MONO スティーヴ・アルビニが再び録
った、世界が注目する新体制での初ア
ルバムが遂に完成

音楽には、本物、物まね、そして偽物がある。

ここで言う“本物”とは、オリジナル、つまりその音楽を作った人を差してはいない。他人が作曲したものであっても、演奏者の息吹が込められているならそれは「本物」であるということだ。
そしてその線引きをするのはそれぞれの人の心だ。それ故に同じ音楽を聴いてもすべての人が同じ答えになるとは限らないが、MONOの音楽を聴いて彼らの作品を誰かのコピーであるとか、或いは偽物であると言う人はいないと思う。それほどまでに彼らの創り上げる音楽は真に純粋であるからだ。
『闇と光の交錯は歴史の中でも世界共通である。
21世紀においてこれを継続的に関係性を持たせ、表現するバンドはMONOのみであろう』
— Jeremy deVine(Temporary Residence Ltd.)
これは、テンポラリー・レジデンス・リミテッド代表のジェレミー・ディヴァインが、2019年1月25日に自社よりリリースするMONOの10作目となるアルバム『Nowhere Now Here』について発信したレーベル・アナウンスメントの冒頭部分だ。
テンポラリー・レジデンスとは、ジェレミー・ディヴァインが所有するモグワイ(Mogwai)、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ(Explosions In The Sky)、ビーク(BEAK>)などが所属するアメリカ・ニューヨークのレーベルで、遡ること2003年、ジェレミー・ディヴァインはMONOとスティーヴ・アルビニを引き合わせた。これがMONOの転機となる。
「そこからすべてが変わっていった」と公言するMONOは、時を経て、テンポラリー・レジデンス、そして前作に続き長年の友であるオルタナミュージック界の名エンジニア、スティーヴ・アルビニと再びタッグを組み、アルバム『Nowhere Now Here』を世界に向けて発信することになった。
10作目となるアルバム『Nowhere Now Here』(2019年1月25日発売)
ここで、来年2019年に結成20周年を迎えるMONOの歴史をご紹介しよう。
■ MONO、神の音楽を奏でる人たち
MONO
1999年、東京で結成された4人組のインストゥルメンタル・ロック・バンド。オーケストラとシューゲーズギターノイズを合わせた、オリジナルな楽曲スタイルが非常に高い評価を受け、もはやロック・ミュージックの域では収まらない音楽性を発揮し、イギリスの音楽誌NMEでは"This Is Music For The Gods__神の音楽"と賞賛された。
ライブにおいては、毎年およそ150本におよぶワールド・ツアーを実施し、これまで渡った国は延べ57カ国にもなる。ロック・ミュージックの中では日本人バンドとして世界で最も多くのオーディエンスを獲得したバンドの1つであり、評論家、ファンから世界最高のライブ・バンドの1つとも称されている。2009年には23名のオーケストラを従えた編成でのスペシャル・ショウをニューヨーク、東京、ロンドン、メルボルンで開催し、各会場でスタンディング・オベーションを巻き起こした。
DVD『HOLY GROUND: NYC LIVE WITH THE WORDLESS MUSIC ORCHESTRA』
これまでに、ニューヨークでのオーケストラとのライブ・アルバムを含めた10枚のアルバムをリリースし、2015年にはコラボレーション製作した短編映画『Where We Begin』でカルフォルニアの国際的なフィルムフェスティバル『Idyllwild International Festival of Cinema』にてベスト・ミュージカル・スコア賞(The Marshall Hawkins Awards: Best Musical Score – Featurette)を受賞。2016年には楽曲提供をした長編映画『The 4th Company』がメキシコ・アカデミー賞『Ariel Award』の音楽賞でノミネートされた。
順調に見えた活動に陰りが出たのは2017年。ドラマーの脱退、日本のマネジメントやレーベルとのトラブル、契約解除など、様々な苦境にバンドは直面していた。そんな時、バンドが諦めず前に進む上で大きな力となったのは、18年の付き合いになるアメリカのレーベル、テンポラリー・レジデンスをはじめとする世界中のたくさんの仲間達・パートナーだった。そして事態は急激に好転していく。
2018年、新しいドラマーDahmを迎え、6月にはザ・キュアー(The Cure)のロバート・スミスのキュレーションによりロンドンで開催された『Meltdown Festival』に、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)、モグワイ(Mogwai)、デフトーンズ(Deftones)等と共にヘッドライナーとして出演。その後、10枚目となるニュー・アルバムをプロデューサーにスティーヴ・アルビニ(Steve Albini)を迎え、シカゴのElectrical Audioにてレコーディングを実施した。
新メンバーのドラマー、Dahm 撮影:Sero, courtesy of New Noise China2018年春にロンドンで開催された『メルトダウン・フェスティバル』
MONO with スティーヴ・アルビニ
1月27日にリリースするアルバム『Nowhere Now Here』より、9月にはデジタル・シングル「After You Comes The Flood」を、11月にはMONO史上初となるヴォーカル入り楽曲「Breathe」をリリース。この作品でTamakiはヴォーカル・デビューを果たし、世界中のファンを大いに驚かせた。そして秋にはインドのフェスに出演後、スペインやオランダのフェスを含むヨーロッパ・ツアーを行い、大成功を収めた。
日本のアイドル、バンドには、日本での宣伝文句や実績を増やすために海外公演を日本からのファンを伴って実施することがあるが、MONOの場合は違う。
居場所を求め、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、アジアに及ぶ世界57カ国でライブを開催してきたというMONOの実績を目にし、実際にステージに立つ彼らのショウを観るたびに、同じワールド・ツアーという言葉の意味やクオリティにも、音楽同様に本物か偽物かの違いがあると感じさせられる。
極限まで突き詰め、より純度の高い音を奏でようと藻掻き、実直に続けてきたら、あっという間に20年が経過したとメンバーは言うが、そんなバンドが最も苦戦を強いられているのが、ここ、日本だそうだ。
「結成当時、歌のない僕らのようなインストゥルメンタルでは、下北沢あたりのライブハウスにも出してもらえなかった。だから日本の外へ出て行くしか、海外でやるしかなかった」
20年前に、下北沢にある老舗ライブハウスのいずれかがMONOを受け入れていたら今頃事情は違っただろうか。そう考えてみても、きっとそれほど変わらない音楽がこの日本を占めているだろう。だから、断られて良かったのだ。
彼らが居場所を探し求めて辿り着いたのは、上述の通り、2018年にザ・キュアーのロバート・スミスにオファーされて出演したロンドンの格式あるクイーンエリザベスホールで行われた『メルトダウン・フェスティバル』のヘッドライナーとしてのステージだった。これはMONOが世界基準で認められている確固たる証拠に他ならない。当時のインタビューで、リーダーのTakaakira 'Taka' Gotoは10代の頃に憧れていたミュージシャンに呼ばれてNINやマイブラと同じステージに立てた理由についてこう語っている。
「彼らの物まねをやっていたら、呼ばれてはいない。
自分の、自分たちの信じる音楽をやり続けたから同じ土俵に立てたんだと思う」
ロバート・スミスが自分のフェスに欲しがるMONOは、世界から引く手あまたの日本のバンドだ。しかし、MONOは現在、日本におけるレーベル契約を交わしていない。だから日本にいる私たちが彼らの新作を購入するためには、アメリカのサイトを経由しないと購入できない。私たちはこの現象を日本の音楽業界、日本のリスナーが世界レベルについていけていないと捉えるべきなのだろうか。
そうした実情からか、年間150本以上のライブを開催するMONOの日本公演の数は極端に少ないわけだが、結成20周年となる2019年はMONO史上初となるメンバーの地元への凱旋ツアー開催が発表された。まだ観たことのない美しい世界を魅せてもらえるはず。以下は、SPICE読者に向けたMONOからのメッセージだ。
10枚目となるアルバム“Nowhere Now Here”を、バンド結成20周年目を迎える2019年1月25日にリリースします。
このアルバムは新ドラマーとしてDahmを迎え、Tamakiは“Breathe”でボーカルデビューした作品となります。
前作同様、長年の友人であるスティーブ・アルビ二(ニルバーナ、ピクシーズ等のプロデューサー/ エンジニア)を迎え、シカゴのエレクトリカルオーディオスタジオにてアナログテープを使用し録音しました。全ての曲は4人全員での一発録りのライブレコーディングです。よりパワフルで壮大な作品となりました。
この作品を提げて2019年1月27日(日) 東京LIQUIDROOMを皮切りに、全6公演の『MONO 20 Year Anniversary Japan Tour 2019』を行います。
このツアーは私たちの生まれ故郷である福岡、島根、山口、そして此処で音楽を学んでいったと言っても過言ではない大阪、広島でのライブが実現することとなりました。
特に故郷でのライブは私達自身初めての事になります。
私達が生まれ育った町、そして音楽を自分達の身体に入れてくれた地で、どのようにMONOのサウンドが聴こえ、どのような景色が見えるのか今からとてもエキサイトしています。
沢山の人達とこの空間を共有したいと思っています。お待ちしています。
MONO
ツアー直前にリリースされるアルバム『Nowhere Now Here』を筆者は一足早く聴く機会に恵まれたのだが、最初の一音から驚かされ、これまで以上に心を持って行かれた。まさに暗闇において光を放つ秘宝のごとく、どんな困難に遭ってもけして消えることのないMONOそのもののような作品だ。
自らを音源化すること。それこそが真のミュージシャンであり、芸術だ。MONOは日本の宝だと私は思う。作品として、ライブ・バンドとして、どちらも世界基準で創り上げられた美しい世界をぜひ体感して欲しい。
文=早乙女‘dorami’ ゆうこ
『MONO 20 Year Anniversary Japan Tour 2019』

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