ロックとは何か。Lenny code fictio
nのライブに、その答えがある。

30年近く生きていて、はじめて「ロックバンド」のライブを体感したような気がする。
それは、Lenny code fiction(レニーコードフィクション)が1stアルバム『Montage』をリリースした翌日に行った東京でのワンマンライブだった。
会場は「渋谷 duo MUSIC EXCHANGE」

正確には、初めてではないのだけど、何かが新しい体験だった。そもそもロックに真ん中も端っこもないだろうけど、その日は間違いなく「ど真ん中のロックミュージック」が鳴っていた。
「やっと出せたぜファーストアルバム!ワンマン!この日を待ってました!(Vo.片桐航)」

2016年のメジャデビュー後、4枚のシングルリリース、2度の全国ツアーを経て、彼らにとって今回が初の“アルバムを引っさげて”のツアーになる。ステージ上の4人は喜びを爆発させていた。
「きっと、このライブで何かが起こる」。その予感は、アルバムの1曲目を聴いたときからあった。1stアルバム『Montage』は、1枚を通じてライブへの招待状のような、ライブ盤ではないのだけどライブを全開に感じることができる構成になっている。
1曲目の「Montage(SE)」はその名の通りライブの登場曲で、2曲目の「Snach」は本編の幕開け、日常とは別の世界へ連れ去る(偽物の音楽なんて聴いてないでこっちに来い)という曲、そして3曲目はライブで最も盛り上がりをみせる「Enter the void」へと続く。
この日のワンマンも、アルバムと同じ曲順で幕をあけた。フロアにいた人々は、2曲目「Snach」のイントロがはじまった瞬間から、両手を掲げ、熱いクラップで応えていた。この曲は、1stアルバムではじめて音源化された新曲だ。発売日の翌日にも関わらずこの反応ということは、これまでのライブですでに楽曲を聴き込んでいる人が多くいることの証明だった。

「無礼にも味が薄いな 隠し味が足りないんじゃないの? 夢に見た華の時代と比べぬるさが勝ってないか 廃れない耳なら きっと本質に気づいてんじゃないの? 深みのない甘い魔法が 心に生きる場所はないわ」 ー「Snach」より

日常から、あるいはインスタントな娯楽の世界から“こちら側”へ連れ去る。歌詞で畳み掛けるメッセージもさることながら、ライブでは、Vo.片桐航をはじめとする4人の在り方、佇まいが、別世界へ連れ去るひとつの装置になっていた。
Vo.片桐航は、インタビューを受けたり、ラジオでトークをするとき、いわゆる普段時とライブ中はまるで別人になる。明確に、スイッチが入る。25歳の温和な青年が、ロックミュージシャンになる。その立ち振舞い、ひとりの人間がみせる振り幅は、ステージと向き合うこちらも「普段の自分とはちがう誰か」になることを許容してくれる。
ソラ(Gt.)は全編ギターソロのような怒涛のフレーズで旋律をつくり、kazu(Ba.)、KANDAI(Dr.)もBPM150~180の疾走的かつ太いグルーヴを、まるで踊るように紡いでいた。アウトロからイントロはすべてシームレスにつながり、曲から曲へ次々と移行する。その間に、一言の無駄もなく削ぎ落とされた片桐航の言葉が投げられる。

「さあ手加減なしでぶっとばしていきます!
これが俺たちの真骨頂、ライブっていうのはこういうもの!(Vo.片桐航)」

その後の「Enter the void」からラストの「Twice」まで、アルバム『Montage』の収録曲をベースに、「Showtime!!!!!」や「Alabama」などを含む計17曲を演奏した。約70分間が一瞬にして過ぎ去った。
Ba. / kazu
Dr. / KANDAI
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全編ギターソロのようなフレーズってどういうこと?と思った方はソラさんのInstagramを要チェック。後日メンバー全員で出演したラジオで、Vo.の片桐航も「Vale tudo【MAKE MY DAY】」は歌よりもギターーを聴いてほしいと語っていた

すべてが吹っ切れる瞬間

この日、はじめて「ロックバンド」のライブを観たように感じたのは、結成に至るまでの背景やアルバムに込めた想いなどを事前に聞いた上で、すべてが吹っ切れている瞬間を目にすることができたからなのかもしれない。
曲の合間のMCでも、積年の思い、今の率直な気持ちが語られていた。
「いろんなツアーを経てきて
いろんなライブを経て
バカみたいに曲を書いて
2年まえにようやくデビューして
頬をぶたれるような、
悔しい思いもたくさんしてきたけど
なんでか、それを全部ぬぐえるような感じで
いまほんまに、心の底からツアーを楽しんでいるような気がします。

だからその姿、空気感っていうのを、このツアーはじめて参戦した人も
いつも来てくれている人も、全員感じていってくださいよろしくお願いします!(Vo.片桐航)」
片桐航は高校時代の3年間で200本以上のライブに出演していて、kazu(Ba.)とは10代から組んでいる前身のバンド時代からの仲。kazuが書いたLenny code fiction結成に至るまでの話を読むと、2016年のメジャーデビューの時点で「ようやく」感がある。そこから2年。デビュー後もライブで本来の自分たちを出し切れていない時期などを乗り越え、1stアルバムリリース、今日のワンマンに至った。
会場には、大きな柱がふたつあって、その柱の後ろからはステージが見えないので、満員の会場のなかでもすこしスペースがあいていた。ひとり、おそらく10代〜20代前半ぐらいの若い男性だったと思う。柱の影で、頭をガンガンに揺らして、踊っていた。

4人の音が「あなたの物語」に変わると
き。

ソラ(Gt.)は「音楽を続ける理由」と題したブログ記事に「音楽を続けるのは、ライブをするため」だと言い切った。この日のライブ前日に綴った記事にも、「『Montage』はライブで披露されてはじめて完成する」と書いていた。ソラだけでなく、メンバー全員がライブこそがロックバンドの本域だと信じている。
ライブを最重要視する彼らだからこそ、アルバムのリリースはひとつの大きな通過点だった。「Make My Story」のインタビュー時に片桐は、理想とする音楽を「聴く人が自分自身の物語を重ねてくれるもの」だと語っていた。
ライブの価値をさらに高めるのは、ライブに来ていない残りの何十、何百倍もの時間。生活のなかで音が聴かれることで、ひとつひとつの楽曲は聴くひとの物語の一部になる。物語が増えていけばいくほど、会場が大きくなるだけでなく、空間の空気が変わる。
この日のライブでは、何よりも4人の音圧と熱量に圧倒された。序盤はフロアの様子を観察していたりもしたけど、後半はステージ上しか視界に入らず、釘付けになっていた。いちばん大きな歓声を耳にした(ような気がした)のは、終演後、映像とともに「2019年2月2日(土)ツアーファイナル公演 in 渋谷クアトロ開催決定!」の文字が踊ったときだった。

ツアーを巡ってくる4人はもちろんのこと、ファイナル公演では『Montage』を聴き込んだフロアの熱気が何倍にも膨れ上がりそうで、ちょっとした事件になりそうな気がしている。
Photography_SERINA / タカハシハンナ

最新LIVE スケジュール
Lenny code fiction LIVE TOUR 2018-2
019 ”Montage”

チケット全公演共通/前売り¥2,500(オールスタンディング・税込み・ドリンク別)
※渋谷公演のみ前売り¥3,000(オールスタンディング・税込み・ドリンク別)

<SCHEDULE>
2019/1/19(土)福岡 DRUM SON<ワンマン>
2019/1/26(土)大阪 梅田Shangri-La<ワンマン>
2019/1/27(日)愛知 ell.FITS ALL<ワンマン>
2019/2/2(土)東京 渋谷クラブクアトロ<ワンマン>
>>スケジュール詳細はこちら


Lenny code fiction 公式サイト
Lenny code fiction Twitter

ロックとは何か。Lenny code fictionのライブに、その答えがある。はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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