューアルバムでもその大きな器を見せてくれた。
ダークで妖艶なその世界観はステージでも見事に再現されている。次々と畳み掛ける美しくも激しいサウンドは、トミー(カレヴィック/Vo)の表現力にトーマス(ヤングブラッド/G)とオリヴァー(パロタイ/Key.)とのソロバトル、そしてショーン(チベッツ/B)とスウェーデンのメタルバンドであるサイラからアレックス(ランデンバーグ/Dr)がサポートとして強力なリズムが構築されており、場内の一体感は増すばかりだ。

直近2作品を中心としたセットは日本向けにチューニングされ、クラシックキャメロットの名曲では大歓声から大合唱へと変わり、圧巻な光景が繰り広げられた。高揚感が続くパフォーマンスは彼らの成長に裏打ちされたものであり、ゲストシンガーのローレン・ハートも美しい華と毒を添えていた。

オリジナルメンバーでありメインソングライターであるトーマス・ヤングブラッド(G)が、東京公演前日に単独インタビューに応えてくれた。
──日本公演を楽しみにしていました。

トーマス:とても素晴らしい気分だよ。今回は10日ほど前から日本に来ているんだ。ずっと家族と来たいと思っていたのが実現して、東京以外にも色々なところに行けたんだ。新幹線で京都にも行って3日間滞在した。伏見の竹林やお寺とか楽しかったな。

──アメリカやヨーロッパでの大規模なツアーはいかがでしたか?

トーマス:凄く良かった。この日本の直前はヨーロッパだったけど、バンド史上最高の5週間のツアーだったんだ。前作のアルバム・ツアーの時より集客も上回ったし、オランダではライブ映像も撮影した。長い間バンドをやっていて、未だにこうして成長できている事がとても嬉しいんだ。世界中の各地を回れて、行く先々のファンもとても素晴らしいからね。

──ニューアルバム『THE SHADOW THEORY』は「影」がテーマのようですが、どんな事を表現しているのですか?
トーマス:心理学者のカール・ユングからのインスピレーションを入れているんだけど、ユングが提唱した影の理論があるんだ。それは人間には影の部分があり、それを受け入れるか否か、という話だけど、これをアルバムに採り入れつつ、モダンで近未来的でサイコスリラーな物語にしてある。アルバムの"影"には3つの側面があるんだ。「Ministrium(Shadow Key)」は比喩的な意味だけど、人間の脳の色々な部分を鍵で開けて行って様々な側面が見えるということ。「Phantom Divine(Shadow Empire)」は、帝国という意味だけど、メディアや情報を操作する人々や機関を表現している。3つ目は「Shadow Wall」で、戦争や人間の行いを阻む壁の事なんだ。

──「Shadow Wall」という名の曲はありませんが、テーマに盛り込まれているということですね?

トーマス:そう、曲のタイトルとしてはないんだけど、『THE SHADOW THEORY』の"影"の定理のひとつとして、ストーリーに組み込まれている。

──前作『HAVEN』とリンクしているようにも感じますが。

トーマス:意識して『HAVEN』の要素を採り入れたつもりはないんだけど、とても気に入っていたアルバムなので自然とそれが出てしまったかもしれないね。「Amnesiac」ではモダンで近未来感が出ているし、『HAVEN』がそういう物語を描いたアルバムだったから。

──今作では、どの部分に一番時間がかかりましたか?

トーマス:アルバム最後の長い曲「The Proud and The Broken」かな。凄くたくさんの音を重ねているから時間もかかった。ライブでやりたいと思っているけどなかなか難しいかな(笑)。僕が一番気に入っている「Burns to Embrace」では子供のクワイヤが入っているでしょ?これ、僕の息子なのが自慢だよ。自宅のダイニングルームで録ったんだけど、息子の声を9種類も録ったんだ。女性の声も少し入れたかったので、サシャ・ピート(プロデューサー)のガールフレンドの声も重ねて入れた。それで子供のクワイヤに仕立て上げたんだよ。

──キャメロットの楽曲には独自の美学がありますが、カール・ユング以外にはどんなところからインスパイアされているのでしょう。
トーマス:アルバム毎に違うけれど、今はこうして世界中を訪れる機会もあるから、色々な異なる文化に触れたりすることも大きい。『HAVEN』と『THE SHADOW THEORY』の2作に関しては、若い頃に好きでとても影響を受けた「ガタカ(GATTACA)」と「ローガンズ・ラン(邦題/2300年未来への旅 )」という映画だね。僕はディストピア、良い未来ではなく悪くなって行く未来が好きでね、子供の頃から未来への憧れがあった。そしてキャメロットのファンのありがたいところは、僕らが色々なアイディアを出しても受け入れてくれるところだよね。

──日本盤のボーナストラックである「Angel of Refraction」はとてもプログレッシブですよね。

トーマス:そうでしょ?自分たちもやる気になればプログレバンドにもなれるんだ(笑)。

──トミー(カレヴィック/Vo.)の影響もありますか?

トーマス:トミーよりはむしろオリヴァーかもね。プログレッシブな曲も良いコントラストになったと思っている。だからと言って、次のアルバムが更にプログレッシブになると言うわけではないし、『HAVEN』の次だったからこうなったのかな。

──昨今は音楽の楽しみ方も変わってきましたが、曲単位ではなくアルバムの世界観にこだわりますか?

トーマス:キャメロットとしては、最初から最後までちゃんと聴いてもらえることを前提にアルバムを作っているよ。たしかに曲単位やシングルのリリースが多いけれど、キャメロットは山あり谷ありの起伏があるアルバムにしたいのは今も昔も変わっていない。それがどう受け止めて貰えるかは考えて行かなくてはいけないけどね。僕の15歳の娘も曲単位で聴いているけど、たまにアナログ盤も買ったりしているんだ。

──メンバーは、アメリカ/スウェーデン/ドイツと遠く離れていますが、どのようなプロセスで制作するのですか?
トーマス:『SHILVERTHORN』アルバム以降は、僕がドイツへ行ったり、オリヴァー(パロタイ/Key)がフロリダに来たりしているよ。それ以前も僕がノルウェーへ行ったりもしていたから、やり方は変わっていない。たしかにキャメロットはインターナショナルなバンドメンバーではあるけど、あくまでも基本はフロリダ州タンパから出てきたバンドでサヴァタージやクリムゾン・グローリーと同じ信念さ。

──サヴァタージやクリムゾン・グローリー…お好きなのですか?

トーマス:うん、子供の頃、憧れの存在だったよ。彼らがタンパ以外のところでも活躍していたから、自分もそうなりたいと思った。今ではサヴァタージのジョン・オリヴァ(Key、Vo)とは友人だけど、憧れて影響も受けたね。もちろんそれ以外にもクイーンやアイアン・メイデンにも影響は受けたけどね。

──トミーはセヴンス・ワンダーと兼任されていますが、それがバンドにとって良い刺激もありますか?

トーマス:セヴンス・ワンダーというより、アーティストとしてのトミーがキャメロットにユニークな影響は与えてくれているよ。ヴォーカル面でも二つのバンドが違うことをトミー自身が理解してくれている。どちらも長くやっているので、二つが融合して行く部分はあるかもしれないけど、キャメロットのスタイルをトミーが持っていてくれて嬉しいよね。

──今後の予定は?

トーマス:DVDは来年の秋には出せるかな。日本の後はオーストラリアで4回のショウ、そしてクリスマス休暇を取ったら、2019年3月から2度目のヨーロッパツアー、夏はDVD制作、秋に2度目の北米ツアーをして今回の『THE SHADOW THEORY』に伴うツアーは終わると思う。
──では、最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

トーマス:日本の国も文化も会う人々も大好きさ。こうして戻って来られて本当に嬉しいよ。今回は家族とも日本を満喫できたし、明日からのショウも楽しみさ。これからも何度でも戻って来たいよ。

取材・文:Sweeet Rock/Aki
写真:Yuki Kuroyanagi
<KAMELOT ~ THE SHADOW THEORY Japan Tour 2018 ~>
2018.11.28 Tsutaya O- East
1.Phantom Divine(Shadow Empire)
2.Rule the World
3.Insomnia
4.The Great Pandemonium
5.When the Lights are Down
6.End of Innocence
7.Veil of Elysium
8.Here's to the Fall
9.Center of the Universe
10.March of Mephisto
11.Karma
12.Amnesiac
13.Keyboard vs Drums Performance
14.Sacrimony(Angel of Afterlife)
15.Burns to Embrace
16.Forever
EC1.Liar Liar(Wasteland Monarchy)

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