ちゃんみな、20歳BDワンマンで空を飛
ぶ。いつまでも未成年のままで

2018年10月14日、東京・Zeppダイバーシティ東京にて、ちゃんみながワンマンライブ『THE PRINCESS PROJECT #2』を開催した。この日はちゃんみなにとって二十歳の誕生日でもあり、『未成年』という曲でデビューした彼女が未成年ではなくなる最初の日でもあった。本記事では、当日の模様をレポートする。

Photography_Hiroyuki Dozono
Text_Sotaro Yamada

大胆に“和”のモチーフを取り入れた“
我らがお嬢”の晴れ舞台

『BAZOOKA!!!高校生RAP選手権』で世に知られ、JKラッパーとしてシーンに出現したアーティストがZeppダイバーシティ東京でワンマンライブを開催する――と聞くと、いかにもヒップホップ然としたドープなライブを想像するかもしれないが、そうした典型的なステージとは180度違った発想でつくられるのが、ちゃんみなのステージだ。

場内には箏(こと)の音がたおやかに流れ、ステージ上には牡丹(ぼたん)が描かれた巨大な襖(ふすま)が設置されている。大スクリーンには日本の古都をイメージしたアニメーション画。映し出された赤い提灯が連なる街並みは、映画『千と千尋の神隠し』の世界を彷彿とさせる。長いトンネルを通って異世界に迷い込んでしまう映画の世界と、地下へ続く階段を降りてようやくあらわれるライブホールは、どこか重なり合う。
ショーのはじまりを告げるしめやかなアナウンスが流れると、掛け声と鼓(つづみ)、そして和太鼓と笛が打ち鳴らされ、ステージ上の襖がひらく。中央にはひな壇のような赤い階段が出現し、バンドメンバーや和装姿のダンサーたち、それらに囲まれる格好で、頂点には振袖をまとったちゃんみなの姿があった。扇子で顔を隠しつつも、はだけた肩からは大人の色気が匂い立っている。髪色は金でも赤でもなく黒。長い黒髪は、古代日本では美人の条件・女性的魅力の象徴とされてきた。細部までこだわり抜き、晴れ舞台にふさわしい古典的な雰囲気を演出する。

ちゃんみなにとってハタチ最初のステージは、デビュー曲『未成年』でスタートした。しかし大胆に和風かつロックなアレンジがほどこされ、同じ楽曲であるとは思えないほどにアップデートされている。このアップデート感が、未成年ではなくなったちゃんみなの最初の意思表示だったのだろう。
2曲目『FXXKER』の開始と同時にステージから客席へレーザーが放たれ、ダンサーたちにエスコートされたちゃんみながゆっくりと階段を降りる。生バンドと和太鼓によるグルーヴは、控えめに言ってもかなりの迫力だ。続く『You can’t win me』ではウィッグを外し、金髪になったいつものちゃんみなが激しく踊り歌う。『BEST BOY FRIEND』では男性ダンサーとのセクシーな絡みも披露。着物を一枚ずつ脱がせ合い、壇上で激しく抱き合うさまに、オーディエンスから大きな悲鳴が上がった。

USヒップホップの最新トレンドを取り入
れた『Doctor』

(ちゃんみな『Doctor』MV。1:10〜のシュールで中毒性あるダンスに注目)

どの楽曲でも、曲がはじまるごとにフロアから大きな歓声が起きていたのが印象的だった。ちゃんみなはそのスタイルや生き方、ヴィジュアルなどで同世代から強い支持を得ているが、大前提として、やはりその根本には楽曲の強さがあるようだ。9月28日に配信限定シングルとしてリリースされた『Doctor』では、新曲にもかかわらず合唱が起き、さらにInstagramのストーリーで話題になったサビのダンス「#DoctorChallenge」をオーディエンスにレクチャー。会場が一体となって『Doctor』ダンスを行い、大いに盛り上がった。

USヒップホップの最新トレンドを同時翻訳のようなスピード感で自身の楽曲に落とし込む手つきは、同じ手法で世界的なラッパーとなったKOHHを思い起こさせる。最先端の音楽感度でキャッチーなHIPHOPを生み出すだけでなく、さらにちゃんみなはシンガーとして歌による自己表現も進化を続けている。

「かかってこい世界!」「若い人たちが
歴史をつくる」

ところで、ハタチという区切りの年に、人は何を思うのだろう? ちゃんみなの場合はこうだ。「かかってこい世界!」。

かなり気の強い発言に思えるが、この言葉は、みずからを鼓舞するための決意表明だと言えるだろう。実際のちゃんみなは、それほど気の強い性格ではない。彼女の本質は、たとえば『She’s gone』の歌詞によく表れている。

ただ強く握った手のひらの中の 楽譜を信じて怖さに耐えた 自信がもてなくて強がりで怯えてたlittle girlはもういないの she’s gone baby (ちゃんみな『She’s gone』歌詞より)

こうした歌詞を読むと、ちゃんみなも普通のハタチの女の子なのだなあ……という気がする。しかし彼女が普通ではない点は、「怖さ」を「怖さ」だと感じられることであり、自分が「little girl」であると正しく認識していることだ。そうした弱さがあると理解しているからこそ、自分を鼓舞しようという能動的な姿勢がうまれる。

だから、「かかってこい世界!」は、単なる若くて強気な女の子の戯言ではない。むしろ、この厳しい世界で生き抜いていくための理性的なこころがまえなのだ。

もうひとつ、この日印象的だったちゃんみなの言葉は、「若い子たちが歴史をつくると思っている」というものだった。

たとえば『Doctor』の印象的な振り付けは、ちゃんみなと同い年のダンスチーム「Dr. SWAG」によるもの。Dr.SWAGは2NE1の『CL』MV出演やBIGBANGとの共演、Chris Brown『Party』のMVに出演するなどすでに世界を舞台に活躍しているトップアーティストだ。
また、この日のライブ衣装の一部は文化服飾学院の学生に依頼している。「同世代の子と一緒にクリエイティブをすることで良い化学反応が生まれるのではないか(ワンマンライブ直前動画『#PRINCESSPROJECT』2より)」という本人の想いから実現に至ったわけだが、これなどはまさに同世代の若者たちとあらたな歴史をつくろうとする試みだろう。

ちゃんみな、空を飛ぶ

そしてこの日のハイライトは、なんと言っても「ちゃんみなが空を飛んだ」瞬間だったろう。

MY NAME』の後半、天井からハンモック風のロープが降りてくると、それを使ってダイナミックなエアリアルを披露。ステージから約10メートル浮いた状態で180度の開脚や空中回転を行い、シルク・ドゥ・ソレイユを彷彿とさせる圧巻のパフォーマンスでオーディエンスの度肝を抜いた。

本人は「遠くへ羽ばたく意志を表現するためにはどうすれば良いんだろうって考えていて、“あっ、飛べばいいんだ”と思った」と笑いを交えて語るが、こういった演出は、一部の大御所ミュージシャンのライブでしか見られないものだ。

本編ラストを『LADY』で締めると、アンコールでは新曲『PAIN IS BEAUTY』を初披露。「痛みがわたしを綺麗にした」という、これまた彼女の本質をストレートに表現した楽曲を力強くエモーショナルに熱唱。その後、初となる東阪ワンマンツアーの開催を発表し、フロアをさらに沸かせたところで、ラストは『CHOCOLATE』。観客との大合唱のうちにライブは終わった。
「言うんじゃなくて行動することで、夢って本当に叶う。だからみんなもずっと戦っていてほしい。その“戦っている”という意志を、わたしに誕生日プレゼントしてください。みんな、戦っていこうぜー!」

アンコールふくめ、年齢と同じく全20曲。はじめから終わりまで“戦う”という意思に満ちあふれたライブだった。

ちゃんみなは未成年を卒業し、そしてこ
れから本当の未成年(Forever Young)
になる

この日のライブが『未成年』からはじまったことは、2つの意味で重要だ。

第一にはもちろん、「この日からちゃんみなが未成年ではなくなる」ということ。

思い返すまでもなく、彼女の最初の配信曲は『未成年feat.めっし』であり、デビューアルバムは『未成年』であった。登場時より「未成年」はちゃんみなを紹介する際の枕詞であるかのように使われてきた特別な言葉だったわけだ。そのちゃんみなが、ついに未成年ではなくなる。それは彼女がアーティストとして次のフレーズに移行することを意味している。だからこの曲でこの日のライブをはじめることは、過去に対するひとつの区切りであっただろう。フル演奏せずにショートバージョンでこの曲を終えたこと、和のモチーフを使った大胆なアレンジによってまったく違う曲のように見せたことは、そのことを強く印象付ける。

第二に、これは逆説的だが、「これから先もずっと未成年であり続ける」ということ。どういうことか? 今年の春に発売されたフォトブックのインタビューで、ちゃんみなはこう語っている。

むしろそこからがピーターパンだと思ってるんです。二十歳だからこそ「絶対大人になんかなんないぜ!」みたいなのを見せていきたい。未成年って言葉、気に入ってるんですよ。フォーエバー・ヤングの日本語訳だと思っているし、夢にあふれている感じが好き。 (オフィシャルフォトブック『PRINCESS PROJECT #0』より)

フォーエバー・ヤング(Forever Young)、直訳すれば、永遠に若い。あるいは色褪せないということ。これが彼女なりの「未成年」という言葉の翻訳もしくは定義なのだ。

つまりちゃんみなは、ハタチのBDライブを『未成年』ではじめることで過去に区切りをつけ、あらたなフェーズに踏み出したことを宣言し、なおかつ自分はこの先も永遠に若く、夢を追い、それを実現させていく。決して大人になんかならない=完成されはしない=可能性に満ちた「永遠の未成年」であり続けることを示したのだった。

How old are you?君いくつ? You Ready? I’m ready yeah we really 未成年 (ちゃんみな『未成年』の歌詞より)

セットリスト

1. 未成年(Short ver.)
2. FXXKER
3. You can’t win me
4. GREEN LIGHT
5. BEST BOY FRIEND
6. TO HATER
7. PRINCESS
8. Doctor
9. WHO ARE YOU
10. She’s Gone
11. LIGHT IT UP
12. OVER
13. FRIEND ZONE
14. CHOCOLATE
15. MY NAME
16. ダイキライ
17. LAST NIGHT
18. LADY

En.1 PAIN IS BEAUTY
En.2 CHOCOLATE

ワンマンライブツアー「THE PRINCESS
PROJECT 3」

【ツアー日程】
・2019/3/17(日) 大阪・Zepp Namba (OPEN 17:00 / START 18:00)
問い合わせ:夢番地(⼤阪)Tel 06-6341-3525

・2019/3/29(金) 東京・Zepp Tokyo (OPEN 18:00 / START 19:00)
問い合わせ:クリエイティヴマンプロダクション Tel 03-3499-6669

【チケット】
・全自由 ¥4,800-
・U-18チケット ¥4,300- ※公演当日にご本人、年齢の分かる身分証をお持ちください。
>>チケット購入はコチラ

ちゃんみな最新リリース情報
Digital Single『PAIN IS BEAUTY』

2018年11月30日(金)リリース
実際に起きた過去のリアルな経験を元に20歳になる直前に書き上げられた楽曲で、この日のワンマンライブで初披露され、涙を流すオーディエンスも多くファンの間でも話題になっている。


ちゃんみな
オフィシャルサイト
Twitter
Instagram
Facebook
スタッフTwitter

ちゃんみな、20歳BDワンマンで空を飛ぶ。いつまでも未成年のままではミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

新着