【インタビュー】DIR EN GREY、10th
アルバム完成「今、行くべきところ」

DIR EN GREYが9月26日、3年9ヵ月ぶりとなる10thオリジナルアルバム『The Insulated World』をリリースした。同アルバムにはシングル「詩踏み」「人間を被る」に加え、新曲11曲を含む全13曲を収録。完全生産限定盤の特典CDには過去のアルバム収録曲の再構築バージョン3曲ほか、2018年6月30日の新木場STUDIO COAST公演よりライブ音源3曲の全6曲を収録。さらに特典映像に全国ツアー<TOUR18 真世界>より全8曲のライブ映像を収めた特大ボリュームの作品として届けられる。
そのサウンドはタイトでソリッドだ。贅肉をそぎ落とした構成やサウンドメイクが楽曲の核を明確に浮かび上がらせて1曲1曲が個性的。結果、集合体としてのアルバムはそれらが強烈な色彩を放ちながら全13曲を一気に駆け抜ける。また、その細部にまで注目すれば、新たな発見も多い。“ハードコア”や“効果音”などのキーワードはここ数年のDIR EN GREYにはなかったものだ。前作『ARCHE』からの進化、『The Insulated World』を象徴するナンバー、個々のサウンド&プレイについて、薫(G)とToshiya(B)に訊いたロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■今のDIR EN GREYにハマるのかというと
■そうじゃない、と自分に言い聞かせながら

──どんなアルバムが届けられるのか、まったく予想もつかなかったのですが、刺激的かつ衝撃的なオープニングトラック「軽蔑と始まり」をはじめとして、意表をついた作品が仕上がったなという第一印象でした。だからこそ気になるのが、前作『ARCHE』でもあるんです。この新作が出来上がった今、あのアルバムについてはどのように捉えているのでしょう?

Toshiya:原点回帰みたいなことを謳っていたアルバムでもあったと思うんですけど、結構、自分たち的にもそこら辺は意識していた部分はやっぱりあったんですよね。自分たちがバンドを結成した当時だとか、最初のミニアルバム『MISSA』とか『GAUZE』とか『MACABRE』とかをリリースした頃、どんなことを思って、どんなことを夢見てやってたかなぁって。だから……気持ち的な部分ですよね。たとえば、リハーサルとかも、昔は小さいハコで5人ですし詰め状態のような中で向かい合ってやってた。そういった5人で向き合ったアルバムにしたいなという思いで、『ARCHE』を作っていたなと自分は思ってますね。
▲薫(G)

──それまでの数作が、5人で向き合って作っていなかったということではないですよね?

Toshiya:そう。科学の進歩というか文明の進歩というか、面と向かってやるよりも、モニター越しにやっていく作業が増えていったんですよね。もちろん、その便利さは利用する意味があるんですよ。でも、『ARCHE』のときは、そのうえで最終的に5人でまたスタジオで音を出して、曲の雰囲気だとか、ディテールを確認しながら仕上げていく。そこからレコーディングに入っていったんですよね。だから、そういう思いは余計に強かったのかなと思います。

──そういう作り方、臨み方をした理由は何だったんでしょうね?

Toshiya:そうですね……一概にこれというのは言いづらいんですが、コンピュータ上でやっていくと、正直、制限なくできる部分がすごくあるんですよ。振り幅も大きい。言い換えれば、それは可能性も大きいということなんですね。それはとてもいいことだと思うんですけど、その代わりに、単純に言うと、個々ではできることでも、5人で合わせたときにはなかなか思うような形にはならないこともある。そこら辺を改善したかったのかなと思いますけどね。そういう意味で、5人で音を出してやってみたらわかるんじゃないかと。

──曲そのものをより研ぎ澄ませるということですか?

Toshiya:ということにもなると思うし……音源としては、コンピュータ上で楽曲を完成させても、それで正解だと思うんですよ。ただ、そこで終わりじゃない。その後に僕らはそれを実際に演奏して、それを聴いて、いいと思ってくれた人たちの前でライヴをする。そのときに、コンピュータ上ではできたけど、ステージではできないというのでは、ちょっと本末転倒なんじゃないかなという思いも個人的にはあったので。だから、そこら辺をつなぎ合わせる、埋めていく作業ということですよね。

薫:『ARCHE』を作る前にメンバーで話をして、ライヴでもっと気持ちよく演奏したいというか、楽曲に支配されて演奏するのではなく、もっと自分で感じたものを楽曲に入れながらプレイしたいみたいな意見をもらったんですよ。だから、わりと気持ちよいリズム感とかフレージングとか、そういうのを心掛けて作りましたかね。結果、自分たちにすごくフィットする、そのときの自分の好きなリズム/テンポ感、フレージングだったりが多く入ってたアルバムじゃないかな。何か全体的にメロディックで、わりと聴かせる感じの曲が多くなってたのかなという気はしますね。作り的にもすごくキレイなアルバムだったかなと思います。
▲2018.08.24@東京国際フォーラム/薫(G)

──なるほど。そこで今回の『The Insulated World』ですが、「詩踏み」「人間を被る」という先行シングルを発表した時点では、どんなアルバムになるかは、これから見えてくるんじゃないかという話をしていましたよね。実際に作品の全体像を自分たち自身で認識したのはいつ頃になるんですか?

Toshiya:認識したのはホントにもう最後ですね。曲が出揃ってから、かな。

──今、どんな手応えを感じてます?

Toshiya:すごく面白いという言い方はおかしいかもしれないけど……DIR EN GREYというバンドが、10枚目のアルバムというのを発表することができた、完成させることができたという、自分の中での喜びみたいなものはすごく感じてますね。10枚もアルバムを作るって、ホントに凄いことだなと思ってますし、メンバーチェンジもなく、5人で最初から一緒にやってこれたというのも凄いなぁと素直に思ってますし。

──ただ、10枚目ということを意識して作ったところはないでしょう?

Toshiya:僕個人としては、意識はしましたよ。でも、だからこうしようといった考えはなかったけど、すべてのアルバムに関して、そのとき一番いいなと思えるものをやってこれたとは思っているんですよ。だから、その気持ちで10枚目も完走したいなとは思ってました。

薫:さっきも言ったように、『ARCHE』がキレイなアルバムというイメージだったので、わりと序盤のうちに、激しいアルバムにしたいという話もあったんですよ。でも、自分の今の気持ちいい感覚とかは、どちらかと言えば、テンポ感が速いものよりも、ゆったりしたものに寄りがちになっちゃうんですね。だから、そこをなるべく自分に頼らずというか……変な言い方ですけど。

──薫くん個人の今のモードではなく、と。

薫:そう。今、DIR EN GREYが行くべきところに進んだ感じですね。自分の思っている感覚に進むと、多分、つまらないものになると思ったんで。まぁ、つまらないかどうかわからないですけど、それはただ単に今お前が好きなだけで、今のDIR EN GREYにハマるのかというとそうじゃない、そう自分に言い聞かせながら曲作りをやってましたね。だからすごく悩みました。
■「詩踏み」が完成したときに
■いいアルバムができそうな気がした

──自分から自然に何となく出てくるものは、テンポ的にはそんなに速いものではなく……。

薫:いや、仮にテンポ的に速くても、結局、アレンジでそういう部分も入れたりして……だから、収めようとするんですよね、いつものDIR EN GREYに。それでは面白くない。だから、自分の感覚を信用する部分もあったり、信用しないようにしている部分もあったり、そういうわかんない感じでやってましたね。何かね、自分から出てくるものが、全然おもろいことにならへんなぁって感じになってくると、ちょっとそれが他のメンバーに伝染していくような感覚があるんですよ。そういう場合、思いっきり曲のアレンジを変えようとかっていうのが、今まではよくあったんですね。でも、今回はあまりそういうことはしたくなかったんです。この曲に価値がないならやめよう、新しく曲を作ったほうが早い、みたいな。だから、なるべく曲をいじり倒すとか、構成をいっぱい作るとかっていうことはせずに、「この曲はこれでいくならこの感覚で」「でも、違うならやめよう」ってやり方なんですよ。だからこそ、1曲1曲にすごく個性があると思うんですね。あまり無駄な要素を入れずに、1曲1曲がそれぞれの色を持っている。そこで全体で1枚ですよみたいなものが見えて。
▲Toshiya(B)

──もちろん曲にはよりますが、確かに構成はすごくシンプルですし、曲も3分台が中心で、コンパクトにまとめられているのは、このアルバムの特徴の一つではありますよね。今の話からすれば、なるほどなと頷かされる部分でもありますが、そのやり方のよさを見出すキッカケになったような曲もあったんですか?

薫:いや、その1つの曲というのがないんですよ。だからずっと最後まで、この形で正解なのかどうか……だからいまだにわかってないです。その意味では、ちょっと自分の中で不安な部分も……もちろんいつもありますけど、どういう反応が返ってくるのかなというのはありますね。やっぱさっき言ったように、自分の感覚を信用せずにやっている部分もあるので。でも、今のDIR EN GREYには、これが一番いいと思ってやってる。いつもならもっとギシギシにしちゃうところを、ちょっと余白を空けてるんですよね。そこが俺が思っている感じに上手く伝わればいいなとは思ってますね。

Toshiya:もちろん、個性というか、それぞれの曲が持っているものはすごくあると思うし、でも、最終的には、アルバムを通してのストーリーなのかなと思いますね。長い曲もありますけど、大半はそんなに長くはない、コンパクトな仕上がりだと思うんですけど、それもDIR EN GREYがDIR EN GREYなりに悩んだ末の答えなのかなと思いながら。

──数ある楽曲の中で、このアルバムを象徴しそうだなと思う曲を挙げるとしたら?

Toshiya:うーん……象徴しているのは、やっぱり、シングルの2曲なのかなっていう感じは、ちょっとしたりもしてますね。あの2曲ができて、アルバムの全体像をどのようにパズルで組み合わせていくかというのを、何となくみんな考えた気がするんですよね。その意味では、今のバンドの雰囲気だとかアレンジだとか、この2曲がちょっとしたところで道標的なものになってた部分があったんじゃないかなと。まぁ、あくまでも目安ですけどね。

──「詩踏み」「人間を被る」の2曲は、アルバムの中では、また際立って聞こえるんですよね。ところが、シングルとして発表した時点では、他の曲はほとんどできていなかった。そう考えると、この全体像におけるバランスは、その“道標的”という見方からもよくわかる気がします。

Toshiya:そうですね。確かに全体を通したときに、バランスがいいって感じる部分はありますね。薫くんが、これっていうものがなかったって言ってましたけど、自分的には、「詩踏み」ができたときに、すごくいいアルバムができそうな気がした。何の根拠もないんだけどね(笑)。

薫:アルバムを作るうえで、シングルの2曲はすでに発表されているものなので、それはいじりようがないという前提で進めるじゃないですか。だから、確かにアルバムのパーツ的には、一応、目印にはなりましたね。要は、ああいう曲はもういらない、他の曲でもっと展開していこうってことになるわけじゃないですか。
▲2018.08.24@東京国際フォーラム/Toshiya(B)

──他の曲は、シングルを意識して書いたものではないのでしょうけれど……。

薫:いや、「絶縁体」とか「Values of Madness」とかはシングルを意識してました。実際に「絶縁体」は「詩踏み」のときに、「Values of Madness」は「人間を被る」のときに一緒に作ってた曲です。でも、もう2曲のシングルが出た後なので、アルバムに向けては、そういう印象じゃない感じで作り上げてましたけどね。

──この「絶縁体」は7分を超える、このアルバムの中では唯一の長編ですよね。だから、当初はシングルを意識して曲作りを進めていた事実は興味深いですよ。それが結果的に、「VINUSHKA」の続編とは言いませんが、同じようにドラマを感じさせる構成で聴かせる、DIR EN GREYの特性がまた堪能できますね。

薫:そう。この曲だけ他の曲と違って、ちょっと歪んでいるというか、今までのうちらの感じが結構入ってくる曲なので、そこが異質な感じがしますね。

──でも、あえてそういう作りにもしてるんでしょう?

薫:そういう曲が欲しいっていうメンバーからのオーダーがあったんですね。さっきも言ったように、そういうものを作ることは、自分の頭の中には一切なかったんですよ。

──むしろ排除してたんですもんね。

薫:そうそう。でも、そういうものがあったらいいかなぁって感じだったので、「絶縁体」の原型となるものをバッと持ってきて、いじった感じですね。でも、「VINUSHKA」と同じようになっても面白くない。ただ、最初のアルペジオのギターのイメージみたいなものは、以前から、こういう感じのものをやってみたいなぁと思って、アイディアだけはあったんですよ。でも、ハマる感じがなかったし、上手く形にもできなかったんですけど、この曲でチャレンジしてみようかなと思って。
■ハードコアな感じが出てくるというのが
■いつもとは違うぞと(笑)

──「絶縁体」を耳にしたときに、待ってましたって感じがありましたけどね(笑)。

薫:やっぱ、みんな好きですよね、俺らを取材しているような人たちは(笑)。

Toshiya:個人としては、別に嫌いとかそういうことではないんですけど、あまりにも複雑になりすぎると収拾がつかなくなってしまうなというところで、ちょっと危惧していたところはありましたけどね。
▲京(Vo)

──実際に仕上がってみるとそうでもない?

Toshiya:いや、まだライヴで合わせてないから何とも言えないんですけど(笑)。でも、バランスを考えれば、確かに欲しいだろうなとも思ったし、そういうのもあったからこそ、今のDIR EN GREYがあるんだろうなとも思いますし。だから、ここにきて、こういう楽曲が出てきたのは、やっぱりどこかで求めていた部分があったのかなと素直に思ってますけどね。まぁ、あとはちゃんとライヴでやれるように頑張るだけですけどね(笑)。

──さんざん難解な曲をやってきたバンドですから、何の問題もないと思いますけども(笑)。

Toshiya:そういうふうになりたいですけどね(笑)。でも、アルバム全体を通したときに、最後の最後で、フックと言ったらおかしいかもしれないけど、捉え方がいろいろあるとは思うけど、ポイントには必ずなってくる曲だと思います。

──特に「絶縁体」のような曲は、DIR EN GREYじゃなきゃできないなと思うんですよ。実際に時間を確認すれば、長編であることはわかりますが、長さを感じさせないんですよね。話を戻しますが、このアルバムはとにかく頭からの畳み掛けが凄まじい。「軽蔑と始まり」でまず始まる、曲順の妙もあるかなと思いますよ。

薫:うん。頭とケツのほうの感じは、これしかないかなぐらいの感じはあったんですよ。だから、あとはその間の流れですよね。今回は歌詩を途中で見せてもらったりしてたんですよ。そこでの並びのヒントとか、その辺も踏まえたうえで最終的には決めたんですけど、1曲目はこれしかないかなって……これしかないってことはないんでしょうけど、これがベストかなと思って。そのうえで、各曲の聴かせ方とか、このアルバムの中にそれぞれが存在する感じを考えていって。もうちょっとバランスをとったほうが、アルバムとしては聴きやすくなったり、面白いかなというところもあったりするんですけど、この流れに落ち着きましたね。

Toshiya:まあ、衝撃と言ったら衝撃になるのかなぁ。1曲目というのは考えますよね、いろんな意味で。どんなふうに蓋を開ければいいのかなというか。考えれば考えるほど、いろんなパターンが出てきますよね。何が来ても、扉は開くんで。ただ、DIR EN GREYが選んだのはこの曲だったという感じかなぁ。
▲2018.08.24@東京国際フォーラム/京(Vo)

──この曲そのものについては、どんな臨み方をしたんですか? 当然、アグレッシヴさが前面に出てくる曲ではありますが。

Toshiya:そうですね。アグレッシヴな部分はすごくアグレッシヴなんですけど、結構、繊細というのかな。多分、勢いだとか、攻撃性というものが前面に出てきていると思うんですけど、実際に自分たちでやってみると、ものすごく緻密なんですよね。だいたいライヴ前にはいつもリズム隊でリハに入るんですけど、そのときも、同じようなことをやっているようで、意外とちょっと違っていたり、慣れるまでこんがらがるっていうんですかね(笑)。

──ただ勢いで駆け抜ければいいという曲ではない。

Toshiya:ではないなぁ。でも、そういうふうに勢いとかが感じられるというのは、楽曲が持ってるパワーだと思うんですよね。

──そうですね。その次の「Devote My Life」が、「軽蔑と始まり」の攻撃性をさらに増幅させますよね。

Toshiya:そうですね。リズムパターンとかも、ちょっと今までにはなかった感じで……でも、ライヴでやってみると、ちょっと印象が変わるなというのは個人的にはありましたかね。自分では、ちょっと不思議な感じの曲になったのかなと思ってたので、のりやすいのか、どうかのかなと思っていたんですよ。でも、ライヴでやってみたら、結構、お客さんも普通にリズムにとってる感じなんだなと思ったので。

──すごく疾走感に溢れた曲という第一印象がありますけどね。

薫:ちょっとおかしなハードコアみたいな曲になればいいかなってイメージで作ってましたかね、わりと。

──そこが新鮮ですよね。

薫:そうそう、今までなかったですよね。要素はあったと思うんですけど、ここまではっきりと1曲で固まってる感じはなかったと思うので。アルバムにはこういう曲は必要やなとは思ってたんですけど、上手く出来上がってよかったなと。1曲目はちょっとスラッシーな感じがするんですけど、ここからハードコアな感じが出てくるというのが、いつもとは違うぞと(笑)。
■もっと感動させるアレンジにもできたけど
■そこまではいかない、いかせない

──ええ。DIR EN GREYの作品において、音楽的要素としては散見されていたとはいえ、ハードコアそのものが話題になることはあまりなかったですよね。図らずも薫くんの口からも「ハードコア」という言葉が出てきましたが、実はそこがこのアルバムの特色の一つにもなっている。

薫:一番ハードコアなのは、「Devote My Life」だと思うんですけど、要素で言えば、「Downfall」や「Celebrate Empty Howls」にもちょっとあると思うんですよ。前やったら、たとえば、「Different Sense」みたいに持っていきがちなのを、全部そっちのほうに落とし込んでる感覚ですよね。
▲Die(G)

──そうですね。いわゆる現代的なヘヴィロックではなく、その前のオールドスクールなエッセンスなんですよ。たとえば、1990〜2000年代の音楽しか知らない若いバンドだったら、こうはならないと思うんですね。

薫:うん。だからリフとかもちょっとダサめというか(笑)、そういうところは少し意識してる。普通にやっちゃうと、結構恥ずかしいかなぐらいのやつを、ちょっと散りばめるみたいな。

──そこが面白さですね。一触即発的な要素は特に前半に多いですが、一方では、7曲目の「赫」、10曲目の「Followers」、13曲目の「Ranunculus」などのように、音圧で攻めるのではない、一歩引いてグッと聴かせる曲が並んだ印象もあるんですよね。

薫:そうですね。ホントはもっとあったんですけど、その辺は散漫にならないようにしましたけどね。曲に関しても、たとえば、もうちょっとゴージャスにするとか、もっと感動させますよというアレンジにすることもできたんですけど、そこまではいかない、いかせない、みたいな。

──いや、充分に感動しますよ(笑)。

薫:だから、この形で感動させるってところにしてるんですよ。たとえば、「Ranunculus」はサビが終わったら、そこからもっと展開を作ってとか、やり方はいろいろあるわけですよ。そういうイメージじゃないんですよね。そういった意味で言うと、入っている曲もありますけど、ホントはギターソロも、極力弾きたくなかったんですね。普通にギターソロが入ってくると、あぁ、そうよね、みたいな感じにもなりがちじゃないですか。

──ただ、たとえば、「赫」のギターソロなどはかなり長いですし、これがなきゃ成り立たないと思わされますよ。

薫:尺が長いのはあっても、いっぱい入ってはいないじゃないですか。何かね、そこに自分のメロディ感が出てきちゃうんで、ちょっと面白くないんですよ。自分を飛び越えていかないんで。でも、最終的には違うメロディ感が出て、曲に広がりが感じられるようになって。そこはよかったかなと思ってます。「赫」のギターソロはDieが弾いてるんですけど、このバックで鳴ってるリズム感がすっごい難しいんですよ。そういうところも、聴いてみてもらえればと。
▲2018.08.24@東京国際フォーラム/Die(G)

──この辺の楽曲は、ベースの存在感がより強いですし、奏で方も重要な鍵になっていますよね。

Toshiya:単純に歌ものって言われる部類に入る楽曲たちだと思うので、そこら辺は、歌の主旋を意識しながら考えはしましたが……ベーシストとしては、とっても楽しかったですけどね(笑)。歌もののベースって、好きなようにやれる部分も多かったりしますからね。歌えるベースっていうのかな。だからといって、ユニゾンが嫌いだとか、激しい曲が嫌いだということではないんですけど(笑)。

──そうですよね。何しろ「谿壑の欲」のようなフレーズもToshiyaくんの魅力かなと思いますから。

Toshiya:すごく好きですよね。歪み最高みたいな(笑)。これもホントに最後のほうに上がってきて採用した曲なんですけど、全体のパーツが見えそうで見えない、ギリギリのところで出てきた感じでしたね。ただ、当初は激しくなる部分とかは入っていない状態だったんですよ。もうちょっとアンビ的な雰囲気というか、浮遊する雰囲気が強かったかなぁ。

薫:最初は、前半の感じとちょっとヘヴィなリフがついてみたいなノリで、なかなかあと一歩、二歩、三歩、掴みきれへんなぁみたいな感じやったんですよ。だから、いろんなものを付け足したりとかやってたんです。でも……そこで付け足したいろんなパーツを、これは別に曲を作ってみようと、逆に取り出して作ったのが、「人間を被る」なんですよ。実は「人間を被る」の最初のアルペジオとか、あるリフのパターンは、もともとはこの曲についてたんです。だから、「人間を被る」になる部分を取り除いた状態で、改めて曲を見つめ直したんですね。そこで、どうせボツになるなら、1回グチャグチャにしてみるかと(笑)。そんな感じでやってみたんですけどね。
■本当の意味でのアルバムのツアーに
■なるんじゃないかなと思ってます

──どうにでもなれと、思い切ってやってしまったら、思いのほかよい結果が生まれたと(笑)。でも、確かに「人間を被る」の取材のときに、他に作っていた曲から持ってきたという話をしてましたね。バンドサウンドそのものとは関係ないかもしれませんが、「Rubbish Heap」をはじめ、いろんなSEが入っていますよね。それがここ数作にはないような音使いをしていて面白いなと思うんです。

薫:そうですね。そこは心掛けました。それ自体、口で言えそうなもの……キャッチーというと変ですけど、そういう雰囲気のものは楽器でちょっと作りづらいので、そういうものを意識して作った感じはあります。
▲Shinya(Dr)

──わかります。便宜的に“変な音”という言い方にしておきますが、それがその曲のアイコンになるぐらいの存在にもなっていますよね。

薫:そう、その曲にクセをちゃんとつけられるものを入れてみようと。だから、何となく入っているのではなくて、ちゃんとそこに色をつけられるものということを意識して、音色も考えましたね。

──冒頭の原点回帰の話ではありませんが、そういった音色からも、DIR EN GREYの初期の作品群などを思い出しましたね。

薫:そうそう。『THE MARROW OF A BONE』とかぐらいから、あまりその辺の音を入れずに、なるべく5人でやるみたいな感覚が多くなってたんですけどね。今回は、まぁ、バンバン入れようとは思ってないですけど、入れられるものは入れていこうとは思ってましたね。
▲2018.08.24@東京国際フォーラム/Shinya(Dr)

──そこも新鮮な印象を受ける一つでしょうね。さて、『The Insulated World』を引っ提げた国内ツアーは、2019年3月からスタートの予定ですね。まだちょっと先の話になりますが。

Toshiya:そうですね。アルバムの曲を全部やるのかどうかもまだわからないですけど……まぁ、やると思いますけど(笑)、毎回ツアーをやるたびに、何か今までと違うもの、違う見せ方、違う聴かせ方というものを意識してやってはきているんですよね。来年のアルバムツアーでは、さらにそういう思いが強くなっていると思うんですよ。今はまだ何とも言えない状態ですけど、音源としてはとりあえず形にすることができたので、ここからでしょうね。どういうふうに変化していって、どんなふうになっていくのか。すでにライヴで演奏した曲もありますけど、本当の意味でのアルバムのツアーになるんじゃないかなと思ってます。

薫:まぁ、新しい何かを見せられればいいなと思ってます。アルバムのブックレットだったり、アートワークの中にも、いろいろと鍵は入っていると思うんですよ。これからどういうことをしていこうかなというのもね。そこら辺も見ながら、いろいろ楽しみにしていてもらえればと思います。

取材・文◎土屋京輔
■10thオリジナルアルバム『The Insulated World』

2018年9月26日リリース


【完全生産限定盤】※特殊パッケージ仕様
・3枚組(Blu-spec CD2+特典CD+特典Blu-ray) SFCD-0229〜231 ¥9,000 (tax out)
・3枚組(Blu-spec CD2+特典CD+特典DVD) SFCD-0232〜234 ¥8,000 (tax out)
※29th SINGLE『人間を被る』【完全生産限定盤】との連動特典専用応募ハガキ封入


【初回生産限定盤 ※2枚組(CD+特典CD)】SFCD-0235〜236 ¥3,400 (tax out)


【通常盤(CDのみ)】SFCD-0237 ¥3,000 (tax out)

▼収録曲 ※完全生産限定盤/初回生産限定盤/通常盤 共通
[DISC 1]
01. 軽蔑と始まり
02. Devote My Life
03. 人間を被る
04. Celebrate Empty Howls
05. 詩踏み
06. Rubbish Heap
07. 赫
08. Values of Madness
09. Downfall
10. Followers
11. 谿壑の欲
12. 絶縁体
13. Ranunculus

[DISC 2] CD ※完全生産限定盤
01. 鬼眼
02. THE DEEPER VILENESS
03. 理由
04. 腐海 [LIVE]
Live Take at SHINKIBA STUDIO COAST on June 30, 2018
05. Ash [LIVE]
Live Take at SHINKIBA STUDIO COAST on June 30, 2018
06. Beautiful Dirt [LIVE]
Live Take at SHINKIBA STUDIO COAST on June 30, 2018

[DISC 3] Blu-ray もしくは DVD
・MUSIC CLIP
 Ranunculus (Promotion Edit Ver.)
・LIVE FOOTAGE
TOUR18 真世界
2018.4.28 仙台銀行ホール イズミティ21
01. DIFFERENT SENSE
02. 鴉
03. DISABLED COMPLEXES
04. 霧と繭
TOUR18 真世界
2018.6.30 新木場STUDIO COAST (追加公演)
01. VINUSHKA
02. audience KILLER LOOP
03. REPETITION OF HATRED
04. Behind a vacant image
・BEHIND THE SCENES OF The Insulated World

初回生産限定盤収録[DISC 2] CD
01. 鬼眼
02. 腐海 [LIVE]
 *Live Take at SHINKIBA STUDIO COAST on June 30, 2018
03. Beautiful Dirt [LIVE]
 *Live Take at SHINKIBA STUDIO COAST on June 30, 2018
※収録内容、タイトル表記及び仕様等は変更になる可能性がございます。
※完全生産限定盤・初回生産限定盤は、生産数量限定商品となります。


■<OVERSEAS (EUROPE) TOUR18 WEARING HUMAN SKIN>

2018年10月06日(土)AURORA HALL -ST.PETERSBURG / RUSSIA-
2018年10月07日(日)RED HALL -MOSCOW / RUSSIA-
2018年10月10日(水)THE CIRCUS-HELSINKI / FINLAND-
2018年10月12日(金)PROGRESJA -WARSAW / POLAND-
2018年10月14日(日)LE TRIANON -PARIS / FRANCE-
2018年10月16日(火)THE ELECTRIC BALLROOM -LONDON / UK-
2018年10月18日(木)NEUE THEATERFABRIK -MUNICH / GERMANY-
2018年10月19日(金)LIVE MUSIC HALL -COLOGNE / GERMANY-
(問)NINE LIVES ENTERTAINMENT www.nle.rocks


■<TOUR19 The Insulated World>

2019年3月15日(金)神奈川・CLUB CITTA’-「a knot」only-
2019年3月20日(水)東京・Zepp Tokyo
2019年3月29日(金)宮城・東京エレクトロンホール宮城 (宮城県民会館)
2019年3月31日(日)北海・Zepp Sapporo
2019年4月04日(木)福岡・福岡市民会館
2019年4月06日(土)愛媛・松山市総合コミュニティセンター
2019年4月12日(金) 広島・広島JMSアステールプラザ・大ホール
2019年4月15日(月)東京都・新木場STUDIO COAST
2019年4月16日(火)東京・新木場STUDIO COAST
2019年4月19日(金)愛知・Zepp Nagoya
2019年4月25日(木)大阪・なんばHatch
2019年4月26日(金)大阪・なんばHatch
開場18:15 / 開演19:00
※3月31日(日)、4月6日(土)は、17:15 / 18:00
▼チケット
1Fスタンディング/一般指定席 ¥6,500(税別)
※Exclusive Ticket (指定席・オリジナル特典付き) ¥13,000(税別)
※3/15、20、31、4/4、6、15、16、19、25、26公演は「2F指定席」になります。
※3月29日、4月12日は、「1F指定席中央部PA卓付近」になります。
(問)NEXTROAD 03-5114-7444 (平日14:00〜18:00)
【チケット抽選先行】
・NEW ALBUM購入者対象最速先行抽選受付
受付期間:2018年9月26日12:00~2018年10月8日23:59
・OFFICIAL FAN CLUB 「a knot」会員先行 1次受付
受付期間:2018年10月1日12:00〜2018年10月14日23:59
・OFFICIAL FAN CLUB 「a knot」会員先行 2次受付
受付期間:2018年11月1日12:00〜2018年11月15日23:59

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