【インタビュー】みきなつみ、大きな
進化を遂げ幅広さや深度を増した最新
2ndミニ・アルバム

新進気鋭のシンガーソングライターとして注目を集めているみきなつみが、2ndミニ・アルバム『とけたアイスの味は青かった』を完成させた。本作は3月14日に1stミニ・アルバム『きみとわたしとメロンソーダ』をリリースした後、47都道府県ツアーを経験した成果などが十分に活かされて、楽曲やアレンジ、歌唱といったすべての面にさらなる磨きがかかっていることが印象的。また、彼女の作品にふさわしく、キュートなルックス/イメージとは裏腹に、自身の内面をさらけ出したリアルなメッセージを含んだアルバムになっていることもポイントといえる。前作から半年ほどの短期間で大きな進化を遂げ、より幅広さや深度を増したみきなつみの最新の声をお届けする。

■“みきなつみ、埼玉出身!”を堂々とやっていこう
■そういう気持ちがあったのでMVは母校で撮りました

――2ndミニ・アルバム『とけたアイスの味は青かった』の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

みきなつみ(以下、みき):作品を作るときにいつも思うのは、今の自分を切り取った歌を歌いたいなということで、今回もそれは変わらなかったです。日々生活していく中で自分が成長していくのに合わせて楽曲や歌詞も成長していて、『とけたアイスの味は青かった』は、前作の『きみとわたしとメロンソーダ』よりも少し大人なアルバムになりました。

――その言葉どおり、今作もリアルなみきなつみさんが味わえる作品になっています。『とけたアイスの味は青かった』はカラーの異なる7曲が収録されていますが、バラエティーに富んだものにしようということは意識されたのでしょうか?

みき:意識した部分もありますけど、無理して違う曲を作ろうとしたわけではなくて。こういうものを作りたいな、こういうものがほしいなと思って曲を作って並べてみたら、違う色の7曲が集まったなという感じだったんです。
――幅広い曲調でいながら、アレンジ的にはバンド感を活かしたサウンドで統一していることも特色になっていますね。

みき:それは意識しました。最近はバンドセットでライブをする機会が増えてきていて、できるだけ音源に近い形でライブも観てもらいたいというのがあって。それに、私はみきなつみのイメージを固定したくないんです。シンガーソングライターというと、アコースティック・ギターで弾き語りをする“ギタ女”というイメージを持つ人が多いと思うんですよ。もちろん私もそこがベースになっていますけど、やりたいことはいっぱいあって、常にいろんな顔を見せられる状態にしておきたいんです。だから、今回はバンド感を押し出したけど、自分の音楽を創っていく中でバンド・サウンドとは違った形で表現したいものができたら迷わずそうすると思います。

――では、『とけたアイスの味は青かった』の曲を作っていく中で、アルバムの指針になった曲などはありましたか?

みき:リード曲になっている「ボクらの叫び」です。曲調的にアルバムを引っ張っているし、本当のバンド・サウンドになっていて『とけたアイスの味は青かった』のイメージを象徴する曲だと思います。歌詞の面でも、私はわかりやすく、ストレートな歌詞ということを大事にしているんですけど、「ボクらの叫び」は今回の7曲の中でも特にわかりやすくて、伝わりやすいと思うし。この曲は47都道府県ツアー中に作ったんですけど、ツアーをしていく中でいろんな葛藤があったんです。ライブをして、ライブ周りのこともして、でもライブ以外のことでもやらないといけないことがあって…という状態で、全部のことを全力でやっても、すぐ結果に結びつくものでもなくて。それで、ツアー中は苦しさを感じることが多かったんです。それに、私は音楽がそうだけど、自分と同じような苦しみを感じている人は多いだろうなと思ったんです。たとえば、学生だったら勉強をしないといけない、けど好きなこともやりたい、でも親とかは自分がやりたいことを理解してくれなくて…みたいな葛藤があったりとか。「ボクらの叫び」は、そういう人に聴いて欲しい曲です。私の中での葛藤を“叫び”という形で曲にしたんですけど、それぞれの叫びを重ねて聴いてほしいなと思います。

――「ボクらの叫び」は曲調や歌詞に加えて、新境地といえる少しロックなボーカルも注目ですね。

みき:この曲もそうですけど、今回は全体的に低音を意識して歌ったんです。フンワリした感じで歌っている曲もありますけど、特に「ボクらの叫び」は芯のある歌を歌いたいなと思って。この曲はアレンジを、同じ埼玉の先輩にあたるリアクション ザ ブッタのメンバーさんにしてもらったんですよ。以前から仲良くさせてもらっているので、私から直々にボーカル&ベースの佐々木(直人)さんにお願いしました。「もし、こういう話があったら、引き受けてもらえます?」と聞いたら、「面白そうじゃん。いいねっ!」みたいに言ってくれて。それで、リアクション ザ ブッタのプロデューサーさんとかも入ってくださって、その結果、みきなつみ史上一番ロックな歌になりました。

――“少しブルージー”という匙加減が絶妙です。それに、「ボクらの叫び」は、MVも撮られたそうですね。

みき:今回は、私の母校の埼玉県立大宮南高等学校で撮りました。「ボクらの叫び」は弾き語りのデモを作った段階で、みんなの中にバンドセットで演奏している絵が浮かんでいたんです。それで、MVは学校で撮るのがいいんじゃないかという話になって。だったら、母校で撮りたいですと言いました。その時点でリアクション ザ ブッタさんとコラボレートすることが決まっていたので、埼玉を推していこうということで。“みきなつみ、埼玉出身!”みたいなことを堂々とやっていこうという気持ちがあったし、母校を盛り上げられたらいいなというのもありましたね。

――母校でバンド・サウンドを鳴らすというのは、感慨深いものがあった気がします。

みき:いや、もうなんか、先生に怒られるんじゃないか…みたいな(笑)。私、在学中はめちゃめちゃ先生に怒られていたので、すごく怖くて。体育系の先生がいると、“うわぁーっ!”みたいな(笑)。でも、あらためて会って挨拶とかをしたんですけど、なんで怖がっていたんだろうと思いました。高校生の頃に感じていたイメージと違って、すごく優しかったんですよ。そういうことも含めて、母校で撮ったのは良かったですね。「ボクらの叫び」は学生に届けたいという部分もあるので、ぜひMVもチェックしてほしいです。
――MVの完成も楽しみです。それに、「ボクらの叫び」はもちろん、『とけたアイスの味は青かった』は良質なナンバーが揃っていますね。

みき:ありがとうございます。今回のアルバムで特に気に入っているのは、6曲目の「またね」という曲です。アルバムの表向きのリード曲は「ボクらの叫び」だけど、みきなつみの中のリードは「またね」かなと思っています。

――ウォームなスロー・チューンで世界観に惹き込まれますし、片想いが叶うかもしれないという状況の心情を描いた瑞々しい歌詞も魅力的です。

みき:「またね」は私と同世代か年下で、これからがんばりたい女の子に向けて書きました。なので、そういう人達に響くといいなと思います。この曲も作ったのは47都道府県ツアー中で、歌詞を書くところから入っていったんです。ただ、そこからかなり変えましたね。最初に作ったデモから歌詞も含めていろいろ直していって、今の形にしました。

――練り込んだんですね。「またね」の歌もややブルージーですが、「ボクらの叫び」の力強さとは違って、温かみのある歌になっています。

みき:この曲はちょっと語りかけるようなところがあって。温かい感じで始まって、後半に向けてどんどん刺さっていく歌ということを意識しました。それは、うまくできているんじゃないかなと思います。

――「ボクらの叫び」や「またね」に限らず、今作は全編を通して歌の表現力に一層の磨きがかかっています。

みき:47都道府県ツアーをしたこともあって、最近は歌う機会が本当に多くて。それで、歌うというのは今でも自分にとって特別なことですけど、前よりも構えなくなったというか。レコーディングのときもそうですけど、スッと歌う体制になれるようになったんです。それが、今回の歌に出ているんじゃないかな。

――それぞれの曲調に合わせて歌の表情を変えていますが、その辺りは事前に決め込んでから歌われたのでしょうか?

みき:自分の歌は何回も聴いているから、歌声も、歌い方も前回の1stミニ・アルバムと全然違うというのはすぐにわかったんです。それで、これでいいのかなと思って、いろいろ模索するようになったんです。そういう曖昧さみたいなものが、逆にそれぞれの曲の色になったのかなという気はしますね。だから、本当に47都道府県が終わったタイミングのレコーディング期間じゃないとできない歌い方ができたんじゃないかなと思います。

――そういう意味でも、リアルなアルバムといえますね。

みき:そう。それに、“自分の歌は、こんなものだっけ?”みたいに思えるのは、また少し成長できたからだと思うんですよ。だから、今回のミニ・アルバムは“とけたアイスの味は青かった”というタイトルにしたんです。このタイトルには、振り返ってみたら過去は青春だった、青かった…みたいな意味合いが込められているんです。もし、今すごく悩んでいて、“本当に、これでいいのかな? 悪いのかな?”と考えている人がいたとしても、3年後や4年後に振り返ってみたら、悩んでいたあの時期も良かった、青春だった、青かった、そのうえで今の自分が一番だというふうに思えるんじゃないかなと思って。最初に言ったように、今回のアルバムは2018年の夏のみきなつみをそのままパッケージしたいという思いがあって、それを実践できて良かったなと思います。

――そのときそのときの完成形ではなくて、迷っている姿すらも見せていきたいという姿勢にはロックを感じます。

みき:えっ、そうですか?

――はい。激しい音楽をやっているからロックということではなくて、自身をさらけ出すというスタンスはロックだなと思いますので。

みき:そういう意味では、私はロックだと思います。人というのは、生々しいものに惹かれる。だから、私はみきなつみの一番生々しい部分を、どんどん出していけるようになりたいんです。まだまだ全然出しきれていないですけど、アルバムを重ねるごとに出していけたらいいなと思っています。
■本当に自分が思ったことや感じたことしか歌えない
■それが沢山の人に響くといいなと思っています

――大人っぽいテイストを採り入れた「ごめんねって言ったら君はまた許してくれるかな」も注目です。

みき:今回のアルバムの中で、ちょっと浮いた曲かなと思いますけど(笑)。

――アルバムのいいフックになっていますよ。

みき:そう感じてもらえたなら良かったです。この曲を作ったのは結構前なんですよ。今回の他の6曲を聴いたときに、この中に「ごめんねって言ったら君はまた許してくれるかな」があったら面白いんじゃないかなと思って入れました。アレンジ的にも他の曲とは違うアプローチになっていて、初めて男性の歌声を入れることにしたんです。真空ホロウの松本(明人)さんが、一緒に歌ってくれました。それに、普通に二人で歌ったり、ハモったりするんじゃなくて、最初は松本さんが私のオクターブ下で歌っていて、そこから高いところに行ったりしているんですよ。そんなふうに、ちょっと面白いツイン・ボーカルにできたなというのがあって。この曲じゃなかったら、ああいうアプローチは出てこなかったと思います。

――松本さんとのツイン・ボーカルが、楽曲の世界観を一層深めています。それに、大人っぽい曲を、キュートに歌っていることもポイントですね。

みき:私は、そういうイレギュラーなバランス感覚みたいなものが癖になればといいなと思っているんです。1stミニ・アルバムを作ったときにスタッフの皆さんと話しあっていたことのひとつに、甘さとしょっぱさが混ざったようなもの…“甘じょっぱい”みたいなところを狙っていきたいというのがあって。言われたとおり、「ごめんねって言ったら君はまた許してくれるかな」は、もっと都会的だったり、R&Bに寄せた感じで歌うこともできるんですよ。でも、そうしてしまうと、みきなつみじゃない気がして。自分らしく歌うということを大事にした結果、こういう歌になりました。

――この曲は恋人と喧嘩してしまいがちな自分を反省している心情を描いた歌詞もいいですね。

みき:この曲の歌詞は、ちょっとヒネくれている感じというか。プンプンした歌詞ですよね(笑)。
――でも、かわいいです。それに、20才前後くらいの女性は、こういう人が多いような気がするのですが?

みき:結局、自分勝手なんですよ(笑)。みんな自分のこと、自分のこと…という感じ。女の子は恋愛になると自分勝手。若いとか、大人とかに関係なく(笑)。そう思いませんか?

――“自分勝手なんですよ”と言えるということは、そういう自分をちょっと客観視できる年齢になったともいえませんか?

みき:それも、あるのかなぁ……。この曲は自分勝手な自分が出ちゃっている曲ではあるけど、恋や愛がよくわからないというのがあって。恋愛は自分勝手だと言ったけど、たとえば結婚したりすると、また違うのかなと思ったりするし。最近周りで結婚した子とかがいるんですよ。結婚したら自分勝手なだけではいられなくて、お互いに責任を負い合う必要があるじゃないですか。だから、こういう曲は今しか作れないものかなという気はしますね。

――終わってしまった恋を思い返すせつない心情を歌っている「ラストラブレター」は、究極の赤裸々ソングといえます。

みき:そう、この曲の歌詞は本当に、ありのままの心情を書いています。「ラストラブレター」はそこまでの6曲が終わって、ちょっと間が空いてから入っている曲で、しかも1曲だけ弾き語りなんですよね。この曲は、作ったときから絶対に次のアルバムに入れようと決めていて。それも一番最後で、絶対に弾き語りで入れようと、誰にも話していなかったけど、自分の中で思っていました。

――内面をありのままに描くことで、プライベートな歌でいながら、多くのリスナーに響くものになっています。それに、この曲は一発録りでしょうか?

みき:一発録りです。しかも、実は家で録りました。レコーディング・スタジオで2回録ったんですけど、なんか違うなと思って最終的に家で録ったんです。

――部屋で一人で歌っている空気感が絶妙です。

みき:私はいつも家で曲を書いていて、そこでできあがる。そういう原点じゃないけど、生々しさがこの曲には合うなというのがあって。だから、一発録りしようと決めていたし、家で録ることになったのは曲がそれを呼んでいたんだと思います。
――音楽の面白みを感じます。さて、「ラストラブレター」も含めて『とけたアイスの味は青かった』は、みきさんが虚像ではなく、生き様を見せていくシンガーソングライターだということを、あらためて印象づける一作になりましたね。

みき:そうなると、いいなと思います。私は、本当に自分が思ったことや、感じたことしか歌えないんですよ。ずっとそうしていきたいし、それが沢山の人に響くといいなと思っています。あとは、『とけたアイスの味は青かった』はパッとできた曲もあれば、すごく悩んで作った曲もあって。前回の1stミニ・アルバムは、そこまでの自分の活動の集大成だったけど、今回はあのアルバムから後の短期間のみきなつみを詰め込むということが、自分の中の課題としてあったんです。ストックしてある曲もあるけど、それを入れるのはすごく嫌だったんですよね。今の自分を見てほしかったし、“みきなつみは、がんばっているんだぞ!”ということが言わなくても音楽で伝わるといいなと思っているから。そういう作品を聴いて、がんばろうという気持ちになってほしいし。だから、昔の曲は入れないことにして、その結果“ああ、どうしよう…”という焦りみたいなものが曲に出ていたりとか、だからこそできた曲もたくさんあって。歌詞も前回とは違って、恋愛に対する見方がちょっと変わっていたりしていて、そういうところを楽しんでもらえたらいいなと思います。それに、今回のミニ・アルバムを作って、私の曲はライブで聴いてほしいと、改めて感じました。生で聴いてもらったほうが音源以上に伝わる気がするんですよね。

――ライブといえば、12月に大阪と東京でワンマン・ライブが開催されます。

みき:大阪は人生初の大阪ワンマンだし、今度の2本のライブはバンドセットでやろうと思っています。そういう初めてのことが揃ったので、成人式になぞらえて<大人の階段一緒にのぼるよツアー~“青”人式~>というタイトルをつけました。成人式の“成”を“青”にして、アルバムとも関連づけたんです。20才でのワンマンはこの2本が最後になると思われるので、1stミニ・アルバムを出して、47都道府県ツアーをして、今回の2ndミニ・アルバムを出してという動きを経て、“みきなつみ、カッコよくなってるじゃん!”と思ってもらえるライブにしたいですね。12月の2本のライブは、私自身がすごく楽しみにしているんです。私はずっと一人でライブをしてきたけど、最近はポイント、ポイントでバンドセットでのライブを入れていて、バンドの楽しさを知ったというのがあって。バンドは、すごく楽しいんですよ。その日によって、音の感じが全然違うんですよね。音に全部出るから、“今日はみんな、やる気あるのか?”みたいに感じるときとかもあって(笑)。でも、そういうのは、私が原因だったりするんですよね。結局、自分が良くないから、みんなもついてこれなかったりするんです。つまり、バンドを引っ張るのは、私の責任なんですよね。なので、私が熱量を出して、サポートの皆さんも私と同じ熱さになってもらえるようにしたい。それがお客さんにも伝わって、会場全体が盛り上がるライブをしたいなと思っています。

取材・文●村上孝之
リリース情報

2nd ミニアルバム
『とけたアイスの味は青かった』
2018年11月7日 Release
FOCD-0050 \1,852(+税)
1.明日も私はワタシだし
2.ボクらの叫び
3.セブンティーンアイス
4.ごめんねって言ったら君はまた許してくれるかな
5.シャイニーガール
6.またね
7.ラストラブレター

ライブ・イベント情報

みきなつみワンマンライブツアー
<大人の階段一緒にのぼるよツアー~“青”人式~>
・12/1(土) 大阪・アメリカ村BEYOND
・12/16(日) 東京・渋谷eggman
※両会場ともに17:30 open/18:00 start

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