葵わかな、木下晴香、生田絵梨花、三
人のジュリエットが語る、ミュージカ
ル『ロミオ&ジュリエット』への想い
とは

シェイクスピアの名作を原作にしたフランス発のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。世界各国で上演され500万人以上を動員した、このメガヒットミュージカルを小池修一郎が潤色・演出する日本オリジナルバージョンの舞台が一部新キャストを加え、2019年2月に待望の再演を果たす。10月末に行われた制作発表会見はメインキャストによる歌唱披露もある華やかなものとなっていて、作品の魅力が余すことなく伝わってきた。その会見後、今作のヒロイン・ジュリエット役をトリプルキャストで演じることになった葵わかな、木下晴香、生田絵梨花の独占取材に成功! これが初舞台、初ミュージカルとなる葵と、2017年の前回に引き続き二度目の参加となる木下、生田に、作品への想いを語ってもらった。
ーー三人が顔を揃えたのは今日が初めてだそうですね。まず、制作発表会見の感想はいかがでしたか。
生田:前回の記者会見の時は、私も晴香ちゃんもド緊張で大変だったんですよ。今回同様、一般のお客さまも参加する会見だったので、お客さまがいらっしゃる気配もすごく感じるし、もちろん記者の皆さまもいらっしゃるし、ああーってなって頭真っ白でした!(笑)。立っているのが精一杯だった記憶しかないですね。だけど今日は全体的に雰囲気がほんわかしていて、これから記者会見! みたいな感覚ではなかったというか。これから始まるね~! みたいな、いい緊張感と楽しみな気持ちでいっぱいでした。前回に引き続き二回目のキャストが多いから、すでに絆もありますし。それに加えて、わかなちゃん含め、新キャストのみなさんもすごく和気あいあいとしていましたね。
木下:私は今回のほうが、ちょっと緊張していたかもしれません。
生田:あれっ、ホントに? じゃあ、私だけの感覚だったんだ、スミマセン(笑)。
木下:なんだか、前回感じたのとは違うドキドキがあったんですよね。前回は初舞台でとにかく何もわからない状態でしたし。ジュリエット役をすることが発表されたあとの初めてのお仕事で、すべてが未知の世界で逆に怖さを感じずに楽しくやれていたんです。
生田:そうだったんだ、確かに堂々としていましたね。
木下:それはいろいろなことを、まだ知らなかったから。だけど今回は、一度経験させてもらったからこその、さらにもっとよくしたいという想いを抱えての制作発表の場だったので。とはいっても、ステージに出てしまったら大丈夫でした。それに歌い出しはいくちゃんで、次がわかなちゃん、私は三番目だったから、二人の歌声を聴くことで落ち着くことができました。
葵:私は今回が初舞台なので、そういう意味では前回の晴香ちゃんの立場に近いかもしれないです。でも楽しさを感じる余裕は、全然なかったです。わからないことが多すぎて、緊張さえ、し切れていない気がしてとても微妙な心境でした(笑)。でも、ほかのお仕事でチーム感みたいなものを感じる機会ってそんなにないんですが、今日の会見が始まる前、昨日まで全然へっちゃらそうな顔をしていたみなさんが「緊張する~!」と言い合ったりしている様子を見ていて、きっとみなさんすごくいいチームなんだろうなというのを垣間見ることができました。
葵わかな
ーー葵さんは、再演組の中にあとから参加する形になるわけですが。
葵:その点に関しては、出演が決まった当初のほうがもっと緊張していた気がします。他にも初参加の新キャストの方もいらっしゃいますけど、でもジュリエットが絡む人物って決まっていて、その顔ぶれは前回とほぼ同じ方になるようなので、そこに自分が入った時の異物感が気になるんじゃないかなと思ったりしました。でも今日の会見で実際に現場に入ってみたら、そんなこと何も意識されていないような感じで二人が接してくださって、ほかの方々とはまだあまりしゃべれていないですけど、特に「なんだコイツ?」みたいな感じではなかったので大丈夫かなと(笑)。お二人が言うみたいに本当に素敵な方々ばかりなんだろうと思えたので、どうしよう、私だけ初めてで……みたいな不安はだいぶ薄れました。
ーー生田さん、木下さんは前回の舞台に立ってみて、特に印象深かったエピソードは。
生田:前回は私自身、外の世界に飛び出すということ自体がほぼ初めてだったので、すべてのことがぎこちなかったように思うんです。お芝居以前に、まず、ちゃんと立ちなさいと言われていましたしね。ほかにも、階段の下り方はもっときれいにとか、歌っている時はもっと遠くを見るようにしなさいとか、手取り足取り教えてもらっているような感じでした。あの頃の私は一生懸命やるあまり、目の前のことしか見えていなかった。自分が思っていることをどう表現として出せるか、全然わかっていなかったので、今回はもう少し柔軟にやれたらいいなと思っています。
木下:私は、カンパニーのみなさんを家族みたいに思っていた部分がものすごくあって。個人的な話になっちゃうんですけど、あの時は上京してきたばかりで東京に慣れる間もなく、お稽古場に通う日々だったんですよ。そういう状況で、いつもそばに同じ役をやるいくちゃんや、乳母役のシルビアさんがいてくださって、ジュリエットの関係性と同じように接してくれていて。初めてのことばかりで本当に何もわからなくて、小池先生に言われるまま「ハイ、ハイ、ハイ!」みたいな状態だったから、心の部分を周囲の方々に支えてもらっていたということが一番印象深かったです。
ーー今回みたいなトリプルキャストの場合、お稽古ってどういう風にされるものなんですか。
木下:まだこの三人での稽古は始まっていないので実際にどうなるかはわかりませんけど、小池先生が演出される舞台で一度トリプルでやらせていただいた時には……。
生田:ああ、コンスタンツェの時?(2018年『モーツァルト!』のコンスタンツェ役で平野綾、生田、木下がトリプルキャストで出演) あの時は綾さんが再演チームだったので、まずは綾さんが稽古をして、それを私たち二人は見て覚えて、次に順番にやってみる、というスタイルでしたね。だから実はトリプルだと稽古としては回数が、そんなに何度もできなくて。
生田絵梨花
木下:そうそう。
葵:あ、そうなんだ……。
木下:不安になっちゃった?
生田:でも、以前出演されていた方に聞いたところによると、逆にこの『ロミジュリ』の場合は再演チームがあまり稽古できない時もあったみたいで。とりあえず動きの確認をしたら、あとは新しいキャストで何度か稽古をやるとか。それに今回は私も稽古には遅れて参加することになりそうなので、再演といえども焦り感があるし、みんなに追いつかなきゃって気持ちをずっと持ちながらの稽古になりそう。この分では、まったく余裕なんて生まれないだろうなあ。
ーーまた自分たちが交代で稽古するのと同じように、相手役も稽古するたびに違う方になるわけで。
木下:でもその分、客観視して学ぶ大切さがわかってくるんですよ。同じ役だといっても、ほかの二人とまるっきり同じことをするのも違いますし。それぞれの個性に合った役づくりというのが、絶対にあるはずですからね。実際、その時もいくちゃん、綾さんから学ぶことがたくさんありました。今回も、二人からたくさん吸収させてもらおうと思っています。
ーー葵さんは舞台の稽古に対して、どういう印象をお持ちですか。
葵:稽古に関しては、DVD特典映像とかでしか見たことがないくらいで(笑)、本当にファンの皆さんと同じような知識しかないんですよ。なので今、二人のお話を聞いていて「そういう感じなのか、結構大変そうだな、見て覚えて、見て学ぶんだ!」と思いました。
ーー同じジュリエット役でもつけてもらう演出が違ったり、役づくりの面でお互いの解釈が違ったりする場合もあるんですか。
生田:まず小池先生が基本の動きをつけてくださって、解釈はそれぞれが考えてくる、みたいな感じですね。
木下:稽古の時に、こうしたいと思えばその場でやってみて、それに対してもっとこうしなさいとプラスしてくださったり、それは違うよと教えてくださったり。決められた動きの中で、そうやって自分の解釈を表現していく感じなんです。
木下晴香
ーーでは葵さんもそのつもりで稽古に臨む、ということですね。
葵:そうですね。だけど、台本についてとか、役についてはそれほど心配ではないんですが、歌とセリフのつながり部分をどうやるかが難しいんじゃないかなと今は思ってます。
ーーお二人からその点をアドバイスするとしたら?
生田:でもわかなちゃんはふだんから女優さんをやられているので、あまり「歌おう!」と意識するよりも、いつもやっているお芝居の感覚でできるんじゃないかと思いますよ。今日の会見でも、そういう感覚で歌われているように見えましたし、それがすごく良かったし。わかなちゃんの歌は、とても聴き心地がいいですよね。
木下:うん。私、以前に歌唱指導の先生に言われてハッと思ったことがあるんですが、それは「前奏も自分の気持ちを表しているんだ」ということ。メロディも全部、役の感情を表現するための手段のひとつだから、そこを利用するといいみたいな話をしてもらった時に、自分の中でつなげやすくなった気がします。
生田:ああ、確かに。
木下:それ以降、そのことは意識するようにしていますね。あと、歌詞をセリフで言う練習をしますよね。
生田:する?
木下:したこと、ない? 私、『ロミジュリ』の稽古でやったと思うんだけど。
(左から)生田絵梨花、葵わかな、木下晴香
生田:歌稽古の時?
木下:歌稽古の時もあったし、バルコニーの場面の時もあった。歌詞をセリフとして言ってみるんですよ。
葵:音楽なしで、ってことですか?
木下:そう、普通のセリフとして。それをやってみると、無意識に歌とセリフを自分の中で区切っちゃっていたことがわかって。そこを意識するようにして鍛えれば自然とつながると思うので、実は私自身もそこを今回しっかりチャレンジしようと思っているポイントだったりもします。
ーー葵さんは今回、ロミオ役で大野(拓朗)さんがいるというのはかなり心強いんじゃないですか。
葵:いやあ、どうですかね(笑)。
生田:朝ドラ(連続テレビ小説『わろてんか』で葵は今回のロミオ役・大野拓朗と共演済み)の撮影で、わりと絡んでたんじゃないの?
葵:絡んではいたんですけど。お互いに別に相方がいたから、チームメイトみたいな関係だったんですよね。それが今回は相手役になるので新鮮です。
生田:がっつり、相手役ですから。それも、ここまで濃い相手役って。
木下:ほかに、なかなかないと思います。
葵:そうかあ! じゃ、これまでの関係性がどう変わるか、楽しみです(笑)。
葵わかな
ーーそもそも『ロミオとジュリエット』という作品に抱いていたイメージは? そして実際に作品に関わってみて、その印象は変わりましたか。
生田:最初にこの作品を観た時は、ジュリエットには可愛らしい、儚いイメージが強くあったんですが、作品を知っていけば知っていくほど、一番に感じたのが彼女の芯の強さでした。むしろロミオを引っ張っていくくらいの勢いがあったりもするし。そういう意味では結構、イメージは変わりましたね。
木下:私も最初は純粋さとか、可愛らしいイメージを持っていたんですが、劇中、ジュリエットを演じていく中で、ロミオへの愛ひとつだけで自分の命までかけてしまうところは相当な意志の強さとまっすぐな想いがないと、自分の中でも一本通るものが作れなくて。その、彼女を動かすものすごい力というもの、ロミオと出会ってから生まれるジュリエットの中の変化と強さは、今回も意識してやっていけたらなと思っています。
葵:私はまだ観ていただけで、物語としかとらえられていないんです。現実ではたぶん起こらなさそうなことがあったりして不安定なんですけど、その不安定さが魅力になっているお話だなと思いました。ちょっと、怖い絵本みたいな世界観ですね。でも確かに、歌詞を読み返してみたり、今、お二人の話を聞いていると、もう少しこの物語を現実よりに持ってくると、ジュリエット自身の感情や、ロミオ自身の感情、お互いの背景がより見えてきそう。稽古をしながら、そういう部分を見つけていけたらなと思います。
ーー特に好きな曲はどれですか。
葵:あ、それ、気になる!
生田:えー、私、全部好きだからなあ。
葵:私は『いつか』が一番好きです。
生田:いいよねえ。あと『天使の歌が聞こえる』の幸福感ときたら!
生田絵梨花
木下:裏で入ってるドラムも。
生田:うんうん、心拍数みたいでね。
木下:そう。全部、私たちの気持ちを反映しているような気持ちになる。
生田:あそこの高揚感、シーンの中で最もあがるよね。出会った瞬間だし。
木下:確かに。運命~!みたいな(笑)。
生田:そうそう、あの曲は私の頭でもよく鳴り響く曲です。『エメ』もいいしね。
葵:うんうん!
生田:『バルコニー』も可愛いし。なんなら、『死』もいいよね。『ジュリエットの死』は、とっても素敵な音楽だと思う。
木下:『ひばりの歌声』も美しいし。
生田:いいよねー! 全部いいんですよ。私は一曲なんて選べません!(笑) どうですか、晴香ちゃんはそんな中でも一曲選ぶとしたら。
木下:うーん。じゃあ『エメ』で!
生田:ああー。王道ですね。
木下:歌ってみると繰り返されるフレーズの中に、どう想いを発展させていくかがちょっと難しい曲ではあるんだけど。二人の気持ちが盛り上がってる状態から、バルコニーで愛を確かめ合って、二人の意志がこう、静かに。
葵:勢いだけじゃなくなっていく、みたいな?
木下:そう。勢いだけではなく、運命の誓いをする決意だったりとか、そういう想いがすべて詰まっているシーンなので。よけいに印象的なんです。
木下晴香
ーーもしかしたらミュージカルがちょっと苦手かなと思うお客様でもこの作品なら、その苦手意識がなくなるような気がします。そういう方々をお誘いする言葉も含めて、みなさんからメッセージをいただけたらと思うのですが。
生田:この『ロミオ&ジュリエット』の楽曲って本当に最高だと思うんですよ。一回聴いたら頭から離れなくなって、ふだん生活していてもしょっちゅう口ずさみたくなりますから。私も初めて観た時、こんなに頭の中に余韻が残る作品は初めてだと思ったので、今回観に来てくださる方にも同じように、印象に強く残る舞台になればいいなと思います。わかなちゃんもそうだったと言っていましたけど、私もこの舞台を観てミュージカルというものにすごく憧れを抱いたので。ぜひこの機会に観ていただいて、ミュージカルファンを増やして、さらにミュージカル界を活性化できたらいいですよね。
葵:私はこの作品に限らず、とにかくミュージカルを初めて観た時からミュージカルが大好きなので、正直、苦手だとおっしゃる方の気持ちがあまりわからないんですよ。できればどこが苦手なのか、詳しく聞いてみたいくらいなんですけど(笑)。
生田:なんかね、いきなり歌い出すのが苦手なひともいるんだって。
木下:でもこの作品は、そういうイメージとは違いますよね。
葵:まあ、確かにセリフをしゃべって、歌って、またしゃべって、みたいなことにはなるんですけど。さっき晴香ちゃんが言ったみたいに、その音楽も、私たちが気持ちを伝えるひとつの大事な方法で、それは言葉、セリフと変わらないと私は思うんです。まあ、まだ本番を経験していないのに偉そうなことは言えませんが。とにかくがんばる心持ちでやっていますので、食わず嫌いの方も、この『ロミジュリ』をまずは観ていただいて、そこから判断していただくという方向で劇場に来ていただけたらうれしいです(笑)。
木下:私は、前回出させてもらった時にももちろん楽曲が素敵だなという想いはあったんですが、いったん終わって作品自体から離れて、改めて今回もう一度出演することが決まって聴き直した時に「ああ、こんなにいい音楽だったんだ!」と再認識したんです。その曲の良さもぜひ堪能していただきたいですし、それにダンスも多い作品なので、小さい子から幅広い年齢の方に楽しんでいただける要素がたくさんあるように思います。そして意外と『ロミオとジュリエット』って、タイトルは有名だけれど、意外と物語そのものは実は知らない方って大勢いらっしゃるんじゃないかと思うんですよね。そういう芸術作品に気楽に触れられる作品でもありますし、ミュージカルの世界に踏み込む一歩にもなりやすい作品だと思うので、ぜひとも劇場に観に来ていただきたいと思います。
(左から)生田絵梨花、葵わかな、木下晴香

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』古川雄大&大野拓朗&葵わかな&木下晴香&生田絵梨花コメント
取材・文=田中里津子 撮影=山本 れお

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