【明田川進の「音物語」】第14回 木
村昇さん、チャーリー・コーセイさん
の思い出と、主題歌の変遷

 前回、「はだしのゲン」の劇場アニメについてお話しました。その主題歌は「HARRY」名義で、「TALIZMAN(タリスマン)」というバンドでボーカルを担当していた木村昇さんが歌っています。しゃがれた渋い歌声で、「TALIZMAN」時代から挙げると「姿三四郎」や「未来警察ウラシマン」、特撮では「宇宙刑事ギャバン」の挿入歌などを手がけている方です。「ルパン三世」第2シリーズのエンディング「LOVE IS EVERYTHING」もそうですね。当時僕が関わっていたゴダイゴとも縁のある方で、アニメの歌をやりだしたら、やっぱり今までのアニメソングとは感じが違うというので、みんな飛びついたかたちです。
 「ルパン三世」第1シリーズのオープニング主題歌を歌ったチャーリー・コーセイさんも、同じようなかたちでアニメソングを歌うことになりました。神戸で「ザ・ヘルプフル・ソウル」というバンドのボーカルをやっていた彼を、グループ・タックの田代(敦巳)氏が虫プロのアニメ映画「千夜一夜物語」の音楽をやらないかと誘って、東京に来てもらったことがあったんです。その流れで、「ルパン」もやってもらうことになりました。僕は彼を誘った現場に立ち会っていて、田代氏と神戸にライブを見にいって「この人の歌いいね」とならなかったら、チャーリー・コーセイさんが「ルパン」の主題歌を歌うことはなかったと思います。
 昔の主題歌や音楽は、監督の意向や音響監督のプランニングにそって、比較的、自由に決めさせてもらえました。今はレコード会社さんが出資して、そこに所属するアーティストが主題歌を歌い、作曲家も関係するプロダクション所属の方が手がけるケースがほとんどで、プロジェクトを組んでレコード会社が決まった時点で、「ウチには、こういう作曲家やアーティストがいます」とのリストが大体でてきます。それが上手くはまるケースもありますが、場合によっては作品の内容とは関係なく、「とにかく、この曲を使ってほしい」ということもあります。
 アニメの主題歌は、アイドル志向の音楽番組がなくなった1980年代頃から声優が歌ってもいい雰囲気になってきた印象があります。これまではアイドルになろうとしていた人たちが、アニメの主題歌を手がける歌手を目指すようにもなってきて、今はそれ専門のプロジェクトが組まれることも多いです。音事連(※東京音楽事業者連盟)に所属するような事務所に入って、声優をしながら歌を歌う人も増えてきました。CDが売れないといわれる状況のなか、アニメの主題歌になると毎週テレビでオンエアされ、それにともなうイベントなどにも参加できる、今となっては貴重なメディアなんですよね。芸能事務所やお笑い関係の事務所のアニメに対する対応も変わってきて、昔はこちらが何度もお願いしてようやく出演してもらえたのが、今は先方から売り込みをいただくことも多いです。
 声優事務所の考え方も変わってきました。今は、「イベントのステージにでられる人」「顔出しが可能な人」がオーディションの条件になっていることが多いですから、声だけでなくパーソナルな部分も求められます。そうなると、アイドルを志向していたり、歌を歌っていたりする人のなかでも、芝居がよかったら引っ張りあげられることが十分ありえます。一時期は、この人の名前があれば話題になるのではないかとの考えのもと、首をかしげてしまうような起用も見られましたが、最近は監督やプロデューサーが本当にこの人でやりたいと考えて選び、本人も声の仕事をやりたいと思って作品に臨んでいる作品が増えてきました。ある面では声の仕事の垣根がなくなってきていて、作品に本当に求められる人が入ってきやすくなっていると思います。

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